■衣浦口駅第4展示室 -愛知の鉄道100周年、SL一世紀号-

(注) 拡大画像はJava Script を使用しています。ポップアップ自動カットを停止してご覧下さい。


このページは碧電開業当初の頃からありましたが、写真は僅か3コマでした。徐々に追加していく考えでしたが、手つかずのままになっていました。2016年5月は運転から30年に当たります。この機会に9コマを追加します。(2016.5.2)

●地元にSLが走る!

武豊線に起こった一大事といえば、やはり1986年の愛知の鉄道100周年を記念したSL、C56牽引による「一世紀号」の運転が筆頭に挙げられます。今までに他の地方で実施されたSLの特別運転に行ったことはありますが、今度は地元、武豊線を走る。これはたいへんです。
 私は当時、大学を卒業後、自宅に戻り、会社の名古屋支社に就職していましたので、ここぞとばかりに張り切ったのはいうまでもありません。友人たちとの情報交換によって試運転のダイヤを入手し、登りで煙を吐きそうな場所は予備知識があったため、十分にロケハンしてその時を待ちました。一方、中学生時代の同級生K君から電話があり、ぜひ乗りたいが、きっぷが取れないだろうかとの申し出に、任せてくれとばかりにOKを出しました。

●乗車整理券の行列に並んで

「1世紀号」の乗車券は各停車駅に割り当て枚数が決められており、東浦駅を狙って行きましたが、読みが甘く、すでに希望の5月3日は私が並んだ順番では立ち席承知の分しか手に入りませんでした。
 発売開始までの数時間、前に並ばれた東浦駅近所の方とずっとお話ししていましたが、いざ発売になっても発行に手間取り、次の予定のために乗るはずだった列車に間に合わなくなってしまいました。無事乗車整理券を手に入れた後、どうしようかと思案していると、お話ししていた地元の奥さんがご親切にも大府駅まで送って下さいました。

●全列車撮影

いよいよ土日に実施された試運転の初日、兵庫県の西宮からは大手建設会社の大阪支店に配属されていた大学サークルの同期、M君が来ることになりました。彼は何とか仕事を終えて名神を走り抜き、前日の深夜、我が家に到着しました。まだ免許を取って日が浅かった彼はクラッチのつなぎ方もぎこちなく、よく西宮から走ってきたものだと思いました。翌日から2日間、地元の利を生かして撮影地に案内しました。業務多忙のM君は撮影を終えるといそいそと帰っていきました。

試運転撮影初日
試運転撮影初日は最も訪問回数が多いポイントへ。

数時間しか寝られませんでしたが、日の出前に「行き付けの撮影地」へ。撮影場所が確保できないのではないかと警戒しての行動です。しかし、私たち以外には1時間ほど前に来た知り合いのYさんだけ。拍子抜けでした。

武豊に到着した試9320列車
武豊駅に留置される試運転列車

武豊に到着した試9320列車は、転線のうえ、留置されていました。それほど混雑することもなく、ゆったりとカメラを向けることができました。写真が残っていないのが残念ですが、消防車を利用して給水作業が行われたと記憶しています。

独特の書体の「名」札
「名」の独特の書体が再現された。

キャブ周りのディティールを撮ります。目的はやはり「名」の独特の書体が再現された区名札です。これは粋ですね。きっと当時の職員の方々もこだわりがあったことでしょう。
 SLが地方へ貸し出されるとき、お守りをする車両基地の札が差し込まれます。「名一」は名古屋第一機関区ですが、長らく機関車の配属はありませんでした。

蓮華との組み合わせ
緒川−石浜では蓮華との組み合わせが撮れた。

復路、9321列車は上り勾配で撮影に適するポイントがあまりありません。数日前にキヤ191を撮影した時に蓮華が咲いているのを確認できた緒川−石浜へ迷わず行きました。
 2016年現在、このあたりは緒川駅へ向けて高架への取付部になっています。また、線路の手前側はすっかり宅地化されています。

試運転2日目
緒川を発車して築堤を登るC56 SL1世紀号

試運転中はヘッドマークの取り付けはありませんでした。試運転とは言いながら、地元の養護学校の生徒さんたちが招待されて乗っており、窓が開いています。

復路は追い掛けを実行
復路は追い掛けを実行。1回目は東成岩の手前で。

「SL1世紀号」は名古屋発で、東海道線を走ります。しかし、機関車が前向きになる9320列車は架線がない武豊線内のチャンスを捨てるわけにはいきません。とはいえ、東海道線内の記録も欲しいものです。そこで、4/29の復路、9321列車で追い掛けを試みることにしました。1回目は東成岩−武豊で。
 撮影後は地元ギャラリーの皆さんに「気をつけてね。」と見送られて出発です。

