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2003年夏の新作映画メモ
『マトリックス・リローデッド』 『THE EYE』

『ミニミニ大作戦』 『ターミネーター3』 『ハルク』

『デッドコースター』 『パイレーツ・オブ・カリビアン』

『コンフェッション』 『ワイルドスピードX2』

『呪怨2』 『仮面ライダー555 パラダイス・ロスト』


『マトリックス・リローデッド』

 監督:アンディ&ラリー・ウォシャウスキー
 出演:キアヌ・リーヴス キャリー・アン・モス ローレンス・フィッシュバーン ヒューゴ・ウィービング モニカ・ベルッチ

 オタク新世紀の代表的映画、ついに続編登場!

 「救世主」覚醒から数カ月。巨大コンピュータ「マトリックス」から解放される人間は増え続け、人類とコンピュータの闘いは、人類優勢に進みつつあるかに思われた。だが、人類の拠点「ザイオン」に、現実世界での「マトリックス」の兵器「センティネル」の大群が迫っているとの情報が入る。モーフィアス(ローレンス・フィッシュバーン)は「予言者」の新たな予言、「救世主が「ソース」に辿り着けば全ては終わる」を信じ、ネオ(キアヌ・リーヴス)、トリニティ(キャリー・アン・モス)と共に、ソースへの入り口の鍵を持つ「キーメイカー」を探す。だが、無数に増殖するエージェント・スミス(ヒューゴ・ウィービング)の追跡をかわし、「ソース」でネオが見たものは予想もつかない過酷な真実だった。

 何年も待たせやがったシリーズ続編。作中ではあまり時間は経ってないのですね。前作のおさらい一切無しで、いきなり始まるストーリー。シリーズ続編でストーリー的に独立していないなら、一本の作品中で設定や流れを理解出来るように構成すべきだ、との意見を見たことがありますが、このビデオやDVDの溢れかえった時代にそんなことを言ってもねえ。最初から三作合わせて6時間映画だったら文句はないのか? しかし仮にそうだったとしても、今作の序盤はやや台詞に頼って説明的です。前作でさわりしか出なかった新設定が続々登場。とてもじゃないが映像ではフォローしきれない。もっともアクション部分の展開など、スパッと映像だけで見せてくれるところも多く、ああ苦労してるなあという印象。

 おひさしぶりのネオ=キアヌ先生。冒頭では、いきなり三人のエージェントと対戦。救世主の力は強化されたエージェントを凌ぎ、圧勝。ですが、この部分のファイトシーンはいささか迫力に欠け、ああキアヌだしまあこんなもんか……と思ってしまいます。が、続く「予言者」の護衛「セラフ」(演ずるはジェット・リー作品にも多く出演したベテラン、コリン・チョウ)との蕎麦屋の机の上での対決、そして続くエージェント・スミスとの百人組み手では、前作を遥かに凌ぐ手数と多彩な技を披露。長足の進歩を遂げているのがわかります。同じようにキャリー・アン・モス、フィッシュバーンにもそれぞれ新技が用意され、武術指導ユエン・ウーピンとディオン・ラムはまさに絶好調。スミス以外のエージェントに勝てるのはネオだけで、普通の人間である他の二人が一対一でも苦戦するところなど、ファイトシーンが設定をきっちり描いているところもよし。

 登場人物も非常に多く、いくつもの思惑や力関係が入り乱れ、まだまだいくつもの謎が隠されている状況、とりあえずだいたい把握しているつもりですが、完結編はそれが全て収束に向かうのか、あるいはさらに混沌とするのか。正直、次を観てみないと今作の評価は定まりませんね。ラストシーンはひどかった! 謎が謎を呼んでこれからさらに盛り上がるかと思われた矢先、突然「続く」。殺すぞ! かなり長尺の映画ですが、そのまま続けて二時間半やってくれても全然文句はなかったのになあ。とりあえず一作目は必ず押さえておいて、つなぎとして楽しみたい映画です。

