Rock Listner's Guide To Jazz Music

ジャズ・クラブ日記 Vol.1 (2007年)


最初のニューヨーク滞在はわずか3泊だけ。行きたいクラブを事前にピックアップし、出演者を見比べながら短期間でいかに多く回れるかという観点でスケジュールを決めました。紹介している料金は僕が観にいった日のものなので出演者や曜日によって異なるはずです。料金が気になる人は事前にWebサイトをチェックして確認した方がいいでしょう。また、定刻どおりに演奏が始まることは少ないので、ハシゴする人はスケジュールに少し余裕を見ておいた方が無難です。


6/12(火)

この日はグリニッジ・ヴィレッジ周辺へ。まずは地下鉄 42st-Times Square駅から (2)(3) ラインに乗り 14st 駅で下車。乗っている時間は10分もかからない程度。そこから 7th Ave をダウンタン方向へ歩くと5分ほどで右手にヴィレッジ・ヴァンガードが見える。最初の目的地は実はひとつ先の Chiristopher St. 駅を降りてすぐのところだったんですが、明るいうちにヴィレッジ・ヴァンガード拝んでおこうと一駅歩いたというわけです。一駅といっても歩いて10分くらいだったと記憶しています。

55 BAR



ミュージック・チャージ:任意
ミニマム・チャージ:2ドリンク
1st set:19時 (金土は18時)
2nd set:22時 (日は21時30分)
予約:不要


ここは 1st set が早いこともあって最初に選択。店は非常に狭く、詰め込んだとしてもカウンターに10人くらい、テーブルに20人くらいというところでしょうか。18時50分に店に入ると客は自分を含めて4人だけ。かなりの寛ぎムードで近所の人が立ち寄る居酒屋という感じ。店に入ってもバーに居る黒人の太った呑気そうな兄ちゃんは特に声を掛けてくるでもなく、バーの客と雑談。バンド・メンバーと思しき人が「いやあ、外は凄い雨だよ」なんて言いながらスタバのカップを持って店に入ってくる。そんな気軽な雰囲気。行く前に店に予約の電話をしたら「予約は要らない」と言われたのも当たり前。こんな店に予約する人いません。

壁の貼り紙には「2 drink minimum」と書いてあるのでとりあえずダイエット・コークを注文(お酒に弱いもので・・・)。$2.50。

19時10分、チェット・ベイカーもどきのちょっと不安定な音程のヴォーカルから始まる。トランペット&ヴォーカル、エレクトリック・ピアノ、ウッド・ベース、ドラムというカルテット。フェンダーローズの音が心地良い。トランペットもやはりチェットの、あるいはマイルス・デイヴィスのようなスタイル。ベースのおじさんも健闘。ドラムはスネアとバスドラにハイハットとシンバル2つだけ(タムタムがない)というシンプルさ。実際スペースが狭いから、こんなドラム・セットしか置けなさそうだし、グランド・ピアノなんて絶対に置けない。尚、出演は Nate Birkey となっていましたが、Amazon の検索ではひっかかりませんでした。

演奏中に、客は少しずつ増えてきて最終的には12人くらいに。約1時間で終了。演奏が終わるとバケツが回ってきて皆が思い思いにお金を入れる。僕は最前列にいた夫婦にならって$10を入れましたけど、良く考えたら前の夫婦は2人で$10だったわけで奮発しすぎだったかも。ドリンクは一杯だけしか飲まなかったし、それ以上の料金も払わずにそのまま店を出ました。


エレピの人は後ろに隠れています


正直なところ、プロとしてみると演奏のレベルはいささか頼りないものでしたが、本人たちがジャズが好きな感じが良く伝わってきたし、とかくジャズは高級だと思われている日本とは違って、ニューヨークにはジャズが日常にあるんだということを体験できて面白かった。逆に言えばあまり観光客が来るところではない感じです。「有名な誰それが・・・」なんて情報も見ますが、この日はたまたま出演者がそういうレベルだったのか、いかにも地元のバーという雰囲気を味わうことになりました。グリニッジ・ヴィレッジにはジャズ・クラブが沢山あるので、どこかに行く前の肩慣らしにいいかもしれません。ちなみに、食事は簡単なつまみくらいしかなさそうなので期待しないように(バーなので)。


Fat cat



ミュージック・チャージ:$3+任意
ミニマム・チャージ:なし
演奏時刻:日によってバラバラ
予約:不要


(現在は閉店し、Cellar Dogという名前でリオープン)

