Annals Global Health (AGH) 2023年6月1日
彼らが知っていた悪魔:
PFAS 科学への産業界の影響に関する
化学文書分析

ナディア・ガベル、リサ・ベロ、トレイシー・J・ウッドラフ
情報源:Annals Global Health (AGH), 1 Jun 2023
The Devil they Knew:
Chemical Documents Analysis of
Industry Influence on PFAS Science

Nadia Gaber, University of California, San Francisco, United States
Lisa Bero, University of Colorado Anschutz Medical Campus,, United States
Tracey J. Woodruff, University of California, San Francisco, United States
https://annalsofglobalhealth.org/articles/10.5334/aogh.4013

Annals of Global Health は、グローバルヘルスのあらゆる側面に特化し、質の高い記事の
出版に特化した査読済みの完全にオープンアクセスのオンラインジャーナルであり、
ボストン大学のグローバル公衆衛生・公益プログラムによって支援されている。


抄訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2023年6月14日
更新日:2023年6月19日 追加
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/kaigai/kaigai_23/230601_AGH_The_Devil_they_
Knew_Chemical_Documents_Analysis_of_Industry_Influence_on_PFAS_Science.html

アブストラクト

背景:パーフルオロアルキル物質及びポリフルオロアルキル物質 (PFAS) は、広く使用されている化学物質の一種で、環境中に残留し、人間や動物の体内に蓄積するため、世界的な懸念が増大している。 PFAS は 1940 年代から商業的に生産されてきたが、その毒性は 1990 年代後半まで公的には確立されなかった。 この文書の目的は、この結果として生じる遅れを理解するために、PFAS に関する産業界の文書を評価し、公衆衛生の文献と比較することである。

方法:我々は、カリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)化学産業文書ライブラリーに保管されている、これまで機密だった産業界文書を検討し、企業による科学操作戦略が PFAS の製造業者によって使用されたかどうか、またどのように使用されたかを調査した。 我々は、確立された文書分析方法を使用して、研究の実施と出版に対する産業界の影響を評価するための演繹的なコードを開発した。 また、PFAS の健康への影響に関する科学的情報がいつ公開されたかを確認するために、標準的な検索戦略を使用した文献レビューも実施した。

結果: 我々が産業界文書をレビューしたところ、公衆衛生コミュニティより 40 年も前の 1970 年までに、企業は PFAS が「吸入すると毒性が高く、摂取すると中程度の毒性」であることを認識していた。 さらに、産業界は、科学と規制に影響を与えるために、タバコ、製薬、その他の産業界に共通することが示されているいくつかの戦略を使用した。最も顕著なのは、不利な研究を抑制し、世論を歪曲することであった。 この保存文書では、有利な研究に資金を提供したり、その結果を的を絞って広めたりしたという証拠は見つからなかった。

結論:工業用化学物質に関する産業界主導の研究における透明性の欠如は、法的、政治的、公衆衛生に重大な影響を及ぼす。 科学的研究結果や工業用化学物質の危険性に関する早期警告を抑制する産業界戦略を分析して暴露し、予防に役立てることができる。

キーワード:PFAS, chemical policy, environmental health, commercial determinants, industry documents, research ethics PFAS、化学物質政策、環境衛生、商業的決定要因、産業界文書。研究倫理


主要メッセージ

政策立案者への影響
  1. この論文は、化学産業界がどのようにしてPFAS の害悪の公表を遅らせ、世界中で数十億ドル(約数千億円)の健康被害と環境被害をもたらしたのかを分析している。

  2. 多くの国が、PFAS の生産を抑制するための法的及び立法措置を追求しているが、これはここで提示された証拠のタイムラインによって助けられる可能性がある。

  3. 化学毒性研究の成果は、研究課題の設計、研究への資金提供、有利な結果と不利な結果の公表を含め、公衆の健康を保護することに最善の利益をもたらすものでなければならない。
  4. 化学メーカーに対する法的和解には、産業界とその製品に対する透明性と説明責任を確保するために文書開示を含めるべきである。

  5. 公衆衛生と環境の政策立案者は、化学物質規制の予防原則に移行する必要がある。
一般への影響

 この論文は、「永遠の化学物質」とも呼ばれる PFAS の最大メーカーであるデュポンと 3M が保有していた以前の機密文書を調査する。 我々は、化学産業界がタバコ産業界の戦術を利用して、PFAS の毒性に対する一般の認識を遅らせ、その結果、PFAS の使用を管理する規制を遅らせた方法を示す。 PFAS は現在、住民及び環境中に遍在している。 消費者の意識は、有害性に関する公的に入手可能な研究を要求することで、より安全な製品を求める声を高めることができる。 世論の圧力は、より健康を保護する環境規制や化学物質規制を可決するよう議員に影響を与えることもできる。


背景

 パーフルオロアルキルケミカル及びポリフルオロアルキルケミカル (PFAS) は、撥油性と撥水性、耐温度性、摩擦低減をもたらす独特の化学的特性を持っている。 そのため、これらは 1940 年代以来、焦げ付き防止調理器具、布地処理、食品包装などの幅広い商業用途だけでなく、特に断熱材や消火剤などの軍事用途や産業用途でも使用されてきた[1]。 また、PFAS の化学的特性により、PFAS は環境と人体の両方で分解に対する耐性が高く、世界中の複数の環境媒体で発見され、米国、ヨーロッパ、中国の国民中で測定されている[2],[3],[4],[5],[6]。 段階的廃止後も暴露は続く。 米国では、2002 年に PFOS の製造と使用が段階的に廃止されたにもかかわらず、妊婦の 90% 以上が依然としてパーフルオロオクタン酸 (PFOA) 及びパーフルオロオクタンスルホン酸 (PFOS) に暴露されており [7]、2015 年末までに米国の製造業者は PFOA の排出と PFOA 含有製品を廃絶した[8]。

