ドクダミ


ドクダミはかっては誰もが知っている薬草であった。
煎じて飲めば、排便を促す緩下作用や利尿効果から体内の老廃物を除去し、神経細胞や筋肉組織を活性化させ、又、汁を塗れば水虫やおでき等の皮膚病の薬になり、更にはドクダミ茶やドクダミ風呂に用いると高血圧から美容迄万病に効く薬となる。
十に及ぶ病気に効く事からジュウヤク(十薬)とも呼ばれ、江戸時代の書 「大和本草」 に 「我が国の馬医 これを馬に用いると 十種の薬の効能があるので、十薬という」 とある(参照:e-yakusou.com)。 人だけでなく馬にも効くようである。
ゲンノショウコ、センブリとあわせ、三大民間薬として、古くから用いられ、又、天ぷらとして食用にもされ、人々の生活から切り離せない植物であった。( 「ゲンノショウコは現の証拠」「センブリは最強の苦味薬」 の項参照)
又、その繁殖力の強さに驚かされる花でもある。 ゲンノショウコを始め、昔からあちこちに咲いていた花がだんだん周囲から姿を消していく中で、この花だけは今でも住宅地や道端に繁茂し、その強い繁殖力を誇示している。 地中に白い地下茎を縦横に張り巡らし、そこから沢山の芽を出し、群生するが、抜いても抜いても少しでも地下茎が残ればすぐ又芽を出してくる。 ヤブガラシにしろ、ヒルガオにしろ地下茎で増える植物は同じ様に繁殖力が強い。

ドクダミ科として一家を成し、花は白い花びらのように見える部分が目立つが、これは苞(ほう)で、ドクダミには花弁も萼(ガク)も片(へん)も無く、黄色の部分は雄しべの葯(やく)が密集したものである。 通常のドクダミに対し八重や葉に斑入りのドクダミも稀にではあるが咲いている。

通常のドクダミ

八重や斑入りのドクダミ

ドクダミの名の由来は毒矯み(どくだみ)から、毒を直す(矯)、つまり、毒消しの意味から来ていると言う説や、独特の臭気から毒溜めのようだと言うことから来ている説等、諸説ある。 茎葉に悪臭を持つ野の花はヘクソカズラがその筆頭であるが、ドクダミもそれに劣らず、特有の臭気はアルデヒドを含む為であるが、乾燥させると無臭になる。
かっては十薬とも呼ばれ、万能薬の原料となった植物も現代では次第に陰が薄くなって、単なる道端の雑草として省みられる事も無くなりつつある。

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