従業員を採用したときの手続
□ ハローワークへ
「雇用保険被保険者資格取得届」をハローワークへ届出ます。なお、この届書には従業員の個人番号の記載が必要です。採用した従業員が、雇用保険被保険者証を紛失し被保険者番号が分からない場合は、取得届の備考欄に前職の会社名を記入し、ハローワークで被保険者番号を探してもらいます。
ハローワークから交付された「雇用保険被保険者資格取得等確認通知書(被保険者通知用)」と「雇用保険被保険者証」は従業員に渡し、「雇用保険被保険者資格取得等確認通知書(事業主通知用)」は会社で保管します。
(様式ダウンロード)ハローワークインターネットサービス
(添付書類の省略等)厚生労働省のリーフレット
□ 事務センターへ(協会けんぽの場合)
「健康保険・厚生年金保険被保険者資格取得届」を事務センターへ郵送します。なお、この届書には従業員の個人番号の記載が必要です。なお、個人番号を記載することにより住所欄の記入を省略できます。
■ 以下の場合には、添付書類が必要です。
(1) 60歳以上の従業員が、退職後1日の間もなく再雇用された場合
(2) 国民健康保険組合に引続き加入し、一定の要件に該当する場合
(詳細)日本年金機構のHP
被扶養者がいる場合は「健康保険被扶養者(異動)届」も併せて届け出ます。健康保険証は後日「協会けんぽ」から会社あてへ郵送されます。
【注】健康保険証が発行されるまで、通常2~3週間程度要します。資格取得後直ちに保険医療機関で診療等を受けようとするときは、年金事務所(郵送の場合は事務センター宛)へ「健康保険被保険者資格証明書」の交付申請を行い、当該証明書により医療機関で受診します。資格証明書の有効期間は20日間です。
(詳細)日本年金機構のHP
70歳以上の従業員を採用したときの手続
□ ハローワークへ
雇用保険の適用要件(1週間の所定労働時間が20時間以上であり、かつ31日以上の雇用見込みがあること)に該当する場合は、前項Q&Aにより「雇用保険被保険者資格取得届」をハローワークへ届出ます。
□ 事務センターへ(協会けんぽの場合)
70歳以上75歳未満の人を新たに雇用し、社会保険の適用要件(1週の所定労働時間および1か月の所定労働日数が、同一の事業場に使用される通常の労働者の4分の3以上)に該当する場合は「健康保険被保険者資格取得届・厚生年金保険
70歳以上被用者該当届」を事務センターへ郵送します。
【解説】厚生年金保険の加入は70歳(70歳の誕生日の前日)までです。70歳になると厚生年金保険の被保険者でなくなり、厚生年金保険料の支払いはなくなりますが、引続き厚生年金保険の被用者として65歳以上の在職老齢年金の仕組みが継続され、老齢厚生年金の調整が行われる場合があるため「厚生年金保険70歳以上被用者該当届」の届出を行う必要があります。
従業員が70歳になったときの手続
1 厚生年金保険(詳細)厚生労働省のHP
以下の(1)(2)の両方の要件に該当する被保険者が、在職中に70歳に到達した場合は、日本年金機構で厚生年金保険の資格喪失処理および70歳以上被用者該当処理を行いますので、事業主からの70歳到達届の提出は不要です。
(1) 70歳到達日以前から適用事業所に使用されており、70歳到達日以降も引続き同一の適用事業所に使用される被保険者
(2) 70歳到達日時点の標準報酬月額相当額が、70歳到達日の前日における標準報酬月額と同額である被保険者
なお、日本年金機構が70歳到達による厚生年金保険の資格喪失処理および70歳以上被用者該当処理を行った場合でも、日本年金機構から事業主宛へ「厚生年金保険被保険者資格喪失確認通知書」と「厚生年金保険70歳以上被用者該当および標準報酬月額相当額のお知らせ」が送付されますので、通知書等の内容を確認し、70歳到達日以降の標準報酬月額相当額が異なり、標準報酬月額相当額の訂正が必要である場合は、70歳到達届の提出が必要となります。
2 健康保険
75歳以降の後期高齢者医療制度に加入するまで引続き健康保険料の負担は必要ですが、70歳になると高齢受給者証が発行され、医療機関等の自己負担分が収入に応じ2割または1割負担となる場合があります。
75歳になると後期高齢者医療制度に移行しますが、75歳に到達すると見込まれる被保険者の在籍する事業所宛に、協会けんぽから健康保険被保険者資格喪失届の用紙が前月に送付されますので、「健康保険被保険者資格喪失届」により資格喪失手続を行います。
従業員が退職したときの手続
□ ハローワークへ
「雇用保険被保険者資格喪失届・氏名変更届」の氏名変更届の文字を抹消し届出ます。なお、この届書には従業員の個人番号の記載が必要です。従業員が離職票の交付を希望した場合は、併せて「雇用保険被保険者離職証明書」を提出します。
(様式ダウンロード)ハローワークインターネットサービス
□ 事務センターへ(協会けんぽの場合)
「健康保険・厚生年金保険被保険者資格喪失届」に、本人と家族全員の健康保険証を添えて事務センターへ郵送します。なお、本人が退職の場合は、健康保険被扶養者(異動)届は必要ありません。健康保険証を紛失したときは「健康保険被保険者証回収不能届」を添付します。
(詳細)日本年金機構のHP
■ 参考
1 所得税
年の途中で退職した場合は、1月から退職時までの「給与所得の源泉徴収票」を作成し税務署に提出するとともに、本人に交付します。また、退職金を支給した従業員に対しては「退職所得の源泉徴収票(税務署用)」と「特別徴収票(市町村用)」を作成し、税務署および市町村へ提出するとともに本人に交付します。なお、年の途中で退職した人(死亡退職者は除く)については年末調整を行いません。
2 市町村民税
(1) 4月1日までに退職した場合は「給与支払報告に係る給与所得者異動届出書」、4月2日以降に退職した場合は「特別徴収にかかる給与所得者異動届出書」を市町村に提出します。
(2) 未納税額の徴収方法は以下の通りです。
① 1月1日から4月30日までの退職…前年分の市町村民税の残額を給与または退職金から一括徴収します。
② 5月1日から5月31日までの退職…市町村民税の残額の徴収はありません。
従業員が転籍したときの手続
従業員に子会社や関連会社等へ移籍出向や転籍を命じることがあります。この場合、原則として労働者の同意が必要となりますが、手続ポイントは以下となります。
【例】4月1日付で転籍するケース
■ 雇用保険
資格喪失届の「離職等年月日」は3/31、転籍先の資格取得届の「被保険者となった年月日」は4/1となります。
「6喪失原因欄」は、退職金や年次有給休暇など転籍前の事業所の勤続年数を継続するような場合は「1」とし、離職証明書の発行手続は行いません。退職金や年次有給休暇を一旦清算し移籍するような場合は「2」とし、従業員が離職証明書を希望すれば発行手続を行います。
