英国王立協会・王立工学アカデミー報告 2004年7月29日
ナノ科学、ナノ技術:機会と不確実性−要約と勧告[1]

情報源: Nanoscience and nanotechnologies:opportunities and uncertainties
summary and recommendations

The Royal Society & The Royal Academy of Engineering, 29 July 2004

[1] 本書は『ナノ科学、ナノ技術:機会と不確実性、ロンドン、英国王立協会・王立工学アカデミー、2004年』の概要である。英国王立協会刊行物販売部から5ポンドで入手できる。また英国王立協会のウェブサイト http://www.royalsoc.ac.uk/policy 及び王立工学アカデミーのウェブサイト http://www.raeng.org.uk から無料で入手できる。

訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2005年11月13日
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/nano/royal_society/RS_summary.html

要 約
■概説

 ナノ科学とナノ技術は、研究と適用の多くの分野に利益をもたらす巨大な可能性を持っているように見え、急速に世界中で政府や産業界からの投資をひきつけている。同時に、それらの適用に当たっては、社会的な議論が必要であろう安全、規制、又は倫理の領域での新たな課題を提起している。そこで2003年6月、イギリス政府は英国王立協会・王立工学アカデミーにナノ科学とナノ技術の現在と将来の発展及びその影響について独立した調査を実施するよう委託した。

委託された調査事項は下記の通りである。
  • ナノ科学とナノ技術が意味することを定義すること
  • ナノ技術についての科学的知識の現状を要約すること
  • 新たな技術の適用、特にナノ技術が既に使用されている領域を特定すること
  • この技術が将来どのように使用されるのかについて、この技術の適用が現実のもとなるであろうタイムスケールを予測しながら将来を見据えること
  • この技術を使用することによって生じるかもしれない健康、安全、環境、倫理及び社会に関わる現在及び将来の事柄を特定すること
  • 追加の規制が必要であると考えられる領域を特定すること
 この調査を実施するために、二つのアカデミーが、科学、技術、社会科学及び倫理に関連する領域からの、及び主要な公共利益団体からの専門家を集めて、一つの作業部会を立ち上げた[2]。作業部会は、書面証拠の提出呼びかけ、及びイギリスと海外の広範な関係者による一連の証拠陳述及びワークショップを通じて広く意見を求めた。また発表されている論文の検証、及び委託されている公衆の反応についての新たな調査の検証も実施した。本調査を通じて、作業部会はその作業をできる限り公開し、入手した証拠は専用のウェブサイトに発表した(http://www.nanotec.org.uk)。
 この報告書は英国王立協会及び王立工学アカデミーによって検証され、承認されている。

[2] 作業部会のメンバーは本書の巻末に示されている。

■ナノスケールの意味

 1 ナノメートル(nm)は10億分の1メートルである。ちなみに人の髪の毛一本の太さは約80,000nm、白血球細胞は約7,000nm、水の分子の直径は約0.3nmである。人々は100nmから原子のサイズ(約0.2nm)までと我々が定義するナノスケールに関心を持っているが、それはこのサイズでは物質の特性がもっと大きなサイズの場合とは非常に異なることがありえるからである。
 我々は、ナノ科学を特性がもっと大きなスケールとは非常に異なる原子、分子及び高分子のスケールにおいて物質の現象と操作を研究すること−と定義し、ナノ技術をナノメートル・スケールで形状とサイズを制御することによって構造、手段、及びシステムを設計、特性化、製造、及び適用すること−と定義する。
 ある意味では、ナノ科学もナノ技術も新しいものではない。化学者らはポリマーを数十年間、製造してきたが、それらはナノスケールの基本単位からなる大きな分子であり、またナノ技術はコンピュータ・チップ上の小さな形状を作り出すために過去20年間、使われててきた。しかし、原子と分子を高精度で検査し操作することができるツールの進歩がナノ科学とナノ技術の拡大と発展を可能にした。

 物質の特性はナノスケールにおいては二つの大きな理由により異なることがありうる。
 第一には、ナノ物質は同一物質の質量当りの表面積を比較すると形状の大きなものよりナノ物質の方が相対的に表面積が大きい。このことは物質を化学的に活性化し(ある場合には、形状が大きい時には不活性である物質も、ナノの形状で製造されると活性化する)、その強度や電気的特性に影響を与える。
 第二には、ナノスケールでは量子効果が物質の挙動を支配し始め、特に小さくなると、物質の光学的、電気的、磁気的な挙動に影響を与える。また、一次元がナノスケールである物質(例えば、非常に薄い表面コ−ティング)、二次元がナノスケールである物質(例えばナノワイヤーやナノチューブ)、三次元がナノスケールである物質(例えばナノ粒子)を作ることができる。

訳注(参考):典型的なナノ物質の構造/ナノテクノロジー総合支援プロジェクトセンター

 我々の広範な定義では多くの従来の科学的領域を横断する。”ナノ技術 (nanotechnology)” として特性付けられる多様な活動に共通な特徴は、その小さな寸法である。したがって我々はそれを ”ナノ技術(s が付く)(nanotechnologies)” と呼ぶ方がより適切であることが分かった。

