志賀 浩二 : 集合への 30 講

作成日 : 2022-02-07
最終更新日 :

概要

はしがきから引用する :

私が本書で示したかったことは,カントルを捉えて離さなかった,どうにも動かしようのない,集合論の中にひそむ永遠の素朴性と‘無限’の秘密とでもいうべきものを, できる限り明らかにしてみたいということであった.

ベキ集合

p.14 にベキ集合の定義があるので引用する。

一般に,集合 `M` が与えられたとき,`M` の部分集合全体のつくる集合を `frP(M)`と表わし,`M` のベキ集合という.

この `frP` の字が、初学者にはわかるだろうか。フラクトゥールで P を表すのだが、B に見える人が多いような気がする。

ベルンシュタインの定理

ベルンシュタインの定理が pp.91~93 で証明されている。これは強力な定理で、たとえば次の結果が証明されている。p.104 から引用する。

区間 [0,1] 上で定義された連続関数全体のつくる集合を `C[0,1]` で表わす.このとき,次の結果が成り立つ.
`C[0,1]` の濃度は `aleph` である.

本書では、`C[0,1]` の濃度を `bar(bar(C[0,1]))` と記している。本書の証明は、`bar(bar(C[0,1])) ge aleph` かつ `bar(bar(C[0,1])) le aleph` を示して、`bar(bar(C[0,1])) = aleph` を導いている。なお、

p.105 の上から 5 行めに、(★)によって,とあるが、肝心の(★)にあたる行は、p.103 の下から 3 行め以降にある。以下、これを引用する。

(★)`f` と `g` を区間 `[0,1]` 上で定義された連続関数とする.このとき,すべての有理数 `r(0 le r le 1)` で,`f(r) = g(r)` が成り立つならば, 実は,すべての実数 `x (0 le x le 1)` に対して `f(x) = g(x)` が成り立つ.

さて、`bar(bar(C[0,1])) = aleph` という結果が得られた。しかしこれは、別の本にある、連続関数の自由度は可算無限でしかないことがわかる.という記述と異なるのではないかと思うが、私が何かどちらかを(あるいは両方を)誤解しているような気がする。

30 講シリーズ

書誌情報

書名 集合への 30 講
著者 志賀 浩二
発行日 1988 年 5 月 20 日 初版 第 1 刷
発行元 朝倉書店
定価 2300 円(本体)
サイズ A5 判 187 ページ
ISBN 4-254-11478-8
備考 草加市立図書館にて借りて読む

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