■ 健康保険・厚生年金保険
資格喪失届の「資格喪失年月日」および転籍先の資格取得届の「資格取得年月日」は共に4/1となります。
従業員の住所・氏名が変更になったときの手続は原則不要
□ 雇用保険
住所変更の届出は不要です。
なお、令和2年6月以降「雇用保険被保険者氏名変更届」による氏名変更の届出も不要となり、資格喪失届や育児休業給付・雇用継続給付の支給申請の際に新氏名を記入して届出る方式に変更になりました。
□ 健康保険・厚生年金保険
マイナンバー制度の導入により、平成30年3月から日本年金機構への被保険者の氏名変更届・住所変更届の提出が原則不要となりました。
(詳細)協会けんぽのHP
■ 氏名変更したときの健康保険証について
(1) 年金事務所は、毎月10日以降に住基ネットから前1か月間の氏名変更等の情報を取得し、2週間程度で年金事務所のシステムに反映させた後、協会けんぽにデータを送ります。協会けんぽで新しい健康保険証を発行し、概ね4日程度で事業所に届くとしています。ただし、タイムラグの関係で新保険証が届くまで、最長2か月程度要する場合もあるとしています。
(2) 事業所では新保険証と旧保険証を交換のうえ、協会けんぽの所属支部宛に旧保険証を返送します。
■ その他のポイント
(1) 被扶養者については、氏名変更の届出省略は行われないため、引続き届書の提出が必要になります。
(2) マイナンバーと基礎年金番号が結びついていない被保険者、海外居住者および短期在留外国人は、引続き届書の提出が必要となります。
(3) 年金手帳については、年金機構と住基ネットが連携しているため特に届出の必要はありません。氏名変更があっても旧姓のままの表記で構いませんが、気になるならご自分で「変更後の氏名欄」を訂正しておきます。
従業員の性別が変更したときの手続
家庭裁判所は、一定の要件のもと申立により性別の取扱いの変更の審判をすることができるとしています。
(参考)裁判所のHP
性別を変更したときの手続は以下となっていますが、以下は新潟市の管轄における手続です。他所の場合は添付書類等が異なることがありますので、所轄の行政機関等にお尋ねください。
□ ハローワークへ
・雇用保険被保険者にかかる訂正願/ダウンロード:新潟ワークナビ
(添付書類)戸籍謄本または戸籍抄本(コピー可)
□ 事務センターへ(協会けんぽの場合)
・性別変更申出書(様式第24号)/年金機構のHPからダウンロードできませんので、年金事務所から取得します。
(添付書類)戸籍謄本または戸籍抄本、年金手帳、健康保険証
なお、氏名も変更する場合は別途氏名変更の手続も必要です。
従業員が私傷病で休んだときの手続
関連Q&A「傷病手当金の手続」参照。
従業員が出産したときの手続
関連Q&A「働いている女性(健康保険の被保険者)が出産したときの手続 」参照。
従業員の扶養家族が増減したときの手続
従業員の扶養家族に以下のような事例があったときは健康保険の届出が必要です。なお、被扶養者の所得基準は、年収130万円未満(障害者および65歳以上は180万円未満)です。
(1) 子供が生まれた
(2) 結婚し夫または妻が被扶養者となった
(3) 被扶養者である夫または妻と離婚した
(4) 共働きの夫または妻が退職した
(5) 被扶養者である夫または妻もしくは子供が就職した
(6) 被扶養者が死亡した
(7) 被扶養者が75歳になり後期高齢者医療制度の被保険者となった
□ 事務センターへ(協会けんぽの場合)/ (詳細)日本年金機構のHP
「健康保険被扶養者(異動)届」を事務センターへ郵送します。なお、被扶養者の追加の際は、被保険者および被扶養者のマイナンバーが必要です。削除の場合は必要ありません。
上記(2)(3)(4)の配偶者の場合は、第3号被保険者欄も記載し「国民年金第3号被保険者関係届」も併せて届出ます。扶養家族が減じた場合は、当該家族の健康保険証を添付します。保険証を紛失したときは「健康保険被保険者証回収不能届」を添付します。
■ 異動届の取扱いの変更/(詳細)日本年金機構のHP
平成29年度税制改正により、被保険者(税法上の居住者/例:妻を扶養に入れる場合の居住者は夫)の合計所得が1,000万円(給与所得のみの場合は、給与等の収入金額が1,220万円)を超える場合は、所得税法上の控除対象配偶者に該当しないため、事業主の確認をもって収入確認のための証明書類の添付を省略することができなくなりました。
(関連Q&A)被扶養者の認定基準は厳しくなった
(関連Q&A)遡及した届出等における添付書類の廃止&被保険者本人の署名・押印等の省略について
(関連Q&A)出生児の被扶養者異動届にもマイナンバーは必要
健康保険の被扶養者認定にかかる海外特例要件の追加について
健康保険の被扶養者認定にあたって、これまでの生計維持の要件に加え、日本国内に住所を有することが要件として追加されました。ただし、留学生や海外赴任に同行する家族等の日本国内に生活の基礎があると認められるものについては、国内居住要件の例外(「海外特例要件」という。)として、被扶養者(異動)届または第3号被保険者関係届を届出ることで、被扶養者の認定が可能です。
□ 海外特例要件として該当するケースと必要な添付書類
(1) 外国において留学をする学生⇒ 査証(ビザ)、学生証、在学証明書、入学証明書等の写し
(2) 外国に赴任する被保険者(国民年金第3号被保険者を扶養する国民年金第2号被保険者を含む。以下同じ。)に同行する者 ⇒査証(ビザ)、海外赴任辞令、海外の公的機関が発行する居住証明書の写し
(3) 観光、保養又はボランティア活動その他就労以外の目的で一時的に海外に渡航する者⇒ 査証(ビザ)、ボランティア派遣期間の証明、ボランティアの参加同意書等の写し
(4) 被保険者が外国に赴任している間に当該被保険者との身分関係が生じた者であって、(2)に掲げる者と同等と認められる者⇒ 出生や婚姻等を証明する書類等の写し
(5) (1)から(4)までに掲げる者のほか、渡航目的その他の事情を考慮して日本国内に生活の基礎があると認められる者⇒ 個別に判断
□ 海外特例要件の届出が必要となるケース
(1) 被扶養者が海外特例要件に該当する場合
[例]被扶養者となっている妻や子どもが、夫の海外転勤の同行家族として出国した
(2) 海外在住者が、被扶養者認定と同時に海外特例要件に該当する場合
[例]海外勤務している被保険者と現地で結婚した
(3))海外特例要件に該当している被扶養者が、海外特例要件に非該当となる場合
[例]夫の同行家族とし出国していた妻や子どもが、夫の国内転勤により帰国した
□ 海外居住のまま海外特例要件に該当しなくなったため、届出が必要となるケース