■ナノ科学とナノ技術の現状及び可能性ある将来の用途

 我々の目的は、健康、安全、環境、社会及び倫理が関わるナノ科学及びナノ技術の現状及び可能性ある将来の開発の概観を提示することであった。我々は、資金割り当てのために優先順位がつけられるべきナノ科学とナノ技術の分野を特定することをまだしていなかった。

(@)ナノ物質

 多くのナノ科学とナノ技術は新たな又は強化された物質に関連している。ナノ物質は、より大きな物質の塊から非常に小さい構造を作り出す ”トップダウン” 技術によって構築することができる。例えば、エッチング(腐食処理)によってシリコンのマイクロチップの表面上に回路を作りだす。
 ナノ物質はまた、原子ごとに又は分子ごとに ”ボトムアップ” 技術によって構築することもできる。これを行う一つの方法は自己組織化(self-assembly)であり、原子又は分子が自身の持つ自然の特性により自身を一つの構造に作り上げていく方法である。半導体産業における結晶生成が自己組織化の一つの例であり、大きな分子の化学合成のようなものである。
 もう一つの方法は原子又は分子を個々に動かすためにツールを用いる方法である。この ”位置の組み立て(positional assembly)” は構築に非常に高度な制御技術を要するので非常に手間がかかり、現時点では工業的な適用には適さない。

 ナノスケール物質の現状の適用には、例えば電子技術で及び活性界面(例えば自己洗浄窓ガラス)で使用されるような、非常に薄いコーティングがある。ほとんどの適用では、ナノスケール要素は固定されるか埋め込まれるが、化粧品、あるいは環境改善実証テストでは、自由ナノ粒子が用いられている。材料を非常に精密に高精度で加工する(100nm以上の精度)能力は、広範な産業分野、例えば情報通信技術(ICT)、自動車、及び航空産業用の部品の製造に少なからぬ恩恵をもたらす。

 開発のタイムスケジュールを正確に予測することはほとんど不可能であるが、今後数年間でナノ物質は、シリコン・ベースの電子部品、表示、塗料、電池、微小加工シリコン・センサー、触媒などを含む、広範な製品の性能を向上させる手段を提供するであろうと我々は予想している。
 将来我々は、一つ又はそれ以上の壁を持った直径数ナノメートル、長さ数センチメートルのカーボンの円筒で、非常に強度が高く、柔軟性があり、導電性がある”カーボン・ナノチューブ”の特性を活用した合成物を見ることになるかもしれない。現時点では、これらのチューブを一様な方法で製造し、個々のナノチューブに分離することが困難なので、その適用は限定されている。
 我々はまた、無機ナノスフェアを用いた潤滑材;ナノ結晶粒を用いた磁性体;頑強でより良い医療義肢装具に用いられるナノセラミックス;自動車部品又は高温炉;よりエネルギー効率のよい浄水装置用のナノ加工された膜−などを目にするようになるかもしれない。

(A)計測

 測定の科学である計測は、寸法や電気的特性や質量のような属性によって物質を特徴付けるので、他の全てのナノ科学とナノ技術を支えるもである。計測における高い精度はナノ科学とナノ技術の発展を支援する。しかし、機器を較正するためにもっと標準化を推進する必要があり、我々は通商産業省がこの分野に適切な資金を配分することを確実にするよう勧告する。

(B)電子技術、光電子技術、情報通信技術

 情報技術の開発におけるナノ科学とナノ技術の役割は、半導体産業の2018年までの主要な動向を予測する世界的に著名な 『国際半導体技術ロードマップ((ITRS)』 の中で期待されている。このロードマップは、記憶素子のある部分の長さに関してシリコンチップの製造基準を定義している。2004年の基準では90nmであるが、2016年までには22nmとなることが予測されている。
 今日までのコンピュータ・チップの小型化の多くはナノ科学とナノ技術と関連しており、これは短期的及び中期的に続くと予測されている。メモリーに光学的又は磁気的特性を用いたデータ保管もまた、ナノ科学とナノ技術の進歩に依存する。

 シリコン・ベースの電子技術に替わるものとして、ナノ科学とナノ技術が研究されており、例えば柔軟性のある表示画面としてのプラスチック電子技術がある。現在開発中のその他のナノスケール電子ディバイスには、環境中の化学物質を検出するための、食料として適しているかどうかをチェックするための、あるいは建物の構造中の機械的応力の状態を監視するためのセンサーなどがある。
 また多くの関心が半導体ナノ粒子である量子ドットに集まっている。それは特定の光の発光や吸収を調整することができ、太陽エネルギー電池や蛍光生物ラベルに用いられる。

