西オーストラリア・ラーモンス皆既日食 2023年4月20日
太陽活動が活発なこの時期の皆既日食は、息をのむほど美しかった!

  公開:2023年4月26日〜
更新:2023年5月22日
  *反省と今後の展望 を追加


撮影:CANON EOS R5 + RF100-500mm F4.5-7.1 L IS USM (500mm)、固定撮影。3枚コンポジット

  双望会で皆既日食10数回の津村さんと話をしていたら、「時間の短い皆既日食が一番美しい。今までの一番は37秒やった」と。せっかく遠征するし、やはりできるだけ長い時間のものを体験したい、と思うけれど、今までの、タイ(1995年)、ザルツブルク(1999年)北硫黄島(2009年)アメリカ(2019年)の4回を顧みても、継続時間と美しさには相関は無かった。むしろ短めのタイ、ザルツブルクの方がショッキング・ピンクの彩層が強烈に印象に残っている。そりゃあそうだ!月の視直径が小さいほど彩層が見える訳だし、これは是が非でも行こう!

場所選び

 

 

 東ティモールは、無理。西オーストラリアのエクスマウスしかない。しかし、 レンタカーが借りれる主な近隣の空港といってもパース位しかなく、そこからはキャンピング・トレーラーとかで何日もかけて延々とドライブしなければならない。時間に余裕があるなら、毎日夜は最高の空を観望して、と素晴らしい旅行になるけれど、私にはそんな余裕は無く、居眠り運転も心配だ。

 いろいろ検索し たら、パース→カラサ便があり、そしてカラサ空港でレンタカーが借りれるのがわかった。そこで、この便を使い、カラサから530Kmドライブして現地入りすることにした。

 エクスマウスには州認定のキャンプ地や有料の観望スペースがいくつかあるけれど、皆既日食中心線より北側に外れているし、当日の天候次第では南北に移動する可能性もある。Google Mapsで見ると観望できそうな場所も沢山ありそうなので、前日現地入りしてロケハン、車中泊することにした。

機材

 今回の機材の目玉は Nikon WX 10×。アメリカの皆既日食でのCANON防振双眼鏡で見たコロナの美しさは空前絶後だった。そして現代最高の WX 10×で見たらどうなるなろう、と胸もときめく。さて、太陽観望用フィルターを用意しなければならない。既製品は高価だし、ぴったり合うものが無い。そこで、国際光器扱いのBaader社製のもので自作することにした。

 

 webでの作り方に倣って紙で作ってみたが、極めて脆弱。運搬中隙間ができて光が漏れる可能性があり危険だし、使い捨てのような感じになってしまった。そこで、本体には HAKUBA の金属製レンズフード55mmを装着し、同レンズフード58mmを逆向きに被せるようにすると、中の狭くなっている部分がストッパーとなってフィルター面は保護され、そしてソクッと着脱ができるのがわかった。黒色の部分は、植毛紙。


  
                                                      ハクバCEP-350 とGitzo GHF2W

 架台は、いつもは Gitzoの軽量カーボン3型 + G2380 だけれど、3型は撮影用に使用する。海外遠征には、いつもは同トラベラー軽量カーボン三脚1型 + G2180 だけれど、今回はこれを KowaのスコープTSN-883に使用する。WX双眼鏡には同トラベラー軽量カーボン三脚2型に、ハクバのカーボン延長ポールCEP-350を接続し、その上に Gitzo GHF2W 雲台を載せて観望することにした。GHF2Wは、G2180より重い機材に対応できる雲台だ。Kowa TSN-883 は、ズーム・アイピースTE-11WZ+エクステンダーで装備し、これは前回アメリカと同じ。

Manfrotto 405

 撮影は、今回はEOS R5に RF100-500mm F4.5-7.1 L IS USM で挑んだ。皆既1分なので、固定撮影でいいだろう、500mmなら、皆既中はずっと画角内に収まっているだろう、エクステンダー使うより500mmで撮って都合良くトリミングした方が画質は良さそう、 コロナが長く伸びていても大丈夫だし、とそこは撮影がメインではないので割り切った。エクリプス・ナビゲーターは4.5へと進化し、当然これを採用。ただし、前回アメリカで使用したノートパソコン :HP EliteBook G1は、スピードは遅いしバッテリーは全然持たない粗悪品で酷い目にあったが、Win用ノートPCは ASUS ExpertBook B9という14インチ/0.88sという優秀なものに替わっているので、そこのストレスは無くなった。なお今回は、自在に微調整のできるManfrotto ギア雲台 405を重いけれど持って行った。ボールヘッドは軽いけれど微調整には限界がある。