海外特例要件該当者が、海外居住のまま海外特例要件に該当しない渡航(労働目的、渡航先への永住等)となった場合は被扶養者でなくなります。
□ 届書様式と添付書類
日本年金機構のHPからダウンロードできます。
被扶養配偶者非該当届とは何か
【解説】届出の対象者は、健康保険組合、国民健康保険組合および共済組合の第2号被保険者の被扶養配偶者であった人で、協会けんぽの第2号被保険者の被扶養配偶者であった人についての届出は不要です。
また、配偶者である第2号被保険者が退職などにより第2号被保険者でなくなった場合、および第3号被保険者が被用者年金制度に加入したことにより第3号被保険者でなくなった場合も届出は不要です。なお、死亡の場合の届出は別途必要となります。(参考)日本年金機構のHP
□ 被扶養配偶者非該当届が必要となるケース
(1) 第3号被保険者の収入が基準額以上に増加し、扶養から外れた場合
(2) 離婚した場合
2以上事業所勤務届とは何か
健康保険・厚生年金保険に関する届出です。
複数の会社に勤務する場合、全ての収入を合算した額により健康保険・厚生年金保険の標準報酬月額が決定されます。ただし、一般の労働者の場合は、各々の事業所で社会保険の加入要件(労働時間および労働日数が常用労働者の3/4以上)を満たさなければなりませんので、適用はレアケースと思われます。
「2以上事業所勤務届」は、2以上の法人の役員を兼任し、2以上の法人から役員報酬等の支払いがあるような場合に限られるようです。当該法人役員が被保険者に該当するか否かは、以下の日本年金機構から示された判断材料を参考としてください。
なお、従たる法人で非常勤役員であれば、通常は2以上事業所勤務届の対象外となると思われますが、複数の法人の代表取締役を兼任しているようなケースでは、代表取締役が非常勤であることは考えられず、2以上事業所勤務届の対象となると思われます。
□ 日本年金機構から示された判断材料
労務の対償として報酬を受けている法人の代表者又は役員かどうかについては、その業務が実態において法人の経営に対する参画を内容とする経常的な労務の提供であり、かつ、その報酬が当該業務の対価として当該法人より経常的に支払いを受けるものであるかを基準として判断されたい。
(1) 当該法人の事業所に定期的に出勤しているかどうか
(2) 当該法人における職以外に多くの職を兼ねていないかどうか
(3) 当該法人の役員会等に出席しているかどうか
(4) 当該法人の役員への連絡調整又は職員に対する指揮監督に従事しているかどうか
(5) 当該法人において求めに応じて意見を述べる立場にとどまっていないかどうか
(6) 当該法人等より支払いを受ける報酬が、社会通念上労務の内容に相応したものであって実費弁償程度の水準にとどまっていないかどうか
なお、上記項目は、あくまで例として示すものであり、それぞれの事案ごとに実態を踏まえ判断されたい。
□ 具体的な取扱い
新たに常勤役員等になった場合は、当該事業所にかかる被保険者資格届を事務センターへ郵送します。形式上は、複数の事業所において被保険者資格を取得することになります。次に、選択したい事業所を1か所選び、選択事業所を管轄する事務センターへ「
所属選択・2以上事業所勤務届」を提出します。
標準報酬月額は合算した報酬額をもとに決定されますが、保険料は各事業所で支給される報酬額によって案分比例された保険料額が、各事業所宛に納入告知されます。(参考)日本年金機構のHP
(関連Q&A)複数の事業所に勤務する場合の雇用保険はどうする
労働保険の年度更新とは何か
労災保険と雇用保険を総称して「労働保険」といい、労災保険料と雇用保険料を総称して「労働保険料」といいます。労働保険料は通常1年に1回、1年分を一括して支払いますので、これを「労働保険の年度更新」といっています。
□ 具体的な計算方法
(1) 毎年6月1日から7月10日までの間に、昨年度1年間(保険料算定期間)に全ての労働者に支払った賃金総額に基づき「確定保険料」として申告します。そして、前年に支払った概算保険料より確定保険料が多いときはその差額を支払い、少ないときは、その加納額を今年の概算保険料に充当します。
(2) 次に、当年度分の労働保険料を概算で支払います(これを「概算保険料」といいます)。通常の場合、確定保険料額と概算保険料額は同額になりますが、概算保険料の見込み額が前年度の賃金総額の50%以下か200%以上の場合は、その見込み額が概算保険料額となります。
【注】保険料算定期間とは4/1から3/31の期間をいい、この期間に実際に支払わなくても、この期間に支払いが確定した賃金を計算します。例えば、月末締め10日払いの場合は、前年の5/10から当年の4/10の間に支払われた賃金により、賃金総額を計算します。算定基礎届と異なる概念です。
(例)4/1から3/31の労働に対しての賃金=5/10から4/10に支払われた賃金額で計算
□ 申告と納付
(1) 継続事業(一般の事業)の場合は「労働保険概算・増加概算・確定保険料申告書(様式第6号)」に、申告書裏面の注意事項のとおりに記入し、金融機関を介して申告・納付します。
(2) 金融機関では、3枚綴りのうち「事業主控」を返却し、残り2枚は金融機関が受領します。
(3) 労働基準監督署で申告し、納付書により金融機関へ納付することもできます。また、電子申請により申告し、納付書により金融機関へ納付することも可能です。
■ 年度更新申告書計算支援ツール/厚生労働省のHP(ページ下部からダウンロードできます。)
健康保険・厚生年金保険の算定基礎届とは何か
健康保険料と厚生年金保険料は給与額から算出しますが、給与額は月ごとに変動するため、1年のうち、ある一定の期間の給与額をもとに標準報酬月額を決定し、この標準報酬月額に保険料率を掛け保険料を算出します。これを標準報酬の「定時決定」といい、この届出を「算定基礎届」といいます。
(参考)日本年金機構のHP
□ 具体的な計算方法
(1) 7月1日現在における健康保険・厚生年金保険の各被保険者について、4月、5月、6月に支払った報酬の総額を3で割った平均額を、健康保険、厚生年金保険の各等級に当てはめ、標準報酬月額を決定します。
(2) 定時決定により決定された標準報酬月額は、原則としてその年の9月から翌年8月までの標準報酬月額となります。
□ 算定基礎届の記載ポイント
(1) 算定基礎届には給与締め日に関係なく、4月、5月、6月に支払われた報酬額を記入します。労働保険の年度更新とは異なる概念です。
(2) 月給制の場合の支払基礎日数は、出勤日数に関係なく暦日数を記入します。
[例1]15日締め25日払いの支払基礎日数
4月(3月16日から4月15日までの暦日数)31日、5月は30日、6月は31日となります。
[例2]月末締め10日払いの支払基礎日数
