2005年11月の映画  戻る


フォー・ブラザーズ/狼たちの誓い FOUR BROTHERS
 
2005年 米 131分
監督 ジョン・シングルトン(「ハイヤー・ラーニング(1995)」)
脚本 デヴィッド・エリオット/ポール・ラヴェット
撮影 ピーター・メンジースJr.
音楽 デヴィッド・アーノルド
キャスト マーク・ウォールバーグ(長男・ボビー)/アンドレ・ベンジャミン(次男・ジェリー)/タイリース・ギブソン(三男・エンジェル)/ギャレット・ヘドランド(四男・ジャック「トロイ」)/テレンス・ハワード(グリーン警部補)/ジョシュ・チャールズ(ファウラー刑事)/ソフィア・ヴェルガラ(ソフィア)/フィオヌラ・フラナガン(ママ・エブリン)/キウェテル・イジョフォー(ビクター・スイート「堕天使のパスポート」
メモ 2005.11.26(土) OS劇場 晴れ
あらすじ
感謝祭が近い季節。デトロイト近郊の小さな町で食料品店が襲われ、中東系の店員と感謝祭のお肉を選んでいた中年女性が撃ち殺された(享年67歳)。母の葬儀に集まった4兄弟。長男と四男は白人、次男と三男は黒人だった。殺されたエブリンは恵まれない子供達に里親を探す活動をしていたが、素行が悪くて貰い手のなかった男4人を引き取り養子として育てたのだ。
感想
ジョン・ウェイン、ディーン・マーチン、ヘンリー・ハサウェイ監督作品「エルダー兄弟」(1965年)の現代版リメイクだそう。「警察より早く犯人を見つけ出して自分達の手で復讐する」にしゃかりきになるん。「法治国家じゃないんですか、アメリカは。」という感じで。西部劇の香りが、する。一種のファミリー映画でもある。雪でスピンしまくるカーチェイスとか銃撃戦とか迫力あったよ。ワタクシこういう映画は案外好みなので見逃しません。ラストはちょっと笑った。その手はありかよ。
 
DNAが違う4兄弟がそれぞれ個性的でよく出来ていた。映画の最初にちゃっちゃと紹介されるのも手際がよい。長男のボビー(マーク・ウォールバーグ)はケンカ屋と呼ばれる武闘派。あの格闘技と呼ばれるアイスホッケーも4ヶ月でチームから放り出される。次男のジェリー(アンドレ・ベンジャミン)は可愛い女の子ふたりのパパであり、地元で暮らしママ・エブリンの生活費を出していた孝行息子。三男のエンジェル(タイリース・ギブソン)は女好きで昔の女ソフィアが忘れられない。新しい男と寝ていた所を奪還する。四男のジャックはやさ男で長兄のボビーからは「妹」と呼ばれ、昔馴染みの刑事の紹介は「一流のアホで三流のロッカー」。このジャックがよかったなあ。ひ力やけど目ざといねん。長男のマーク・ウォールバーグにはびっくりしたなあ。「ミニミニ大作戦(2003年)」からはまだ2年でしょ。なんなん、このむさいオヤジは? この人もブルース・ウィリスみたいになっていくのか・・・・。「ビッグ・ヒット」の頃はかわいかったのになあ。
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メゾン・ド・ヒミコ
 
2005年 日本 131分
監督 犬童一心
脚本 渡辺あや
撮影 蔦井孝洋
音楽 細野晴臣
出演 オダギリジョー(岸本春彦)/柴咲コウ(吉田沙織)/田中泯(卑弥呼)/歌澤寅右衛門(ルビィ)/青山吉良(山崎)/柳澤愼一(政木)/井上博一(高尾)/森山潤久(木嶋)/洋ちゃん(キクエ)/村上大樹(チャービー)/西島秀俊(細川専務)/高橋昌也(半田)
メモ 2005.11.23(水)勤労感謝の日 晴れ 梅田ガーデンシネマ モーニングショー千円
あらすじ
借金を抱え、昼は塗装会社の事務員、夜はコンビニで働く吉田沙織(柴咲コウ)。最近はいっその事フーゾクで働こうかと雑誌をめくっては悩んでいる。そこに現れたひとりの男、岸本春彦(オダギリジョー)。昔家を出て行った父が癌で余命いくばくもないと伝えにきた。断固として会いに行こうとはしない沙織だったが、彼(岸本春彦)の言う「日曜だけでもホームに手伝いに来てくれれば1日3万円出す」というのにつられる。「ヒミコの遺産とかもあるしー」という言葉にもつられてしまう。沙織の父は、家を出た後は銀座の「卑弥呼」というゲイバーの2代目ママとなり、5年ほど前には店をしまい大浦海岸(神奈川県)のホテルを買い取って、老人ホームを営んでいた。 日曜日「メゾン・ド・ヒミコ」を訪れた沙織。そこはバケ個性的な人達のすみかであった。
感想
父はゲイであり、好きになった男はゲイであり、その好きな男は父親の恋人という三重苦の女、吉田沙織。悲劇的なんやけど・・・・その悲劇がなんか・・・・おかしい(くっ)。
 