 エクリプス・ナビゲーター4.5 画面

 部分日食の経過は前回アメリカで撮っているので、第1接触からは、マニュアルで適宜撮影。エクリプス・ナビゲーター/PCは皆既45分前に電源を入れ(念のための電源バッテリー節約)、5分間隔で ISO:400、F8、1/10001/2503段階ブラケット・RAW + JPEG (L) 撮影。第2接触10秒前から、ISO:200、F8、1/500、JPEG(L)で15秒間バースト撮影(91枚)。その後、皆既・コロナ撮影は、定番なら ISO:200、F8、1/2000 1/1000, 1/500、RAW+JPEG(FINE) で繰り返しての撮影だけれど、今回は皆既時間が1分なので試みとして、第2接触 8秒後から、ISO400F8RAW + JPEG (L)で、1/20001/10001/5001/4001/3201/2501/2001/1601/1251/1001/801/601/501/401/301/251/201/151/131/101/81/61/51/40.512秒 という細かい27段階1順のみの撮影としてみた。その後、第3接触5秒前からISO:200、F8、1/500、JPEG(L)で15秒間バースト撮影(91枚、第2接触の時と同じ)、そして部分日食撮影は 第1接触の時と同様に5分間隔撮影、という設定とした。なお 、GPSは東京通商システムのGR-M02Uが最強らしいのでこれを購入し、エクリプス・ナビゲーターと連動させた。当初、連動しなかったけれど、アストロアーツ ・サポートがちゃんとバッチを送ってくれ、出発前に動作の確認が取れた。 

出発前に便が変更となる

 マイルでANA成田・パース便を取っていたが、これが欠便となってしまった。パース・カラサ便(カンタス)を生かすには、一旦シドニーから入国し、そこからパースに飛ぶ必要がある。シンガポール経由という便もあるが、マイルでのタダ便なので、贅沢は言えない。シドニー → パースは結構な距離と時間だ。何とかピースを埋め込んで、経路は確保。ところがその後、 帰るまでトラブル続きとなってしまった....

シドニーからカラサへ  〜ダメダメのカンタス航空

 シドニーには19時過ぎに到着。パース便は朝8時なので、空港のすぐ近くに宿泊し、いやな予感もあったので朝6時に空港へ。ところが既に空港は大混雑。搭乗手続きはマシンで自分でやらなけれなならないが、パース便とカラサ便が接続するモードが無く、荷物がパースまでしか行かない。で、マシンはそこら中にあるが、補助する係員が1人もいない。ようやく空港の端にあったカウンターを見付けて並び現状を訴えると、やはりマシンでやれ、と方法を指示。 再度行うも結局だめ。やっと職員1人を見つけて聞いたら、自分のメールを延々と打つばかりで “Won't be long.” とか言っててイライラさせるばかり。その後、言われた通りにやろうとしたけどだめ。もう1人がやって来て調べたら、どうやら連続してチケットを買わなかったら繋がらない、と。最初の成田・パース便が欠航となったしわ寄せが... でも国内便買い直すとキャンセル料と手数料がかかってしまうので、仕方が無いのだが... オマケに預け荷物が2.5sオーバーでAUS$50支払え、と。 手荷物は過剰満杯状態で2.5s負担できない。結局マシンでは全て手続きできず、後から登場してきた2人を加え、計4人ががりで方々に電話して1時間かかってようやく完了。アホか!