 既知の PFAS 変異体 12,034種のうちの 2種、PFOS と PFOA [9](以前は C8 として知られていた)は、さまざまな健康転帰に悪影響を与えることが示されている [1],[10],[11],[12]。 米国の 2 つの大手企業が、従来の PFAS と新興の PFAS の大部分を製造してきた。すなわち、スコッチガードのメーカーである 3M と、、デュポンとして知られるテフロンのメーカー E.I. du Pont de Nemours & Company である。 PFAS は長い間、生物学的に不活性であると考えられてきた[13]が、法的開示や調査報告により、PFAS を製造する企業が公衆衛生コミュニティよりずっと前に、PFAS が人間の健康と環境に及ぼす有害な影響を知っていたという証拠が明らかになった。ケマーズ(訳注:Chemours:チタニウム テクノロジー、サーマル & スペシャライズド ソリューションズ、アドバンスト パフォーマンス マテリアルズ、特殊化学品の各事業を通じて、化学の力を活用し、色彩豊かで可能性に満ちた、よりクリーンな世界を創造します。Chemours) の ウェブサイトでは、PTFE(訳注:ポリテトラフルオロエチレン:テトラフルオロエチレンの重合体でフッ素原子と炭素原子のみからなるフッ素樹脂。テフロン (Teflon) の商品名で知られる。ウィキペディア) は「事実上すべての化学物質に対して不活性であり、存在する中で最も低摩耗性の材料であると考えられている [14]」と依然として主張している。 1998年に起こされた最初の訴訟(テナント対デュポン)は 2001年に和解に至り、デュポン社が原告テナントの敷地内とオハイオ川に 7,100トン以上の PFOA で汚染された汚泥を投棄し、その化学物質が地面に浸透し、オハイオ川と地元の水源に流入したことが立証された[15]。 テナント側の法的証拠開示により、デュポンと 3M が 1976 年の時点で健康と環境への明確な影響を示す証拠を持っていたことが示された [15]。 この証拠に基づいて、2004 年に環境保護庁 (EPA) は、同社はこれらの化合物が有害であることを”知っていた、あるいは知っておくべきだった”にもかかわらず、PFOA に関する調査結果を開示しなかったことは、企業が製造し、加工し、又は商業的に流通させる化学物質に関する重大なリスクを報告することを義務付けた有害物質規制法 (TSCA) セクション 8(e) に違反したと主張して同社を追求した。 その結果、1,025万ドル(約14億3,500万円)に追加の環境プロジェクトに対する 620万ドル(約8億6,800万円)を加えた和解金は、当時の環境法に基づいて米国で得られた民事制裁金としては最高額であった [16]。 これは、デュポンが 2005 年に証券取引委員会 (SEC) への提出書類で開示した PFOA 又は C8 からの年間 10 億ドルの収益の 2% にも満たない [17]。 2018年、全米規模の有害不法行為訴訟が、PFAS にさらされた米国居住者に代わって、米国 10の州によって 3Mやデュポンを含む製造業者に対して起こされた。この集団が認定されれば、米国史上最大の集団訴訟となる [18], [19]。

 妊娠高血圧症候群、腎臓がん、精巣がん、潰瘍性大腸炎など、PFOA による人体への害は、ジャック W. リーチ他 対デュポンの訴訟(番号 01-C-608 W.Va.、ウッド郡巡回裁判所、2002年4月10日提訴)の和解合意の一環として義務付けられ資金提供により設立された C8 科学委員会の報告を受けた 2011 年まで公的には証明されなかった。[15],[19],[20],[21] 。 この調査結果による人身傷害の請求額は、現在までに 3,500 人以上に対して総額6億7,070万ドル(約940億円)に達している[22]。

 C8 科学委員会の調査結果に加えて、系統的レビューでは、PFOAへの発育上の暴露が胎児の発育を制限し[23]、脂質異常症(心血管への悪影響の危険因子)[12]と関連し、ワクチン反応の障害を含んで人間に対する「免疫上の危険」問題を引き起こす[24]という十分な証拠があることを示している。また不妊、早産、授乳の問題、思春期の遅れ、閉経の早期化、さまざまな代謝への影響など、人間の生殖と発達への影響を示唆する証拠も増えており[25],[26]、注意欠陥多動症[ADHD]、自閉症、統合失調症を含む神経学的及び行動的障害との関係も示唆されている [27],[28]。