4月(3月1日から3月31日までの暦日数)31日、5月は30日、6月は31日となります。
(3) 支払基礎日数が17日未満の月は除いて計算します。
[例]6月に10日の賃金カットがあった場合
4月は31日、5月は30日、6月は(会社が定める月の所定労働日数22日-10日)12日となり、4月、5月の報酬の合算額を2で割った額が平均額となります。
(4) 時給制・日給制の場合の支払基礎日数は、実際の出勤日数(有給を含む)となります。
□ 手続
(1) 年金事務所から事業所あてに、事前に「算定基礎届等の提出について」などの案内文書が郵送されます。
(2) 記入例などを参考に「健康保険・厚生年金保険被保険者算定基礎届」に従業員ごとに記載し、7月1日から10日までの間に事務センターへ郵送します。
(3) 電子申請による届出もできます。
(4) 月額変更の該当者がいる場合は、算定基礎届の備考欄に「4月昇給、7月月変」の例により記載し、併せて月額変更届の提出も必要となります。なお、次項の「8月・9月の随時改定予定者にかかる算定基礎届の提出は省略できる」もご確認ください。
8月・9月の随時改定予定者にかかる算定基礎届の提出は省略できる
算定基礎届提出の際に8月または9月に随時改定が予定されている被保険者については、算定基礎届の届出を省略することが可能です。
(1) 紙媒体による届出の場合
報酬月額欄は記入せず空欄とし、備考欄の「3.月額変更予定」に〇を付して提出する。
(2) 電子媒体及び電子申請による届出の場合
8月または9月の随時改定予定者を除いて算定基礎届を作成のうえ提出する。
(詳細)日本年金機構のHP
月額変更届とは何か
通常は年1回の算定基礎届により、その年の9月から翌年8月までの標準報酬月額を決定しますが、昇給や降格などによる固定的賃金の変動があったため報酬月額が2等級以上変動することがあります。このような場合に標準報酬月額を改定することを「随時改定」といい、この届出を「月額変更届」といいます。
□ 事務センターへ(協会けんぽの場合)
以下の全ての条件を満たす場合は「健康保険・厚生年金保険被保険者報酬月額変更届」を事務センターへ郵送します。
(1) 昇給や降格などで固定的賃金に変動があったとき
(2) 変動月から3か月間に支払われた報酬の平均月額に該当する標準報酬月額と現在の標準報酬月額との間に2等級以上の差が生じたとき
(3) 3か月間とも賃金支払基礎日数が17日以上だったとき
【注】添付書類は不要です。改定月の初日から起算して60日以上遅延した届出の場合、または標準報酬月額の等級が5等級以上下がる場合の添付書類も、2019年5月から不要となりました。
(詳細)日本年金機構のHP
□ 新たな保険料はいつから控除するのか
固定的賃金に変動があった月の5か月目の給与から控除します。例えば1月に固定的賃金に変動があったとすると、3か月後の3月の給与確定後に月額変更届を提出します。4か月目の4月に保険料額が変動しますので、翌月の5月の給与から改定後の保険料額を控除します。
賞与を支払ったときの手続
賞与などを支払った場合にも、各月支払う保険料とは別に、健康保険・厚生年金保険料を納付します。なお「賞与支払届」の対象となる賞与は、名称にかかわらず労働者が労働の対象として受けるもののうち、年3回以下の支給のものをいいます。労働の対象とされない結婚祝金などは対象外です。
□ 具体的な計算方法
(1) 保険料は、実際に支払われた賞与額(税引き前の総支給額)から1,000円未満を切り捨てた額を「標準賞与額」とし、これに、健康保険・厚生年金保険料率をかけて算出します。
(2) 標準賞与額の上限は健康保険と厚生年金保険とで異なります。健康保険では年度累計が573万円、厚生年金保険では1か月当たり150万円(月2回以上支給される場合は合算)が上限です。
□ 事務センターへ(協会けんぽの場合)
(1) 通常は、年金事務所から事業所あてに案内文書が郵送されます。
(2) 記入例などを参考に「健康保険・厚生年金保険被保険者賞与支払届」に従業員ごとの標準賞与額を記載し、事務センターへ郵送します。「健康保険標準賞与額累計申出書」に該当する場合は、これを添付します。
(3) 賞与の支払いがない場合は「賞与不支給報告書」の提出が必要です(2021.4改正)。
(4) 産前産後期間中または育児休業期間中で保険料の支払いを免除されている従業員については、賞与についても保険料を免除されますが、賞与を支払った場合は届出が必要です。
(5) 賞与支払月に退職した従業員は、月の末日に退職した場合を除き賞与から社会保険料を控除しませんが、標準賞与額の累計額算定のため届出は必要です。
(詳細)日本年金機構のHP
(関連Q&A)賞与支払時の保険料控除
算定基礎届総括表、賞与支払届総括表の廃止について
1 総括表の取扱い(廃止)
・健康保険・厚生年金保険 被保険者月額算定基礎届総括表
・健康保険・厚生年金保険 被保険者賞与支払届総括表
2 賞与を支給しなかった場合(新設)
・健康保険・厚生年金保険賞与不支給報告書
3 施行期日
・令和3年4月1日
(詳細)日本年金機構のHP
会社を廃業するときの手続
以下は、新潟市の管轄における手続です。他所の場合は添付書類等が異なることがありますので、所轄の行政機関にお尋ねください。
□ 労働基準監督署へ
・労働保険確定保険料申告書(様式第6号(甲))
労働保険の保険関係が消滅したときに提出するもので、概算で申告・納付していた保険料の過不足を精算します。
・労働保険労働保険料還付請求書(様式第8号)
確定保険料申告書において、確定保険料額が概算保険料額を下回ったときに、本請求書により還付を受けます。
□ ハローワークへ
・雇用保険適用事業所廃止届
(添付書類)なし
【注】雇用保険被保険者資格喪失届、同離職証明書の手続を終了したら届出を行います。
□ 事務センターへ
・健康保険・厚生年金保険適用事業所全喪届
(添付書類)解散登記の記載がある登記簿謄本の写し等事業所の廃止を証明できる書類、若しくは雇用保険適用事業所廃止届(事業主控)の写しの何れか
(関連Q&A)従業員が退職したときの手続
健康保険・厚生年金保険の申請・届出先
社会保険(厚生年金保険・健康保険)の申請・届出先は、申請書・届出書により、日本年金機構(事務センター)と協会けんぽ(または健康保険組合)へと届出先が異なります。
(詳細)協会けんぽのHP
遡及した届出等における添付書類の廃止&被保険者本人の署名・押印等の省略について
従来必要であった年金事務所(事務センター)への事業主の以下の添付書類等が、令和元年5月から不要となりました。
□ 遡及した届出等における添付書類の廃止
<確認書類の添付が不要となる対象届書およびケース>