 で、今度、パース着が1時間遅れ。これではカラサへの乗り継ぎが50分しかない。これは荷物、絶対届かないなあ〜。まあ日食の前日まで届けばいいか、今日は月曜。と諦めていたら、荷物はきちんとピックアップできた。で、レンタカーAVIS行ったら、案内された車RAV4にカーナビが付いていない。 受付カウンターに戻ってGPS付いてないよ〜と訴えたら、ちょっと待って、探してくる、と。で来た車がランドクルーザーPRADO。ラッキー! もし普通に借りたらなら結構な値段だ。

 滞在先、カラサでは周囲を観光。 夜は、さっそく南天を見に郊外の光の少ない畑へ。ところが、あっという間に蚊の大群に襲われ、南十字座の二重星もジュエルボックスもくすんでいたので、早々に退散。刺されて3週間経つのに、まだ痒い! その後は日食前日の長距離ドライブのため体力温存。けっこうな時間をKindle読書で過ごした。


ど田舎、ではあるのだが、スーパーへ行くと、さすがその大きさに圧倒される

エクスマウスへ

Sky & Telescope のwebsite より引用

 日食前日、朝7時に出発。アメリカでは、ここぞとばかり取り締まりをやっていたので、相当気を付けて走行した。借りたランクルはディーゼルで、キーを入れたら走行1300Km可能、と表示が出ていた。さすがオーストラリア仕様。電気自動車はここでは使えない。でも中間地点・ナヌータラで休憩を兼ねて給油した。ちなみに軽油はDiselと表示されたスタンドから入れる。昼過ぎには到着。さっそくロケハンした。行く前にGoogle Mapsで目を付けていたポイントは、走行不能の路だったり、電線が視界をさまたげたりとかで却下。冒頭に書いた通り、州認定のキャンプ地や有料の観望スペースがいくつかあるけれど、皆既日食中心線より北側に外れている。そして皆既時間も5秒短い。また、今回は月の視直径が小さいので、できるだけ中心線直下で観望したい。

 エクスマウス周囲の観光をしながらあちこち走り回った結果、皆既日食帯中心線直下の海岸・ラーモンスが赤い砂埃が無く、人もほとんどいなかったのでここを選択。海岸線を少し走って奥へ行き、ここに車中泊した。ランクルなので、海岸線なんて何のその。夜、南天の空を楽しむ予定だったが、雲もありシーイングも良くない。 スコープではなく、ほとんどWXで空の散歩となった。イータ・カリーナを視野に入れれば、美しい散開星団:南のプレアデス、NGC3532が同一視野。少し動かせばNGC3114が見える。やっぱりこれは双眼鏡というより小型の双眼望遠鏡だ。そして南天オールスターズを流した後、 スコープで見忘れていた小惑星、ケレス、パラス、ヘーベを確認し、あっさりと終了。昼は暑かったが、夜はぐんぐん冷えた 。しかしこれは予想通りで、適度な防寒服を用意していて正解。


 

 

 

 朝、ほぼ雲一つない快晴。天気予報は今日だけ晴れで、他は晴れたり曇ったり。私は超晴れ男で、ハワイ遠征の時も、観望した4日間だけ快晴で他は曇り。台風が近づいてきているというのに 台風が反れて、接岸率が半分以下という青ヶ島に上陸したり、と歩く高気圧男の面目躍如。今迄の皆既日食は4回とも快晴だった。

 少しずつ準備を始めたが、徐々に物凄い海風が吹き荒れてきた。おまけに満潮も重なり、海の飛沫まで飛んで来る。PCは車の陰に隠れるように移動し、太陽を見る時以外は、風向きと反対側に先を向けていた。スコープの像は風でブレブレだったので、エクステンダーは外した。 従って倍率は、40〜96×から25〜60×へ。観望の友は、定番eclipse。


パソコンの日よけは、ヨドバシから届く段ボール箱を利用。捨てて帰れる。

ラーモンスの皆既日食

 10時33分

 強烈な海風には参ったが、皆既日食の時は昼なので 収まるでしょう、と楽観。エクスマウスの沖には客船が2隻。移動できるんだからもっと南に来れば良いのに。10時4分20秒、第1接触。真上に近い所から欠けていった。黒点多数。 カメラは、内蔵水準器で水平を保つよう時々補正。徐々に食が進行していくと、濃いサングラスをかけた時のように、光はあるのに暗い、という不思議な光景となっていく。第2接触前には、全周夕焼けになっている。 急に虫が鳴きだした。そしていいよだ。皆既日食1分前、双眼鏡とスコープのフィルターを外す。30秒前、望遠レンズのフィルターを外す。