(C)バイオ−ナノ技術及びナノ医療

 医療分野におけるナノ技術の適用は特に有望であり、病気の診断、薬剤の体内の特定の目標場所への投与(ターゲット・ドラッグ・デリバリー)、及び分子の画像表示などは集中的に研究されており、ある製品は臨床実験が行われている。抗菌特性を持つことが知られるナノ結晶銀は、アメリカでは外傷用医薬材料として使用されつつある。
 ナノ科学とナノ技術の適用は細胞と組織の処理のための足場としての、及びヒトの健康状態を監視するために用いられるセンサーとしての材料やディバイスの製造をもたらしている。適用の多くは10年あるいはそれ以上の間、実現しないかもしれないが (それは要求されるであろう厳格なテストやバリデーション管理が理由の一部である)、もっと長期的には、情報を検出し処理することができるナノ電子システムの発達が人工網膜や人工蝸牛(訳注:内耳の器官)の開発をもたらすであろう。バイオ−ナノ技術の分野の進歩は、たんぱく質のような分子スケールの天然生物構造に関する我々の理解の上に築かれるであろう。

(D)工業的応用

 現在までのところ、比較的数の少ないナノ技術が革命的というより進化的な進歩をもって工業的に応用されている。現在の応用は主に、物質の特性の決定、化学物質の製造、精密加工、及びコンピューター関連の分野である。例えば携帯電話では、ナノ技術に関連して先進的な電池、電子部品、及びディスプレー用の材料が開発されている。これらの材料の総重量の製品全体の重量に占める割合は非常に小さいが、それらのディバイス(携帯電話)が提供する機能のほとんどを占めている。長期的には、もっと多くの領域がナノ技術の影響を受けるであろうが、そのためには実験室レベルの製造から大量生産に向けての、製造規模の拡大が課題となるであろう。

 もっと長期的にはナノ技術が、資源の使用と廃棄物の生成を削減しつつ、コスト効果のある方法で多くの多機能物質を製造する製造方式への、もっと効率的なアプローチを可能にするであろう。しかし、環境的利益のような主張が、物質や製品の全ライフサイクル、その製造から使用、廃棄までを通じて評価されるということが重要である。我々は、ナノ技術の適用のためにライフサイクル評価が実施されることを勧告する。

 原子毎に物質を(そして自身を)製造することができる機械的ナノマシンの開発と使用の期待が述べられてきた。(しかし、この論点は我々が話をした産業界の代表からは提起されなかった)。自己複写マシンのような期待の一方、この様な(まだ実現されてはいないが)人の制御の範囲を超え、自身のコピーを無制限に製造し、地球上の全ての資源をこのプロセスで消費してしまう (いわゆる ”グレイ・グー” シナリオ) ことについての恐れが提起されている。我々は、機械的自己複写ナノマシンが予知できる将来に開発されることを示唆する証拠はないと結論付けた。

訳注(参考):グレイ・グー/ざつがく・どっと・こむ

■健康と環境への影響

 ナノスケール粒子の特性がある適用分野 (高い表面活性や細胞膜を通過する能力など) で活用されていることが、健康と環境に有害な影響を与えるのではないかという懸念が述べられている。多くのナノ技術は新たなリスクを健康に及ぼすことはなく、ほとんど全ての懸念は、物質の上や中に固定されているものではなく、むしろ自由に動く意図的に製造されたナノ粒子やナノチューブに関連している。
 ナノ粒子形状の化学物質で工業的規模で製造されているものは僅かであり、製造された自由なナノ粒子やナノチューブへの曝露は現状では特定の職場(学問的研究試験所を含む)や少数の化粧品での使用に限定されている。
 我々は、製品中に固定されている又は埋め込まれているナノ粒子やナノチューブが (環境中に) 放出される可能性は低いと考えているが、製造者は製品のライフサイクルを通じての潜在的曝露リスクを評価し、その結果を関連する規制当局に報告することを勧告する。

 自由 (浮遊) 人工ナノ粒子の吸入の影響に関して発表された研究はほとんどなく、我々は、都市の大気中に大量に存在することが知られている汚染ナノ粒子や、いくつかの職場での鉱物ダストに関する研究から得られた結果を主に類推するしかない。
 証拠によれば少なくともいくつかの人工ナノ粒子は、質量当りの毒性が同一化学物質の大きな粒子に比べてより強いということが示唆されている。この毒性はナノ粒子の表面積 (質量当りの表面積は形状の大きな粒子に比べてはるかに大きい) と表面の化学的活性 (表面コーティングの使用によって増減することができる) に関連している。またナノ粒子は大きな粒子に比べて容易に細胞を通過するように見える。

 新たな人工ナノ粒子が、汚染大気中のナノ粒子に関連しているような健康影響を引き起こすほどに十分な量がヒトの体内に取り込まれるということはまずなさそうである。しかし、ある職場では相当な量を吸入する人がいるかも知れず、曝露を最小にするための措置が取られるべきである。
 毒物学的調査は溶解性が低く表面活性の低いナノ粒子については行われている。これらとは著しく異なる特性を持つもっと新しいナノ粒子は特別の注意をもって取り扱われるべきである。

