ユキノシタ

昔の民家の周りには薬になる薬草が意識して植えられており、これらは民間薬として用いられ、何処の家の周りにも見られた。 ユキノシタもその一つである。
ユキノシタはドクダミ、ゲンノショウコ、センブリ等と共に代表的な民間薬の一つで、葉をあぶって火傷(やけど)の貼り薬にし、葉の絞り汁は中耳炎や子供のひきつけに使われた。(「ゲンノショウコは現の証拠」 、 「ドクダミは十薬」 、「センブリは最強苦味薬」 の項参照)
葉に硝酸カリウムと塩化カルシウムを含み、解熱、鎮咳、消炎、解毒、止血作用があるので、漢方の虎耳草(コジソウ)として用いられると同時に広く民間薬として使われ、又、葉は薬用以外にも精進料理の天ぷらやお浸しとして食用にされ、観葉植物としても見栄えがするため庭にも植えられる等、誰もが知っている植物であった。
現代では名前も知らない人が多く、名前から雪解けの頃の早春に咲く花を思い浮かべがちだが、実際は六月頃に咲く夏の花である。
日本、中国が原産のユキノシタ科を代表する花で、近縁に秋に咲くジンジソウ(人字草)、ダイモンジソウ(大文字草)があり、又、アジサイも広義のユキノシタ科の花である。( 「コアジサイとアジサイ」 の項参照)。
ジンジソウやダイモンジソウは花の形を 「人」 や 「大」 の字に見立てて単純に付けられた名前であるが、ユキノシタの名の由来は諸説あって、雪の下にあっても枯れずに残っているからと言う説、雪のような白い花が一面に咲き、その下に緑の葉を広げるからと言う説、はたまた花の形を雪の舌に見立てたと言う説等、いろいろで、真偽のほどは定かでない。
湿気を好み、田舎の井戸端や池の傍などに生育する事からイケノシタ(池の下)がなまってユキノシタになったとも言われ、漢名の虎耳草は葉の形からきたものである。

ユキノシタの花      ユキノシタの葉       ユキノシタの全体像

古くは子供の火傷やひきつけの民間薬として家の周囲にも植えられ、あちこちで見られたが、現代ではドクダミを除いて、民家の周りで見ることが難しくなった花のひとつである。

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