 PFAS への暴露を世界的に規制するための一貫したアプローチはない。 例えば、米国では PFAS 化学物質に対する連邦法による強制可能な制限は確立されていない。2016年に EPAは、飲料水中の PFOA 及び PFOSへの生涯健康勧告(lifetime Health Advisory)暴露量を 70 ppt (ng/l)とする強制力のない勧告を発行した[26]。 2015 年 11 月の時点で、米国の 27 州で、水道システムにおける PFOA のおおよその安全レベルが 100 倍以上超えている[29],[30]。 EPA は、2023 年にパーフルオロオクタン酸 (PFOA) 及びパーフルオロオクタンスルホン酸 (PFOS) を含む 6 つの PFAS に対する国家第1種飲料水規制 (National Primary Drinking Water Regulations / NPDWR) 案を発表した [31]。 しかし、飲料水システムにおける PFAS のモニタリングは依然としてとらえどころのないままである。なぜなら、PFASを検査するための国家プログラムは 2015年に終了し、その後も数千の化学物質のうち数種類のみについてしか検査されておらず、10,000人以上にサービスを提供するシステムのみが レベルがしきい値を超えた場合にのみレポートすることが求められている。 その後の検査により、PFAS が米国の飲料水、地下水、雨水に広く存在することが判明した [32], [33]。 独立した科学者らは、この数値でも健康を守るには高すぎると主張し、1 ppt の制限を提案している[34]。 この証拠と進行中の研究を考慮して、米国では PFAS の使用と廃棄に対する規制の監視と法的介入が増加している。 2019年12月、米国国防権限法(NDAA - National Defense Authorization Act)に基づいて、172のパーフルオロアルキル物質及びポリフルオロアルキル物質が連邦有害物質放出目録(Toxics Release Inventory / TRI)に追加され、深刻な人間の健康及び/又は環境への危害を引き起こすことが知られている化学物質の監視が義務付けられた [35]。 2022年6月15日、EPA は PFOA と PFOS に関する暫定更新の飲料水健康勧告を発行し、2016年に発行された EPA の値をそれぞれ 0.004と0.020 ppt に引き下げた[36](訳注:米国環境保護庁(EPA)は2022年6月15日、PFAS に関するガイドラインを発表した。これまで水道水1リットルの含有量は PFOA・PFOS合算で70ナノグラム以下が安全性の目安とされてきたが、PFOS は 0.02ナノグラム、PFOA は 0.004ナノグラムに変更している。JETRO 2022年06月22日)。 米国の一部の州と世界のいくつかの選ばれた国は、食品と接触する材料、紙及び紙製の食品包装、及び消火泡への PFAS の使用を禁止している [4]。 現在、特定の培地中の総 PFAS を測定するための改良された方法の開発に向けた取り組みが行われている[4]。

 これまでのタバコ、食品、製薬、化学の各産業に関する研究では、産業側の研究の設計、実施、普及に対する影響が、特に米国市場において、有害な製品に関する公衆衛生の知識の形成や製品の安全基準の決定に強い役割を果たしていることが示されている[13],[37],[38],[39],[40],[41],[42]。 これらの産業界は、利益を最大化するために科学情報を操作する戦略を共有していることがわかっている。企業による情報操作に関する証拠の多くは、訴訟を通じて公開された、以前は機密だった産業界文書の分析から得られる[37]。この影響と、公衆衛生科学に対するその歪曲的な影響は、特に先進工業社会において、病気の主要な病因であると考えられるようになってきている[43],[44],[45]。 健康の商業的決定要因(訳注/参考:健康の商業的決定要因および衡平性に関する行動を呼びかけ/日本 WHO 協会)の一部としてそれを説明する文献が増えている[43],[44],[45]。

 この論文では、1) 化学メーカーらが PFAS とその人間の健康への影響について何を知っていたかを調査し、2) 健康への影響に関する公知の知識と比較して化学メーカーがそれをB>いつ知ったかを明らかにするために、これまでに秘密にされていた産業界文書を分析する。 また、科学の物語(science narrative)を操作するために使用される戦略も分析する。 我々は、タバコ産業や他の産業と同様に、PFAS の 2 大メーカー、デュポン (テフロンのメーカー) と 3M (スコッチガードのメーカー)は公衆衛生コミュニティよりずっと前から PFAS の危険性を認識しており、皆が製品の危険性について疑念を持つよう他の産業界が使用してきたのと同じ戦略の一部を使用していたのではないかと仮説を立てている [42]。 この小規模な収集資料に対する我々のレビューは、もっと多くの文書やデータが利用可能になったときに、学者らがその上に構築できる強固な枠組みを提供する。 我々の知る限り、PFAS の科学と規制への化学産業の影響を学術的に評価する際に化学産業の文書が使用されたのはこれが初めてである。


方法

 2020年9月から2020年10月にかけて、カリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)化学産業文書ライブラリー (CIDL) の特別コレクションに収蔵された PFAS 化学物質群に関する産業界文書を整理及び分析した。 CIDL は、公衆衛生に影響を与えるタバコ、食品、医薬品、化石燃料産業の文書を集めた大規模なライブラリーの一部であり、タバコ基本和解協定 (1998年)(訳注:1998 年に,46州の司法長官が,米国のたばこ会社の最大手 4社との基本和解合意(a Master Settlement Agreement)に署名した。この合意は、18歳未満の若者を標的としたたばこ広告を禁止している。/たばこ産業界との基本和解合意とたばこの雑誌広告(NEJM 日本国内版 Aug.16, 2001)) の重要文書の寄贈から、その種の世界最大規模の文書アーカイブのひとつに成長した[46]。 我々の 1番目の目的は、健康研究に関する報告書やコメントを内部文書と公的記録と比較し、相対的な時間軸を確立することであり、2番目の目的は、PFAS の有害性に関する公衆衛生上の知識を遅らせたり、覆い隠したりするための戦略を評価することであった。

