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エピローグ  18

  ―シュワブスキーのオペラのあとで

アイリン・タビオス


「突然だった」予期せぬキスを

おどろく彼女の くちびるに

押しあてる。彼女の髪の

かすかな香り。つかの間の     

彼女は一歩あとずさりする

許された―甘い限界

線を引いた僕のノートで

予期されていた。もどかしい

キスをもう一度、りんごをなめるよう

おそれを やわらげてゆく。         

こぼれる涙は ぶどうの粒

つよく求める僕の舌に。僕の口は

あたらしい空、すべてを容れる。

牧草地、小川、あるいは個部屋

椅子と鏡のある―

すべては肉体と呼吸だけ

最高の歌をねだりながら。

                      


アイリン・タビオス            

詩人、出版者。詩のCDをリリースしており、十冊の詩集、小説、エッセイの著作がある。近著に”Reproductions of the Empty Flagpole”と題する散文詩選集(1996-2002)等がある。

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