ムラクモ

 ディビジョンV百式司令部多次元艦スサノオの艦首に搭載された強襲偵察艇のコードネーム。スサノオは本来、多次元諜報潜水艦同様に最前線にあってデータ収集、戦況分析を行い、機動部隊を戦術、戦略の両レベルで支援する事を主任務としている。しかし機動防衛艦という性格上、またGGGの司令塔としての任務も同時に与えられている為に、安易に艦を偵察・索敵などのために運用する事はできない。そのためスサノオには機動力と運用性に優れた偵察艇を搭載する必要があった。それがすなわち、強襲偵察艇ムラクモである。
 ムラクモは多次元諜報潜水艦の中枢を緊急脱出させるための小型ジェット機・フライ1を基礎に設計されており、ステルス性の高い船型を採用している。大気圏内外を換装無しで飛行できる性能を持ち、またスサノオの「目」、あるいは「耳」、「鼻」となるべく各種特殊センサーが満載されている。ムラクモのセンサー群はスサノオに搭載された多次元コンピュータと常時、相互にリンクしており、センサーに検知された情報はダイレクトにスサノオへと送られ、分析され、それらはムラクモへとフィードバックされ、その情報をもとにムラクモが更に高度な情報収集を行う。ムラクモはスサノオの「目」であると同時に、その分身、スサノオそのものと言い換えることができるかもしれない。
 ムラクモの運用が初めて確認されたのは木星決戦において、ZX−17肺原種クラインスペースに封印された際である。その特異相克点を見極めるべく、獅子王麗雄博士を搭乗員としてスサノオから発進、程なくその位置を特定することに成功した。ムラクモは強襲偵察、すなわち敵地深くまで高機動力を発揮して進入し偵察を行うのが主任務である。それゆえ撃墜の可能性は極めて高く、よって本来ムラクモは無人で運用されるべき装備であったが、特異相克点の発見には専門家のマニュアル操作によるムラクモのセンサー群の管理運用が不可欠であった。そのための緊急措置として、獅子王麗雄博士が搭乗せざるを得なかったのである。
 ガオガイガーダブルヘッドドライバージェイダーの協力を得て、GGG艦隊をクラインスペースから解き放つことに成功したムラクモであったが、本来の強襲偵察任務をこなすうち、ZX−16翼原種のミサイル攻撃を受け被弾、機位を失したまま木星大気圏へと突入し爆散し、獅子王麗雄博士が戦死している。
 命名の由来は日本神話において高天原を放逐された素戔嗚尊(スサノオノミコト)が八岐大蛇(ヤマタノオロチ)を策略をもって打ち倒した際にその尾から取り出して得たという神剣・都牟羽之太刀(ツムハノタチ)。八岐大蛇が行くところ常に叢雲(村雲)が立ち込めていたのはこの太刀によるものと考えた素戔嗚尊が「天叢雲剣(アメノムラクモノツルギ)」と改名したと言われている。後に倭建命(ヤマトタケルノミコト)の愛剣となり、「東征」に際して倭建命がこの剣で草をなぎ払い火攻めから逃れた事から「草薙剣(クサナギノツルギ)」と呼ばれるようになる。八咫の鏡(ヤタノカガミ)、八尺瓊の勾玉(ヤサカニノマガタマ)と並んで、日本の皇位の正当性を証明する「三種の神器」の一つに数えられている。なお、草薙の剣こと天叢雲剣は1180年から1185年にかけて起きた治承・寿永の乱(所謂源平合戦)の最終局面・壇ノ浦の戦いにおいて、迫る源氏方を前に二位尼(平清盛の正室)が安徳天皇を伴い入水したおりに、他の神器二種と共に海中に投棄されている。これは安徳帝以外を天皇とは認めないという平氏(主に二位尼)の意志の表れであり、皇位の正当性を示す神器を失わせることで源氏方が今後担ぐであろう新しい天皇の権威を根本から否定し、その即位を妨害毀損する世紀の「嫌がらせ」であった。戦後海中を捜索の末、八咫の鏡鏡と八尺瓊の勾玉は発見されたが、天叢雲剣はついに発見されなかった。やむを得ず朝廷は伊勢神宮より献上された剣を代替の神器として奉り、以後それを「草薙の剣(形代)」と呼び三種の神器のひとつとしている。その後、1337年から1392年にかけて起きた南北朝争乱の時代にも熾烈な争奪戦が繰り広げられた。