<カセットビジョンの主旨>

【寺町】 ではいよいよ、カセットビジョン(以下CV)についてうかがいます。カセット方式が主流になりつつある時代でしたが、CVの企画の立ち上げもやはりそんなところから始まったんでしょうか

【堀江】 そうですね。こういう1ゲーム1体型は、欲しいけど家にゴロゴロしていてもじゃまですよね。

【寺町】 ヒントはVCSから?

【堀江】 こっちの方がね、ま、商売的にも。こっち(本体)が売れればじゃあこれ(カセット)も買おうかということで。

【寺町】 余談ですが、CVが日本初のカセット方式でないことってご存知でしたか?

【堀江】 あ、そうなんだ?日本製初じゃないの?

【寺町】 ビデオカセッティ・ロックアドオン5000ってのがあるんですよ。市販されているゲームLSIをカセットにしたんです。アドオンがバンダイ、ビデオカセッティがタカトクとティルトの合併社・GLから出たんです。

【堀江】 (でも)ソフトは日本製じゃ・・・ない(笑)

【寺町】 まあ(笑)。でもね、CVをハード仕様のカテゴリで切り取ってみてもつまんないんですよ。そういう論調が多いんだけど、つまんないんです。

堀江氏 【堀江】 だから、どうだってことになって(笑)

【寺町】 それよりも、エポック社がCVにどれだけ情熱をぶつけられたのかをうかがった方がおもしろいかなと思うんです。それで、CVですが、1チップマイコンシステムではなくて、ROMもRAMも分離された本格的なマイコンシステムでいこうという案はなかったんですか?

【堀江】 もうすでにCV以前に商品が出ているわけですから、その資産を生かしたいってのがありましたね。
やっぱり、いきなりCPUとROMを分けるってのはできなかったですよ。テレビゲーム用のLSI自体が1チップになっちゃってるわけだから、そこからバスを分けてROMをつけるというのは、当時の技術では難しかったんですよ。
これ、ビット数多いですよね(48ビット)。だからそれなりに高速ではあったと思うんですよね。1命令で命令とジャンプアドレスとかレジスタの内容とかを読み書きにいけるから。それをROMでやろうとすると、8ビットのROMがついているとすると4倍遅くなっちゃいますから。読み込み速度が。

あと、不安定だったと思うんですよね。バスのドライブ能力ってのがあるんですけど。外部にROMをのせた場合。当時、マイコンを置いて、別にROMを置くってのはそれだけでお金がかかっちゃうし、今だったらCPU自体のドライブ能力があるから、そのままでもつなげられるんですが、当時はね、やっぱりひ弱なんですよ。ノイズのっちゃったり、誤動作の原因になるという。
1チップの中に電気が流れているのと、ここからここまで(寺町注:10cmくらい)ひっぱってくるってのは、もう全然違うますからね。LSIの中の微弱な電気をやるわけだから。

【寺町】 その思想は、まず過去の資産ありき・・だから?

【堀江】 その発想があったから、スーパーカセットビジョン(以下SCV)の時に本格的なマイコンになったわけです。そういう意味でCVはもう限界だったわけですよね。本当は1チップマイコンじゃないものをやりたかったわけです。でも、同時にやっちゃうとCVの方はストップになっちゃうから、これはこれで走って、次のSCVはSCVで走ろうとがんばったわけです。
当時いい商売になったわけです。CVの頃は他にライバル機もいなかったし。ファミコンが出るまでは(笑)。だからこれ、やめられないですよね。ただ、その間にも、次のやつを研究していたわけです。

【寺町】 そうか、つまりテレビ野球からCVまでがひとつの流れなんですよね。

【堀江】 そうですね、これはこれで商品として完成、成熟した商品なわけで。

【寺町】 それとは別に本格的マイコンシステムで行こうという案があった。

【堀江】 ええ、それはそれでもうスタートしていたわけです。1チップマイコンを分割するのはもう不可能。これはこれでやっちゃおうと。で、最後は¥5,000、カセット¥5,000でカセットビジョンJr出したんです。

寺町

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