はしがきから引用する :
私の本書執筆の中心課題は,複素数の中から,どのようにしたら '虚' なる漢字を取り除けるかにかかっていた.
Tea Time を見ると、私の質問のような素朴な疑問が載っている。それに関する答も、
明快な答もあれば、著者が苦しんでいるような答もある。
例えば、p.211 では、実数での1変数での定積分の計算に複素数の上での解析学が役に立つのならば、
複素数でも多変数の関数を考えてみたら、実数の多変数の微積分の難しい計算を見通しよく簡単にできるのではないか、
という問がある。これに対する答は、
(前略)複素数の変数の数を増すと,そこには 1 変数の場合のアナロジーをたどるだけでは,
予想もできず,理解にも苦しむような難しい事態が生じてきた.
どの点が難しいかを説明することがすでに難しいのだが(後略)
となっていて、その後岡潔の貢献のことを触れた後、問への最終回答が述べられている。
これについては本書を参照されたい。
標記の不等式が第 22 講(p.153)の冒頭で示され、証明されている。次の不等式である。
`abs(int_Cf(z)dz) le int_Cabs(f(z))dabs(z)`
さて、この不等式の等号はどんな場合に成り立っているのだろうか。 そういえば高校の数学では、不等式の証明を求められたとき、 等号が含まれる場合には等号が成り立つ状況を示せとうるさく言われたが、 大学に入ってからの場合はあまりそのような注意はなかったように思える。 この不等式の等号が成立する条件は、「ヴィジュアル複素解析」に出ていた。
p.102 の TeaTime 質問に答える形で、
この正則関数の強い性質―それは剛性といってもよいものであるが―については,
と、
剛性ということばを使っているのが目を引いた。この剛性ということばは、
ニーダムのヴィジュアル複素解析でも出てくる。
p.138 下から5行目の式が次のようになっている :
`int_(C_1)f(z)dx=int_0^1xdx+int_0^1 i dy=1/2+i`
もちろん、左辺の積分は `int_(C_1)f(z)dz` が正しい。
書名 | 複素数 30 講 |
著者 | 志賀 浩二 |
発行日 | 1990 年 10 月 15 日 初版 第 3 刷 |
発行元 | 朝倉書店 |
定価 | 2800 円(本体) |
サイズ | A5 判 221 ページ |
ISBN | 4-254-11481-8 |
備考 | 草加市立図書館にて借りて読む |
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