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『THE EYE』

 監督:オキサイド&ダニー・パン
 出演:アンジェリカ・リー ローレンス・チョウ キャンディ・ロー

 タイと香港合作のホラー映画。

 幼い頃、盲目となった女が、角膜手術を受け、視力を取り戻す。だが、甦った目に映る奇怪な姿の数々。死んだはずの人間、その場に存在するはずのないもの、記憶にない光景、そして使者を連れ去る黒い影。女は移植された角膜のドナーを捜すが、真相の果てにあったものは、辛い過去と、あまりに過酷な運命だった。

 聾唖の殺し屋を主人公にした『RAIN』を監督したパン兄弟が、今度は盲目の女性を主人公にしたホラー映画に挑戦。ちょっと演出に頑張り過ぎて浮いてしまった感があった前作に対し、今作の恐怖描写は冴えに冴えています。観てる途中で「帰ろうかな……」とちょっと思ってしまった。やってることは「背後に知らない間に人が立ってる」とか、変哲のないものなのですが、間の取り方がひたすら怖い上に、モンスター映画と違って幽霊の行動の目的が観てるこちらに明確でないので、先の手が読めない。

 ハリウッドで昔、マデリン・ストウ主演の『ブリンク』という映画がありました。これも角膜移植もの。移植されたのが殺人の被害者の角膜だったので、殺人者の姿がフラッシュバックする、という内容。今作とはドナー探しが主題になるのが同じで、ストーリーがドナーが何者であるか、というところに帰結するのが読めて来ます。中盤から展開の予想は段々とついてきて、ようやく恐怖感も薄らいできます……が、真相が明らかになった直後、恐るべき大カタストロフが!

 主演のアンジェリカ・リーは、中谷美紀と本庄まなみを足して二で割ったらちょうど良くなった、という感じの顔。結構日本人受けしそうだなあ。劇場版『呪怨』などよりよほど怖いので、ホラー映画ファンにはちょっとオススメの映画です。

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『ミニミニ大作戦』

 監督:F・ゲイリー・グレイ
 出演:マーク・ウォールバーグ シャリーズ・セロン エドワード・ノートン ジェイソン・ステイサム

 ひさびさウォールバーグ主演作。

 水の都ヴェネチアで、大金庫強盗に成功したチャーリー(マーク・ウォールバーグ)とその一味。だが、メンバーの一人スティーブ(エドワード・ノートン)の裏切りにあい、金塊を根こそぎ奪われてしまう。辛うじて生き延びたメンバーは、スティーブの家を襲って金塊を奪い返す計画を立てる。計画の鍵は……ミニクーパー?

 タイトルからしてミニクーパーが主役の、言わば『タクシー』のようなカーチェイス映画を想像します。が、実際にはミニクーパーはキーアイテムではありますが、ストーリーの骨子は金塊強奪の作戦と駆け引きを描いた、『オーシャンズ11』に似た内容。主要メンバーは五人ぐらいなので、ずいぶんとまとまりも良く、こっちの方が面白いくらいです。

 メンバー五人の役割担当は、大ざっぱに言うと、作戦、金庫破り、運転、爆弾、ハッキング。これらを代わる代わる描くからテンポも悪くないし、作戦の手順もきっちりと描かれます。が、一つ問題が。主役のマーク・ウォールバーグが作戦立案担当なのですが、作戦が進行していく流れを全て決行してからの映像で見せているため、実行段階で非常に影が薄く見える。作戦を実行しているのは実質他の四人なので、一人だけ何もしていないかのよう。作戦を考え付いてごちゃごちゃと説明するシーンなどを入れると、確かにテンポも悪くなるし、映画的には正解だと思いますが、主役が活躍しないのは可哀想。逆に言うと何もしてなくてもカリスマ性を発揮できる、というわけでは決してないのが、ウォールバーグがウォールバーグである所以なのですが……。

