スリランカ・和平への足跡
スリランカ軍勝利後の動き2010

No.137
2010-Jan-20

GUILTY OF WAR DRIMES
ダブリンの市民法廷、スリランカに有罪の判決


 26日の大統領選挙を前にして、政局が激しくなった。15日、スリランカ最高裁は国営放送と独立系放送を含む総てのメディアに対して公正で自由な報道を行うよう命令を下した。これはサラット・フォンセーカ候補者側から出されていた国営放送の報道公正化への要望を受ける形で出された声明で、少なくとも選挙期間中は政党支持を現すような報道は控えるようにとの事だったが、メディアを中心とした選挙戦はエスカレートするばかりで、19日、選挙監視委員長ダヤナンダ・ディサーナーヤカは公正で自由な報道は国営放送からは期待できないとして、国営方法に派遣したジャヤンパティ・ヘッティアーラッチの引き上げを決めた。
 20日、スリランカ警察はサラット・フォンセーカ候補の義理の息子ダヌラ・ティラカラトゥナを収賄の疑惑で操作の対象とし、翌21日に警察へ出頭するようにと命じた。ダヌラは政府軍に調達する弾丸ひとつに2セント、火器に20ドルの課金をして中国から輸入したとされ、その汚職に対する取調べを行うのだと言う。この武器輸入汚職にはサラット・フォンセーカの関与があるとされている。

 投票まで一週間足らずとなってマヒンダ、フォンセーカ双方のサポーターが爆殺・銃殺されるという「内戦」状態が生じている。シンハラ対タミル過激派と言う図式ではなくシンハラ同士の「戦争」だ。これは以前から代わることのない事態だが、今回の選挙「戦争」はトゥイッターの書き込み情報合戦に激しさを燃やしている。情報ビラの代わりにプロパガンダのウェブ・サイトが乱立している。どれがガセで、なにが事実か、即在に判断は出来ない。2セント、20ドルのスキャンダルもその話をする人の数だけ事実が存在する。
 はっきりとしていることは、圧倒的に優位とされたマヒンダ側がサラット側に大きなゆさぶりをかけられていると言うことだ。マヒンダが圧勝すると言う予測が揺らいで、現体制側は警察をも使い始めたのだから、サラットのLTTEを掃討した元陸軍大将という肩書きは白々しい嘘ではない。
 アジアン・トリビューンに「コインの裏表」を載せたPAサマーラウィーラの論説が今日現在での、正論となるだろう。
 マヒンダとサラットは「コインの裏と表」だ。スリランカはトラウマを抱えている。しかし、マヒンダ政権下の軍人であったサラットを大統領として迎えることはなんとしても避けたい。UNPとJVPはサラットを担いだが、軍事政権がもたらすものに希望はない。サマーラウィーラはマヒンダとサラットを「コインの裏表」と評するプロ・タミルネットの記事を引用した。そして、インドのパイオニアの記事を引用して「軍事政権は避けたい」と書いた。
 おそらくはこれがシンハラの良心だと思う。だが、シンハラ自身の言がここにはない。主語を持たないシンハラ語のトラウマがここに見え隠れする。

 この20日に至るスリランカ大統領選の流れは何かと共通しないだろうか。重要な変革のとき、警察や検察が我が物顔で政権の争奪に関わることを私たちの日本は今、目の当たりにしている。この国の輿論はまだ、軍事政権を待望していると思えないが、日本が明日のスリランカになる可能性はある。すでにこの国が借金まみれで、政治が見事に腐敗していることはスリランカ同様確かだからだ。

 14日から16日に北アイルランドのダブリンで開かれた市民法廷は先ほど報じられたスリランカ政府軍兵士によるタミル人の銃殺事件を戦争犯罪で有罪と断じた。ただしプロLTTEから申し立てのあったスリランカ北部海岸でのタミル市民の大量虐殺は採決保留とした。市民法廷はスリランカ政府に対しこの事件に対する国連の調査を許可すると共に、収容されているタミル市民の開放を要求した。これに対してスリランカ政府災害対策・人間の権利担当省のラジュワ・ウィジェーシンハはダブリンの市民法廷を事実無根のカンガルー裁判であるとして拒絶した。