枠組みと分析アプローチ

 産業界文書の検索に使用される方法については多くのことが書かれている[47],[48]が、文書を解釈するために使用される分析方法についてはあまり書かれていない。 研究者らは、歴史家や社会科学者らの間で広く使われている解釈手法を参考にしてきた。 これらには、演繹的推論[49]又は帰納的推論 [50] を通じて繰り返しのテーマを特定し、議論のためにグループ化する定性的手法が含まれる。 この論文では、科学操作の産業界戦略を詳述した文献、特に、 5つの産業界にわたる戦略を検討した、出版されているホワイト(White)とベロ(Bero)[37]の研究から演繹コードを採用した。利用可能な文書の本体は比較的小さいため、各文書を読んで、関心のあるコードと一致するかどうかを評価することができた。

データ

 この収集は、PFAS をめぐってデュポンを最初に訴えて勝訴した弁護士、ロバート・ビロット(Robert Bilott)による訴訟証拠開示(litigation discovery)を通じて行われた。文書は UCSF 化学産業文書ライブラリーと映画「The Devil We Know(我々が知っている悪魔)(訳注:ステファニー・ソエクティグ監督による 2018 年の調査ドキュメンタリー映画で、テフロンの製造に使用される主要成分であるパーフルオロオクタン酸 (PFOA、C8 としても知られる) による健康被害の疑惑とデュポン社の潜在的な責任に関するもの / Wikipedia英語版)」の制作者らに寄贈された[51]。 我々は、1961年から 2006年までに収集した 39件の文書をすべて調査した。
  1. 産業界と世間の知識の時間軸

     最初に、PFAS の毒性に関する公開された科学情報の文献レビューを実施した。 次の用語とブール演算子を使用して、1940 年から 2002 年の日付範囲で PubMed を検索した。すなわち、”PFAS OR PFOA OR PFOS OR Teflon OR PTFE OR “C8” OR APFO AND toxicity”である。これに対して 595 件の結果が返された。尚、2015 年まで PFAS は PFC(perfluorocarbon)又は PFAA(perfluoroalkyl acid) として参照されていた)。日付範囲の終わりとして 2002 年を使用したのは、PFAS による健康被害を主張するデュポン対リーチ訴訟が起された年であるためである。これは、C8 科学委員会とその後の公衆衛生研究の急激な増加につながった。 我々は PubMed(訳注:PubMed(パブメド)は生命科学や生物医学に関する参考文献や要約を掲載する MEDLINE などへの無料検索エンジンである。アメリカ国立衛生研究所のアメリカ国立医学図書館(NLM)が情報検索 Entrez システムの一部としてデータベースを運用している。ウィキペディア) を使用して出版物の種類ごとにスクリーニングし、調査結果を研究論文と系統的レビューに限定した。 このレビューにより、PFAS の開発時に特定の健康上の懸念がいつ研究されたのかが特定され、PFAS の健康への影響に関する一般の知識の歴史的年表を確立することができた。

  2. 産業界への影響力の戦略

     次に、PFAS に関する科学に影響を与えるために使用された産業界戦略の分析を実施した。ベロ(Bero)とホワイト(White)の研究[37]を利用して、PFAS 産業界で同じ慣行が出現するかどうかを確認するために研究者が以前に確立した産業界を超えた操作戦略から 6つのコードを推定した。 6 つの戦略は次のとおりである。(1)前もって決めた結果を得るためにリサーチクエスチョン(訳注:研究を定義し、研究を通してどのような答えを探すのか、方向性を定めるもの/エナゴ アカデミー)を操作する。(2)産業界の利益を支援する研究に資金を提供し、出版する。(3)不利な研究を抑制する。(4)研究に関する公的議論を歪曲する。(5)企業の利益にかなうように科学的基準を変更又は設定する。(6)科学的議論の通常のルートを迂回して、有利な研究を意思決定者や一般の人々に直接広める。 我々は、”リサーチクエスチョンの操作"を”リサーチアジェンダ(研究事項)に対する産業界の影響”に拡張した。これは、Fabbri、Lai、Grundy、Bero によって文献で確立されたより広い分類である [52]。 次に、本文を分析し、これらの戦略ごとに記号化した。 複数の記号が 1 つの本文に関連している可能性がある。 関連するがこれらの記号外にある場合は、「その他」の指定を使用したが、新しい (帰納的な) カテゴリを作成する必要はなかった。 分類を説明するために本文の抜粋を含めた。


結果

PFAS の暴露と危険性に関する産業界と公衆衛生の知識の時間軸

 我々の PubMed 検索では 595 件の結果が返された。 このうち、1980 年より前に出版されたのは 66 件のみであった (図 1)(訳注:図1 省略)。 比較すると、2002 年から 2020 年までに 2,500 以上の論文が発表された。

PFAS に関する公衆衛生の知識

 PFAS が使用されてから最初の 50年間、PFAS の毒性についてはほとんど公に知られていなかった。 2000 年頃までは、それらは生物学的に不活性であると考えられていた [53]。 図 2(訳注:図2 省略)に示すように、産業界では、健康への悪影響が公的調査結果として報告される少なくとも 21 年前に、複数の研究が行われていた。 図 3(訳注:図3 省略)は、PFAS の 5つの主要な健康への影響について産業界と一般の知識を追跡するために、この時間軸を 2020 年まで延長している。

 我々の調査対象の研究で最も初期のひとつである 1959 年の研究では、PTFE を含む新しいプラスチックの製造による潜在的な呼吸器及び皮膚毒性が調査された [54]。 同報告書は、この化合物で汚染されたタバコの喫煙に起因する”インフルエンザ様発作”の事例が職業文献で報告されていると指摘した。 PTFEに暴露されたラットの実験研究では、この化合物が 300℃以上に加熱されるとラットにとって致死的であることが示されたが、”他の臓器には異常は見つからなかった [55]”としている。