動画:EOS R8 + RF15-35mm F2.8 IS USM からのキャプチャー

 11時29分30秒、ダイヤモンドリング! 毎回血が逆流するような緊張と興奮が襲ってくる。そして「お〜っ、おー、キャー」の叫び声。何と神々しい光景だろう。さっそくWXに目をやった。太い柱のようなプロミネンスがおっ立っている! それは、いつも見慣れたHαの赤く着色されたものではなく、皆既日食の時にしか見られない彩層のショッキング・ピンクのそれと正しく同じものであった。てっぺんにはアーチを描いているものもあり、ちぎれて飛び散っているものまである。そして、全周がコロナ! また、一部光球面の白色の部分が少しだけ見え、ちょっと緊張が走った。その分、そこの彩層が見えない。これは初体験、月の視直径が小さいせいか。WXで見るコロナの流線も美しい。磁力線の流れがはっきりと描出されている。そしてスコープでプロミネンスを拡大して見た。しかし、拡大すのがもったいない位、全周コロナなのだ。そしてベイリービーズ〜ダイヤモンドリング。短くも、それはそれは美しい時。これは夢か幻か....



 ダイヤモンド・リングとコロナ強調

 光と共に暖かさも戻ってくる。そして非現実的世界から、徐々に日常に戻っていく。ああ、終わってしまった.... 普通なら、第4接触まできっちり楽しむのだが、18時にweb会議があるのと明日朝帰国なので、日食渋滞をさけるために結構早めに切り上げた。何せエクスマウス〜パースは途中まで一本道なので、1台遅い車があると、金魚のフン状態になるのが容易に予想される。さて、海岸から幹線道路に出る道は、所狭しと車が駐車していた。四駆借りといて良かった!

オーストラリアの道

 日本だと530Kmも走るとなると気が滅入るが、海外だと風景が全く違うので、これが以外と飽きない。オーストラリアなんて同じような風景が続いているんじゃないの?とお思いの貴殿に。

 (風景編)


突然交差する川が美しい。赤い砂と緑の木々、青空と川。車を停めて、散策したくなる程。今回は時間が無く、残念。

赤い大地に生える草。コントラストがいい。   乱立する巨大な蟻塚。ナミビアでも見た

削られて残った?

 (道路編)


ブレーキ痕は、動物の飛び出し?そこら中にある。牛だと車が大破するので注意。 緊急用滑走路、と表示された道路もあった。走っていると、離陸しそうな錯覚に。

まっ平な土地なので、洪水注意が至る所に。スケールも設置されている。

 (車編)


ロード・トレインと呼ばれる巨大なトレーラー。3〜4連結され、まさに列車だ。
頭に回る警告灯、横に螢光のストライプ等々で、最初警察車両かと思いきや、レンタカーだった。

 (生活編 〜オーストラリアあるある)

 

 

  1. コンセントにスイッチが付いている。日本ではスイッチは上に上げるとONだけれど、オーストラリアでは逆、下げるとON。うっかるすると、携帯を充電したつもりが、朝されていない場合も。オーディオマニアは、どうしているのだろう? オーディオ用コンセントはあるのかな?

  2. 写真は掲載できないけど、食器を洗剤で洗った後は水ですすがず、泡だらけのままでラックにしまって終わり。洗剤を食べているような....

 3. 裸足で歩く人達がそこそこいる(特に南。白人)。彼らは、床がビタビタに濡れているトイレの床でも躊躇なく裸足で入る。靴でもひるむような床の状態でも。

 

帰路〜トラブルの山!


乾杯!は、当然コロナ・ビール。
こんなに汚れていた。というか、汚れが付いた状態を維持して帰り、きれいにクリーニング。

 さあ、安全に帰るまでが日食だ。安全運転で無事ホテルに戻り、海風や波飛沫を浴びた機材を丁寧にクリーニング。荷造りして、翌早朝、相当ゆとりを持って空港へ。レンタカーも無事返却し、チェックイン、そして最初の便:カラサ→パースは、ほぼ問題無くOK。