55 BARを出て右に向かい 7th ave を横切るとすぐにあるのがこの店。歩いて1分もすれば到着。入り口で兄ちゃんと話をして、$3を払うと手の甲に「Fat cat」というスタンプを押してもらって地下に入場。一応小さなバーもあるものの、中はビリヤード&卓球場。どこで一体ジャズなんてやるんだろうとかなり不安になる。周りを見回すと隅のほうにこじんまりしたスペースがありドラム・セットとピアノが置いてあって、どうやらここで演奏するのかなということがわかる。席やテーブルなどは特になく適当にイスが置いてあるだけ。本当にタダのビリヤード&卓球場で、遊びに興じている客で賑わっているものの、音楽を聴きにきている人は見あたらない。

1st set の予定時刻20時30分になっても、そのスペースには誰も現れず始まる気配すらないので旅行者としては激しく心配になる。15分くらいするとメンバーと思しき人がピアノの位置を動かして、コンガとパーカッションと音あわせし始めるもすぐに終了。そのままバーに行って飲み始める。21時10分ころにベースを抱えたおじさんが入ってきてようやく演奏が始まる。

Webサイトによるとこの日のバンドは Cachimba Inolvidable という名前で、フルート奏者の Itai Kriss という人をフィーチャーしているとのこと。フルート、パーカッション、コンガ、ベース、ピアノという編成でラテン/キューバ系のちょっと風変わりなジャズでした。演奏が始まって30分くらいすると今度はトロンボーンを抱えたおじさんが店に入ってきて、そのまま演奏に加わるというイージーな雰囲気。22時に演奏終了。コンガを演奏していた前歯のないおじさんがバケツを持って回ってきたので$5入れると「Very kind. Very kind.」と喜んでいました。

と、演奏について書きましたが音楽を聴いている人は自分を含めて5人程度で、完全にビリヤードや卓球をやっている人の BGM と化していました。演奏の始まりも終わりもハッキリ告げずにただダラっと始まり、適当に終わる。一般的にイメージされるジャズ・クラブには程遠い別世界といった雰囲気なのでかなり戸惑いますが、そういう場所だからこそ、普通のジャズ・クラブでは聴けないちょっと変わった音楽を演奏できる場になっているように見える。55 BAR とは別の意味でマンハッタンの日常にあるジャズ(とそこから派生したカテゴライズ困難な音楽)を体験できる場所という感じです。ここも事前に予約の電話をしたところ怪訝そうに「予約は要らないよ」と言われたものですが、行ってみてこういうところだと知ると予約をしようとしていた自分が可笑しくなります。

(追記:本やネットの情報を探すと、バーの奥にドアがあってそこの中がクラブになっているようなことが書いてあります。また、昔はハンク・ジョーンズをブッキングしていたこともあるようですが・・・、しかし、どうやらその部分が解放されてアングラ系ジャズ・ミュージシャンの演奏の場になっているようです。)

   

こんなふうに隅の方で演奏                               後ろを振り向くとこんな感じ


しっかりしたジャズ・クラブが希望なら食事ができるという意味も含めて、この周辺ならやはりブルーノートがいいのかもしれません。ここまで行った2件は明らかに観光客向けではないけれど東京では味わえない世界なのである意味面白い。


Village Vanguard

   


ミュージック・チャージ:$25
ミニマム・チャージ:$10
1st set:21時
2nd set:23時
3rd set:00時30分 (土曜のみ)
予約:日本からでもインターネットで可能(要プリントアウト)。電話でもOK。


Fat cat を出て 7th ave. に戻りアップタウン方向に3分も歩けばそこにジャズの聖地、ヴィレッジ・ヴァンガードがある。 見覚えのある看板を目にすると何かこう感慨深くなるものの、特別なオーラがあるわけでもなく日常の中にあるクラブという感じがするところにニューヨークの懐の深さを感じたりする。23時からの 2nd set までにはまだ時間があったので隣のピザ屋で食事を済ませておく。

ニューヨークに来たからにはやはりヴィレッジ・ヴァンガードは外せない。ここでジョン・コルトレーンやビル・エヴァンス、ソニー・ロリンズ、ブラッド・メルドー、ジョシュア・レッドマンなど、数々の名演が繰り広げられてきたというジャズの歴史を思えば、出演者が誰かに関係なく立ち寄りたいというもの。