 近作『トランスポーター』で、イギリス映画(『スナッチ』『ミーン・マシーン』)の汚い感じの人から、スタイリッシュヒーローへと大躍進を遂げたジェイソン・ステイサム。アメリカ映画に舞台を移して、おフランス野郎の手を離れてまた汚い人に戻ってしまわないかちょっと心配でしたが、どうやらかっこいいまま。『トランスポーター』の功績は果てしなく大きい。

 他には珍しくシャリーズ・セロンが脱がない、エドワード・ノートンがしょうもない役柄、など。ほとんどゲスト扱いで最初に死んでしまうドナルド・サザーランドですが、しかし彼は渋い。人生観、泥棒観などをウォールバーグに語り、彼をかばって撃たれて死にます。いや、渋い。最後のカットでは、湖に浮いてる背中。いやいや、これも渋いです(ほんとか?)。

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『ターミネーター3』

 監督:ジョナサン・モストゥ
 出演:アーノルド・シュワルツェネッガー クレア・デーンズ クリスタナ・ローケン

 超人気作品、ついに第三作登場! 

 「審判の日」は何ごともなく過ぎた。救世主となるはずだったジョン・コナーは、平凡な人間としてその日暮しの日々を過ごしていた。だが、消滅したはずの未来から、新たなターミネーターが現れる……。

 シュワルツェネッガーの出世作、昨今の彼はまるで作品に恵まれず、激しく落ち目でありました。今作は、そういった状況を挽回するための、まさに最後の切り札か……? シリーズの正当な続編であるべき本作なのですが、まず企画からして無茶。ストーリーは前作で完全に決着してるので。そこからどう話を展開させるにせよ、どうしても後付けの印象が拭えなくなる。「審判の日」は回避されたわけではなく、遅らされただけだった、というのがその後付け設定なのですが、なぜ遅らされたか、というのさえ作中では提示されません。釈然としないまま展開するストーリー。

 一作目、二作目のパロディ的シーンがいくつも展開されます。が、今回のターミネーター=シュワは、その一作目、二作目とは別個体になっているはずなので、パロディが天然系ばかりであまり機能していない。どうもモストゥはあまり真面目にやってないなあ……なにやっても批判されるんでしょうが。カーチェイスシーンの迫力は、モストゥらしくていいんですが。

 ただ追っかけ合って時間切れを待つだけ、という中身もへったくれもないストーリー。主人公のジョン・コナーは、核戦争後は救世主となるべき人間ですが、平和な世では単なるダメ人間。二作目では、顔はいいけど犯罪者予備軍のワルガキ。こういう人間が、いかにして革命軍のリーダーとして成長して行くか、その片鱗だけでも描いていたら良かったのですが、そういう人物描写は欠片もなし。ここらへんを掘り下げれば面白くなっただろうに。

 「振り出しにもどる」ラストは、何となく『エイリアン3』を思い出しました。カリフォルニア知事は今後映画出ないそうなんで、今作はシュワ最後の作品になるかも。

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『ハルク』

 監督:アン・リー
 出演:エリック・バナ ジェニファー・コネリー ニック・ノルティ

 またアメコミの映画化。

 ブルース・バナー(エリック・バナ)は化学者。細胞の再生をテーマに研究を進めている。だが、彼の出生には恐るべき秘密が隠されていた。かつて軍で同じく細胞の再生を研究していた父。父は自らの肉体を実験台にし、変異した遺伝子を息子に受け継がせていたのだ。ブルースの怒りが頂点に達する時、封印されたもう一つの人格、緑色の何かが目覚める!

 最近多いアメコミの映画化ですが、なぜにアン・リー? 『グリーン・デスティニー』の映像美が印象的だった監督ですが、『シビル・ガン 楽園を下さい』のような若者の成長物語も撮っている。二つが融合すれば素晴らしい作品になる……かな?

