百蔵山から高川山;右手採石場の背後に屏風岩(右)・大岩(黒い山)
屏風岩・大岩から
高川山
いわゆる中央本線沿線の山と呼ばれるもののうち、高尾山を除けば扇山と高川山が人気の双璧となっているようだ。扇山は古くからハイキングの対象とされてきたが、高川山は1978年に出た茗渓堂の『静かなる山』に載っているくらいで、30年前くらいまではひっそりしていたらしい。駅から歩き出して短時間で山頂に立てて、しかも眺めが素晴らしく良いので、いつの間にやら隆盛を迎えて今日に至っている。


しかし人気の山であるということは騒がしい山であるとも言える。手軽でしかも好展望とあればおおぜいのなかを歩いて雑踏のような山頂に出ることになるかもしれない、そう考えるとなかなか足が向かないでいた。それでも行きたくはあったので折にふれ地図を眺めているうち、初狩駅から直接山頂を目指すのでも富士急行の田野浦駅か禾生駅から上がるのでもなく、西隣の屏風岩・大岩を踏んでから稜線をミニ縦走して山頂に至るものがあることに気づいた。これは面白そうだ。
こうしてガイドマップの朱線だけを頼りに行ってみたが、屏風岩・大岩から高川山へのコースは予想以上にしっかり踏まれていて、いくつかは文字が消えていて読みにくいものの要所に標識板もあり、コース取りに不安のあるものではなかった。ただ越えていくピークが小さいとはいえ急な上り下りがあって、ところによってはかなり滑りやすい。小さな子供連れでは来れないところだろう。
しかしこれを補ってあまりあるのは一に行路のところどころで得られる周囲の展望で、三ツ峠山鶴ヶ鳥屋山、笹子雁ヶ腹摺山、お坊山滝子山、黒岳、雁ヶ腹摺山の眺めがことに良い。あるものは鋭角的で、あるものは重厚、じつに豪華だ。ついで特筆すべきは、コースそのものの変化の多さ。短い行程のなかに展望のピーク、ちょっとした岩場、やせ尾根、気持ちの良い雑木林の平坦路などが詰め込まれていて飽きさせない。しかも人通りが少なく落ち着くとくれば、満足この上なし。高川山からの周囲遮るもののない大展望がフィナーレに来るのだから、よくできた山歩きと言えるだろう。
屏風岩から三ツ峠山(左)と鶴ヶ鳥屋山
屏風岩から三ツ峠山(左)と鶴ヶ鳥屋山
初狩駅から高川山まで屏風岩・大岩を経由して行くと、休憩込みで3時間半、休憩なしだと2時間40分くらいだった。出発が遅かったせいもあるだろうが、登り始めに単独行者と二人組の2パーティにすれ違い、屏風岩でクライマーの話し声を聞き、高川山山頂でひとり山を眺めていた地元のかたに会っただけの、静かな山だった。
2004/2/1

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