 
 
 
 
脳梗塞になり体が不自由になったルビィを、同性愛者とは知らずに引き取っていく息子に何も言わなかった春彦達に沙織が怒る言葉。
  「ルビィは家族を捨てたんだから、ひとりで死ねばいいのよ!」
 
家族を捨てた自分勝手だと責める沙織に、父の卑弥呼が静かに言う。
 「私にも言わせて」
     「あなたが、好きよ。」
 
ホームの住人のひとり山崎がつぶやく言葉
 「みんなと一緒だと寂しくないって思っていたけれど、ひとりひとり見送りながら自分の番を待つってことなのね。」
 
と、印象深い言葉は数あれど、中でも一番は沙織と春彦がキスをする最中の沙織の言葉
 「触りたいとこ、ないんでしょ。」
・・・・・・・・・・・・・・キョーレツな一発だったな。
 
マイノリティの受ける迫害とか、自分に正直に生きる事とか、どうしようもない人間のさがとか、父と娘の関係とか色々詰め込まれた映画やったけど、さぼてんが気になったのは「愛とセックスについて」だったな。セックスは時には金にもなり(半田)、一種の気持ちのいいスポーツのような物(細川)でもあり、好きだと言う感情の表現でもある。さして意味のないものでもあり、時には重い。つかみ所のないものだ。沙織はセックスレスの愛に生きる事になるやもしれんのである。しかしこのふたり(沙織と春彦)は通常の夫婦にはなれんけど(ならなくてもいいけど)しあわせかもしれんし、子供を持つ事になるかも。子供にとってはきつい環境かもしんないけど、それもアリなんじゃないかと。
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アスファルト・ジャンングル THE ASPHALT JUNGLE
 
1954年 アメリカ 112分 MGM
監督 ジョン・ヒューストン
原作 W・R・バーネット
脚本 ジョン・ヒューストン/ベン・マドー
撮影 ハロルド・ロッソン
音楽 ミクロス・ローザ
キャスト スターリング・ヘイドン(ディックス)/サム・ジャッフェ(ドック・リーデンシュナイダー)/ジェームズ・ホイットモア(ガス)/ルイス・カルハーン(弁護士エマリック)/マーク・ローレンス(ノミ屋のコピー)/ジーン・ヘイゲン(ドール)/アンソニー・カルーソ(金庫破りのルイス)/マリリン・モンロー(エマリックの愛人アンジェラ)/バリー・ケリー
メモ 2005.11.20(日)くもり DVD
あらすじ
7年の刑務所暮らしを終えて娑婆に出てきたドクには計画があった。宝石強盗だ。いかんせん彼にはプランはあるが金がない。刑務所で得た情報からノミ屋のコピーを訪ねる。少なく見積もって50万ドルの計画に5万ドル出資しないかというおいしい話だった。コビーは資金源として悪徳弁護士のエマリックにアポをとる。しかしエマリックは派手な暮らしとは裏腹に破産寸前だった。
感想
1987年に81才で亡くなったジョン・ヒューストン監督44歳の時の作品。ケイバー(襲撃)映画の古典。やっとDVDを買った(3200円が何故すっと買えない・・・)。とうとう見た。この監督さん5回結婚されたとか。アンジェリカ・ヒューストンは4度目の結婚の「可愛い配当」。『黄金』と『男と女の名誉』で親子3代、アカデミー賞を獲得したそう。クリント・イーストウッドが「ホワイトハンター ブラックハート」で描いた監督。
 
「犯罪は人間の裏側の努力である」という弁護士エマリックの言葉どおり、ひとりひとりがその道のプロフェッショナルなん。
プランナーのドック、金庫破りのルイス、車の運転役のガス、度胸満点のディックス。高度な技術職だ。そこに資金を出すパトロンの弁護士エマリック、仲介屋のコビーが絡んでくる。6人は大人の男であるが、人間だからそれぞれ弱点を持っている。ドクは女、ルイスは家族、ガスはせむしという劣等感、ディックスは競馬、弁護士のエマリックはぜいたくな暮らしと高くつく愛人(マリリン・モンロー)、コビーは酒だ。生き急いでいるせいか、仲間にひょうろく玉を選んでしまったせいか、運命か、「盲点をつき金庫を破り宝石を奪う」だけのシンプルプランが狂ってくる。最初のほころびは、警報機が鳴ってしまい駆けつけた警備員に金庫破りのルイスが撃たれた事だった。それからはにっちもさっちもいかなくなり、ひとりまたひとりと消えていく。「人間を描く」ってこういう事なのね、というのがよくわかる。
 
