親切なクムジャさん |
Sympathy For Lady Vengeance |
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監督: |
パク・チャヌク |
脚本: |
パク・チャヌク
Jeong Seo-Gyeong |
音楽: |
チョ・ヨンウク |
出演: |
イ・ヨンエ
チェ・ミンシク
クォン・イェヨン
オ・ダルス
キム・シフ
イ・スンシン
キム・ビョンオク
ナム・イル |
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公式サイト(韓国語)
公式サイト(日本語) |
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クムジャさんの上に、天使は舞い降りるのか? |
★★★★ |
『復讐者に憐れみを』『オールド・ボーイ』につづく
パク・チャヌク監督による「復讐3部作」の最終章となる
この映画は、若くして殺人者の汚名を着せられた女性
クムジャの哀しき復讐の物語です。
主役を演じる、イ・ヨンエさん。日本でも放映されている
テレビドラマで人気の女優さんなんだそうですね。
あいにく、わたくし、そのドラマは未見なんですけれども、
彼女のお顔を一見しただけで、そのイメージは想像つきます。
「清楚」
この二文字ですべてを言い表せるんじゃないでしょうか。
そんなヨンエさんが、この血みどろの役を演じる。
しかも、それが迫真の名演技である。
というわけですので、
この映画の評価はおのずと定まってきました。
すげぇ。深けぇ。
パク・チャヌクの緻密な脚本は今回も健在ですし、
存分にお金と時間をかけたであろうカメラワークも素晴らしく、
チェ・ミンシク先輩をはじめ、チャヌク映画になくてはならない
俳優陣もいい味出しまくりでした!
今回は『オールド・ボーイ』に比べて
ヴァイオレンス度も控えめでしたしね。
肩にチカラ入れて観に行ったのに、それには及ばずって感じ。
なんですけど…。
チャヌク映画を2本観て、
オレの反応に同じ傾向があることに気づきました。
それは、観てて「すごい!」と思うんだけど、
それと同時に
「いつになったら終わるんだ?この話、早く終わってくれ!」
とも思うんです。
おもしろいのに、早く終わってほしい。
こう思わせる映画って、めずらしいんじゃないかな。
もうね、まったく終わりが見えないの。
これでもか、これでもか!と
どんどん深みにハマっていくの、主人公は。
一見、ハマってるところから脱出したのかなぁと
思わせておいて、でも、結局根本的には抜け切れず…。
そして、映画はなんとなく終わるんだけど、
主人公の人生には終わりがないことがわかるのね。
「これにて一件落着〜!」みたいな雰囲気、ゼロ。
ここが、この人の映画のいいところなんだと思います!
だから、主人公の抱える絶望や哀しみを考えると、
映画を観終わったあとからジワジワ染みてきて
(それでも結局答えは見つからないんだけど)
「人生」を考えさせられるんですよね…。
いいことがあっても、
イヤなことがあっても、
絶望的なことが起きても、
それでも人生はつづいていくんだよな。
生きる、って大変なことなんだな。
今、こうしてノホホンと暮らせているオレって
実は幸せなのかもしれないな。
この幸せがずっと続いてほしいな。
ってね。
こんなことを考えさせてくれる映画が
ただの"「復讐」を題材にした超ヴァイオレンス映画"だとは
とても思えません!
奥の深〜い一作です。 |
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posted on 2005.11.24 |
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▲TOP |
エリザベスタウン |
Elizabethtown |
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監督: |
キャメロン・クロウ |
脚本: |
キャメロン・クロウ |
音楽: |
ナンシー・ウィルソン |
出演: |
オーランド・ブルーム
キルスティン・ダンスト
スーザン・サランドン
アレック・ボールドウィン
ブルース・マッギル
ジュディ・グリア
ジェシカ・ビール
ポール・シュナイダー |
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公式サイト(英語)
公式サイト(日本語) |
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幸せな人生を、こうやって終わりたい。 |
★★★★☆ |
今日はこの映画の公開初日。
レイトショーで観に行ったものの、劇場はけっこう空いてて…。
テレビでは、おすぎの大絶賛コメントが入った
いけ好かないCMも流れていたりして、なんだかイヤな予感…。
しかも、アメリカの映画批評サイトrottentomatoesでの
批評家評価は29%(11/13現在)という低評価。
(ちなみに、一般観客の評価度は74%と、それほど悪くない)
なんだか、イヤ〜な予感がするぞ。
(『スター・ウォーズ』で毎回必ず登場するセリフ)
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でも、これだけの悪条件を抱えつつも、
やっぱりオレは、この映画が気に入ってしまいました。
キャメロン・クロウの作る映画は
どうしてもキライになることができません。
こればかりは仕方がない。どうしようもないのです。
どうしても、ウマが合ってしまうのです。ごめんなさい。
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[お話の導入部]
主役級の映画で、初めて「神話の世界」を飛び出した
オーランド・ブルームの役どころは、
新進気鋭のスポーツシューズ・デザイナー。
しかし、彼がデザインしたシューズが空前絶後の「大失敗」
をしでかしてしまい、彼の会社は破産、職を失い、
自殺まで考えていたところに、父親の突然の訃報を聞かされ、
彼は、遺体が待つ父の故郷へと旅立つ。
その飛行機の中で、キルスティン・ダンスト扮する
客室乗務員と知り合うのだが…。
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冒頭のナレーションを聞いた瞬間から
キャメロン・クロウ節全開であることがわかる、この映画。
夢のような恋愛映画としても観れるし、
父子の絆についての映画なのかもしれない。
青年の心の葛藤を描いているようにも見えるし、
後半のロードムービーに注目することもできます。
(まるで『アメリ』みたいでしたけどね!)