(1) 健康保険厚生年金保険被保険者資格取得届、厚生年金保険70歳以上被用者該当届、健康保険厚生年金保険被保険者資格喪失届 厚生年金保険70歳以上被用者不該当届
⇒資格取得年月日が、届書の受付年月日から60日以上遡る場合の添付書類が不要となります。
(3) 健康保険厚生年金保険被保険者報酬月額変更届、厚生年金保険70歳以上被用者月額変更届
⇒改定年月の初日(1日)が、届書の受付年月日から60日以上遡る場合、および改定後の標準報酬月額が従前の標準報酬月額から5等級以上引き下がる場合の添付書類が不要となります。
□ 被保険者本人の署名・押印等の省略
<本人署名・押印等の省略対象の届書等>
(1) 健康保険被扶養者(異動)届 国民年金第3号被保険者関係届
(2) 年金手帳再交付申請書
(3) 厚生年金保険養育期間標準報酬月額特例申出書・終了届(申出および終了の場合)
被保険者本人の署名または押印について、事業主が被保険者本人の届出の意思を確認し、届書の備考欄に「届出意思確認済み」と記載した場合は、被保険者本人の署名または押印を省略できます。同様に、電子申請及び電子媒体による届出においては、事業主が被保険者本人の届出の意思を確認し、届書の備考欄に「届出意思確認済み」と記載した場合、委任状を省略することができます。
(参考)日本年金機構のHP
国民年金や厚生年金保険などの年金手続の際の申請・届出様式の押印が原則廃止へ
令和2年12月25日から、年金受給手続に限らず健康保険・厚生年金関係手続等を含め、一部を除き全ての届出様式から押印欄が削除されました。なお、押印欄のある旧様式は引続き使用でき、旧様式により提出される場合も押印は必要ないとしています。
(詳細)日本年金機構のHP
協会けんぽへの各種申請書の押印の廃止について
令和2年12月25日以降、協会けんぽへの出産手当金申請書や傷病手当金申請書など全ての申請書の押印が、市町村長記載欄の押印を除き廃止されました。
(参考)押印の廃止について(各種申請書一覧)
届出・申請書類はインターネットからダウンロードできる
■日本年金機構申請・届出様式
■協会けんぽ申請書
■労働保険関係各種様式
■労災保険給付関係請求書
■雇用保険帳票一覧
■労働基準関係主要様式
■安全衛生関係主要様式 / 労働安全衛生法関係の届出・申請等帳票印刷に係る入力支援サービス
2020年4⽉から特定の法人についての電子申請が義務化へ
2020年4月から、電⼦申請の利⽤促進の取組の一環として、特定の法人の事業所が社会保険・労働 保険に関する一部の手続を⾏う場合には、必ず電子申請で⾏うこととなりました。
□ 特定の法人とは
○資本⾦、出資⾦⼜は銀⾏等保有株式取得機構に納付する拠出⾦の額が1億円を超える法人
○相互会社(保険業法)
○投資法人(投資信託及び投資法⼈に関する法律)
○特定目的会社(資産の流動化に関する法律)
□ 電子申請で行わなければならない手続
(1) 雇用保険
○被保険者資格取得届
○被保険者資格喪失届
○被保険者転勤届
○⾼年齢雇用継続給付支給申請
○育児休業給付支給申請
(2) 健康保険・厚生年金保険
○被保険者報酬月額算定基礎届
○被保険者報酬月額変更届
○被保険者賞与支払届
(3) 労働保険
○年度更新に関する申告書(概算保険料申告書、確定保険料申告書、一般拠出⾦申告書)
○増加概算保険料申告書
(参考)厚生労働省のリーフレット
社会保険届書作成プログラムのデータを新しいパソコンに移行する方法
社会保険届書作成プログラムの事業所データおよび被保険者データ等を新しいパソコンへ移行する方法は以下となります。
■ windows10の場合
エクスプローラーから、PC → OS(C;)の順にクリックします。ShakaiHokenフォルダがありますからクリックし、ShFdtdhフォルダをクリックします。
(1) exeフォルダの中から「shfdtおよびshfdt001.jks~shfdt0010.jks」だけをUSBメモリーなどにコピーします。
(2) datフォルダの全てをUSBメモリーなどにコピーします。
コピーしたファイルフォルダを、新しいパソコンにインストールした社会保険届書作成プログラムの「exeフォルダ」と「datフォルダ」へ上書き保存します。
マイナンバーが必要な届出一覧
□ 雇用保険関係/(詳細)厚生労働省のリーフレット
マイナンバーの記載が必要な届出等
(1) 雇用保険被保険者資格取得届
(2) 雇用保険被保険者資格喪失届
(3) 高年齢雇用継続給付受給資格確認票・(初回)高年齢雇用継続給付支給申請書
(4) 育児休業給付受給資格確認票・(初回)育児休業給付支給申請書
(5) 介護休業給付支給申請書
マイナンバーの記載が必要な届出にマイナンバーの記載がない場合には返戻されます。
■ 既にハローワークにマイナンバーを届け出ている場合
上記1の届出について既にマイナンバーを届出ている場合は、各届出書の欄外等に「マイナンバー届出済」と記載した上で、マイナンバーの記載を省略することができます。(雇用保険被保険者資格取得届は除く)
■ 本人からマイナンバーの提供を拒否された場合の電子申請の取扱い
電子申請による各届出書の備考欄(資格喪失届は備考欄がないため、社会保険労務士欄の直下のスペース)に「本人事由によりマイナンバー届出不可」の記載をします。行方不明者の資格喪失や、マイナンバーのない外国人の場合も同様の取扱いとなります。
□ 労災保険関係/(詳細)厚生労働省のリーフレット
(1) 様式第10号
(2) 様式第12号
(3) 様式第13号
(4) 様式第16号の2、様式第16号の7、様式第16号の8
(5) 様式第19号
□ 社会保険関係/(詳細)日本年金機構のHP 市町村国民年金担当職員&社労士向けQ&A
1 資格取得時の届出
(1) 資格取得届にマイナンバーを記載し、事務センターへ届出ます。なお、マイナンバーを記入した場合は被保険者住所の記載を省略できます。
(2) 事務センターでは、基礎年金番号で通知を返送します。
(3) 以降の手続は、通知に記載された基礎年金番号で行うことでも可能です。
2 住所・⽒名変更時の届出
年金機構では、個人番号をもとに住基ネットから最新情報を取得するため、事業主からの事務センターへの届出は不要です。
3 被扶養者の届出(健康保険被保険者異動届)
被扶養者資格取得の際に、被保険者および被扶養者のマイナンバーが必要です。削除の場合は必要ありません。
新生児の被扶養者異動届にもマイナンバーは必要
平成30年10月から、被扶養者異動届の際にもマイナンバーの記載が必要となっていますが、出生の場合でも被保険者および被扶養者のマイナンバーの記載がないと返戻されるようです。
なお、出生届後3週間ほどで世帯主宛に個人番号通知書が届くとしていますが、急ぐ場合は、市町村役場からマイナンバー(個人番号)記載の住民票を取得することにより、新生児のマイナンバーを確認できます。