 主人公を演じているエリック・バナは、全く無名の俳優。スクリーンに出ていても、目をぎょろぎょろとさせて神経質な印象。全く惹かれるものを感じません。ジェニファー・コネリー演ずるヒロインがなぜこの男とつき合ってたのか、まず謎。彼の内に眠る暴力性に惹き付けられたとか(爆笑)、そういう理由付けが欲しかったなあ。CGのあのハルクの顔に似てるからって選ばれたんじゃないか、と勘ぐりたくなるこの男、ともかくカリスマに欠ける。

 トラウマ(ありきたりな奴)に苦しむ主人公の苦悩、内なる暴力性の表出、などなど多彩な感情描写もありますが、なんか肝心なところを「怒り……力……そして自由」などと台詞で言っちゃったりして、興醒め。何より隠された破壊衝動やもう一つの人格でありテーマの象徴である「ハルク」が、折り合いをつけるでも抹消されるでもなくただ単に存在し続けてしまうあたり、まるでドラマになってない。スタイルもストーリーにも欠ける、まるでアン・リーらしくない仕事。

 あとは破れないパンツでも見て笑うか……。見ながらほぼ熟睡寸前、ワースト級です。

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『デッドコースター』

 監督:デヴィッド・リチャード・エリス
 出演:アリ・ラーター A・J・クック

 『ファイナル・デスティネーション』の続編。

 かつて、回避したはずの飛行機事故。だが、墜落した飛行機に乗るはずだった者たちが、次々と謎の変死を遂げた。運命は変えられない。事故で死ぬ運命だった者は必ず死ななければならない。新たな惨劇を生んだハイウェイ事故、予知夢によって生き残った者を、再び死の運命が襲う。必死に生き残る術を探す彼等に、道はあるのか。

 前作も強烈な殺人描写が売りだったはずなんですが、監督のセンスか、続編ならではの過剰さか、今作のキャラクターの死にっぷりは、まさに目を覆わんばかりの残虐さ。まあ単純にこれだけを観る映画なんで、これがつまらんかったらどうしようもないんですがね。

 しかし中でも、冒頭のハイウェイシーンの連鎖爆発は、ハイライトでしょう。『マトリックス・リローデッド』の同じくハイウェイのチェイスを演出した監督だけに、コースの長大さと車の位置関係を、意識させずに観客に把握させる。その上での惨劇描写。小技が効いてます。

 他に語るべき内容が思い付きません。単純に、人が派手に死ぬシーンを観たければどうぞ……。

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『パイレーツ・オブ・カリビアン』

 監督:ゴア・ヴァービンスキー
 出演:ジョニー・デップ オーランド・ブルーム キーラ・ナイトレイ ジェフリー・ラッシュ

 ジェリー・ブラッカイマープロデュースの超大作。

 海賊船ブラックパール号……。伝説にさえなった大冒険の主人公、ジャック・スパロウ船長(ジョニー・デップ)の物であったはずの船は、今や撃たれても斬られても死なない不死身の海賊たちの乗る、恐るべき私略船と化していた。その海賊船の求める、ただ一つの秘宝とは……。かつて漂流中を救われたウィル・ターナー(オーランド・ブルーム)は、鍛冶屋の見習いとして修行に励む日々を送っていた。その彼の店に飛び込んで来た、派手な扮装の謎の男、その男こそが、伝説の大海賊ジャック・スパロウ。ウィルは自分の出生の秘密と海賊の正体を知り、否応なく冒険に巻き込まれて行く……。

 ブラッカイマープロデュースを前面に押し出した宣伝に、『アルマゲドン』などの大作感を期待しましが、今作はもう一つのブランドである「ディズニー」色が大きく出た内容。なにせ元ネタがディズニーランドのアトラクションですから……。故にこの映画も、大人も子供も無難に楽しめる、ファミリー向けの映画になっています。特徴として、ほとんど人が死なないこと、真性の悪役が一人もいないことが挙げられます。

