フィールドスコープは超軽望遠鏡だ!  その2
思った時にすぐに見れ、旅にもお供! KOWA TSN-99A

  公開:2023年10月14日〜
更新:2022年10月25日 *ファインダー を追加

883から99Aへ

 TSN-883は幾度も書いている通り、口径約9cmのフローライト屈折望遠鏡、正立像、防水、本体+アイピースでわずか1.9s、超高性能で文句無し。これがモデルチェンジし、価格は10万円もアップ した。そして口径99mmの物が出て、こちらの価格は何と40万円越え。モデルチェンジと言っても、実質値上げのための戦略ではないのか、口径99mmは魅力だけど価格が高すぎる、883は優秀だし、と見向きもしなかった。しかし、実際に口径99mmのTSN-99Aを見てみると、やはり良い。しかし大きくなるし、重くなる 。

 と時が経って行ったが、こういったものは、いきなり変革が訪れるものである。きっかけは、2024年の皆既日食の計画を立てていた時。883は、アメリカオーストラリアの皆既日食で活躍したが、これはやはり99Aで見ると、きっと凄いんだろうなあと思ったら、99Aが気になって仕方がなくなった。また、883を天文ファンに紹介し、仲間内では皆購入して普及させた張本人としては99Aを試さずにどうする、と自問自答したら、えいっ とクリックしてしまった。アイピースはTE-11WZからTE-11WZII へモデルチェンジ。これこそ値上げのためのモデルチェンジで中身は同じではないのか、と思ったが、そこは ”毒を食らわば” でこれも注文してしまった。883+TE-11WZは20万円位で売れるから、差額を何とかしよう。 届いたのは、2023年6月。

 大きさの違いはご覧の通り。重さは1.5sから1.8sに。しかし、口径10cmのフローライト屈折ですぞ。ありえない! 私が天文に興味を持ち始めた1960年代後半は、口径9cmの屈折ですら天文台とか公共施設に収められている夢の大口径だった。例によってアド・トランクに専用ケースを頼もうか、と思ったが、とりあえず¥1600のプラスチック・ケースに入れた。で、実際にあれこれ見てみたら一段とクリアでコントラストも良く、そして明るく、もう元には戻れない。883は、もともとOnsession 18"のファインダーとして求めたものだ。今はObsession 25"のファインダーとして活躍していて、99Aに置換された 。

 普段は、トラベラー軽量カーボン三脚2型に Gitzo GHF2W 雲台を載せて使用。三脚+雲台の重さは2.0s、99A+TE-11WZ II は2.3sなので、架台込みの総重量は4.3sとなった。片手でも外に出して即見ることができる、お気軽・お手軽望遠鏡だ。

  口径 f 焦点距離 倍率 実視界 見掛視界 アイ・レリーフ 射出瞳径 備考
TSN-99A 99mm 6.06 600mm (推測)          
TE-17W     16.7mm 36 2.0° 72° 20mm 2.8mm  
TE-11WZII     20mm 30 2.0° 60° 17mm 3.3mm フィールドスコープ/双眼鏡ISO表示なら55°
      8.3mm 70 1.13° 79° 17mm 1.4mm フィールドスコープ/双眼鏡ISO表示なら69°
TE-11WZII with     12.5mm 48 1.3° 60° 17mm 2.1mm  
TSN-EX16 (1.6×)   5.2mm 112 0.7° 79° 17mm 0.9mm  

 倍率、実視野等はこの通りで 30〜70×、そしてエクステンダーを入れれば 112×まで上がる。TE-17Wは昔からの固定アイピースだが、とにかく見やすい。Gitzo GHF2W 雲台に載った状態は、この通り。