 1950 年代から 1970 年代にかけて、テフロンで汚染されたタバコに関連した労働者の病気に関するいくつかの症例及び横断的報告が発表された[55],[56],[57],[58]。 1961 年にカナダ医師会ジャーナルに掲載されたある論文[59] は、熱によるテフロンの分解の危険性について公然と議論する医師らからのいくつかの返答に拍車をかけた[60] 。 テフロンで汚染されたタバコを吸って現場で死亡したとされる米軍基地のある職員の事件も、デュポン社と空軍によって噂として争われていた[61]。 同様の発表は、1958年 3月にアメリカ空軍の監察総監室から、及び 1959年 1月のアメリカ海軍ニュースレターからも発信された [61]。 元の論文[59] の著者は撤回を発表し、喫煙によるものと混同したとしてテフロン吸入の呼吸器への危険性を軽視し、次のように述べている。”ユニオン・カーバイド社は、デュポン社の協力を得てさらなる調査を行った結果、昨年12月に’テフロンに起因する死亡例や永久的な傷害は発生していない。 ’死亡の噂はすべて誤りである’。” [59], [62]”。ハスケル研究所とデュポンの科学者ジョン・ザップ博士は、環境衛生アーカイブの 1962 年の書評で次のように書いている。”クラスとして、プラスチックと樹脂は、その大きな分子量と化学的不活性を理由に、人々が考えているほど健康と毒性の問題から免除されているわけではない[61]”。1965年の論文では、テフロンが「ポリマーヒューム熱の蔓延 [57]の原因であると主張した。 それでも、ほとんどの人がこれらの材料は安全で独特の有用性があると信じており [63]、研究はほとんど発表されなかった。

 1973年、ウズラとインコに対するテフロン熱分解製品の毒性試験により、テフロンでコーティングされたフライパンは 280℃に加熱されると鳥にとって致死的であることが判明した[64]。 この研究は、テフロン加工のフライパンが米国の消費者市場に導入されてから 10 年後に発表された [65]。 1980年に、3M社のメディカルディレクターが発表した職業監視研究では、3M社の工場労働者の血液中のフッ素化学物質の濃度が上昇していることが判明した[66]。 同社の科学者は”暴露による健康被害はない”と結論付けたが、労働者の血液中のフッ素化学物質の残留は新たな発見であり、その後の公衆衛生調査でさらに調査が進められた。

 1980 年代初頭、肝臓損傷、脂質代謝の変化、DNA 損傷、腫瘍発生率の増加を示す動物毒物学研究の発表数が増加した [67],[68],[69],[70],[71],[72],[73],[74],[75],[76]。 これらの発見に基づいて、1980年代後半の研究者らは、肝臓への影響には”不可逆的,[68],[73]”と提案した。 少なくとも 1990 年までは、放射標識された PFOA が薬物動態研究用に市販されていなかったため、研究は妨げられていた可能性がある [77]。 しかし、PFOA は主に血清中に蓄積し、ヒトでは半減期が長いことが 1980 年までに明らかになった[66] 。 しかし、1993年のコホート死亡率研究では肝疾患による死亡率の増加は見出されず[78]、職業的に暴露された男性を対象とした1996年の研究(3Mの資金提供)では、臨床的な肝毒性は見出されなかったものの、潜在性疾患を示唆する可能性のある肝酵素の異常が見つかった[79]。

 2000 年代初頭になって、哺乳類の毒物学研究が発生の結果に焦点を当てて、これらの化学物質に対する懸念を再燃させた。 2003年の研究では、妊娠期間を通じてPFOS に暴露されたラットは用量依存的な有害な影響を伴う新生児を出産した。ある研究では、高用量群(10 mg/kg)の個体は生まれつき青白く不活発で、1時間以内に死亡した。 より低い用量 (5 mg/kg) では、生まれたばかりの子犬は瀕死の状態になったが、8〜12 時間生存した。 これらの子孫の 95%以上は出生後最初の日を生き延びることができなかったが、1週間以上生きた子孫の超過死亡は記録されなかった[80],[81]。 PFAS の生殖及び発達への影響に関する広範な検討は他の場所で行われている [82]。

出版された産業界研究

 ラウら[53]によって報告されているように、 PFOS と PFOA の毒性学は、2003 年に EPA に提出された 3M 社の報告書で検討され、ダイエット中に(in the diet) 20 ppm という高用量で肝細胞腺腫の増加が示された。 1年間の暴露中止後にモニターされた被験者では、甲状腺濾胞細胞腺腫の増加が示されたが、その理由は依然として不明である[83]。 ラットとマウスでの短期研究では、両方の化合物がパーオキシソームの増殖を誘導することが示されたが、さまざまなアッセイではどちらも変異原性であるとは報告されていなかった。 内部研究によると、900mg/kgを 28日間投与したラットでは腎臓と肝臓の重量の増加が見られた[84]。 EPAには提出されているが他では発表されていない デュポンによる 2003年のコホート研究も、膀胱がんと腎臓がんでは標準化死亡率が上昇し、有意であることが示されている[85]。 2006年の後ろ向き研究でも、男性の膀胱がん、腎臓がん、肝臓がんの標準化死亡率が高いことが示されたが、統計的に有意だったのは糖尿病死亡率のみであった[86]。