ジュールズ・ダッシン監督の「男の争い」(1955年)とかキューブリック・監督の「現金に体を張れ」(1956年 主役のスターリング・ヘイドンが同じ)はもろこの映画の影響を受けていると思われ。「男の争い」でダッシン監督自身が演じた金庫破りの洒脱な演技って、ドクに似てる。。。。(ふらんす野郎とドイツ野郎の違いはあるが)。
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セクレタリー SECRETARY
 
2002年 アメリカ 112分
監督 スティーヴン・シャインバーグ
原作 メアリー・ゲイツキル
脚本 エリン・クレシダ・ウィルソン/スティーヴン・シャインバーグ
撮影 スティーヴン・ファイアーバーグ
編集 パム・ワイズ
音楽 アンジェロ・バダラメンティ
キャスト  マギー・ギレンホール(リー・ホロウェイ)/ジェームズ・スペイダー(エドワード・グレイ)/ジェレミー・デイヴィス(ピーター)/レスリー・アン・ウォーレン(ジョアン・ホロウェイ(母))/スティーヴン・マクハティ(バート・ホロウェイ(父))
メモ 2005.11.12(土)晴れ シネフィル・イマジカ
あらすじ
リー・ホロウェイは姉の結婚式の日に精神病院を退院した。病院の規則正しい生活が気に入っていたのに残念。生家は郊外にプールのある大きな一軒家で母は金髪美人(レスリー・アン・ウォーレン)。家事も完璧にこなし明るく子供を力づける絵に描いたような専業主婦だ。家族の幸せが自分の幸せなので過保護ではある。父はアルコール依存症。ママもパパも愛し合っているはずなのに、、ママが金持ちだからいけないのか。世間的には仲のよいシアワセそうなふたりだが、両親の諍いはリーを傷つける。彼女の秘密は裁縫道具。自傷行為を繰り返している。でもこのままではいけない世間に出ようと秘書の養成コースを卒業。そしてついた職が弁護士の秘書(セクレタリー)。弁護士(ジェームズ・スペイダー)は物静かで風変わりな男だった。
感想
いやはや、いやはや、いやはや、いやはや まいりましたわ。
 
弁護士(ジェームズ・スペイダー)は美意識が高く神経質、蘭を育てる繊細な人であり、ストイックで、孤高で、、、、、、ひとことで言えば難しい男だ。自分の好みにあった生涯の伴侶を、いわゆる赤い糸で結ばれた片割れを見つけたいと願っているロマンティストでもある。妥協はしない。 その好みっていうのがすごいん。 その片割れを見つける唯一の手段というのが「SECRETARY WANTED」(秘書求む)という内気な不器用さ。 そして新しい秘書で無垢なリーは彼の厳しい 教育 により徐々に目覚めていく。しかしシャイな彼はリーが近づくと離れてしまうのだった。心を開く事ができない。求めながら「手に入れられない、こんな事何時までも続かない」と開けかけた扉を閉める。
 
あっけにとられるような異色のラヴ・ストーリー。
 
録画して後で見るつもりが、深夜こんな目(**)して最後まで見てしまいましたわ。思い出した映画が「ジェーン・エア」と「青いパパイヤの香り」。そして「ナタリーの朝」かな。ナタリーの最後の言葉「それが私の幸せ(私にとっての幸せ)」かな。
 
自傷行為をしているリーを盗み見たエドワード(ジェームズ・スペイダー)がリーに言い渡す。
「心の痛みを外に出して体で実感しないと不安で仕方がない。 傷が癒えるのを見ると安心する。 違うか?」
「よく聞け、絶対に 体を傷つけるな。 しっかり理解できたか?」
自傷は終わりだ 過去に葬った。二度としない。」
・・・・・まともと思うでしょ。 まともでありながら・・・自傷はだめすか、そうすか・・・。
 
ハンガー・ストライキに入ったリーに語るパパの言葉
「”お前は神から授かった命の贈り物だ” 
   ”私から生まれたが私とは違う” ”その魂と肉体はお前のものだ” ”お前の好きにするがいい”」
が、とってもいい。言える親はなかなかいない。
 