【解説】厚生労働省の”年金分野におけるマイナンバーの取扱等に関するQ&A(平成30年5月23日時点版)”では、「届書提出時点でマイナ ンバーが不明である場合は、備考欄に「出生のため、マイナンバーが不明」であることを記載し提出いただくようお願いします。」の記述がありますが、備考欄にQ&Aのように記載しマイナンバー不記載で届出しても、事務センターから返戻されるようです。
住民票やマイナンバーカード等への旧姓(旧氏)の併記が可能へ
住民基本台帳法施行令等の一部を改正する政令が改正され、2019年11月5日から住民票やマイナンバーカード等への旧姓(旧氏)の併記が可能となりました。旧姓を併記することにより、銀行口座の名義や各種契約で旧姓が使われている場合の証明や、就職や転職などの仕事の場面でも旧姓で本人確認ができるなどの利点があります。
□ 請求手続きの流れ
(1) 旧姓が記載された戸籍謄本等を用意する。
(2) 戸籍謄本等とマイナンバーカード(通知カード)を持って、住所地の市区町村で請求手続きをおこなう。
(詳細)総務省のHP
講演料の支払先等からマイナンバーを取得する際の注意点
弁護士や税理士等に対する報酬、作家や画家に対する原稿料や画料・講演料等については、同一の支払者から支払を受けるその年中の報酬が5万円以下の場合は支払調書の提出を必要としませんので、マイナンバーを提供する必要はありませんが、5万円を超える場合は支払者に対しマイナンバーを提供する必要があります。
その際の本人確認書類の取扱いを巡って本人と事業者の間でトラブルとなる事例が発生していることから、個人情報保護委員会で、事業者が講演料の支払先等からマイナンバーを取得する際のQ&Aを公開しています。
● 本人確認書類の写しの取扱いに関するQ&A
Q1 講演料の支払先等からマイナンバー(個人番号)を取得する際に、本人確認書類の写しの提出を受ける必要がありますか。
A1 対面で本人確認を行う場合は、本人確認書類の「提示」を受けることが原則です。したがって、講演料の支払先等に対し本人確認書類の写しを求める必
要はありません(番号法16、番号法施行令12)。
また、郵送で本人確認を行う場合は、本人確認書類の写しの「提出」を受け る必要があります(番号法施行規則 11)。
Q2 本人確認書類の写しの提出を受けた場合、その書類を保存する必要は ありますか。
A2 マイナンバー(個人番号)の確認の際に、本人確認書類の写しの提出を受 けた場合、必要な手続を行った後に本人確認書類が不要となった段階で、速やかに廃棄しましょう。
押印についてのQ&A
内閣府・法務省・経済産業省連名で「押印についてのQ&A(令和2年6月19日)」を公開しました。
従業員からの保険料控除の方法
□ 健康保険・厚生年金保険料(介護保険料を含む)
健康保険・厚生年金保険の被保険者期間は、資格取得日の属する月から資格喪失日の属する月の前月までですが、年金機構への保険料納付時期は、資格を取得した月の翌月から資格を喪失した月までとなります。
従業員の給与からの徴収方法は、前月徴収・当月徴収のどちらでも構いませんが、何れの場合も年金事務所への納付は翌月となります。
■ 従業員負担分の給与からの控除方法
一般的な、15日締め・25日払いなど前月徴収の場合
(1) 入社した時
入社した月の翌月に支払う給与から保険料控除します。
(2) 退職した時
退職した月に支払う給与からも保険料控除しますが、退職月の翌月の給与から保険料控除は行いません。
【注】健康保険・厚生年金保険の資格喪失日は、従業員が退職した日の翌日です。例えば3月31日を退職日すると、資格喪失日は退職した日の翌日の4月1日となり、4月に支払う給与からも3月分の保険料控除が必要です。この場合、4月に支払うべき給与がない場合は、3月に支払う給与から2月分と3月分の保険料を控除します。
□ 雇用保険料
雇用保険料の方は簡単です。退職日に係わらず給与を支払う都度従業員負担分の雇用保険料を控除します。納付方法は、年度更新の際に、都道府県労働局に1年分の保険料を労災保険料と併せて一括納付します。
賞与支払時の保険料控除
□ 健康保険料・厚生年金保険料(介護保険料を含む)
賞与を支払ったときにも、標準賞与額に給与と同率の保険料率を掛けた健康保険料・厚生年金保険料を賞与から控除します。そして「健康保険・厚生年金保険被保険者賞与支払届」に従業員ごとの標準賞与額を記載し、事務センターへ郵送または電子申請により届出します。年金事務所から翌月の納入告知書に給与分と賞与分が告知されますので、事業主負担分と一緒に納付します。
【注】
(1) 標準賞与額とは、賞与の額の1,000円未満の額を切り捨てた額をいいます。標準賞与額には、健康保険は年度累計で573万円、厚生年金保険は1か月につき150万円の上限があります。
(2) 厚生年金保険では、例えば150万円の賞与を年2回支払った場合では、支払った都度に厚生年金保険保険料が徴収されます。このケースでは、賞与を年1回(300万円)にすれば、150万円分の保険料を節約することも可能です。健康保険では上限を年度の累計額としていますので、保険料の節約は不可能です。
■ 賞与支払月に退職した従業員の健康保険料・厚生年金保険料はどうなる
賞与支払月に退職した従業員は、月の末日に退職した場合を除き賞与から社会保険料を控除しません。ただし、月の末日に退職した場合の資格喪失月は翌月となりますので、賞与から社会保険料控除します。
【賞与支払届への記載は必要】
賞与支払月に退職した従業員は、月の末日に退職した場合を除き賞与から社会保険料を控除しませんが、標準賞与額の上限把握ため、賞与支払届への記載は必要です。
同様に、産前産後休業や育児休業による保険料免除期間に支払われた賞与についても、賞与支払届への記載が必要となります。
□ 労災保険料・雇用保険料
雇用保険料の賃金控除は給与と賞与は同じですので、特に届出は要りません。また、労災保険料は年間の賃金総額で決定しますので、特別な手続はありません。
介護保険料の控除
介護保険料の給与控除は、満40歳に達したときから徴収が始まり、満65歳に達したときに終了します。
満年齢に達した日とは誕生日の前日をいいますので、満40歳の誕生日の前日の属する月から介護保険の第2号被保険者となり、満65歳の誕生日の前日の属する月から介護保険の第2号被保険者でなくなります。
給与控除は通常翌月となりますので、例えば、4月2日に40歳の誕生日を迎える人の介護保険料は、5月分の給与から控除します。同様に、4月2日に65歳の誕生日を迎える人の介護保険料は、5月分の給与から徴収をストップします。
社会保険料の被保険者負担分の端数処理はどうする
□ 健康保険・厚生年金保険料の被保険者分の端数処理
