QアンドA36
クリスマス島のアイウエオ


  クリスマス島へ取材で行きました。現地の小学校を訪ねて驚いたのですが、「アイウエオ」で言葉を教えているのです。「あいうえお」は日本語、シンハラ語だけではないんですね。


No-39初出不明 2015-Sep-9


 キリバス共和国のクリスマス島ではなくて、インド洋にあるオーストラリアのクリスマス島です。クリスマス島はジャワから南へ360キロメートル。イギリス領でしたが、リン資源を狙った日本は1942年3月7日、真珠湾攻撃を掛けた南雲動部がクリスマス島を襲い占領しました。その南雲部隊がセイロン(現スリランカ)のコロンボとトリンコマリを空爆するのは約1か月後のことです。
 さて、クリスマス島で「アイウエオ」で言葉を教えていると情報を寄せてくれたのは東京シネマ新社の篠原さん。TOMOCAの時代のことです。取材先の学校で子供たちが「あいうえお」を習っていた。取材先で出会った光景は、そりゃ、驚きです。 この島の言語は英語とインドネシア語。そのほか広東語やタミル語など、英国植民地時代にいかに他国籍の人々を労働者としてこの島が迎え入れたか、言語の様子が歴史を語っています。  でも、それらの言葉はシンハラ語とは関係ないし、インド系言語でもない。まして、戦前からリン鉱石で日本と関係があったとはいえ日本語との関連もない。それなら、なんで?
 不思議としか言いようがない、と以前ここで報告したのですが、この島で話されているバーサ・インドネシア(インドネシア語)の母音はaiueoです。eの音が二つあるとのことですが、「あいうえお」なのです。
 インドネシアの言葉の仕組みはよく知りません。聞いていてシンハラ語とは別の種類の言語だということだけはわかります。バーサ・インドネシア(語構成は《語・インドネシア》」もシンハラ流に言えば単語がひっくり返ってインドネシア・バーサ(インドネシア・語)ですから。
 このバーサ、シンハラ文法ではバーシャーワと言います。パーリ文法を丸呑みしたシンハラ文語文法でも「言語」の意味で使います。本来、バーシャーワなのがシンハラ語化すると、単純な音になってバーサとなる。インドネシアでも同じなのですね。
 日本語の「あいうえお」は特殊な音理論ではないということがここでも実証されているようです。サンスクリットに起源を発する音の理論は東南アジア島しょ部にも伝わっているのですね。