もくじ 産官学連携とリエゾン戦略
  ――地域イノベーション政策におけるセクター超越型組織の政策過程

目次
 

論文要旨

論文要旨(english)

謝辞

 

第1章 問題領域の俯瞰――産官学連携と地域イノベーション ----01

 1.本研究の主題と仮説:なぜ「セクター超越型リエゾン」か
 2.今日的な産官学連携の要請――「社会的分業」か「商業化」か
 3.「地域」における産官学連携とは何か
 4.地域イノベーション政策の潮流――技術移転政策と地域政策の融合
  4−1.大学と技術移転政策
  4−2.地域コーディネーションの重要性
 5.本研究の概要:3つのステップによるアプローチ
 

第2章 日本の地域産官学連携の多様態 ----15

 1.日本の大学と産官学連携政策
  1−1.地方大学主導で始まった「共同研究センター」の設置
  1−2.共同研究件数優位の地方3大学にみる特性比較
  1−3.3地域の経済・産業の概況
 2.日本の地域産官学連携の政策志向
  2−1.産官学連携をめぐる日本的な制度的環境
  2−1.政策志向の4類型
 

第3章 セクター超越型組織の政策過程――岩手モデルの15年 ----35

 1.なぜ岩手モデルなのか
 2.岩手モデルの政策過程
  2−1.セクター超越型リエゾン志向の潜伏期
  2−2.戦略的リエゾン組織の政策過程
 3.岩手モデルの含意――多層性、多重性、公共性
  3−1.多層性、多重帰属性
  3−2.都市的な公共性

第4章 欧米にみるセクター超越型リエゾン志向の多様態 ----49

 1.多元主義の分水嶺――ケンブリッジとシリコンバレー
  1−1.自己組織化されるリエゾン機能
  1−2.90年代のケンブリッジとシリコンバレー
 2.「大学精神」「技術者精神」に埋め込まれたリエゾン志向――ドイツの場合
 3.制度を補完する隠れた「自発性」――第三のイタリアの場合
  3−1.深刻なセクター間障壁
  3−2.自発的な補完機能の「埋め込み」
 4.多国籍企業主導の衛星都市における「地域」――ソフィア・アンティポリス
 5.地域産官学連携の多様態
  5−1.「多様態」の含意
  5−2.地域の政策志向の類型化
  補論1:中央志向の必然性
  補論2:グローバル志向の多元性
  補論3:グローバル志向の成功例:TRONプロジェクト

第5章 セクター超越型リエゾン組織の今日的な意義 ----75

 1.「セクター超越型リエゾン戦略」存立の一般化モデル
  1−1.戦略組織モデルの比較検証
  1−2.発現過程、構造、具体的方策の一般条件
 2.モデルの含意――政策提言として
 3.モデルの拡張――将来の研究課題として
  3−1.理論的枠組みの掘り下げ:「制度」に対する「自己改革的な戦略」
  3−2.問題領域の拡張可能性
 

参照文献一覧

======謝辞=======

 
 本論文は、2001年春からの約1年半を中心とする、日本、欧州3ヵ国、のべ10地域への実地踏査、300名以上の産官学民関係者との接触および、その他の地域を含む資料・文献分析にもとづく成果である。21世紀の地域の持続的成長のために、そして、より自由で民主的な参加の制度の存立のために、独自の政策科学的アプローチを追求し、地域の価値となる政策提言を目指すものである。
 調査研究の過程で、たくさんの方々にお世話になった。まず私自身もその一員であるINS(岩手ネットワークシステム)の方々に感謝を贈りたい。佐藤利雄氏、小山康文氏の温かいご指導と励ましがなければ、今回の成果はなかっただろう。多くの方のお名前を上げたいが、余りにもたくさんの数に上るため、お2人を代表としてお許しいただきたい。
 石川県では奇遇にも、知己であった鈴木良次教授と再会することができ、心温まる歓待と激励をいただいた。15年前に先生とお会いしなければ、N.ウィーナーの『発明』を読んで、科学者の視点からの技術移転論に興味を抱くこともなかったかもしれない。鈴木先生と初めてお会いした当時は、まさに今日に至る産学連携の動向が、徐々に動き始めた頃だった。結果的にみれば、本論文はこの15年間の過程を辿るものとなった。
 大学院での指導教官である岡本義行教授には、際限なく発散しつづけて取り留めのない研究過程に、辛抱強くお付き合いいただいた。岡本先生の大らかな励ましなしに本論文はまとまりえなかった。ヨーロッパへの文部科学省科研費研究プロジェクト調査へ同行する機会をいただいたことが、本研究のテーマへ私を導く契機となった。原田誠司、小門裕幸、山本健兒の各先生には、各国各地域の地域経済の違い、企業家精神の違い、制度の違いについて多大な示唆をいただいた。相田利雄先生には中小企業の重要さを、増田正人先生には国際貿易のなかでのグローバルな政治構造を、絵所秀紀先生には政策ツールとしての経済学の可能性を、また岡本先生からは組織の経済学という刺激的な分野について、手ほどきをいただいた。諏訪康雄先生、堀川三郎先生、日本大学大学院のマイルズ・ドッド先生には、悩み苦しんでいる時に的確なヒントをいただいた。また時を同じくして学位論文に取り組む2人の友人、アナ・コロヴィック、松本敦則の両氏とは、日本と欧米の地域について議論し、苦しみや喜びを分かち合い、良い刺激を与え合った。これらの方々の肩の上に乗って本論文があることを、ここに記しておきたい。
2003年1月
田柳恵美子

 
 

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