 さあ、シドニー行きだ、と乗り込んだが、出発時刻を45分過ぎても機体は滑走路から動かない。どうなってんだ? 結局、行きと同じく1時間遅れてシドニー着。乗り継ぎ時間はもともと2時間15分あったのだが、1時間程しかない。そして一旦荷物を受け取って国際線ターミナルでチャックインし、荷物を預け、出国手続きをしなければならない。さあ、案の定、荷物が出て来ない! メールには、カラサで滞在したホテルから、お前はホテル代を支払っていない。払わないと警察に通報するぞ、とメール! 意味不明。20分後、ようやく荷物が出てきて国際ターミナルへ。空港の左端に巡回バス停があるよ、と聞いていたので走って向かうと、それらしき物が、無い! 待ってられない。電車は、と探すと真反対の右端に。荷物を抱えて走って階段降りて、電車に乗ろうとすると、改札があり切符を買わなければならない。カードで購入したら、切符が出て来ない! 職員つかまえて再発行してもらって、国際線ターミナルへ。頭の中は、「私はいつも運がいい。何とかなる!」を言いきかせて反芻し、いざ、カウンターへ。

 「お客様、4分前に締め切りました」、「え〜、何とかなりませんか?」、「もうANAの職員もいないので、電話してみて下さい」、だって夜8時半。電話した何か所は全部業務終了の無機質な応答.... 最終便なのか、カウンターどころか、ロビーにも人がどんどんいなくなり、一部 照明も落とされている。さあ、どうする!?

旅はゲーム

 国際線への乗り継ぎ。通常は3時間みよ、というのが一般的な案内。しかし、けっこう海外へ行っていると、まあ2時間少々あれば、と慣れっこになっていた。しかし相手はカンタスであるのを忘れていた。以前、カンタスのマイルを使ってJALの国内便を取っていて、日程の変更をしようとしたら、web上で出来ない。しかもマイル関係は日本語表示の日本のsiteでは一切手続きできず、本国のsiteで行わなければならない。で、本国siteでも出来ないので、電話をしようとしたら、週3日程しかオフィスが開いていない。しかも繋がらない。日程を変更するのに、何日も、何回も電話しなければならず、今後はできるだけカンタスは止めようと思ってはいた。が、オーストラリア内は、カンタスを使うしかない。で、今回。今まで最もいい加減でどうしようもない航空会社はイベリア航空だったけれど(この時も日本に帰れず、アリタリア航空に助けてもらった)、やはり遅延をもっと考慮すべきだった。でも、この便じゃないと、1日遅れの成田便なので、まあ仕方のない選択だったかなあ。


チリとボリビアの国境。四駆車が100台位並ぶ。ほとんどがランクル。

 世界50各国、同一国にも多く旅していると、まあ、様々なトラブルに遭遇する。その時、持っているギアと頭脳で、どう乗り切るか? まるでゲームのようだ。チリからボリビアの国境越えの時なんて、ボリビアのツアー車が来ていない、携帯の電波は立たない、WiFiも繋がらない、チリとボリビアのツアー会社同士も連絡が取れない、“国境で置き去り?” なんてこともあったし。今回は幸い、携帯もあるしWiFiも繋がる。
 マイルで取った便だったけれど、これで再度予約なんてしている余裕はない。どの便で一番早く帰国できるのか検索。本日の便は無く、翌朝のJAL便だと、何とか同日中に帰れるのがわかった。さあ、売り切れる前に便を購入しないと。と焦って購入したら、後ろの中央の8席位ががら空き。これなら真横になって寝れるぞ、と少し喜ぶ。空港の隣にホテルがあり空室があったので宿泊。でも3.3万円/泊は高いなあ。で、ホテル入ったら、スーツケースが破損しているのに気づいた。まあ、これならパーツを購入してカチッと入れれば直ぐに直るけど。

  さて、仕事先やら何やら連絡しまくって、次は宿の支払い問題。私はいつもBooking.comを使っているけど、ここの登録カードの期限が切れている、とメール。そんな馬鹿な。他のホテルもオーストラリア国内も全く問題無く使ってきたのに。もちろんBooking.comのカード期限も2025年まで有効となっている。でsite上で問い合わせると無限ループになって、それ以上問い合わせができないようになっていてダメ。唯一の電話は、本社のあるオランダだけ。当然応答は無い。以前は24時間対応の日本の支社もあったように記憶しているけど、コロナで閉鎖か。ホテルには事情の説明をメールしたが、日本の警察に連絡する、とか、まあ何て短気な。帰国してまた問い合わせたけど、現地でカードで支払って下さい、とか驚くような返事が来て... ホテルはPayPal も受け付けないとか言っているので、メールでカード番号の8ケタ連絡して、最後の4ケタを電話で伝え、さらにカード会社にこれを落とすよう連絡して、これは一件落着(と思う)。家内に電話したら、「何でもっとゆとりを取って予定を組まなかったの? 「だって半日でも仕事の穴を開けたくなくて」 「最初から休むより、結果的に一番迷惑な休み方じゃないの。」 「はい、その通りです」