 カーボン及びその他のナノチューブの物理的特性は、それらがアスベスト繊維に似た有毒な特性を持つかもしれないということを意味するが、一方、予備的な調査ではそれらは個々の繊維としては容易には大気中に逃げ出すことはないと示唆している。さらなる毒性調査が行われるまでは研究所や職場での空気中浮遊ナノチューブへの人間の曝露は制限されるべきである。

 もし、ナノ粒子が皮膚を通過するなら、細胞に損傷を与えることになる活性分子の生成を容易にすることになる。二酸化チタンのナノ粒子 (ある日焼け止めに使われている) は皮膚を通過しないことを示すいくつかの証拠があるが、しかし同じ結論が太陽光で損傷を受けた皮膚や湿疹など普通にある疾病を持つ人々に当てはまるかどうか明確ではない。
 化粧品に用いられている他のナノ粒子 (酸化亜鉛など) が皮膚を通過するかどうかについて十分な情報がなく、これについてはもっと研究が必要である。これらの成分の安全性に関連する情報の多くは産業側の実施によって得られたもので、科学論文として公開されていない。
 したがって我々は、ナノ粒子のような成分の有毒性に関する情報を検討する安全諮問委員会の権限が公共のために発動されるべきであると勧告する。

 ヒトの体内の防御機構を侵入するナノ粒子の運命と挙動についての重要な情報はターゲット・ドラッグ・デリバリー (訳注:薬剤の体内の特定の目標場所への投与) のためにナノ粒子を開発している研究者らから得ることができる。我々はこれらの研究者ら及び他のナノ粒子やナノチューブを研究している人々との提携を勧告する。
 さらに、これら新しいドラッグ・デリバリー方法の安全性テストは、意図した薬剤の目標から離れた細胞や組織に影響を与える能力を含む、そのような粒子に特有な有毒特性を考慮しなくてはならない。

 ヒト以外の生物種に与えるナノ粒子の影響について、あるいはそれらが大気中、水中、又は土壌中でどのように振舞うかについて、又は食物連鎖中に蓄積する能力について、事実上ほとんど情報がない。それらの環境影響についてもっとよく知識が得られるまで、我々はナノ粒子とナノチューブの環境中への放出は可能な限り回避されることを強く望んでいる。
 特に、我々は予防的措置として、工場と研究試験所は人工のナノ粒子とナノチューブを、それらは危険であるとして取り扱うこと、廃棄物の流れに入り込むことを削減すること、及び、地下水の改良のような環境中での自由ナノ粒子の使用は禁止されるべきことを勧告する。

 可燃性ナノ粒子は、その大きな表面積と強化された活性の潜在的能力のために、爆発のリスク増大を引き起こすかもしれないことを示唆するいくつかの証拠がある。この危険性が適切に評価されるまで、これらのナノ粒子が大量に空気中に浮遊することを避けるための措置をとることによって、このリスクは管理されるべきである。

 健康、安全、及び、環境に与える潜在的な影響に関連する多くの不確実性を低減するために、ナノ粒子とナノチューブの危険性及び曝露経路に関する研究が求められる。この研究はナノ粒子の将来の開発のスピードにペースを合わせなくてはならない。
 我々は、イギリス研究協議会 (UK Research Councils) が、人工のナノ粒子及びナノチューブの毒性、疫学、残留性、及び生体蓄積性に関する研究を行うために、学際的センター (多分、既存の研究所を発展させる) を召集し統合することを勧告する。
 このセンターはイギリス、ヨーロッパ及び国際的な規制担当官やその他の研究者らと密接に連絡が取られるべきである。我々は10年間で500〜600万ポンド (約10兆円〜12兆円) の資金が必要であると見積もっている。資金の中心は政府が拠出するべきであるが、センターはまた、ヨーロッパ及び国際的に資金援助されたプロジェクトにも参加するであろう。

■社会的及び倫理的影響

 もし、ナノ科学とナノ技術の将来の方向及び特定の開発が行われるタイムスケールを予測することが難しいなら、社会的及び倫理的懸念をどのように引き起こすのか予測することはもっと難しい。短期的及び中期的には懸念は二つの基本的な疑問に絞られる。”誰がナノ技術の使用を管理するのか”、そして、”誰がナノ技術の使用から恩恵を受けるのか?” これらの疑問はナノ技術だけに限られたことではなく、他の技術の過去の経験がこれらに目を向ける必要性を示している。

