日本語と外国語を較べるとなると思い出されるのはタミル語です。大野晋さんがタミル語と日本語を比較されていますが、その事とはどう関係するのでしょうか。タミル語はシンハラ語とは隣同士の関係にありますし、そうした言及もされるのでしょうか。(T.N) |
No-06 2004-**-** 2015-12-20
● 日本語とタミル語に姻戚関係があろうががなかろうが私の『熱帯語』には、そんなこと関係ないんです。 『熱帯語』が掲げているのは「日本語感覚で熱帯語シンハラを話す」ということ。その一点です。 熱帯語シンハラが日本語のルーツであるとか言ってナントカの学説をでっち上げる気など毛頭ないし、私はそうした専門家ではありません。 シンハラ人との12年間の付き合いがあっても(この本を書いているうちに20年近くもなりましたが)、そうしたことは視野の外。ですから、タミル語の日本語ルーツ説に肩を並べて「シンハラ語は日本語のルーツであるぞ。そこのけ、そこのけ、タミル語」などと言いふらす気もないのです。第一、そんなことしたって日本語感覚で話す熱帯語シンハラの勉強にはなんの役にも立たないじゃありませんか。 なんの役にも立たないという流れで言うなら、タミル語の日本語ルーツ説もそうなんです。何がそうかと言って、「タミル語は日本語の起源である」という学説でタミル語会話を学ぼうとしても、それでタミル語を日本語感覚で話すなんてことは出来ませんからね。ご注意を。 言語は話すことから始まります。まず、話してみましょう。話してください。 そういうスタンスから私は熱帯語シンハラのことをお話させていただいてます。 ※こう書いた10年後、新たに『熱帯語の記憶』をキンドル版で出しました。全3巻の体裁です。この3巻目の「記憶をたどりゆく」は加筆した新しい章です。シンハラ語と日本語に共通する言語の記憶をヒンドゥの古い神話と日本神話の最も古い物語に現れる「柱」を追ってたどって行きます。すると、それは現代に導かれて… 宇宙エレベーターとスリランカ。 不死の都アマラプラ。 乳海攪拌の物語と『古事記』。 シンハラ語をたどって行く中に現れるのはスリランカの島のことばかりではない。熱帯から温帯のアジアへ流れ来る海の道をたどる人々のこころの中の古い記憶。きっと、この質問をされた方はこんな風に『熱帯語』が進化変遷することを存外に感じておられたのかも知れません。
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