時は19世紀、ドート家の一人息子(ビクター/ビンセント)は「蝶を観察し絵を描き、ピアノを奏でる」優しげな青年。魚屋を営む即物的な両親とは毛色が異なる。そしてまた親に似ぬ子がひとりいたのよ。エバーグロット家の一人娘のビクトリア。貴族でプライドばかり高い両親に似ず、奥ゆかしく優しげ。ふたりはあった事のない親の決めた許婚(いいなずけ)同士なのだ。成り上がりのドート家は上流階級への仲間入り、落ちぶれ貴族のエバーグロット家はお金を手に入れるという両家の利害が一致した結婚。ふたりはそのえじきである。気が弱くオクテのビクターは結婚にびびっていた。一方乙女のビクトリアは愛のある結婚を望んでいる。両者結婚に乗り気ではない。そこを強引に話を進める親達。ところがふたりは結婚前夜にエバーグロット家でピアノの連弾をして互いに一目ぼれする。なんとか話はまとまりそう。万々歳じゃん。しっかしそうすんなりと話は運ばない。結婚式のリハーサルでビクターはあがってとちってばかり。ついに厳格な(恐い)ゴールズウェルズ牧師に式の延期を宣言されてしまう。
意気消沈したビクターは森を彷徨う。けなげにビクトリアとの結婚のため森で誓いの言葉を練習するビクター(がんばれ)。ついでにビクトリアの指に指輪をはめる練習もする。雪から突き出ていた小枝に
指輪をはめたのだ・・・・・・・・。しかし、 それは小枝ではなかった・・・・・。昔村一番の器量よしが悪い男にだまされ、駆け落ちの待ち合わせ場所で殺され朽ちた指であった。「長い間待っていたいとしい花婿がやってきたのよ!」とむくむく雪の間から起き上がってくる
死体の花嫁。 花嫁は仰天して逃げる花婿をふわーりふわーりと追う(
すばらしいシーンなん。息をのむ。必見)
感想
ウクライナの古い民話だそうです。哀しく、そしてかわいいお話。
ロマンチック。美しいクレイアニメ。
現世は陰鬱なのに対し、黄泉の国は陽気で派手でクレイジー。橋がこの世と黄泉の国を分けているのもいいな。「ナイトメアビフォアクリスマス」より好きかも。人物がより掘り下げられていてね。派手で情熱的で一途なコープスブライド。優しいゆえにふたりの女性を幸せにしたいと思うビクター。ビクターをこの世に戻すために深窓の令嬢でありながらがんばるビクトリア。この3人と共におもしろかったのがビクトリアの両親のエバーグロット夫妻。「愛のある結婚をしたい」というビクトリアの言葉をたわごと、フンと鼻であしらう。ビクトリアが「でもお父様もお母様も少しは愛情があるでしょう?」と問うのにエバーグロット夫人が「お父様に? (そんなものは)ノン。ゼロ」。横でうなずくお父様。夫婦は運命共同体、共同経営者なのであった。ここなんか面白かったな。あんたらの結婚観はどうなん?、と聞いてみたい。 ティム・バートン監督とヘレナ・ボナム・カーターはパートナーでお子さんもいるでしょ。ジョニー・デップはバネッサ・パラディの間に子供がいるじゃん。でも法律上の結婚はしない。形式的なものは必要ないのか、結婚には向かないと思っているのか、いまだ意中の人は現れないのか。どうなんかな。結婚の誓いというモノにとても重きを置いているのかもしれん。