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科学に影響を与える産業界戦略

 UCSF ライブラリーの PFAS コレクションでは、6 つの戦略分野のうち 4 分野において、科学と政策が産業界に与える影響を裏付ける文書を特定した (表1、及び以下に要約)(訳注:(表1は省略)。

リサーチクエスチョンに影響を与える
(訳注:リサーチクエスチョンとは研究を定義し、研究を通してどのような答えを探すのか、方向性を定めるもの/エナゴ

 このコレクションでは、企業の研究者らが PFAS に暴露された労働者の異常を特定したが、異常が見つからなくなるまで研究を繰り返し、再設計した 2 つの例を特定した。

 デュポン社の医療監視部門は 1978 年に、C8 にさらされた従業員の医療記録の調査を依頼された。 グループ内に”異常な健康上の問題は見つからなかった”ものの、デュポン社の産業医、Y.L. パワー( Y.L. Power)は、検査を受けた従業員 31 人のうち 60% で観察された”肝機能の境界線上昇の頻度に悩まされている”と報告している。 パワー博士はこれらを臨床的に重要であるとはみなしておらず、調査された記録の数が少ないため(31)、その結果が統計的に有効なものとはならないだろうと彼は指摘している[87]。

 1978年、パワー博士は、テフロンの近くで働く従業員の間で肝酵素値が”異常に高い割合”で上昇していることを報告し、これは他の場所で働く対照被験者よりもほぼ4倍高かった[88]。 報告書には非暴露労働者を含む内部対照グループが含まれていたが、それでも検査は”標準”検査室(ゼネラル・コンサルタント社)と契約検査室(アップジョン・ラボラトリー)の両方に送ることによって”再評価”された。 酵素の傾向は 2 つの研究室間で相関していたが、”正常”の範囲の定義は異なっていた。 パワー博士とデュポンは、より許容的な正常範囲を使用することを選択したため、デュポンは"C8に暴露された労働者に職業関連の健康上の問題を示す決定的な証拠はない[88]”と内部報告した。

有利な研究に資金を提供し、出版する

 我々のこの文書コレクションの調査では、この戦略の証拠は見つからなかった。 これについては、”議論”で改めて説明する。

不利な研究の抑制

 1961年から 1994年にわたる内部研究が特定され、デュポン社は内部の動物研究及び職業研究から PFAS 毒性の証拠を持っていたが、科学文献には公表しておらず、TSCA によって義務付けられている EPAへの研究結果の報告を怠っていたことが示された。これらの文書はすべて”機密”と記されており、ある場合には、同社幹部らが”このメモの破棄を望んでいる [95]”と明言した。

 テフロン社(訳注:デュポン社のことであると思われる)のポリケミカル研究開発部門からの 1961 年の報告書では、毒物学部長のドロシー・フッドがラットにおけるテフロン分散剤の毒性を評価し、肝臓の肥大が”毒性の最も敏感な兆候”であると認識されていることを発見した [89]。 その結果、テフロン素材には”低用量でラットの肝臓を大きくする能力”があることが判明した。 報告書は、これらすべての物質を”細心の注意を払って”取り扱うこと、”皮膚との接触を厳重に避けること”を推奨している。

 1970 年の内部情報要求では、ワシントン工場のフルオロカーボン部門の W.E. ヒルトンは、ハスケル研究所の研究でC8が”吸入すると非常に有毒であり、摂取すると中程度の毒性がある”ことがすでに判明していると指摘している[90]。ハスケル研究所は、その製品の健康への影響を研究するためにデュポンによって設立され、資金提供を受けており、毒物学的分析を行うためにデュポンのさまざまな部門から頻繁に委託されていた[103]。

 1979 年のデュポン社の非公開報告書では、ハスケル研究所(Haskell Laboratory)は化学物質 APFO (PFOA のアンモニウム塩) を使用した一連の動物実験を実施し、さまざまな毒性作用を発見した。 PFAS に暴露されたラットは、低用量で肝臓の肥大を示し、一部のラットには、その後最大 42日間持続する”角膜混濁及び潰瘍形成”が観察された。 ハスケル研究所は、これらの化学物質は”吸入すると非常に有毒”であると報告した。 また、この化学物質は 2 頭の犬に 450 mg の単回投与が行われたが、犬は摂取 2 日後に死亡し、「細胞損傷を示す」血漿酵素レベルの上昇を示した[91]。

 1980 年、デュポンと 3M の従業員関係部門は、従業員の妊娠に関する情報を求めて”妊娠結果アンケート”を実施した。 デュポン社の結果では、対象期間中の 8件の妊娠のうち、2人の赤ちゃんが先天異常を持って生まれたことが判明した。1人は目の欠陥と1つの鼻孔を持ち、もう1人は目と涙管に欠陥を持っていた。 3 人目の子供は臍帯血から検出可能な PFAS を検出した。 その他の異常は認められなかった。 これらの結果は公表されなかっただけでなく、世間一般の意見を歪曲する戦略[92]で議論されたように、従業員にも伝えられなかった。BR>
 1981 年の妊娠ラットにおける C8 暴露に関する 3M の追跡調査では、R.E.ステイプルズと チウ・タイサンは、”観察された胎児の目の変化は C8 によるものである”と認めた。 雄ラットの半減期7〜9日は、雌の減衰率が”はるかに高い”ことを示唆した 3Mの以前の研究と比較された。この文書には、企業による毒性情報の共有と、細胞損傷を示す社内研究を計画するためのハスケル研究所との相互調整について明確に記載されている[93]。