 が、流行のCGアニメにありがちな嘘っぽい空疎さは感じられず、セットとCGを上手く組み合わせ、娯楽作品としては手堅くまとまった印象。ディズニーブランドは正面切って大作作る能力はないと思っていましたが、今作の楽しさとツボを外さない作りは『飛べないアヒル』『タイタンズを忘れない』など定型のスポ根映画の系譜につながるパターンではないでしょうか。

 加えて『ロード・オブ・ザ・リング』『ロード・オブ・ザ・リング 二つの塔』以来、人気沸騰中のオーランド・ブルームと、天才俳優ジョニー・デップのいわゆるイケメン二人を起用! 商売としては、手堅いにもほどがある作り。ただ、ブルームにしろ、一時の人気だけで起用されただけでないスター性がやはりあるし、デップの演技力は言わずもがな。ここらへんにハリウッドの底力と層の厚さを感じずにはいられない。日本じゃあ、アイドル映画とか言うと、観るに耐えない惨たる出来になりますからねえ。

 ジョニー・デップ演ずる海賊のボスは、ひょろひょろの優男で口ばかり上手い男。マッチョ志向のイメージとは対極ですが、当時の海賊が腕っぷし以外に商才も求められたことも考えても、そうおかしなキャラクターではないかな。狂人のようにさえ思える、異様に胆の据わった人物として描かれているのも好印象。不死身の海賊に対抗するため、自らも呪いを受け入れ生ける屍になるところなども、その好例。直後に呪いが解かれることを計算に入れているながらも、この男に取っては命すらも一つの道具に過ぎないのか……。

 大ヒットを受けて続編も作られるらしいですが、次作では、今回三隻しか出なかった船が、もっとたくさん出てくる事を期待かな。

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『コンフェッション』

 監督:ジョージ・クルーニー
 出演:サム・ロックウェル ドリュー・バリモア ジョージ・クルーニー ルトガー・ハウアー

 クルーニー初監督作品。

 最近あらゆる作品でつるんでるスティーブン・ソダーバーグに影響されたか、ついにジョージ・クルーニーが監督に進出。上手い奴は何やらせても上手いものですが、果たしてクルーニーはどうか?

 原作は、伝説と言われたテレビプロデューサーの男が書いた自伝。数々のヒット番組をものにした彼には、実は誰も知らない裏の顔があった……彼は実はCIAのスパイでもあり、殺し屋として数々の人間を手にかけていたのだ! ……とまあ自伝とは名ばかりの完全なデタラメもといフィクションなわけですが、なんとなくこの設定、数学者として研究に従事する傍ら暗号解読にいそしんでいた『ビューティフル・マインド』に似てるなあ……。『ビューティフル・マインド』の主人公ジョン・ナッシュの裏の顔は、実は彼自身の病気による妄想に過ぎなかったことが明らかになりますが、今作ではそこらへんはどうか……。結論から言うと、最初からフィクションとして書かれてるんだから、映画の中でも完全に事実として処理されてます。

 だからまあ、要は普通の映画と同じく、これが単にフィクションとして面白いかどうか、というところに問題は帰結するわけです。それがどうかというと……面白くないなあ……。主演のサム・ロックウェル、若手の中ではかなりの、ハリウッドではトップレベルの演技派ではないかと思われる実力を持ってます。アル中でおかしくなりかけたテレビプロデューサー役、実に素晴らしい。精神の不均衡と、失われるバランスに比例するように肥大化する才能を見事に演じ、ヒットをつかむ手腕を持つ製作者としてのキャラクターの強さと危うさを見事に演じています。作品の半分を占める番組制作の部分は実に面白い。ところがこの男が夜の街に出て殺し屋を始めた瞬間、映画は突然輝きを失う。どっかで見たような気取った画面作りと、現実味のない……番組制作ほどのリアリティのかけらさえない殺しの場面。

