分析の手順 |
mdbUA2010にもとづく都市の人口推移については,すでに2016〜2018年のプロジェクトによって,以下のような知見が明らかになっている.
すなわち,1970年から2005年までの長期の趨勢が確認できる日本測地系のデータにもとづく分析の結果,全国の118の都市地域は,次のような5つの人口推移のパタンを示している.
1.拡大都市(常に人口が拡大している都市)
2.持続都市(ほぼ同じ人口を維持している都市)
3.停滞転化都市(途中から人口の増加が停滞する都市)
4.縮小転化都市(途中から人口が減少し始める都市)
5.縮小都市(常に人口が縮小している都市) 詳しくはここを参照
他方,世界測地系のデータについては,1995年以降利用可能であり,2010年以降公開された2015年と2020年のデータも,世界測地系のみである.そこで,上の日本測地系による長期の分析で得られた類型ごとに,1995年から2020年までの世界測地系による人口推移を見ることで,人口推移のパタンにどのような変容があったかを確認することにしたい.
世界測地系と日本測地系のデータの違いについては,ここを参照
1.拡大都市の変容 |
日本測地系のデータによる長期の趨勢分析において,1970年から2005年まで,常に人口を増加させてきた都市地域は46ある.これらの都市地域について,世界測地系データで1995年から2020年までの推移を確認した.その結果,2015年と2020年のデータを加えても,引き続き継続的な増加が確認できたのは24,これにたいして増加が確認できなかった都市地域が22であった.
他方,日本測地系のデータでは人口の増減が少ない持続都市に分類されていた都市地域のうち,5つの都市が世界測地系のデータでは人口増に転じていた.したがって,人口増が確認できる拡大都市は29となった.それでも,日本全国の人口減少が始まった2005年以降,拡大都市は半分近くに減ったことになる.
それでは,どのような都市が拡大を維持し,いかなる都市が人口を維持できなくなっているのか.
まず,人口増を維持している都市を見てみると,3つのタイプに分けることができる.1つは札幌・東京・名古屋・福岡などの大都市地域である.2つめは豊田・安城・岡崎というトヨタ関連の都市地域である.3つめは仙台・岡山・倉敷・広島・松山などの地方中核都市の一部である.
次に,人口が頭打ちないし減少に転じている都市地域については,はっきりとしたある傾向が見られる.関東ないし関西の大都市圏の周辺に位置している都市地域である.関東では成田・牛久・筑波・深谷・入間・青梅・厚木・秦野・平塚であり,関西では橿原・大和高田・三田である.
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放送大学 教養学部
社会と産業コース
玉野和志
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