からだ


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※オススメ度:(最低)〜★★★(十分オススメ)〜★★★★★(最高) / 難易度:(易しい)〜●●●●●(難しい)

 
表紙 ★★★★ ●    
『まちがいだらけの包茎知識』
飛波玄馬、岩室紳也、山本直英/2000年7月刊/青弓社/1,600円+税

 創刊号でちらっと触れて以来書いていなかった「包茎問題」ですが、モテ問的にジャスト・フィットな素晴らしい本が出ましたので紹介します。
 「包茎問題」というと、まーショボいと言える人にとってはショボい問題ですが、これは悩んでいる人にとっては大きな問題であって、非常に悩んでいる。というか、マスメディアの広告などを通じて非常に悩まされている。創刊号でも指摘したように、エロ本などに掲載されている包茎手術や包茎「治療」器具の広告には、例えば「日本人の約60%は包茎で、そのほとんどが仮性包茎です。そして、女性の100%が、この包茎を最高にイヤがっています。(中略)どう考えても女性にモテませんね」などという記述があり、私たちの内面に「包茎は悪いこと」という意識を刷り込んできます。そんなわけで、多数派である包茎の側が(日本人男性の6〜7割?)抑圧されているという、まさにアパルトヘイト状況が今なお続いています。
 この本は、モテ問の問題提起を受けてか、その隠されてきたが、実は重大な問題について、きっちりと対応しています。山本直英さんの文章中にも指摘がありますが、今の先進的な性教育の本をとってみても、なぜかわれらが悩みの種、「包茎」についての記述はありません。包茎についての誤解を解くような内容の本は、これが初めてなのではないでしょうか。
 さて、この本は3章に分かれています。
 1章は、中学の時に包茎手術を受けて、それ以来体調も精神状態も悪くなってしまったという大学生・飛波さんの痛々しい手記です。読んでいて本当に痛いです。私自身、他の情報なしに包茎手術の広告と出会っていれば、包茎手術をしていたかもしれないと思います。この手記で驚いたのは、飛波さんは、真性包茎だったということです。私は仮性包茎ですが、「仮性は手術の必要はないが、真性の人は手術するしかない、したらよい」と思っていたからです。でも、飛波さんは、その手術でボロボロになってしまった。だから、「真性包茎だったら手術すればいいんだよ」と気軽に言ってはいけないのだなと思いました。また、飛波さんの手記は、患者の気持ちや判断を置き去りにした医療のあり方についての問題提起にもなっています。
 2章は、泌尿器科医・岩室さんの、イラスト入りで分かりやすい包茎と包茎手術についての解説。一言でいうと、章題のとおり「かぶれば包茎、むければOK!」ということなのだけれど、真性包茎であっても手術なしで、仮性包茎になるとのこと。「包茎の手術が得意」で自信のある岩室さんだが、手術を繰り返している内に、何で手術する必要があるんだろうかと疑問をもち始め、「包茎の手術は不要である」という結論に至ったそうだ(笑)。面白い人である。
 包茎についていろいろと言われる「臭い」とか「早漏」とか「陰茎癌の原因」とかは、どれも亀頭を洗わないことが問題であり、毎日皮をむいて洗うということは、大切なことだし、洗うものであって、そうしないと実際に癌の原因にもなるのだそうだ。恥垢は彼女(セックスの相手)の子宮癌の原因にもなるそうなので気をつけたい。一時の私のように、彼女がフェラチオしてくれそうな時だけ一生懸命洗うということではダメなのである。毎日むいてしっかり洗おう。キーワードは「洗う」、それだけ。
 包茎手術の実際についての解説の中で面白かったのは、手術をしてもムケチンにできない場合もあるということだ。これは勃起率(?)に関係があり、10センチのペニスが勃起時も10センチなら余分な包皮はいらないが(ちなみに欧米人にはこういう勃起をする人が多いそう)、普段が5センチで勃起した時に10センチの人の場合、5センチ分余分な包皮がなければ勃起時に突っ張って痛いので、「包茎切ってもまだ包茎」という人は必ず出てくるということだ。考えてみると当たり前のことだが、なるほどと目からウロコ。だから伸縮率によって、包茎って必然というか必要ということなのだ。
 3章は、“人間と性”教育研究所の山本直英さん。若者の包茎に対する不安や、性教育の現状、授業の実践紹介などが書かれている。興味深かったのは欧米の話で、「日本人は包茎が多いが欧米ではムケチンの方が多い」と私は思い込んでいたのだけれども、実はアメリカ、ドイツでも、包茎が普通なのだそうだ! 日本では皮をかぶっているのは「包茎」、かぶってないのは何故か名前がついていない(「ムケチン」?)が、アメリカで「仮性包茎」を何と言うのか聞くと、特別な呼び名はなく「それはナチュラルなペニスだ」と、また、むけているペニスは何かと聞くと「手術した(もしくは割礼した)ペニス」と返ってくるらしい。うーん、いろんなとこに思い込みがあるな…。
 さ、ということで、包茎で悩んでる人がいたら、仮性だろうが真性だろうが、手術(十万〜数十万円、真性は保険がきいて2、3万円だそう)の広告に惑わされる前に、この本(1680円)是非手にとってみて下され!(ところで、本って安いな…。)
 ま、後は銭湯だな。銭湯行っていろんなペニスを見てみる、と。あんまりジロジロ眺めぬ程度に…。そういえば、学生時代の友人が銭湯で包茎調査をして「絶対ぇー包茎の方が多いでぇ」と不服そうに報告したことがある。私の感覚では案外ムケチンも多いと思うが、風呂場に入る前にむいてから入る人もいるのだと思う。
 というわけで、包茎でもムケチンでも、自分自身のチンポ、大事にしてやりたいものだと感じさせられた1冊でした。

(2000/12 名木太「モテ問通信」6号より) ←一覧に戻る ↑先頭に戻る


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