ああう(悩ましい)。
元々私はLでもGでもBでもTでもない、けど「当事者」、という微妙な立ち位置なので感覚にズレがあるのはしょーがない。しょーがないんだけどさ。
今いるのがそれなりに大きい会社の関連会社で、それなりに大きい会社主導で多様性を認めましょう研修とかやらされるんですよ。で最近にわかにそれなりに大きい会社さんがLGBTに凝り出して(笑)、社内で大々的に、全社員に向けたLGBTとはなんぞや研修とか、アライになりましょう研修とか、管理者だけ集めて部下からLGBTをカミングアウトされた時のための心構え研修とか、6色虹の何か身に着けて理解あることをアピールしようぜとか提案しやがったり、……まあその……熱に浮かされたかのように押し寄せて来てるのですよ。色々と。
うん。まあ。やらないよりはいい。パートナーシップ条例ある所では証明書出せば家族関係の手当を同性カップルにも適用するようにしましょうとか、そういう制度ももちろんいい。というかそれは必要。「制度面」で不利益がなくなるような取り組みはあっていい。
難しいのは。
LGBT研修の中でイの一番に言われ、かつ何度も取り上げられるのが、パートナーについての言及。たとえば接客やる人で研修やらされた人だったら、似たような年代の同性2人で来店しても「兄弟」「姉妹」「ご友人」という決めつけの言い方をしてはいけない、みたいなことが、一種「対LGBTマニュアル」みたいになってたり…しますよね、多分。
お客様が「一緒に住んでる人」のことを、自分から「妻が」「夫が」とか言い出さない限り、パートナーが必ず異性であると決めつけてはならない、とか言われてますよね…多分。
ユーザーアンケートの性別欄は可能な限り男女以外の選択肢も用意しろ、とかも言われてますよね。きっと。
女性に見えるからって「この色は女性に人気なんですよ」ってピンク色薦めちゃいけません、とかも言われてますよね。きっと。
で接客じゃないお仕事の方も、たとえば会社の同僚などに、自分から開示していない人には「結婚は」「彼氏は/彼女は」みたいなことをむやみに訊ねないこと、とか。異性の恋人がいない人に対して「お前あっち(同性愛者)なのか」みたいなからかいをしてはいけません、とか。
そういう事柄が「対LGBTマニュアル」として「いらすとや」さんの素材をいっぱい貼ったパワーポイントで回って来たりするのを見ると、ちょっと微妙な気持ちになる(※「いらすとや」さんは悪くありません)。
………そういうことって、別に「対LGBT」に限ったことではないんじゃないか、と思うことまで、全部「対LGBT」で一緒くたにされている。
いや、もちろんいいことなんですけどね。こういうの。やらないよりやる方がいいんでしょうけどね。
でも、「だったら、LGBTじゃないことが確定している相手なら、結婚だの彼氏彼女だの言っても別にいいんだよな?」とか、「13人に1人かぁ、じゃあうちの担当は8人しかいないからこの中にはいないんだよな?」とかいう思考回路が時々透けて見える皆様がね……いる訳ですよね……特に「管理職」側の皆様に。
必要性は判ってる。判ってるだけにどうしていいかわかんなくて悶える。
LGBTの存在を意識すればするほど逆に、LGBTじゃなければ何してもいいという変な誤解がじーわじーわ広がっている感じがする。
どうやったら食い止められるんだろう。どうしたらいいのこれ。
おーい誰か偏見という名の油に効くオイルフェンス開発してくれーぎゃーす。
例えば男が好きな女の子だって、二次元しか愛せない人もいるよ。異性愛男子だって初音ミクが生涯の嫁と決めてる人もいるだろう。そもそも恋愛自体に積極的じゃない人もいる。草食系程度から、性嫌悪、あるいはAセク。
結婚はお子様はって話は、別にマイノリティな人じゃなくったって「辛い」人は多いはずだ。病気で子供が出来づらい男性、産めない女性、パートナーがそういう状態である人は自分に問題がなくてもそんな話を出されるたびにどんなに苦しいか。
例えば異性と結婚している人だって、必ずしも異性が恋愛やセックスの対象ではない場合もある。友情結婚ってやつよね。異性と結婚してるんだからノンケだろうとか迂闊に判断するのは間違いかも知れない。
あとXジェンダーも辛い。というかLGBT研修の割に、その存在に掠りもしない。こういうケースあーいうケースって列挙されながら、どれにも当てはまらず振り落とされ、セクマイ研修でありながら、誰からもお前らは理解されないって崖っぷちにぐいぐい追い遣る。容赦ない。
それ以前にそもそも、恋愛や結婚について過度に立ち入ること自体、環境型セクハラとして以前から問題視されていたのに。最近、そこに「対LGBT」目線が入り込んで、「LGBTがいるかも知れないから」いけません、にすり替えが起こってしまっている。それが本当にがっかりする。
そうじゃないんだって。LGBTがどうとかじゃないんだってば。
「対LGBTだから」、とかそういう言い方されると、性的マジョリティ(?)側さえも斜め上から火の粉がかかってしまう。
別にそれ「対LGBT」に限った話じゃないのよ。そういうことに無闇に立ち入られたくないっていうのはさ。「対LGBT」を防衛線に置かれると、そうじゃない人に対する意識が希薄になり過ぎてしまう。
特に、こういう偏見から抜け出せずにいる人たちにとって「LGBTじゃなければ気にしなくていい」という免罪符与えちゃってる(ように解釈され得る表現な)のはホントやめて欲しい。
かと言って……かと言って……どー表現すれば理解して貰えるのだろうか。恋愛結婚出産というのが「当たり前」としか思っていない前時代脳の持ち主に対して。異性と恋愛出来るんならセックスも結婚も出産も出来るってイコールでしかつながっていない連中の単細胞な恋愛教に対して。LGBTならLGBTでやっぱり恋愛もセックスも当然「する」ものだとか思い込んで譲らない連中に対して。
どんな対策も思いつかない……それもまたもやもやする。
パートナーシップ条例対策と、異装(男装/女装)あるいはTGの問題っていうのはあからさまに対策が必要ではあるんだけど、それはもっと、なんつーか、物凄く「即物的」な部分なんですよね。トイレをどうするか、更衣室をどうするか、そういう問題。その辺に対するケーススタディは厚くして、「どう接すればいいか」という人間関係部分についてはちょっとLGBTに寄り過ぎないで離して貰えないだろうかと考えてしまう。
男らしさ女らしさ恋愛結婚出産セックス。この辺りの話がセンシティブなのはLGBTだけの話じゃない。そんなのもう10年以上、耳にタコが出来る勢いで繰り返し繰り返し飽きるほど言われて来てる。環境型セクハラ、個の侵害、そんな単語を全く聞いたことがないという人はいないはずなのに(少なくともそれなりに大きな会社で管理職やっているならぱ)。
それが出来てればいい話なのに。それだけなのに。きちんと出来てさえいれば、対LGBTで改めて態度を変える必要なんかないのに。これっぽっちも、ありはしないのに。プライベート詮索せずに性別気にせずに単に仕事の上で「1人の人間として」評価をしていればいい話なのに。それだけなのに。それだけなのに。それだけなのに。(無限ループ)
LGBTを盾にされるのは違う。
そこを誤解されると、特に「個の侵害」系ハラスメントに対する意識が10年ぐらい巻き戻ってしまう。
ああうー!(悩ましいー!)。
…ただまあ。こんなことが悩ましいのは自分しかいないのもまた判っているつもりなのですけれどね。企業向けLGBT研修とやらはみんなこんなものなんだろうしなあ…。
固定リンク / 2017.3.18
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