ビル・エヴァンスの「Waltz For Debby」を聴くと、グラスや食器が触れ合う音がして、拍手もまばらなことから、食事をしながら気軽に観る場所のような印象を受けませんか? 実際、ニューヨークのちゃんとしたジャズ・クラブでは食事ができるところがほとんどなのですが、実はここはドリンクしかサービスしていないこともあってか、滞在中に行ったどのジャズ・クラブと比較しても真剣に音楽を聴き入っている人で占められていました。恐らく本当に音楽好きな人が来るところなのでしょう。

予約はインターネットで。印刷した紙を持ってすんなり入場。中は詰め込んでも80人くらいが精一杯でしょうか。80人と言ってもテーブルが小さいのでスペース的にはかなり狭い。この日は平日の 2nd set、出演者もあまりメジャーではないせいか4割程度の入りでした。

23時5分に演奏開始。出演は Guillermo Klein Y Los Guachos。テナー・サックス、アルト・サックス、バリトン・サックス、トロンボーン、トランペット×2、コンガ、ギター、エレキ・ベース、ドラムにリーダーのピアノという大編成のグループ。複雑なリズムと奇妙なホーン・アンサンブルを中心にした摩訶不思議なサウンドで、日本にいたら一生出会うことがないだろうと思えるユニークかつコマーシャリズムとは無縁のややひねくれた音楽。

大人数の影に隠れて姿が見えないドラマーが巧いなあと思っていたら、最後のメンバー紹介でジェフ・バラードと判明。日本で3度観たことがあるジェフとこんなところで再会するとは思わなかった。

24時15分に演奏終了。さすがにこの時間帯だと地下鉄に乗るのは勇気がいるので旅行者としてはタクシー利用となります。店の前の通りにはタクシーがバンバン走っているので拾うのは簡単でした。(ちなみに観光編でも書いていますがニューヨークの地下鉄は安全です)


6/13(水)

この日はホテルのあるミッドタウン周辺のクラブを散策とあっていずれも徒歩で移動。

Iridium



ミュージック・チャージ:$35
ミニマム・チャージ:$10
1st set:20時30分
2nd set:22時30分
3rd set: 深夜 (金土曜のみ)
予約:不要。(3名以上は要るかも)

(2023年現在、ブルース、ロック系がメインになっています)

予約の電話をして人数を1人と伝えると不要とのこと。実際、平日の 1st set だったせいか客に入りは4割程度で人数が多い場合でも予約は必要なさそうでした。週末や有名アーティストが出るときはその限りではないかもしれないので、その場合には予約しておいた方がいいかもしれません。

場所はタイムズ・スクエアのヴァージン・メガストアあたりからブロードウェイを北上して5分くらい歩いたところ。ダウンタウン側から歩いていくと手前のミュージカル劇場(?)に隠れてやや判かりにくいものの、右手に見つけることができる。最寄りの駅は(1)ラインの50st駅または(N)(R)(W)ラインの49st-7th Ave駅。

クラブ内の広さは、ブルーノート東京より4割引きくらいの狭さ、各席のスペースは同じ程度で満席でも80人くらいでしょうか。ステージが高く、縦に長いレイアウトなのでどの席からでも観やすそう。店も小奇麗でちゃんとしたジャズ・クラブという感じです。料理のメニューは普通にあって(ただしいかにもアメリカ的なものばかり)、特に飲み物はワインを中心にかなりの種類がありました。美味しいかどうかは別にしてちゃんとした食事ができます。ただし、客は真面目にジャズを聴きにきている人ばかりで食べながら演奏を聴いている人はほとんどいませんでした。少し早めに来て食事を済ませておいた方がいいかも。

20時10分に演奏開始。出演は、EDDIE PALMIERI TRIO feat: DAVID SANCHEZ。ピアノ、ベース、テナー・サックスという変則トリオ。ドラム・レスという編成上、ピアノはリズムを受け持つことが多くジャズ・ピアノとしては特に印象に残らず。重要さを増すベースは坊主頭の若い青年だったにもかかわらず太い音を繰り出していて好演。編成上、当然力量を問われるブラジル出身のテナーもパワフルかつエネルギッシュで素晴らしかった。こんな編成でジャズを聴くというのも東京にいたら恐らくなかったはずで、これもいい経験でした。演奏は21時15分に終了。


Birdland



ミュージック・チャージ:$35
ミニマム・チャージ:$10
1st set:20時30分
2nd set:23時
予約:日本からでもインターネットで可能(要プリントアウト)。電話でもOK。

ホテルで時間つぶしをしてから22時30分ころにバードランドに到着。ホテルから歩いて1分ということもあって深夜に終わる 2nd set でも安心。地下鉄で行くのなら、(A)(C)(E)ラインの42st-Port Authority Bus Terminal駅をアップタン側改札から出て左側の階段を上ると目の前。インターネットで予約したときにプリントした紙を持って入場。