 ナノ技術の機会(チャンス)と脅威の認識はしばしば同じ特性から引き出される。例えば、ナノ技術の情報技術への集中は、コンピュータ使用の著しい威力によって遠方の検出装置と複雑なネットワークでリンクしつつ、個人の安全、防護、及び個別化された健康管理をより高度に実現し、ビジネスに対して彼らの製品を追跡し監視することを可能にする。
 それはまた秘密調査、あるいは適切な合意なしに情報を収集し配布するためにも用いることができるであろう。調査と検出の新たな形態が開発されているので、現状の規制の枠組みと制度が社会の個人とグループに適切な安全保護を提供しているかどうかきちんと検証する必要があるかもしれない。
 軍事という脈絡からも、ナノ技術は防衛及び攻撃のための潜在的能力を持っており、したがって、多くの社会的及び倫理的問題を提起する。
 ナノ技術がバイオ技術、情報・認識科学へ将来集中し、徹底的な人間の能力増強に使われる可能性があるという推測もある。もしこれらの可能性が実際のものとなったなら、深い倫理的疑問を提起することになるであろう。
 ナノ科学及びナノ技術の開発によって生成されるかもしれない多くの社会的及び倫理的問題はもっと調査されるべきであり、我々は、”研究協議会”及び、”芸術人間性研究委員会”がこれを実施するために複合領域研究プログラムに資金を提供すべきことを勧告する。我々はまた、先端技術への倫理的及び社会的な関わりが、この分野で働く全ての研究学生と研究職員の公式訓練の一部とされるべきことを勧告する。

■関係者及び公衆との対話
 公衆の態度は技術的進歩の可能性を実現する上で非常に重要な役割を演じることができる。イギリスではナノ技術に関する公衆の知識は低い。我々が委託した世論調査で、ナノ技術について聞いたことがあると答えた人はわずか29%であり、その定義について何か言えた人はわずか19%であった。定義について何か言えた人のうち、68%の人が将来の生活を改善するであろうと感じており、悪くなるであろうとした人はわずか4%であった。

訳注:参考/日本での調査(朝日新聞2005年11月8日)

 一般公衆の小さな団体が参加した二つの集中ワークショップで、参加者らはナノ技術について肯定的及び否定的の両方の潜在的可能性を特定した。
 肯定的な見解は、活気に満ちた分野での新たな進歩;特に医療分野での潜在的適用;新たな物質の創造;発展は自然な進歩の一部であるという認識とそれらは生活の質を向上させるという期待;について述べたものである。
 懸念は財政に関するもの;社会に対する影響;新たな適用の信頼性;長期的な副次的影響;技術は管理できるかどうか;についてであった。ナノ技術の統制(governance)の問題もまた提起された。ナノ技術の開発が社会的に恩恵をもたらすことを保証するために信頼できるのはどの機関か?;遺伝子組み換え生物及び原子力と比較;がなされた。

 我々は、研究協議会が、一般公衆のメンバーと社会の関心を持つ分野のメンバーを関与させた、もっと広範なプログラムに資金を出し、我々の公衆の態度に関する予備調査を引き継ぐよう勧告する。

 我々は、ナノ技術の将来についての建設的で前向きな議論が今、それらの開発について主要な決定を知らせることができ、深く塹壕に隠れてしまう前に、又は分極化した立場が現れる前に、行われるべきであると信じている。我々は政府が適切に資金手当てを行ってナノ技術開発の周辺についての公衆との対話に取り組むよう勧告する。
 対話の詳細な方法とスポンサーの選定は対話の合意された目標にそって設計されるべきである。我々の公衆の態度に関する調査は、統治は最初の対話では適切な議題であり、もし、研究協議会が現在ナノ技術の研究に資金を提供しているなら、彼らはこのことを前向きに検討すべきである。

■規制

 様々な関係者との我々の議論を通じて提起された主要な論点は、いかに社会がナノ技術の開発と発展を、望ましい結果を最大にし、望ましくない結果を最小とするよう、管理することができるかということであり、言い換えれば、いかにナノ技術は規制されるべきかということである。
 現在の欧州連合(EU)及びイギリスの規制の枠組みのレベルは、現状の開発段階のナノ技術を取り扱うには十分に広範で柔軟性があるということを証拠が示している。しかし、いくつかの規制は、自由なナノ粒子とナノチューブの形状の化学物質の毒性は、形状がもっと大きい場合の毒性から予測できないという事実、そしてある場合には、形状が大きい同一質量の同一化学物質よりも毒性がより強くなるという事実を反映して、予防に基づき修正される必要がある。我々は、ナノ粒子又はナノチューブへの曝露が現在、又は将来、ありそうな規制対象となるべき分野のいくつかを見た。

 現在、人工のナノ粒子及びナノチューブへの吸入曝露の主要な源は試験所といくつかの職場である。我々は安全衛生当局が、事故発生時の放出による曝露を含めて、ナノ粒子とナンチューブへの職場の曝露を評価し管理する既存の規制の適切性の検証を実施することを勧告する。当局は、このサイズで製造される時には、化学物質への職業曝露レベルを引き下げることを検討すべきである。

 現在のイギリスの化学物質規制(新規物質の届出)及び欧州レベルで協議されているその代替提案(REACH)の下では、ナノ粒子形状の既存物質の製造では追加的なテストは必要とされない。
 我々は、ナノ粒子及びナノチューブの形状で製造される化学物質は、これらの規制の枠組みの下では新たな化学物質として扱われるべきと勧告する(強調:訳者)。このサイズの物質に関してはテストとテスト方法の引き金となる年間製造量の閾値は、毒物学的証拠が入手可能となった時点で見直しが行われるべきである。