追い掛け成功
大高−共和のポイントに無理なく間に合いました。東海道線内で撮った唯一の「SL一世紀号」です。

最寄りのインターから知多半島道路に入り、共和−大高間を目指します。連休中とあって車の量は多いと思いましたが、幸い渋滞はありませんでした。そして、無理をすることなく、余裕で国道23号線の下に到着しました。1コマだけでしたが、東海道線内での写真を残すことができました。
 このポイントは近年さまざまな障害物が設置されて撮影には適さなくなってしまいました。

5月3日は終日雨
雨降りの1日。しかし、煙は最高。

この日は中学校の同級生、K君と武豊から名古屋まで9321列車に乗車することになっていました。往路の9320列車は4/27に続いて緒川を出た築堤で撮りました。悪天候にもかかわらず、遠方からのファンを含め、たいへんな人出でした。

小さな神社の脇から
期待の割には煙がイマイチでした。

大府を出ると東海道線の下り線をオーバークロスするため、築堤を登ります。下見をして、小さな神社の線路寄りに足場が確保できることがわかりました。しかし、狭いため、多くのファンが譲り合ってポジションを決めました。
 煙確実と言われるポイントでしたが、ズームで引っ張ったカラーのほうはイマイチでした。これ以上引っ張ると、キロポストがかかってしまうのです。

煙がだいぶ回復
煙が期待できるポイントだった東海道下り線を越える築堤をゆくC56 SL1世紀号

モノクロのほうは短いレンズで撮りました。煙がだいぶ回復しました。投炭のタイミングや燃焼の具合によって変わるため、運次第です。
 この後ろでも撮っている人たちがいましたが、身を乗り出して後打ちをしようとする人がいて、「出ちゃいけない!」と止める人・・・。当日の様子が昨日のことのように思い出されます。

SL一世紀号最終日
煙もくもく 最終日の武豊線SL1世紀号

最終日、前向き最後となる武豊行き9320列車はハイライトでした。東浦を出て、川を渡ると一旦下り、亀崎への上り勾配に向かってさらに加速します。300mほど手前の踏切付近では見る見る煙が薄くなり、もはやこれまでかと思いましたが、期待に応えてもくもく吐いてくれました。録音テープには待ち構える皆さんの「あっ、出た!出た!出た!出た!!」という声がしっかり記録されています。

依佐美の鉄塔を背に
依佐美の鉄塔を背にバック運転のC56 1世紀号

依佐美信号場で展示の「依佐美の鉄塔」をバックに走る列車の写真はないか。おっと、意外なところにありました。なんとSL1世紀号を牽引するC56160の後ろに見えるではありませんか。よく見ると8本中7本が写っています。

結果的に仕事が休みの日は乗車した5月3日の9321列車を除いて試運転を含む全列車を撮影しました。
撮影地はどこも人でいっぱいでしたが、列車待ちの時間にいろいろな方々とお話しすることができ、たいへん充実した6日間でした。

●一般の方とのふれあい

運転終了後モノクロプリントの現像、焼き付けをして、大府駅まで送って下さった東浦の方へのお礼にお届けすることにしました。お名前はうかがっていなかったのですが、きっぷの発売日に駅でお話を聞いたいくつかのキーワードを頼りにお宅にたどり着くことができました。
 奥様がたいへん驚かれたのはいうまでもなく、ご主人からは近くに喜びそうな人がいるからと、追加プリントのご依頼まで受けてしまいました。奥様はSLが走ったらぜひとも乗ろうと思っていらしたそうで、実際に乗る日が待ち遠しくて仕方なかったとのことです。
 当時、鉄道ファンは暗いだの幼稚だの陰口を叩かれることもあって引け目を感じていたのは事実です。しかし、ご夫妻は私の活動にも興味深く耳を傾けて下さり、趣味を通じて特別鉄道ファンでもない一般の方とのふれあいが持てたこと。普通の女性の方がSLに乗るのを楽しみにしておられたのは、よき理解者に巡り会えたようで、なによりも嬉しく思いました。
 お祭りの客寄せ蒸機なんてと思われる向きもあろうかと思いますが、このイベントを通じて撮影の成果だけではなく、今まで得られなかった収穫があったように思います。


第1展示室(武豊線の定期列車)へ

第2展示室(武豊線の定期列車、民営化後の国鉄形式)へ

第3展示室(武豊線の臨時列車)へ

第5展示室(衣浦臨海鉄道)へ

第6展示室(日本油脂)へ

駅本屋(リスト)に戻る

碧海電子鉄道(トップページ)(C) 2000-16 鈴木雄司