被保険者負担分の端数の50銭以下を切り捨て、50銭を超える場合は場合は切り上げて1円とします。
□ 雇用保険料の被保険者分端数処理
上記の社会保険の端数処理と同様です。
休職者の保険料控除はどうする
□ 健康保険料・厚生年金保険料
健康保険・厚生年金保険では、従業員が休職中であっても保険料納付が必要です。休職中であっても賃金を支払っていれば、従業員負担分の保険料を控除できるので問題ありませんが、休職中の賃金が無給の場合は従業員と話し合って決めます。
この場合、休職規程などに「従業員は休職期間中の健康保険、厚生年金保険の被保険者負担分の保険料相当額を毎月月末までに会社の指定口座に振り込まなくてはならない。」などの例により規定しておけば万全です。
□ 雇用保険料
休職期間中は無給であれば、事業主負担分・従業員負担分とも雇用保険料の負担はありません。休職期間中でも賃金を支払っていれば、支払った賃金額に応じ従業員負担分の雇用保険料控除を行い、年度更新の際に事業主負担分と併せて一括納付することになります。
□ 労災保険料
労災保険料は全額事業主負担ですので、賃金の支払いがあれば年度更新の際に事業主が納付します。
同一月内に資格得喪があったときの保険料控除はどうする
□ 健康保険料・厚生年金保険料
健康保険・厚生年金保険の被保険者資格取得の届出をし、同一月内に資格を喪失した場合でも、1か月分の保険料を支払う必要があります。健康保険・厚生年金保険では、従業員負担分の保険料は翌月の給与から控除しますが、この場合に限って当月の給与から控除できます。
□ 雇用保険料
雇用保険料は、所定に当月分を控除します。
産前産後休業&育児介護休業中の社会保険料はどうする
□ 産前産後休業中の社会保険料
産前産後休業中の社会保険料(健康保険料と厚生年金保険料)は申請することにより、賃金の支払いの有無にかかわらず、被保険者負担分・事業主負担分とも免除されます。
□ 育児休業中の社会保険料
育児休業法による育児休業中の社会保険料(健康保険料と厚生年金保険料)は申請することにより、賃金の支払いの有無にかかわらず、被保険者負担分・事業主負担分とも免除されます。
また、職場復帰後の取扱いとして「養育期間標準報酬月額特例申出」「育児休業等終了時報酬月額変更」の制度があります。詳しくは、以下のQ&Aをご参照ください。
(関連Q&A) 育児休業の申出から復帰までの事務手続
□ 介護休業中の社会保険料
介護休業期間中の社会保険料(健康保険料と厚生年金保険料)の免除はありません。
□ 雇用保険料
各休業期間中に賃金の支給がなければ雇用保険料は徴収されませんが、賃金の全部又は一部を支給した場合は、給与から雇用保険料を控除します。
標準報酬月額算定における現物給付と報酬の関係
健康保険・厚生年金保険の標準報酬月額の算定において、現物で支給されるものが食事や住宅である場合は「厚生労働大臣が定める現物給与の価額」(厚生労働省告示)に定められた額に基づいて通貨に換算します。また、自社製品等その他のもので支給される場合は、原則として時価に換算します。
(参考)日本年金機構のリーフレット
□ 食事と現物給与の関係(2021.4~の現物給与の価額表から)
【例】新潟県で昼食を供与し、食事代を徴収している場合
・1か月当たりの現物給与額(1人1日当たりの昼食のみの額250円×30日=7,500円)
・1か月当たりの徴収額(3,000円)とすると、
・7,500円ー3,000円=4,500円が現物給与の価額となる
【注】現物給与価額の2/3(上記のケースで5,000円)以上を食事代として徴収している場合は、現物供与はないもの(現物給与の価額は0円)として取り扱います。
□ 住宅と現物給与の関係(2021.4~の現物給与の価額表から)
【例】新潟県で居住部分30㎡の住宅を貸与する場合
(30㎡×1.65㎡×新潟県の1畳あたりの標準価額1,360円=67,320円)*1畳あたり1.65㎡に換算して計算
(1) 本人負担がない場合→67,320円が現物給与となる
(2) 本人から住宅賃貸料として30,000円を控除している場合→67,320円ー30,000円=37,320円が現物給与価額となる
労働基準監督署の役割と労働基準監督官の仕事
厚生労働省で「労働基準監督署の役割」と「労働基準監督官の仕事」についてのリーフレットを公表しています。
過重労働撲滅特別対策班(かとく)とは何か
過重労働撲滅特別対策班(通称かとく)は、過重労働等に係る法規制の執行強化を図るため、平成27年4月に設置されました。
□ 組織
1 厚生労働省の「過重労働撲滅特別対策班(本省かとく)」
企業本社への監督指導および労働局の行う広域捜査活動を迅速かつ的確に実施できるよう、労働局に対し必要な指導調整を行う。
2 都道府県労働局の「過重労働特別監督監理官」
47都道府県労働局に、長時間労働に関する監督指導等を専門に担当する「過重労働特別監督監理官」を配置する。
□ 業務
過労死認定基準を超えるような残業が行われている事業場、具体的には月残業80時間超の事業場(自主点検を求め確認できた全ての事業場)を対象に重点監督を実施。
□ かとくの摘発例
ABCマート、フジオフードシステム、ゼンショーの子会社エイ・ダイニング、ドンキホーテ、サトレストランシステムズ、コノミヤ、電通など
労働基準監督機関と公正取引委員会や経済産業省への通報制度とは何か
労働基準監督機関と公正取引委員会や経済産業省との通報制度とは、長時間労働の背景として、親事業者の下請代金法・独占禁止法違反が疑われる場合に、労働基準監督機関から中小企業庁や公正取引委員会に通報する制度により、下請などの取引条件にも踏み込んで長時間労働を是正する仕組みを作るとしたものです。
労働基準監督機関において、事業場に対する監督指導を実施した結果、賃金支払違反や労働時間違反等が認められ、当該違反の背景に親事業者による下請たたきに当たる行為が存在しているおそれのある事案を把握した場合、下請事業者または特定物流事業者の意向を踏まえつつ、かつ、秘密保持に万全を期した上で、公正取引委員会や経済産業省に当該事案を通報するとして、従来からある通報制度が拡充されています。
(参考)厚生労働省の資料
裁量労働制に係る指導・公表制度について(複数の事業場を有する大企業が対象)
厚生労働省労働基準局より、裁量労働制の不適正な運用が複数の事業場で認められた企業の経営トップに対する都道府県労働局長による指導の実施及び企業名の公表する旨の通達が出ています。
なお、不適切な運用とは、以下の(1)から(3)のいずれにも該当する場合をいいます。
(1) 対象業務以外の業務に従事
裁量労働制の対象労働者の概ね3分の2以上について、対象業務に該当しない業務に従事していること。