 1988年の内部報告書の中で、デュポン社のハスケル研究所は、1969年から1981年にわたる内部研究を引用して、化学物質 C8の危険な特質を明確に列挙し、”中程度の急性経口毒性”があり、吸入すると”非常に有毒”であると報告した。 ラットに低用量又は高用量の C8 食餌を与えた結果、”両方のグループで肝臓の変性、肝臓の肥大、肝酵素の増加”が生じた。 この報告書はまた、C8 が洗浄せずに目に暴露された場合に眼の損傷を引き起こすことも確認している。 経口及び経皮暴露に関する亜慢性研究は”肝臓に対するC8の影響を確認している”と述べており、査読済み文献からの唯一の引用も含まれている[67],[104]。

 1994年のデュポン社の報告書は、企業がそれまでに人間の血中における C8の半減期を1.5〜3年と確立していたが、”デュポン・ワシントン工場での肝機能の研究では、3M 労働者に健康への悪影響は見つからなかった”と要約している。それでも、C8 を製造する3M 施設では”前立腺がんの増加の可能性”が報告されていた[95]。

世間一般の意見を歪曲する

 妊娠中の従業員の健康状態と出産の結果に関する社内調査を受けて、デュポン社は女性従業員をその化学物質にさらされる区域の仕事から外すことを決定した。 上述したように、彼らは健康影響の調査結果を公表せず、従業員にも問題を伝えていなかった。 その代わりに、政策変更が有害事象への対応ではなく、予防措置であるかのように見せかけた。 1981年の従業員への連絡メモの中で、デュポン社は”ワシントン工場で C8 が使用されていた期間中、従業員が健康に悪影響を及ぼすレベルの C8 に暴露されたという既知の証拠はない”と書いた。 この 1981年4月文書の問答例文集には、”デュポン社では C8 によって引き起こされた先天異常の証拠はない。 3M の結果を踏まえて、さらに調査していく [97]”。これは 3M とデュポンが共有した 1980 年の連絡メモに続くもので、両社は”ほとんどすべての化学物質には、たとえ水であっても有毒になる用量レベルがある”と主張し、C8 は「食卓塩と同様に毒性が低い[96]”と宣言している。

 デュポン社はまた、意見広告の中で PFAS の毒性の重要性を軽視した。 1991 年の公開記者発表の草案中で、デュポン製造工場近くの地下水に PFAS が含まれている証拠に応えて、同社は、”デュポンとこの物質の製造業者である 3M 社による研究によれば、C8 には検出されたレベルで人間への既知の有毒性、又は健康への悪影響は存在しない”と繰り返している[98]。」

 デュポン社の社内弁護士であるバーナード・ライリーは、一連の電子メールの中で、スコッチガードは”環境中であまりにも残留しすぎ、我々の血中に入る[105]”ため、スコッチガードの製造を中止するという 3M の発表について論じている。 ライリーは、”工場は最初に公開する必要があることを認識している…公開が遅くても、しないよりよい[99]”と認めている。

 テネット裁判とリーチ裁判 (それぞれ 1998 年と 2002 年) の後、PFAS 汚染に対するメディアの注目が高まるにつれ、デュポンは EPA と協力して報道を管理しようと試みた。 デュポン社副社長のスーザン・スタルネックは、”緊急! EPA の行動が必要”と題した電子メールの中で、”我々は EPA に早急に(例えば明日の第一声で)次のことを言う必要がある”と書き、具体的な論点を2つ挙げている。 1. ”テフロンブランドの下に販売されている消費者製品は安全でる”、及び 2. ”さらに、現在までに、PFOA によって引き起こされることが知られている人体への健康への影響はない[100]”。

科学的基準を変更又は設定する

 デュポンは、環境規制当局、地方公共団体、及びその顧客が入手できる情報に対して大きな影響力を持っていました。 文書は、同社が独自の健康被害分析が十分であると断言することで、EPAから差し控えたPFAS暴露の範囲と人の健康リスクについて懸念する証拠を持っていたことを示している。

 デュポン社の 1991 年の C8 レビューでは、ワシントン工場の工場内及びその周辺地域における化学物質による汚染濃度と修復計画が列挙されている。 その毒性が明らかになった時点で、帯水層(aquifer)中のその存在は規制当局に報告され、現場からの排出は規制されていた。 1991年までに、3M は閾値限界値(Threshold Limit Value)を 100 ug/m3 に設定し、デュポンは米国政府産業衛生士会議 (ACGIH) の基準に一致する割り当て暴露限界値(Assigned Exposure Limit)を 10 ug/m3 に設定した。 それでもデュポン社は、”我々が入手した情報に基づいて健康被害は存在しない[101]”ため、EPA 通知は正当化されないと主張した。

 2000年、ウェストバージニア州リューベック公共サービス管区(LPSD)は、ワシントン工場で使用されている C8 を含む多数の PFAS 化学物質が飲料水から検出されたことを明らかにした。 LPSD は、”デュポン社は、デュポン社が定めた暴露ガイドラインが人間の健康を保護するものであるという確信を裏付ける毒性学的及び疫学的データを持っていると報告している[102]”と述べた。

対象を絞った宣伝

 入手可能なコレクションでは、この戦略の具体的な証拠は見つからなかった。 しかし、前述の部分では、規制基準に対する産業界の影響には、政策立案者への直接の情報伝達が含まれることを示している。