バードランドと言えば、アート・ブレイキーやコルトレーンのライヴ盤などで有名なところとして知られていて、Webサイトを見るとそういった伝統を引き継いでいるかのような印象を与えますが、そのバードランドとこことは実は関係ないらしいです。(場所も当時とはまったく違う)

広さは今回の滞在で行ったジャズ・クラブの中では一番。それでもブルーノート東京よりは少し狭い印象。ステージから横に広いので端の方だと少し見難いかも。この日の 2nd set、やはり平日ということもあってか客の入りは3割程度。50歳くらいの女性が1人で食事をしながらジャズを楽しんでいる姿が自然に見えるあたりはニューヨークという感じでした。

ここもメニューはまあまあ充実していてちゃんとした食事ができます。ただ僕がオーダーした BBQ Chiken Wing は、ちょっと日本人にはつらい、かなり濃いめの甘辛な味付けでした。ミニマム・チャージをクリアしようと無理してオーダーしてちょっと後悔。

演奏は23時15分スタート。この日の出演は DAVID MURRAY BLACK SAINT QUARTET でテナー・サックスのワン・ホーン編成。


暗くてどうしてもブレてしまう


フォー・ビート中心の王道ジャズでコルトレーンの影響が感じられるフリーキーなテナーはパワフルで良く歌う。かなりの実力者。あくまでも現代的なジャズでありながら根底には伝統的なジャズも大事にしているところが伝わってくる骨太の演奏で、サイド・メンも含めて素晴らしいパフォーマンス。滞在中に観た中で最も印象に残りました。演奏は24時35分終了。


6/14(木)

この日は、あまりジャズ・クラブが密集していないところにある2件がターゲット。

JAZZ STANDARD



ミュージック・チャージ:$35
ミニマム・チャージ:なし
1st set:19時30分
2nd set:21時30分
3rd set:23時30分 (金土曜のみ)
予約:電話。
(2020年12月で閉店)


事前に電話で予約。ここは1人でも応じてくれました。

42st-Times Square 駅から (S)ラインに乗って 42st-Grand Central 駅で乗換え (6)ラインをダウンタウン方向に行き 28st 駅で下車。そこから歩いて5分もすれば到着。ダウンタン側の地下鉄の出口に出る(ただし土日は閉まっている)と 26st 辺りに出るので注意しましょう。

このクラブは1階が BLUE SMOKE というバーベキュー・レストランになっていて、地下にあるこのクラブでもその料理が楽しめる。BLUE SMOKE は全米No.1のレストラン・ガイド、ザガットにも掲載されているとあってこの JAZZ STANDARDは食事にも定評があるようです。実際、Blue Smoke Burger をオーダーしたらハンバーガーにまで焼き方を訊いてくるという本格派。味はアメリカの常で濃い目でしたがジューシーで美味しかった。クラブの広さはブルーノート東京の3割引きくらいで奥に広いタイプ。

19時35分スタート。この日の出演は JOEY DEFRANCESCO TRIO plus Special Guest George Coleman。オルガン、ギター、ドラムというトリオにジョージ・コールマンという編成。アーシーかつエネルギッシュなハモンド B3 に、ケニー・バレルのようなギター、タイトで巧いドラムによるオーソドックスなジャズを演奏。このトリオ、なかなかの実力でスウィンギーな演奏が実に心地よい。特に初めてクラブで生で聴くオルガン・サウンドの厚みが印象に残りました。スピーカーの中でファンが回っているところが見えていたのも面白かった。ジョージ・コールマンはフリーキーなフレーズを織り交ぜたプレイで意外性を感じたものの、演奏そのものはさすがに年齢相応という印象でした。最後には白人女性ヴォーカルも加わって、バラードとジャンプ・ナンバーを披露。日本で質の高いジャズ・ヴォーカルを聴くことはほとんど不可能なのでこれまた良い経験でした。



ドラムとギターは後ろに隠れています


この店は、この日もそうでしたがオーソドックスなジャズを中心にブッキング(前週の出演はニコラス・ペイトンだった)していることもあってか、客の年齢層が高め。この日は7割くらいの入りで結構繁盛していました。落ち着きと品があり、スーツ姿で観に来ている人もいましたが、堅苦しすぎるほどの雰囲気ではないのでTシャツにスニーカーというようなよほどラフなスタイルでもなければ服装はそう気にしなくても大丈夫。演奏後、ジョージ・コールマンがグラスを片手にブラブラしていたのもそんなリラックスした雰囲気があるからでしょう。周辺にジャズ・クラブは皆無というジャズ僻地なため、ハシゴするときに候補に入りにくいかもしれませんがお勧めできます。


