FoE 新興技術プロジェクト 2015年4月16日
アメリカ規制当局はナノ報告要求を提案しているのに
オーストラリア規制当局は何もせず眠っている


情報源:Friends of the Earth Emerging Tech Project, Apr 16, 2015
US regulator proposes nano reporting requirements
whilst Australian regulators remain asleep
http://emergingtech.foe.org.au/us-regulator-proposes-nano-reporting-requirements-whilst-australian-regulators-remain-asleep/

掲載日:2015年4月28日
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http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/nano/FoE_au/FoE_au_150416_nano_reporting_requirements.html

 米・環境保護局(EPA)は、製造量、暴露レベル、及び環境健康と安全へのリスクに関する重要な情報を収集するために、ナノスケール化学物質を製造し輸入している会社への報告要求を提案した(訳注1)。一方、オーストラリアでは既存の化学物質のうちナノ形状のものを規制する計画は見捨てられたように見える。

 このデータ収集を行使するということは、どのようなナノ物質が使用されているのかについて、そしてそれらの健康と安全リスク及び公衆の暴露レベルについて、規制当局は十分には知っていないということを米政府が認めたということである。

 残念ながら我々には、オーストラリアの規制当局が同じ懸念をもっているようには見えない。我々オーストラリアの化学物質規制当局 NICNAS(工業用化学物質届出評価機構 National Industrial Chemicals Notification and Assessment Scheme)は 2009年に初めて、既存化学物質のうちナノ形状のものについての規制を提案(訳注2)したが、このプロセスはどこに行ったのか? オーストラリア人は暗闇の中で未知のリスクに曝されたままである。

 米EPAはまた先月、食品安全センター(CFS)による昨年12月の訴訟(訳注3)の結果として、消費者製品中のナノ銀を規制するであろうと発表した(訳注4)。オーストラリアではナノ銀製品は未規制のままである。

 ナノ物質は同じ化学的組成のバルク状粒子とは異なる挙動をし、人の健康と環境に有害影響を及ぼすかもしれないことを示す科学的証拠がますます増大している。このことは2004年に英国王立協会・王立工学アカデミーが、安全性が評価されるまでナノ物質の環境放出に関するモラトリアム勧告した理由である(訳注5)。このことは実施されていない。

 ナノ物質の登録は、規制当局が、急速に増大する消費者製品中で使用されるナノ物質に関連するリスクを評価するために必要な基本的な情報を収集できるようするためにオーストラリアで必要である。しかし、多くのヨーロッパ諸国がナノ登録を採択しているにもかかわらず、政府委託による研究は、同様なシステムを実施すると産業にとってコストが高すぎると主張した。産業のこのアプローチは、消費者、労働者、そして環境は不必要なリスクに曝されることを意味する。

 例えば、カーボンナノチューブは、スポーツ用品、電子機器、太陽電池、浄水フィルター、布製品等を含む広範な用途で使用されている。それらはアスベストのような特性を持ち有害化学物質としてオーストラリア労働安全局(SWA)により分類された(訳注6)。

 既に知られている制御とリスク管理手法が、職場環境の工業ナノ物質への暴露からの労働者のための保護レベルを提供できることを研究が示唆している。しかし、職場は、適切な防護措置が取られるべきナノ物質を取り扱っているということを知っている必要がある。フランスではナノ登録の導入の結果、より多くの職場がナノ物質を取り扱っているということを自覚するようになったことが観察された。

地球の友は、下記のことを求めている。
  1. サプライチェーンを通じてナノ物質の追跡とリスク評価を可能とするナノ登録制度が実施されるべきこと。
  2. テストが安全であると示すまで、ナノ物質を含む製品の市場への投入をしないこと(モラトリウム)。
  3. ナノ物質を含むすべての製品に、消費者の選択を可能とするよう、ラベル表示をすること。

訳注1
EPA News Release 03/25/2015 EPA Proposes Reporting and Record Keeping Requirements on Nanoscale Materials in the Marketplace

訳注2
National Industrial Chemicals Notification and Assessment Scheme (NICNAS) Proposal for Regulatory Reform of Industrial Nanomaterials Public Discussion Paper - October 2009

Nanowerk 2010年10月16日 オーストラリア 新規工業用ナノ物質の届出と評価プロセスを導入

訳注3
食品安全センター 2014年12月17日 プレスリリース 非営利団体 ナノテクノロジーによる新規農薬の規制の不履行でEPAを訴える

New lawsuit seeks EPA regulation of products containing nano-silver

訳注4
Center for Food Safety, March 24th, 2015, EPA Agrees to Regulate Novel Nanotechnology Pesticides After Legal Challenge

Legal action prompts US regulator to regulate nano-silver while Australian regulators fail to take action

訳注5
英国王立協会・王立工学アカデミー報告 2004年7月29日 ナノ科学、ナノ技術:機会と不確実性−要約と勧告

訳注6
オーストラリア労働安全局 2015年2月 工業ナノ材料: 毒性と労働衛生ハザードに関する最新情報

訳注7
SAFENANO 2013年12月6日 フランス、義務的ナノ報告実施の結果 第一弾を発表

SAFENANO 2012年3月5日 フランス 2013年にナノ物質の義務的報告を導入



化学物質問題市民研究会
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