ケース

 884双眼を試みた時、B&W 5000をケースとしてあてがった。これに入れてみたらピッタリと収まり、復活利用となった。

 アイピースは丈が低いので、このままでは蓋を閉めて立てると中で踊ってしまう。そこで、スポンジを両面テープで接着して安定して収まるようにした。

 本体はケースの壁に接してしまうので、エアークッションで保護し、実際の収納はこんな感じ。ケースに収めた総重量は6.6sだ。

TE-11WZII

 さて、モデル・チェンジされたとするTE-WXII。ほとんど同じかと思うが、新しいせいかよりクリアに見える。アイピースには使用鏡筒での倍率が表示され、横にはQRコードのようなものが印刷されている。これは何かと問い合わせたら、「社内管理用QRコード」とのこと。


 

標準以外のアイピース(2023年10月24日)

  標準アイピースでも十分だが、やはりそれ以外のものも試したくなるのが “人情?” だ。TSN-883でも触れたが、再度掲載。広角は、EWV 32mm。今はMasuyama 32mmとなった。バレルを外し、ステップアップ・リングで装着。ステップアップ・リングは遊馬製作所で作ってくれる。まるで標準アイピースのように治まる。倍率は19倍、実視界は約3.3°。アイポイントは、ちょっと神経質になる。


  月を見るならエクステンダーでの最高倍率112×でも実視野は0.7°なので、まだまだ足りない。アダプター・リングを内側にねじ込むと、アメリカン・サイズのアイピースが差し込める。これも遊馬製作所で作ってくれる。45°より上に向ける時は アイピースを六角レンチでねじ止めしないとアイピースが落下するので注意。


 まずはPentax XWシリーズ。屋上から風景を眺めると、実に良い。左から20mm、5mm、3.5mm。3.5mmだと171×まで上がる。しか 〜し! 月、つまりは無限遠では合焦しなかったのである。バレル下面を削れば合焦するだろうけれど、そこまでする気は無い。残念無念! また傑作アイピース Pentax XO も合焦しなかった。

 それでは、とZeiss Abbe II の登場。これは全部合焦した。4mmだと150×まで上がり、エクステンダーに6mmだと160×まで上がる。エクステンダーに4mmだと見辛くなってきて、楽しくない。エクステンダーにアダプターでは面倒なので、お月見はZeiss Abbe II に決めた。以上、まとめると

  口径 f 焦点距離 倍率 実視界 見掛視界 アイ・レリーフ 射出瞳径 備考
TSN-99A 99mm 6.06 600mm (推測)          
EWV     32mm 19 *3.3° *62° 20mm 5.3mm *推測
TE-17W     16.7mm 36 2.0° 72° 20mm 2.8mm  
Zeiss Abbe II     4mm 150 0.29° 43°   0.7mm  
TE-11WZII 20mm 30 2.0° 60° 17mm 3.3mm フィールドスコープ/双眼鏡ISO表示なら55°
      8.3mm 70 1.13° 79° 17mm 1.4mm フィールドスコープ/双眼鏡ISO表示なら69°
TE-11WZII with     12.5mm 48 1.3° 60° 17mm 2.1mm  
TSN-EX16 (1.6×)   5.2mm 112 0.7° 79° 17mm 0.9mm  

 木星、土星は、Abbe II 4mmでも見えるけれどそれなりで、やはりそこは高性能の天体望遠鏡には敵わない。スコープはそこまでの使用を想定していない。 高倍率では、架台の性能が大きく関与するのは言うまでも無い。
 

ファインダー(2023年10月25日)

  小淵沢の望遠鏡オフ会で、このスコープと名だたる名望遠鏡とを比較した。標準アイピースの範疇では、けっこう互角で奮闘した。ただ、本体のレンズ・フードの溝だけでは天体を導入するのは難しい。導入までけっこう時間がかかってしまった。以前もファインダーを装着したことがあったが、もっと安定して装着させたい。今回はフードと本体の隙間に、Sky Surfer III の足をカットしたものを挟む形で行った。この方法だと、左右のブレがなくなる。台座にはゴム糸を通して本体に固定した。


 

   *続く....

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