(2) 労働時間関係違反
①に該当する労働者の概ね半数以上について、労基法第32・40条(労働時間)、35条(休日労働)又は37条(割増賃金)の違反が認められること。
・労基法第32条、第40条違反: 時間外・休日労働協定(36協定)で定める限度時間を超えて時間外労働を行わせている等
・労基法第35条違反: 36協定に定める休日労働の回数を超えて休日労働を行わせている等
・労基法第37条違反: 時間外・休日労働を行わせているにもかかわらず、法定の割増賃金を支払っていない等
(3) (2)に該当する労働者の1人以上について、1か月当たり100時間以上の時間外・休日労働が認められること。
(詳細)厚生労働省の資料
労働基準監督署による是正勧告とは何か
労働基準監督署による是正勧告とは、労働基準監督官が労働基準法などの法違反に該当すると認めた事項について、事業場に対し是正するよう勧告することをいいます。この勧告には法的強制力はないとされますが、事業主が是正を放置したり、再び法違反を繰返したりすると司法処分されることもあります。
一方、事業場において法違反ではないが指針や通達に違反しているような事実等がある場合には、労働基準監督署が「指導票」を交付して事業場にその改善を促すこともあります。また、労働安全衛生法違反などで緊急を要するものについては、労働基準監督署長名で使用停止等の「命令書」を交付することがあります。命令書は強行規定ですので、従わなければ6か月以下の懲役または50万円以下の罰則規定があります。
監督官は、その年の労働基準行政の重点施策等に基づき、その施策に対応する事業場に対して定期臨検を行うほか、労働者の申告に基づき、あるいは労働災害発生時等に臨検を行うことがあります。臨検の結果、法違反等が認められると、是正勧告や指導がなされます。悪質の場合は命令書の交付や書類送検されることもあります。
なお、厚生労働省のデータによれば、書類送検件数は全国で毎年1,000件程度に達しています。
是正勧告のうち、就業規則の不備や労働条件の明示違反、労働者名簿や賃金台帳の未整備などの場合は、直ちに改善を行うことは比較的容易です。しかし、労働時間管理や割増賃金の不払いなどの勧告を受け、それを是正しようとすると厄介です。過去に遡っての未払い残業代の支払い(賃金債権の時効は5年だが、現時点では暫定で3年)や、労働時間管理などを適正に行う旨の勧告がなされますので、多額の出費と労力を強いられことがあります。
昨今は、コンプライアンスに対する世間の目もより厳しくなっています。労働時間や割増賃金などのルールを作り、就業規則や賃金台帳などを整備し運用する、併せて従業員と風通しを良くしておくことが必須と思われます。
近年、ユニオンによる団体交渉要求や、弁護士等による残業代未払い請求などが散見され、これらの対応は是正勧告以上に大変です。一旦事が起きると、後処理が想像以上に困難を極めます。備えあれば憂いなしで、専門家に相談するなり、日頃からコンプライアンス対策を構築しておくことがポイントと思われます。
労使協定とは何か
労使協定とは、労働基準法などの法律に基づき労使で締結された協定をいいます。
賃金控除協定(労働基準法24条)、時間外・休日労働協定(同法36条)、1年単位の変形労働時間協定(同法32条の4)、事業場外のみなし労働時間協定(同法38条の2)、年次有給休暇の計画付与に関する協定(同法39条)などが代表的です。他に、育児・介護休業協定(育児・介護休業法)、継続雇用制度の基準等に関する協定(高齢者雇用安定法)など労働基準法以外の法律で規定された協定もあります。
労使協定は、労働者の過半数で組織する労働組合があればその労働組合、なければ労働者の過半数を代表する者との書面により協定します。この効力は、当該事業場の全労働者に及びます。
協定の締結単位は、各事業場ごとです。ただし、複数の事業場があり、かつ労働組合がある企業の場合、各事業場の労働者の過半数が全て同じ組織の労働組合員であれば、当該労働組合の本部で一括して労使協定を締結することも可能です。しかし、ある事業場については、労働組合員が過半数を満たしていないとするならば、その事業場については労働者の過半数を代表する者との協定が必要となります。
労使協定は、労働基準監督署への届出が必要なものと届出を要しないものがあります。
労働基準監督署へ届出の必要ない労使協定もある
労使協定とは、労働基準法などにの規定により、制度を採用する場合に労使で締結すべき旨を定められた協定をいい、労働者の過半数で組織する労働組合があればその労働組合、なければ労働者の過半数を代表する者との書面による協定をいいます。労使協定には、労働基準監督署への提出を義務付けられているものと、そうでないものとがあります。その主なものは以下のとおりです。
□ 労働基準監督署へ届出を義務付けられている労使協定
(1) 貯蓄金管理協定(社内預金と通帳保管)…労基法18条
(2) 1か月単位の変形労働時間制に関する協定…労基法32条の2
(3) 1年単位の変形労働時間制に関する協定…労基法32条の4
(4) 1週間単位の非定型変形労働時間制に関する協定…労基法32条の5
(5) 時間外・休日労働に関する協定(36協定)…労基法36条
(6) 事業場外労働に関する協定…労基法38条の2
(7) 専門業務型裁量労働制に関する協定…労基法38条の3
【注】(2)については、労使協定に代えて就業規則に定めることもできます。この場合は有効期間の定めは必要としませんが、労基署への就業規則届が必要となります。
□ 労働基準監督署へ届出しなくてもよい労使協定
(1) 賃金控除協定…労基法24条
(2) フレックスタイム制に関する協定…労基法32条の3
(3) 一斉休憩の適用除外に関する協定…労基法34条
(4) 年次有給休暇の計画付与に関する協定…労基法39条
(5) 年次有給休暇について健康保険法の標準報酬日額に相当する金額を支払う旨の協定…労基法39条
(6) 継続雇用制度の基準等に関する協定…高年齢者雇用安定法
(7) 育児・介護休業に関する協定…育児介護休業法
(8) 代替休暇の労使協定…労基法37条
(9) 時間単位年休の労使協定…労基法39条
労働基準監督署への届出は電子申請もできる
36協定届や就業規則届などの労働基準監督署への届出は、労働社会保険手続と同じく電子証明書を取得することにより、電子申請により行うことができます。(参考)厚生労働省のHP
なお、電子申請による届出は、社会保険労務士も提出代行できるようになっていますが、届出を労働基準監督署へ直接届出をせずに電子申請で行うということに過ぎず、36協定などの協定書は、従来とおり事前に事業所で締結をしておくことが前提となります。
■ 電子申請できる手続一覧(最低賃金法の届出は除く。)