2002年サンダンス国際映画祭特別審査員賞を受賞したこの映画。いったいどのくらいの評価なんかとIMDbで検索したらなんとなんと7.2という高評価にびっくり。みなさん許容度が広いというか・・・Hというか。
 
ジェームズ・スペイダーは「スーパーノヴァ」「2days」以来。ちょっと年いったけど、あいかわらずステキだ。まともな役って「僕の美しい人だから」と「スターゲイト」ぐらいしか思いだせないし、 「ウルフ」を観にいったツレ連からは「男の好みが悪い」ってさんざ言われたけど、あいかわらずへんでステキだ。
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コープスブライド Corpse Bride 死体の花嫁 冥土 in LOVE
2005年 米 77分 ワーナー
監督・製作 ティム・バートン
監督 マイク・ジョンソン
脚本 ジョン・オーガスト/キャロライン・トンプソン/パメラ・ペトラー
撮影 ピート・コザチク/
美術 アレックス・マクダウェル
音楽 ダニー・エルフマン
声 ジョニー・デップ(ビクター)/ヘレナ・ボナム・カーター/エミリー・ワトソン(ビクトリア)/クリストファ ー・リー(ゴールズウェルズ)
メモ 2005.11.11(金) HEPナビオ
あらすじ
時は19世紀、ドート家の一人息子(ビクター/ビンセント)は「蝶を観察し絵を描き、ピアノを奏でる」優しげな青年。魚屋を営む即物的な両親とは毛色が異なる。そしてまた親に似ぬ子がひとりいたのよ。エバーグロット家の一人娘のビクトリア。貴族でプライドばかり高い両親に似ず、奥ゆかしく優しげ。ふたりはあった事のない親の決めた許婚(いいなずけ)同士なのだ。成り上がりのドート家は上流階級への仲間入り、落ちぶれ貴族のエバーグロット家はお金を手に入れるという両家の利害が一致した結婚。ふたりはそのえじきである。気が弱くオクテのビクターは結婚にびびっていた。一方乙女のビクトリアは愛のある結婚を望んでいる。両者結婚に乗り気ではない。そこを強引に話を進める親達。ところがふたりは結婚前夜にエバーグロット家でピアノの連弾をして互いに一目ぼれする。なんとか話はまとまりそう。万々歳じゃん。しっかしそうすんなりと話は運ばない。結婚式のリハーサルでビクターはあがってとちってばかり。ついに厳格な(恐い)ゴールズウェルズ牧師に式の延期を宣言されてしまう。
意気消沈したビクターは森を彷徨う。けなげにビクトリアとの結婚のため森で誓いの言葉を練習するビクター(がんばれ)。ついでにビクトリアの指に指輪をはめる練習もする。雪から突き出ていた小枝に指輪をはめたのだ・・・・・・・・。しかし、 それは小枝ではなかった・・・・・。昔村一番の器量よしが悪い男にだまされ、駆け落ちの待ち合わせ場所で殺され朽ちた指であった。「長い間待っていたいとしい花婿がやってきたのよ!」とむくむく雪の間から起き上がってくる死体の花嫁。 花嫁は仰天して逃げる花婿をふわーりふわーりと追う(すばらしいシーンなん。息をのむ。必見
感想
ウクライナの古い民話だそうです。哀しく、そしてかわいいお話。ロマンチック。美しいクレイアニメ。
現世は陰鬱なのに対し、黄泉の国は陽気で派手でクレイジー。橋がこの世と黄泉の国を分けているのもいいな。「ナイトメアビフォアクリスマス」より好きかも。人物がより掘り下げられていてね。派手で情熱的で一途なコープスブライド。優しいゆえにふたりの女性を幸せにしたいと思うビクター。ビクターをこの世に戻すために深窓の令嬢でありながらがんばるビクトリア。この3人と共におもしろかったのがビクトリアの両親のエバーグロット夫妻。「愛のある結婚をしたい」というビクトリアの言葉をたわごと、フンと鼻であしらう。ビクトリアが「でもお父様もお母様も少しは愛情があるでしょう?」と問うのにエバーグロット夫人が「お父様に? (そんなものは)ノン。ゼロ」。横でうなずくお父様。夫婦は運命共同体、共同経営者なのであった。ここなんか面白かったな。あんたらの結婚観はどうなん?、と聞いてみたい。 ティム・バートン監督とヘレナ・ボナム・カーターはパートナーでお子さんもいるでしょ。ジョニー・デップはバネッサ・パラディの間に子供がいるじゃん。でも法律上の結婚はしない。形式的なものは必要ないのか、結婚には向かないと思っているのか、いまだ意中の人は現れないのか。どうなんかな。結婚の誓いというモノにとても重きを置いているのかもしれん。
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