議論

 これらの産業界文書類のコレクションは、デュポンと 3M が毒物学的研究を共有し、公衆衛生コミュニティがそのような情報を入手できるようになるずっと前の 1970 年までに、C8 が吸入すると”高度な毒性”、摂取すると”中度の毒性”であることを知っていたことを示している。 1961 年から 1991 年の間に出版された文献はほとんどないが、これらの文書類のレビューにより、これがデュポンと 3M が化学物質の毒性に疑いを持ち始めた時期であることが示されている。

 これらの文書類は、同社が毒性に関する懸念を公表する前に、自社の従業員らの懸念にどのように対処したかを特にわかりやすく垣間見せてくれる。 1981年までに、デュポン社は出産適齢期の女性らを C8への暴露の可能性がある部署から外すことを決定したが、これは危害を秘密裏に認めたことに等しい。 同年、同社は、妊娠中の従業員の一部が流産に見舞われ、他の従業員らが以前に動物で見つかったのと同じ先天異常を持った子どもたちを出産したことを知った。 PFAS に起因する先天性欠損症は、産業界が知ってから 30 年以上経ってから初めて医学文献に報告された。 デュポン社の内部報告書類には、1994 年までに同社が”C8 を他の毒性の低い材料で置き換えることを評価する必要がある”と記載されている[95]。

 科学機関や規制当局に対する産業界の影響力は、公衆衛生を形作る重要な力であることが実証されている。 ベロとホワイトは、これらの戦略がタバコ、製薬、鉛、及びポリ塩化ビニル産業を含む産業界全体で一貫していることを示した (2010)[37]。 ここでは、デュポンと 3M が PFAS クラスの化学物質類に関して同じ戦略を使用しているという証拠を提供する。 UCSF 化学産業文書ライブラリーの PFAS コレクションを分析したところ、PFAS に関して、これらの産業の影響は、疑惑の醸成よりも沈黙の保持によって顕著であることがわかった。 使用された主な戦略は、不利な研究の抑制であり、これには、有害な証拠の非公表も含まれる。

 ここで提供される結果は、特に科学と規制へのタバコ会社の影響に関する数十年にわたる産業界文書類の研究の基礎に基づいて、歴史的文脈における PFAS の害に関する産業界の知識の主要な説明を示している。 この研究の限界は、分析に利用できる文書の数が少ないことである。 ただし、ここで適用される方法は定量的なレビューではなく戦術と戦略の論証に依存しているため、新しい文書が出現しても我々の発見は有効性を維持すると予想している[15]。 実際、より多くの文書が利用可能になり、将来の研究に重要な枠組みが提供されるにつれて、我々の発見は強化されると期待していいる。

 米国及び世界中で、化学政策の不備に関する進行中の調査と研究により、規制上の監視を最小限に抑える上での産業界の役割がますます指摘されている[106],[107],[108],[109],[110]。 実際、このコレクションの文書類のひとつに示されているように、それらの化学物質類について公にはほとんど知られていなかったため、それらの化学物質類への暴露が人間の健康にリスクを引き起こさなかったことを証明するために、公的機関はデュポンに依存した[102]。 大手化学製造会社は、大手タバコ会社(Big Tobacco)と同様に(訳注1)、自社製品が安全であるという国民の認識を維持しながら、自社製品の有害性の科学的証拠を抑制することで、既得の経済的利益を享受していた。 米国が化学政策に関して立証責任を産業界に移していないということは、我々が最初から公衆衛生を守るのではなく、彼らが知っていた悪魔を常に追いかけている可能性があることを意味している[109]。

 これらの戦略の範囲を調べるには、さらなる研究が必要である。 文書の公開は、産業界の影響力の戦略を理解し、それと戦うために、デュポン、3M、その他の PFAS 化学製造者らに対する進行中の訴訟における和解の重要な部分であるべきである。 公衆衛生のために、企業は独立した科学者らによって採用されることが増えているデータ共有とオープンサイエンス(訳注:研究者のような専門家だけでなく非専門家であっても、あらゆる人々が学術的研究や調査の成果やその他の発信される情報にアクセスしたり、研究活動に多様な方法で参加したりできるようにするさまざまな運動のことである。ウィキペディア)と同じ基準を求められる[111]。 遅延コスト・モデルは、この影響による壊滅的な社会的及び経済的影響を推定するのに役立つかもしれない。 科学者らは、化学物質の安全性データを評価する際に、研究インテグリティ(訳注:研究の国際化やオープン化に伴う新たなリスクに対して新たに確保が求められる、研究の健全性・公正性を意味します。この新たなリスクにより、開放性、透明性といった研究環境の基盤となる価値が損なわれる懸念や、研究者が意図せず利益相反・責務相反に陥る危険性が指摘されています。文部科学省)の原則を覆そうとする産業界の取り組みに注意を払う必要がある[112]。 この研究は、公衆衛生に対する産業界の影響に関する科学的研究に基づいており、UCSF 化学産業文書ライブラリーなどのアーカイブで一般に公開されている、より多くの文書の入手を呼びかけている。

謝辞
 著者らは、フォーマット、参照、校正に関して重要な支援を提供してくれた Courtney Cooper と Nicholas Chartres に感謝したいと思います。

資金調達情報
 この研究は JPB 財団とガードナー家慈善基金によって部分的に支援されました。

競合する利益
 著者らには、宣言すべき競合する利益はありません。


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訳注1:バコ会社の戦略(参考情報)

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化学物質問題市民研究会
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