 欧州連合の化粧品規制の下では、もし成分 (ナノ粒子形状のものを含む) が使用禁止又は使用制限の化学物質としてリストに載っておらず、製造者が最終製品は安全であると宣言すれば、それらの成分はほとんどの目的のために事前の承認なしに使用することができる。
 ナノ粒子の毒性が皮膚を通過するという懸念があるなら、我々は、製品中でのそれらの使用は、欧州委員会科学安全諮問委員会による賛成意見に依存すべきであることを勧告する。
 二酸化チタンのナノ粒子形状のものには諮問委員会による賛成意見が与えられているが (紫外線フィルターとして使用される化学物質はそれらが使用される前に諮問委員会による評価を受けなくてはならない)、酸化亜鉛については評価するために十分な情報は提供されなかった。
 我々は、製造者がナノ粒子を含む製品の安全性を評価するために使用した方法の詳細で、ナノ粒子の特性はサイズの大きな形状のものとは異なるかもしれないということを、いかに製造者が考慮したかを示すものを公開することを勧告する。
 我々の理解では酸化亜鉛のナノ粒子はヨーロッパでは化粧品中ではそれほど使われていないので、これが多くの製造者に適用されるとは予期していない。ナノ粒子の形状で製造される化学物質は新たな化学物質として扱われるべきであるという我々の勧告に基づいて、消費者製品のための成分リストは人工ナノ粒子が追加されているという事実を明らかにすべきであると信じる。
 ナノ粒子は、将来、もっと多くの消費者製品に含まれるかも知れないので、我々は欧州委員会がイギリスの支援を受けつつ、ナノ粒子を消費者製品に導入することに関連して、現状の規制制度が適切であるかどうかを見直すよう勧告する。

 我々は、ナノ粒子又はナノチューブは、それらが固定されているほとんどの材料から放出されることはありそうにないと考えるが、我々は廃棄処分、解体、又はリサイクルの間にそのような放出が最大になるというリスクを想定する。
 したがって我々は、end-of-life 規制のような拡大生産者責任制度が該当する製品の製造者は、いかにこれらの物質が起こりうる人と環境への曝露を最小にするために管理されるかを示した手順書を公開するよう勧告する。

 我々の規制の見直しは網羅的なものではなく、したがって我々は、全ての関連する規制当局が既存の規制が人と環境を我々が特定した危険から保護するために適切かどうか検討するよう、彼らの見直し内容を公開するよう、そしていかに彼らが規制のギャップに目を向けるかを説明するよう勧告する。
 ナノ技術の将来の適用は規制以外の他の領域に影響を与える−例えばセンサー技術の発展はプライバシーに関連する立法に影響を与えるかも知れない。したがって、規制当局が適切な段階でどのような規制のギャップをも特定できるよう、ナノ粒子の将来の適用を彼らの水平監視プログラム(horizon-scanning programmes)に含めることが重要である。

 全体的にみて、適切な規制と研究が示された線に沿っているのなら、我々は、ある人々が主張するような人工ナノ粒子の試験所での製造又は工場での商業生産に関する一時中止(モラトリアム)の必要はないと考える。

■新規及び発展段階の技術の責任ある開発を確実にすること

 ナノ科学とナノ技術は急速に発展しており、国際競争力の圧力のためにこのことは続くであろう。したがって、イギリス政府の主席科学顧問は、独立グループに2年間、さらに再び5年間、権限を委託し、我々の勧告の結果に対しどのような措置がとられたかを検証し、その期間にいかにナノ科学とナノ技術が開発されたかを評価し、そしてこれらの開発の倫理、社会、健康、環境、安全、そして規制への関わりを検討させるべきである。このグループは、関連する関係者団体からの代表を含み、また彼らと協議すべきである。

 もっと一般的には、この調査は、社会に強く影響を与える可能性のある科学と技術の可能性ある新たな領域をできるだけ早く特定することの価値を再び強調している。したがって、主席科学顧問は広範な関係者の中の代表者らを集めた一つのグループを組織し、新規及び発展段階の技術を見直し、政府の注意を喚起する必要がある問題領域をなるべく早い段階で特定し、どのようにそれらに目を向けるべきかについて勧告するために、2年に1度、会合を開くようにすべきである。
 このグループの作業は公開され、全ての関係者が展開中の問題に関与するよう働きかけられるべきである。我々はこのグループが、作業を重複するのではなく、水平監視の役割をもって政府を横断する他の組織の作業を活用することを期待する。

 我々は、この勧告が向けられているイギリス政府やその他の団体がこの報告に対応することを期待している。この調査はイギリス国内及び国際的に広範な関係者の間で大きな関心を引き起こした。我々が知る限り、これはこの種の最初の調査であり、そこで分かったことが世界中でナノ科学とナノ技術の責任ある開発に寄与することを期待する。