 あまりの稚拙さに、「これはヤク中の妄想だったんだよー、じゃーん」というオチまで期待しましたが、それはなし。暗にそれを匂わせている、と解釈できないでもない部分はありますが……それだといまいちエンディングが生きないんだよな。どうしてこんなことになったんだろう? 「殺し屋」という設定に、男の子なら誰もが憧れるかっこいいイメージが漂うあたり何かいじましい感じもするし、伝説のプロデューサーなら本当の自伝でいくらでも面白い話があるだろうに、なぜわざわざこんな幼稚な設定を持ち込んだのか? とりあえずフィクションとしては単純に面白くないです。オススメしません。

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『ワイルドスピードX2』

 監督:ジョン・シングルトン
 出演:ポール・ウォーカー コール・ハウザー

 『ワイルドスピード』の続編です。

 ビッグスターになりながらも何かと問題の絶えないヴィン・ディーゼル。その彼の出世作の一つである『ワイルドスピード』の続編……ってディーゼル出てないよ。『トリプルX』の続編も断ったらしい。が、『ピッチブラック』の続編には出るらしい。いったい彼の続編出演の基準って……。

 それはそれとして、今作の主演はポール・ウォーカー。二枚目さ加減は同世代の若手と比してもワンランク上か、前作の青臭さが抜けての登場です。『ハートブルー』とまったく同じ話だった前作では、強盗団を追う若手刑事でしたが、強盗のボスもといディーゼルを見逃したことで犯罪者となり、警察を辞めてレーサーとして今じゃストリートのカリスマ……。『ハートブルー』でFBI辞めたキアヌが、サーファーになってるようなものでしょうか。なんとなく前作ではへたれたイメージがありましたが、今回は、助手席に座った女の横顔から目を反らさず運転する、という荒技を披露。いつのまに腕を上げたんだろ。

 その元刑事を捕まえる昔の上司。彼に犯罪組織の運び屋をやらせ、証拠をつかむ代わりに罪を帳消しにしてくれるという……。さっそく昔の相棒を誘い出した主人公は、組織のボスの信頼を勝ち得ようとするのですが……。まあ話と言えば走っちゃあばれそうになり、レースしちゃあばれそうになり、の繰り返し。単純なものです。この映画の眼目はやはりカーレースシーン。前作よりも長い距離を走る上、CGを多用した作り。迫力や、もっと言えば完成度は上がってると思いますが、やや生のリアリティには欠けたかな?

 なんとなく前作を踏襲した設定なども、わりと好感が持てました。かつて『ピッチブラック』でヴィン・ディーゼルにしばき倒されたコール・ハウザーが、今作でその弟分のポール・ウォーカーにもしばき倒されてしまい、可哀想……って全然関係ないか。まあ暇つぶしに。

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『呪怨2』

 監督:清水崇
 出演:酒井法子

 『呪怨』の続編です。

 おなじみキャラが大殺戮絵巻を繰り広げる、シリーズ化してどんどんマンネリ化していくこの作品、ビデオ版一話目の緊張感はいったいどこへ行っちゃったんだ? 今回は一応のりピーを主人公に据え、オムニバス形式を踏まえつつも、ストーリーに一本筋を通しています。そこそこ緊張感が続き、先の展開(お話がというより、キャラクターに感情移入して、この人はいったいどうなっちゃうんだろと思ってしまう)この構成はまあ成功していると言えるでしょう。

 しかしシリーズ通して見てると、怖がらせる手法もおどかすタイミングも、全部先が読めてしまい、後が続かないんですね。恐怖の館もなんか間取りが頭に入っちゃったよ……。が、首吊り死体を俊雄君がぶらぶら揺らすシーンには大爆笑。このシーンにつなげる伏線の大袈裟さと、シーン自体の悪趣味さが最高。俺がこのシリーズを評価しているのは、このシーンに凝縮された趣味の悪さ、人を物のように扱う乾いた感覚、一瞬のドッキリを撮るために費やされる手間と熱意、それだけなんです。今作でそれを感じたのは、唯一ここだけ。残念だなあ。