 しかし気になるのは、Booking.com のwebsiteの劣化だ。IDを入れると「登録が無い」とか、最近挙動が相当変になってきている。連携しているレンタカー.com のsiteは仕組みが悪すぎて幾度もトラブったので、もうこれを使うことは無いけれど、このsiteを作っている人がBooking.com のsiteにも関わってきているのでは、と感じる。ダメさの挙動が同じなのだ。もともと便利な会社なので(国内のホテルだって安く押さえられる)、復活を望む!

 帰国便、JALのエコノミー・クラスで出たワイン Double Oの白が最高に美味しい! 赤は全く好みではないので、白は少し買いだめしようかな?

すべてはうまくいかなくても

  私は運が良い。実際にありえない強運もあるし、その代償か、地獄へも何度か落ちた。私が運が良い、と思うのは、例え望まない結果の方にころがったとしても、結果的にその方が良かった、運が良かったと思っているので(実際にその方が良かったことも度々)、「運が良い」のだ。皆既日食は大成功、大変に運も良かったが、最後は、間に合わなかった便が墜落した訳でもないし、やはりこれはアンラッキー。まあ将来、もっと大きな穴を開けないための教訓だな、と反省。

 さて、シドニーの空港の隣のホテルで、佐野元春 「すべててはうまくいかなくても」 が頭の中で鳴って慰めてくれた。

    夜明けに君が描いた
    地図のかけらに
    探し続けた答えが
    落ちてくる夜

 何て詩人なのだろう。実は、とあることから彼を知ったのはずっと最近で、日韓ワールドカップの開催された2002年頃だ。といっても、もう20年が経ってしまった。そういえばその頃、パリからコペンハーゲンに行く時大雪で空港が閉鎖となり、8時間程空港に閉じ込められたことがあった。滑走路にしんしんと降り積もる雪を見ていた時に頭の中で鳴ったのが、やはり佐野元春 「雪、あぁ世界は美しい」。延々と雪を見続け、そしてこの先が見えず、そして心に滲みる音楽で、何と素晴らしい時間だったことか.....

現像

 私は眼視派である。写真を撮る時間があったら、見ていたい。写真は名人が沢山いて、別に私が撮ったところで、どってことはない。しかし、皆既日食はPCで自動撮影ができるので、今回少しまじめに取り組んでみた。ところが、写真のテクニックとは、ほとんど現像テクニックのようなものなので、今回そのツケが回ってきた。初めてステラ・イメージ9.0をガイドブック片手にあれこれやってみたのだが、最初はさっぱりわからない。次第に様々な画像が捻出できるようになってきたら、あまりに多種多様で、どれにしようかと未だに迷っている。冒頭の写真は、今回の目玉、全周プロミネンスにフォーカスを当てたもの。10数枚候補があって、本当は拡大しないとわからないのだけれど、サムネイルを掲載。




 
などなど。

 今、2019年アメリカ皆既日食の写真を見ると、ダメだこりゃあ、と思わずつぶやいた。やはり修練は必要だ!

反省と今後の展望

 機材について: 海風が強くスコープのエクステンダーを外したが、皆既日食前には風は収まっていたので、これは装着すべきだった。そしてショッキング・ピンクのプロミネンスをもっと拡大して見るべきだった。次回は、スコープの微振動を抑えるため、架台をWX用と入れ替える予定だ。つまり、スコープは Gitzoトラベラー軽量カーボン三脚2型 .+ GHF2W 雲台に、WXは同三脚1型 + ハクバ延長ポールCEP-350 + G2380雲台へ。