そういういろんな視点が混じり合い過ぎて、
ピンボケになっているという指摘にあるようですが…、
最近、2つの葬式を立て続けに経験したオレにとって
この映画は、
「それまでの自分といかに訣別して、新しい出発を果たすか」
そして「死んだ人と、いかに別れるのがいいのか」を
改めて考えさせてくれる、すばらしい作品に映りました。
そういう意味で、あのエリザベスタウンという街は
(保守的ではあるものの)すばらしい街だなぁと思うし、
スーザン・サランドン演じる奥さんは、最高の別れ方を
したなぁ、と思います。あれだけすばらしい愛情表現は
ないですね。そしてそれ以上に、
あれだけの人たちに深く愛されたミッチという人は、
いったいどんな人生を歩んできたんだろう?と
考えずにはいられません。
妻を愛し、子供たちを愛し、
隣人を愛し、生まれ故郷を愛し、
すべてを愛し、そして愛されて
一生を終えた彼の人生の充足感とは、
どれだけのものだったか?
オレも、できることなら、ああいうお葬式で
送り出してもらいたいなぁ、と思います。
ミッチのように、
愛し愛された中で一生を終えてみたいと思います。
p.s.
書き忘れてましたけど、
今回の作品も、音楽の選曲がすっばらしい!
パーーーーーーーーフェクト♪
キャメロン・クロウとオレは、趣味が合います。
エルトン・ジョン、トム・ペティ、
フリートウッド・マック、ライアン・アダムス!
そして、音楽は使われていないけど、ジェフ・バックリィも。
もう、何も言うことないっす。
今回初めて聴いたレイナード・スキナードと
パティ・グリフィンもいい感じだし、CD買ってみようかな!? |
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posted on 2005.11.13 |
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▲TOP |
ふたりの5つの分かれ路 |
5X2 |
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監督: |
フランソワ・オゾン |
脚本: |
フランソワ・オゾン
エマニュエル・ベルンエイム |
音楽: |
フィリップ・ロンビ |
出演: |
ヴァレリア・ブルーニ=テデスキ
ステファン・フレイス
ジェラルディン・ペラス
フランソワーズ・ファビアン
アントワーヌ・シャピー |
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公式サイト(日本語) |
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「だからこそ、人生は面白い」と言える人生を。 |
★★★☆ |
1. 離婚
2. 特別なディナー
3. 出産
4. 結婚
5. 出会い
離婚の書類にサインをするシーンからはじまり、
初めて二人きりになったシーンで終わる、この映画。
ある夫婦の恋愛が、なぜこんな結末に陥ってしまったのかを
時間をさかのぼりながら描いております。
同じ日に観た、薄っぺらな恋愛映画とは違って、
こちらの作品には、深みと重みと情熱と丁寧さが
あったおかげで、登場人物たちの「ウラの心理」を
考えながら観ることができました。
う〜ん、このへんは監督の力量の差なんでしょうか!?