勧 告
■ナノ技術の工業的適用

R1 既存及び予期されるナノ技術の開発から生じる適用と製品グループに対し、製品の使用期間中の資源消費の節約が、製造及び廃棄処分の期間中に増大する消費によって相殺されないことを確実にするために、一連のライフサイクル評価が実施されるよう勧告する。公衆に対する信頼性を確保するために、これらの調査は独立機関によって実施又は検証される必要がある。

R2 この分野でライフサイクル評価のための手法を確立するための研究の要求があるところでは、研究協議会によって、通常の敏感さをもって資金が提供されるよう勧告する。

■可能性ある健康、安全及び環境への有害影響

人工ナノ粒子及びナノチューブによって曝されるリスクについての証拠の欠如

R3 イギリス研究協議会(UK Research Councils)が、人工のナノ粒子及びナノチューブの曝露経路とともに、それらの毒性、疫学、残留性、及び生体蓄積性に関する研究を行い、人工環境中及び自然環境中でそれらを監視するための手法と計測技術を開発するために、学際的センター(多分、既存のいくつかの研究所からなる)を設立するよう勧告する。主要な役割は規制担当官と連絡を十分に取ることである。
研究センターがその研究成果をデータベースとして保持し、同様な情報を収集しているヨーロッパ及び国際的な機関と互いに情報交換するよう勧告する。
研究センターがナノ粒子及びナノチューブに関連する研究領域の全てを包含することは不可能なので、諮問委員会によって重要でありセンターではカバーされないと特定された領域に向けるために、基金のある部分が外部の研究グループに割り当てられるよう勧告する。

R4 ナノ粒子及びナノチューブの環境への影響についてもっと多くの知識が得られるまで、人工ナノ粒子及びナノチューブの環境への放出は可能な限り避けるよう勧告する。

R5 特に、現状及び潜在的な自由なナノ粒子及びナノチューブの環境への放出の二つの主要な源に関連して、下記を勧告する。
  1. 工場と研究試験所は人工ナノ粒子及びナノチューブをそれらが危険であるという前提で取り扱い、廃棄物の流れに入ることを低減又は除去するよう勧告する。

  2. 自由な(すなわち母材中に固定されていない)人工ナノ粒子の環境中での適用(例えば環境修復など)は、適切な研究が実施され、潜在的な利益の重みが潜在的なリスクに勝ることが証明されるまで、禁止されるよう勧告する。
R6 ナノ粒子及びナノチューブを含む製品と物質の革新と設計プロセスの統合された一部として、産業界は製品のライフサイクルを通じてこれらの要素放出のリスクを評価し、その情報を関連する規制当局に公開するよう勧告する。

R7 ピア・レビューされた論文の中には十分な毒物学的情報がないナノ技術のような新規で開発中の技術を活用する成分の安全性を検討する科学諮問委員会(欧州委員会の化粧品及び非食品に関する科学委員会(SCCNFP)、又はそれに替わる委員会を含む)の委任事項は、安全性評価に関連する全ての関連データ、及び、それらを得るために用いられた手法が公開されるべきことを要求するよう勧告する。

■規制に関する論点

R8 全ての関連する規制機関は、この報告書で示された危険から人と環境を守るために既存の規制が適切であるかどうか検討し、その検討結果と規制のギャップに対しどのように対処していくのかについての詳細を発表するよう勧告する。

R9 規制機関及び関連する諮問委員会は、どのような規制のギャップも適切な段階で特定できるよう、彼らの水平監視プログラム(horizon scanning programmes)の中にナノ技術の将来の適用を含めるよう勧告する。

勧告 R10 〜 R14 は、ある化学物質はナノ粒子又はナノチューブの形状ではより毒性が大きく、形状が大きい場合のテストに基づく安全性評価は、ナノ粒子形状の化学物質の安全性を推定するためには使用することができない−という我々の結論を一連の規制の事例研究に適用することに基づいている。

R10 ナノ粒子又はナノチューブの形状の化学物質は、既存の新規物質の届出(Notification of New Substances (NONS) )規制、及び REACH (現在 EU レベルで協議中であり、最終的には NONS に置き換わるであろう)の下に、新たな物質として扱われるよう勧告する。
ナノ粒子又はナノチューブの毒性に関するもっと多くの情報が入手可能となったなら、関連する規制機関が、これらの形状の物質に関するテストとテスト手法を規定する年間製造量の閾値が NONS 及び REACH の下で修正されるべきかどうかを検討するよう勧告する。

R11 職場
  1. 安全衛生庁(HSE)はナノ粒子への曝露の規制の適切性を見直し、特に、質量と数に基づく測定の相対的な優位性を検討するよう勧告する。あわせて、人工ナノ粒子への職業曝露レベルをより低く設定することを検討するよう勧告する。