 撮影について: 今回はEOS R5に RF100-500mm F4.5-7.1 L IS USM / 500mm固定撮影だった。皆既1分だし、ステライメージによる位置合わせができるから、と割り切ったが、それでも位置はそこそこずれている。次回はポタ赤を使用してきちんと追尾してみようと思う。ポタ赤が500mm、さらに1.4×エクステンダーを装着した700mm F10に対応できるかどうかは、事前のテスト撮影での検証が必要だ。
 また、今回は恐ろしく細かい露出ステップで撮影したが、後半の露光多めのステップはそこまでは必要ないと思えたので、次回はそこは従来通りのステップにする予定だ。動画は、今回 RF 15-35mm F2.8 L IS USM /15mm + R8で撮ったが、もう少し画角があった方が良かった。これは、Sigma 14mm F1.8 DG HSMにしよう。GoPro MAXでも本影錐の移動を撮ろうと試みたが、太陽周囲に盛大なゴーストが発生して全く興覚めのクオリティだった。次回は、Sigma + R8に任せるか。
 メッセージ紙に穴を開けて、部分日食の欠けた太陽を撮ったのだが、開けた穴が小さすぎてしょぼかった(今回掲載見送り)。次回はもう少し穴を大きく、そして様々な大きさの穴を開けたものを用意しよう。

シャドーバンドについて: 今回は皆既時間が短くそちらに集中したので、シャドーバンドは確認できなかった。前回のアメリカでも確認できなかった。その前の3回はなかなかのものを確認。次回、2024年のアメリカでは皆既4分なので、落ち着いて確認しようと思う。

次の遠征: 次は2024年4月8日。メキシコのトレオンは好条件だけれど、世界有数の治安の悪い都市だ。個人で行ったらカメラとか盗られそうだし、ツアーなら高価格、長期日程で無理。私はダラスの郊外で体験する予定だ。短期日程で行けるし、条件も良い。既にマイルで便は確保していて、 格安のモーテルも予約済み。やる気は満々だけれど、この先何があるかわからないので、過度な期待はせず淡々と準備を整えようと思う。
 その次は、2026年8月12日、グリーンランド。美しいアイスランドには行った事はあるけれど、グリーンランドはまだ。行くのは大変だが、是非行ってみたい。その次は2027年8月2日、アフリカ〜サウジアラビア。 エジプトは、以前行ってかなり嫌な思いをしたのでパス。サウジには行った事が無いので、これは行ってみたい。その次は2028年7月22日、オーストラリア。これは是非望遠鏡持参で行ってみたい。でも冬だなあ。しかしながら、これだけ続くのはちょっと珍しい。これからいくつ体験できるだろうか? まもなく66歳なので、健康は大丈夫なのだろうか? 世界情勢はどうなっているのだろうか.....

 毎回書いているけれど、

何という偶然! 地球が誕生して間もない455千万年程前、 火星ほどの大きさの天体が地球に絶妙な角度で斜めから衝突して月が生まれ、 そして長い時間をかけて現在の軌道に落ち着き、その距離は太陽と地球との距離の1/400、月の大きさは太陽の1/400。つまり、太陽と月の見かけの大きさはほぼ同じになった。地球の大きさからすると極めて巨大な衛星で(ちなみに、冥王星は月よりも一回り以上小さい)、もし月がなかったら、地球の自転周期は8時間ほどで、時速300km以上の暴風を伴った台風が、数年〜数百年も続くそうだ。もし生命が誕生したとしても 、月が無かったら地球に隕石が大量に降り注ぎ、すぐに絶滅してしまうかもしれない。海の干潮があるからこそ豊かな生命体系が生まれ、今の地球があるのだ。そして、たまたま月が太陽の前をピン・ポイントでぴたりと通り過ぎた時に起こる皆既日食。部分日食も金環日食も興味深いが、皆既日食は全くの別物だ。全身、六感で受ける感動が、あまりにも強烈なのだ。宇宙に無数にある惑星。地球のような幸運な惑星は、どの位あるのだろう。昔は地球のような惑星は それこそ無限にあり、当然地球外生命も数えきれない程あると思っていたが、宇宙を知れば知る程、地球は奇跡の惑星だと思う。それなのに、 今の世は利己を押し通す劣悪な政治家が多すぎて、もっと宇宙的視点から勉強せよ!と言いたい。

   
  続く!

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