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結婚もまだしたことがない人間(オレのことです)が
あれこれ言える立場ではないと思うんですけども、
あくまでも"想像"の領域から、この映画の感想を
述べたいと思います。
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ま、カンタンに申し上げますと、
結婚すると、
オンナは変わって(強くなって)、
オトコは変わらない(弱いまま)。
ということになるんでしょうか。
なんとな〜く、わかる気がします。
たとえば、女性ってのは、出産ができますよね。
自分の命をかけて、自分の中から新しい命を産み出す
っていう、自分の能力を最大限に発揮する一大事業です。
なので、それを乗り切った女性ってのは
人間としてひと皮むけるんでしょうし、
自分が産んだ子供のことを、自分の「分身」として
肉体的に完全に実感できるわけです。
でも、一方、オトコのほうはというと
種付けはしたものの、自分で痛い思いをするわけでもなく、
ただ見守るだけしかできない。自分の子供だ!と
かわいく思う気持ちはもちろんあるんだろうけど、
女性ほどの「肉体的な実感」は湧きにくいのかな、って。
そういう点で、人としての器の広がり具合が
男女の間で違ってくるのかなぁ、なんて思いました。
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と、なんだか映画の本質から外れてるようなことを
考えてしまったんですけど、ま、とにかく、
この夫婦のような「ボタンの掛け違い」、オレはゴメンだな。
つくづく思います。
オトコの想いとオンナの想いがちょっとでもズレてると
その差が最初はわずかでも、年月を経るにつれて
どんどん広がっていくんですね。コワイです。
そして、そんな状態でも、
それにすがるしかないオトコと
すでに吹っ切れてるオンナ。
こんなオトコにはなりたくないなぁ〜っていう典型でした。
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オトコの想い、オンナの想い、
そしてそれを第三者の立場から見ている観客と。
それだけ役者が揃っていれば、冷静な判断も下せるだろう
「恋愛」という名の舞台。
でも、実際は、相手の気持ちを完全に理解することなんて
できない。っつか、わかんないことのほうが多いっす。
だからこそやりがいがあるんだろうし、
少しでも理解できたときの喜びが格別なんでしょうね。
だからこそ、恋愛って、人生って、面白いんでしょう。
最後にそう言って死ねる人生を送りたいものです。
うん。
面白いのはけっこうだけど、やっぱ離婚はイヤだね。やっぱね。 |
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posted on 2005.11.06 |
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▲TOP |
メトロで恋して |
Clara Et Moi |
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監督: |
アルノー・ヴィアール |
脚本: |
アルノー・ヴィアール |
音楽: |
バンジャマン・ビオレ |
出演: |
ジュリアン・ボワスリエ
ジュリー・ガイエ
ミシェル・オーモン
サッシャ・ブルド
アントワーヌ・デュレリ |
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公式サイト(フランス語)
公式サイト(日本語) |
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おい、アントワーヌ!おまえは一体何がしたいんだ? |
★☆ |
今日は、この映画をやっているオンボロ映画館が
なぜか1000円均一だということで、フラフラっと
入ってしまいまして。
おフランスお得意の甘〜い恋愛映画かな、と。
上映時間も90分足らずで、ちょうどいいぞ、と。
入場券を買ったら、なぜか紅茶のお酒のプレゼントも
あったりして、今日はなんだかツイてるぞ、と。
そんな期待を込めて、席に座ったのですが…。
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アントワーヌは32歳(同い歳じゃないか!)の売れない役者。
クララは小説家を目指して、駅のバーでバイトにいそしむ28歳。
こんな二人は、ある日偶然地下鉄で知り合い、恋に落ちる。
(このナンパの仕方はおしゃれでよろしい!)
二人は一気にバラ色の日々に突入するのだが、
ある出来事をきっかけに、二人の運命の歯車が…。
って感じのお話です。
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まず、目をひいたのは、クララ役を演じるジュリー・ガイエさん。
めっちゃタイプ☆超キレイ!!
キャリー・アン・モス(『マトリックス』のトリニティね)から
ヴォンテージスーツを脱がせて清楚にした感じがサイコー!
演技も、すごくキレがあって、メリハリがきいてて
よかったですからね〜。お名前、覚えときます♪
と、映画の前半部までは、そんな浮かれモードで
観ていれば大満足でした。
このまま、ふたりの恋愛の行方を見守ってやろうじゃねぇか!
みたいな、一体感すら覚えていたほどでした。
ところが、ところが…。
上に書いた「ある出来事」というのが
映画的に何の前触れも、何の説明もなく、
唐突に訪れたんですね。
しばらく、何が起こっているのか、
オレにはサッパリ事情がつかめませんでした。
(結局、家に帰ってきて公式サイトを見るまでわかんなかった…)
もう、ここからは、ダークサイドへと怒涛の展開。
甘いもへったくりもなくなっちゃいました。
物語のあまりの転調ぶりに、すっかり置いてけぼりです。
アントワーヌの描き方同様、物語の焦点がまったく合ってない。
結局、何が言いたいのかがわかんない。
しかも、ラストシーンまでボケボケなんだから
もうお手上げですわ。
おいおい、おまえら、一体どうしたいねん!?