 総じて劇場一作目よりは良かったかな……。ハリウッド版が楽しみですね(ホントか?)。

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『仮面ライダー555 パラダイス・ロスト』

 監督:田崎竜太
 出演:半田健人 村上幸平

 毎年のことですが、今年もテレビ版をまったく見ずに劇場版に挑戦! だってライダー好きなんだもんよー実は。特撮をたまに補給しないと、変身ヒーローを脳に充填しないと、オレは生きて行けないのだ! だったらテレビ版観ろって話ですが、テレビはちゃちなので。特撮やアクションが、ということではなく、同じセットの使い回しなど予算の都合がストーリーにもろに影響し、弾けないから。

 そんなわけで、そういった予算の制約がかなり軽減される劇場版は、この二年に公開された映画版の「テレビ版とはパラレルワールド」になっているという設定も相俟って、面白くなる可能性を多分に秘めていると思うのです。まあ全然予備知識なしで観ると、完全には楽しめないんでしょうがね。

 テレビでは主人公が人類の進化型と言われる「オルフェノク」という人種と闘ってますが、映画版はこのオルフェノクが人類を支配し滅ぼす寸前まで行っているという、まさにパラレルワールド設定。人間はゲリラとなって頑張ってますが、敵は一警備員まで人間より遥かに強力なオルフェノク、はっきりいって勝ち目ゼロ。しかしそれでもヒロインは、オルフェノクのトップである企業「スマートブレイン」に敗れ行方不明となった「555」が救世主として帰還する事を信じている……。その一方、「スマートブレイン」本社に隠されているという、恐るべき力を持つ「帝王のベルト」とは一体? と、行方不明の主人公と「帝王のベルト」この二つを軸にして話が進み、最終的には両者が対決する流れは、なかなか無理がなく心地よいです。

 そしてそこに絡んでくるのが、もう一つのベルトである「カイザ」。人間たちの数少ない対オルフェノクとしての戦力である「カイザ」とその持ち主である草加雅人。しかしこの男はどうしようもなく嫌な奴で、自分の強さをいいことに貴重な食料であるスープを一人お代わりし、行方不明の主人公を思い続けるヒロインに横恋慕しているらしい。ゲリラたちは「帝王のベルト」を求め、ヒロインは「555」を待ち……そんな二者の狭間で、この男はこう言い放つ。

「555(ファイズ)も帝王のベルトも必要ない。救世主は、このオレだ」

 おいおい、最高じゃないですか、この自意識過剰な台詞。いいなあ、すごくかっこいいなあ……と思ってたら、すぐに「帝王のベルト」の一つである「サイガ」に敗北し、映画前半にして脱落! しょぼっ! こういうワルなキャラクターがいたほうが、話がややこしくなって面白いのになあ。その後、彼の死に関して誰も触れないのも悲しい。

 そういうわけで、後半は興味が半減してしまいましたが、後に観たテレビ版では動きがないヒロインも健気に頑張っているし、クライマックスも面白い。いつもKー1やってるさいたまスーパーアリーナで、囚われた「555」と、二つの帝王のベルト「サイガ」と「オーガ」が大激突! エキストラ一万人で場内は満席。客全員オルフェノクという設定なので、誰も主人公を応援していない! 『キン肉マン』とかとはえらい違いです。ここで大ブーイングもしくは「殺せ」コールの合唱があれば、完璧だったのですが。昔あった『幽遊白書』の暗黒武術会みたいな感じですな。

 これで草加くんが最後まで死なずに頑張ってくれれば、最高だったのになあ……ってあいつがいると話が収束しそうにないですが。まずまず面白かったです。

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