SMOKE



ミュージック・チャージ:なし (週末はあるかも)
ミニマム・チャージ:テーブル$20、バー$15。
1st set:20時00分
2nd set:22時00分
3rd set:23時30分
予約:電話。(今はもちろんWebからでOK)

JAZZ STANDARD から (N)(Q)(R)(W)ラインの 28st 駅まで10分弱歩く。そこからアップタウン方向へひと駅、42st-Times Square 駅に戻り (1)ラインに乗換えて15分くらいで103st 駅に到着。アップタウン側の改札を出て階段を上るとそこはブロードウェイ(と言ってもこの辺はタイムズ・スクエアあたりとは雰囲気がまったく違う)で、階段を登る向きとは180度反対側の北に向かって左側の歩道を5分くらい歩くとバス停のすぐ脇にある。

事前に電話で予約を入れたものの、ここでも1人だと不要とのこと。

ここは矢野沙織のライヴ盤 「Parker's Mood」などでも知られるところですが、目一杯入れてもせいぜい60人程度の広さ。雰囲気もかなりカジュアルで客層もぐっと若い。演奏中に店を出入りする人も結構いて皆気軽にジャズを楽しんでいるといった感じ。値段もリーズナブルなので、もし近所に住んでいたら通ってしまいそうです(ただし、ここは出演者の顔ぶれが結構固まっている)。

尚、メニューはそれほど多くはないものの、この店もザガットに掲載されているようで普通に食事ができます。少し席が狭くなりますが、バーで食事をすれば$15のミニマム・チャージもクリアできるでしょうからコスト・パフォーマンスは抜群。

22時5分演奏スタート。出演は Joe Magnarelli Quartet。サイド・マンとして活躍している中堅トランペッターを中心にテナー・サックス、オルガン、ドラムという編成。特別感銘を受ける演奏ではなかったものの手堅い演奏で十分楽しめました。ここでもハモンドの音が心地よかった。23時10分終了。


ほとんど真っ暗でこんな写真しか撮れず・・・


中心街から幾分外れているのでタクシーの数はそれほど多くなかったものの、ホテルへの帰りに捕まえるのにはそれほど苦労しませんでした。


全体的に思ったことですが、黒人ミュージシャンが少ない。全部で36人のミュージシャンを観たわけですが、黒人は6人に留まる。これが現代のニューヨーク・ジャズ・シーンの現実なのかもしれません。僕は50〜60年代のジャズが好きで好きなミュージシャンはほとんどが黒人。にもかかわらず、白人中心のジャズでも十分満足させてもらえる質の高い演奏を満喫できました。正直言って日本で観る日本人のジャズとは別物だと思います。

今回のハシゴで事前に知っていたミュージシャンはジョージ・コールマンだけでした。日本では有名でない、しかし、日本ではお目にかかれない実力派ミュージシャンを沢山観ることで視野が広がるというのもハシゴの魅力として特筆できます。

余談ですが、観客の多くは白人でラテン系の人が少々という感じ。アジア人はさらに少ないし、黒人に至っては限りなくゼロに等しい。アメリカにいると黒人はファースト・フードの店員など給料の安そうなところで働いていることが多く、彼らは日本と比べて安い料金で観れるとはいえジャズ・クラブに行けるほどの生活水準にはないのかなと思ったりもしました。昔から、ジャズは白人が楽しむ娯楽として栄えてきたという歴史があるのも恐らくそのあたりが理由のようにも思えます。ジャズ・クラブで見かけた黒人は身なりもしっかりしていた(つまり裕福)ので生活水準と観客層との関係は無関係ではないでしょう。

以上、たったの3泊でマンハッタンの夜をここまで満喫できてしまう。しかも昼間は観光をのんびり楽しんでしまえばいい(ニューヨークは見どころが多いから昼間の時間の使い方はいくらでもある)。ジャズが好きな人なら3泊5日でジャズ・クラブ巡りを中心に過ごすなんていう旅行もアリでしょう。


以上、たったの3泊でマンハッタンの夜をここまで満喫できてしまう。しかも昼間は観光をのんびり楽しんでしまえばいい。ニューヨークは見どころが多いからどうせすべてを楽しむなんて無理な話。ジャズが好きな人なら3泊5日でジャズ・クラブ巡りを中心に過ごすなんていう旅行もアリでしょう。