オレが関西人なら、ツッコミまくりですね。
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と、まぁ、映画自体はクソおもしろくもない、
『オータム・イン・ニューヨーク』以来、久々の
"くだらない恋愛映画"でした。
が、終盤、印象的な詩が登場しましたので、
その一節を公式サイトを参考にしながら
ご紹介して終わりにしたいと思います。
一行の詩のために
多くの街や人を見て
夜明けの小さな花の開花を、
解明されぬ幼い日々を思い出さねば
窓を開け放ち
断続的な呼吸をききながら
瀕死の人のそばにいた経験も必要だ
だが、追憶だけでは足りない
追憶は、まだ詩ではない
追憶がぼくらの中で血とまなざしと愛情になり
ある稀有なひとときを経て初めて
詩の最初の言葉が、追憶の中に立ち上がるのだ
リルケ 『マルテの手記』より |
ここだけは、ちょっと感動しちゃったなぁ。 |
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posted on 2005.11.05 |
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▲TOP |
ティム・バートンのコープス・ブライド |
Tim Burton's Corpse Bride |
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監督: |
ティム・バートン
マイク・ジョンソン |
脚本: |
ジョン・オーガスト
キャロライン・トンプソン パメラ・ペトラー |
音楽: |
ダニー・エルフマン |
声の出演: |
ジョニー・デップ
ヘレナ・ボナム=カーター
エミリー・ワトソン
トレーシー・ウルマン
アルバート・フィニー
リチャード・E・グラント
クリストファー・リー |
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死後の世界も悪くないかもね!? |
★★★☆ |
ティム・バートンが手がけた
「ストップモーション・アニメ」という手法で作られた
『ナイトメア・ビフォア・クリスマス』から12年。
久しぶりに、あのガイコツ・ワールドが帰ってきました!
おとぎ話の舞台は、19世紀のヨーロッパ。
貴族階級に成り上がりたいバン・ドート家のダメ息子
ヴィクターは、没落寸前の貴族、エバーグロット家の
冴えない娘、ヴィクトリアと結婚することになりました。
しかし、ダメダメなヴィクターは、結婚の誓いの言葉すら
満足に言えず、結局、式は延期に。
落ち込んだヴィクターは、フラフラと森の中に歩み入り、
誓いの言葉を練習するのだが、偶然と誤解が入り乱れた
中で、誤って「死体の花嫁」と結婚するハメに…。
そのまま死者の世界へ連れて行かれたヴィクターと、
死者・生者それぞれの花嫁の運命や、いかに!?
というお話であります。
この映画では、生者の世界と死者の世界が出てくる
わけなんですけど、その対比が面白いんですね〜!
「死んでしまったことを受け入れた上で、それでも
明るく楽しく生きる(?)」死者たちと
「バラ色の人生に目がくらんで、殺伐と生きる」生者たち。
死者のほうがイキイキしてるだなんてね!
なんという皮肉。なんという矛盾。
さすがティム・バートンって感じでございました。
あんな世界なら、オレも一度死んでみたいわ♪
なんて、縁起でもないことを考えたりして!
『チャーリーとチョコレート工場』に続いて
ダニー・エルフマンの音楽も冴えに冴えまくっており、
思わずホネホネロック♪な状態に陥ってしまうほど
楽しんでしまいましたわ〜。
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さて、最初に書いた「ストップモーション・アニメ」とは
一体なんなのか?googleで検索して調べたところ、
なんだか難しいんだけど、ザックリこんなことではないかと
いうことがわかりました。
要するに、
「主人公をパペット(人形)でひとコマずつ動かして撮影、
その他背景(実写・CGなど)と組み合わせる手法」
ってことみたいです。
とりあえず、ひとコマずつ作ると聞いただけで
この映画を完成させるまでの、とてつもない苦労が
ひしひしと伝わってきますね。
でも、この手法で作られた作品には
独特の味わいがあるので、いまだに魅力ある撮影手法として
生き残っているんでしょうね。
たとえば、『スター・ウォーズ』のエピソード5や6でも
メカや巨大生物のシーンなどで
フィル・ティペットによるストップモーション・アニメが
縦横無尽に使われていて、CGとは違った魅力を
今でも醸し出しているのです。
この『コープス・ブライド』は、その手法の最新・最強形として
素晴らしい仕事をしているものだと思われます。
楽しませてもらいました! |
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posted on 2005.11.03 |
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October,2005 | back number | December,2005  |