  2. 安全衛生庁(HSE)、環境食糧地方事業省(DEFRA)、及び環境庁が、職場の内外における事故時の放出に関する彼らの現在の手順を見直すよう勧告する。

  3. 安全衛生庁(HSE)は、現在の手法が、ナノチューブやその他のナノ繊維が空気中に浮遊する試験所や職場における個人の曝露を評価し管理するために適切であるかどうか、及び、位相差光学顕微鏡より電子顕微鏡に基づく規制が必要かどうかを検討するよう勧告する。
R12 消費者製品:
  1. ナノ粒子形状の成分は、製品中での使用が認可される前に、関連する科学諮問機関による完全な安全評価を受けるよう勧告する。
    特に、産業側は、安全性に関する意見が得られるよう欧州委員会の化粧品及び非食品に関する科学委員会(SCCNFP)によって求められる微粒酸化亜鉛に関する追加的情報を合理的に実現可能な速さで提出するよう勧告する。

  2. 製造者は、彼らがナノ粒子の特性がより大きな形状のものと異なるかもしれないということをいかに考慮したかを示す、ナノ粒子を含む製品の安全性を評価するために使用された手法の詳細を公開するよう勧告する。

  3. 消費者製品の成分リストは人工ナノ粒子物質が加えられているという事実を特定するよう勧告する。

  4. 欧州委員会の新たな ”展開中及び新規に特定された健康リスクに関する諮問委員会” は、消費者製品中のナノ粒子の安全性の考慮を最優先するよう勧告する。

  5. 我々が特定した規制のギャップに照らし、欧州委員会は(イギリスの支援を受けて)ナノ粒子の消費者製品への導入に関し、現状の規制制度の適切性を見直すよう勧告する。この見直しの実施に当り、彼らは関連する科学安全諮問委員会から情報を与えられるべきである。
R13 保健省は、薬剤の潜在的有害影響の調査において微粒子サイズと化学的特性が考慮されることを確実にするために、新たな医療機器と薬剤のための規制を見直すよう勧告する。

R14 ナノ粒子とナノチューブを導入した製品で、end-of-life 規制のような拡大生産者責任制度に該当する製品の製造者は、人間と環境への曝露を最小にするために、これらの物質がどのように管理されるのかを示す手順書を公開することを要求されるよう勧告する。

R15 計測
  1. 空気中に浮遊する人工ナノ粒子を測定し監視するための手法を開発することを目指す研究者や規制担当官は自動車の排気ガスのような汚染源からの汚染ナノ粒子の測定に携わってる人々と連携をはかるよう勧告する。

  2. 通商産業省は、国家計測システム・プログラムの下での取り組みへの適切な資金供給を通じて規制担当官によって求められ、また産業における品質管理を行うための、ナノメートル・スケールでの測定の標準化を支援すること、及び、イギリスは計測の標準化における国際的な取り組みの最前線にいることを確実にするよう勧告する。

■社会的及び倫理的問題

R16 ”研究協議会”と”芸術人間性研究委員会(AHRB)”は、ナノ技術の発展から生ずると予期される社会的及び倫理的問題を調査するために領域間研究プログラムに資金を供給するよう勧告する。

R17 (ナノ技術のような)先端技術の倫理的及び社会的なかかわりについての考慮は、この分野で働く全ての研究学生と研究職員の公式訓練の一部とすべきこと、及び、この種の公式訓練は、研究協議会と 芸術人間性研究委員会(AHRB)の研究学生のためのスキル訓練要求(Skills Training Requirements for Research Students)” の共同声明にリストされるよう勧告する。

■関係者と公衆の対話

R18 研究協議会が、ナノ技術に対する公衆の態度に関するもっと広範な研究プログラムに資金を出して、我々の公衆の態度に関する予備調査を引き継ぐよう勧告する。これは、障害者のような社会の関心ある分野からのメンバーとともに、一般大衆からのメンバーを関与させて、もっと包括的で質的な作業を伴うべきであり、ナノ技術についての知識が広まるにつれて、どのような変化が見られるかを追跡するために意識調査が繰り返されるべきかもしれない。

R19 政府はナノ技術の発展の周辺についての公衆との対話に適切に資金をつけて取り組むよう勧告する。我々はこの対話を進めるために適切な多くの団体があることを認識している。

■ナノ技術の責任ある開発を確実にすること

R20 科学技術院(Office of Science and Technology)は独立したグループに2年及び5年の調査を委託し、その間にどのような措置が我々の勧告にとられたかを検証し、科学と工学がどのように発展し、これらの発展が倫理、社会、健康、環境、安全、及び規制にどのように関わったかを評価するするよう勧告する。このグループは、関連する関係者の団体からの代表者を含み、また彼らと協議すべきである。その報告書は公開されるべきである。

R21 主席科学顧問(Chief Scientific Advisor)は、新規及び展開中の技術に目を向け、できるだけ早い段階に潜在的な健康、安全、環境、社会、倫理、及び規制の問題が発生している領域を特定し、それらにどのように対処すべきかを助言するために、広範な関係者の代表を集めた一つのグループを組織するよう勧告する。





化学物質問題市民研究会
トップページに戻る