2005年GGG、すなわちGutsy Geoid Guardが開発に成功した、超AIによって自律稼動するGストーン搭載型レスキュービークルロボ・氷竜および炎竜に端を発する、一連の大型特殊車両変形仕様のビークルロボ群の総称。正式な呼称ではなく、コードネームに「竜」あるいは「龍」の字が、慣例的に入れられることから、俗にこう呼ばれる事がある。現在旧GGG製の氷竜、炎竜、中国科学院航空星際部開発の風龍、雷龍、そしてフランスGGGおよび対特殊犯罪組織「シャッセール」の光竜、闇竜が一般に確認されているが、日本政府によるGストーンおよびそれに伴うオーバーテクノロジーの譲渡は世界各国に広範な分野で行われているため、これ以外にも「竜」型が存在している事は周知の事実である。
「竜」型の最大の特徴はその基礎設計の確実性と、優れた拡張性を有する事にある。それゆえ彼らは高い汎用性を有し、数多くのバリエーション機を輩出している。ビークルロボはGストーンとそれに伴うオーバーテクノロジーによって初めて現実のものとなった「自律稼動する人型ロボット」であり、現在あるすべてのビークルロボはその最初の機体である氷竜、炎竜を基本として発展、進化したものである。「諜報型」と呼ばれるボルフォッグやポルコート、マルチロボであるゴルディーマーグでさえも例外ではない。
本来氷竜および炎竜の主任務は大規模災害におけるレスキュー活動であった。それゆえ、災害が想定されるあらゆる地域への投入を可能にする汎用性と、迅速な現場到着を可能にする大型特殊車両への変形機構、そして現場における迅速かつ柔軟な判断を可能にする、限りなく人間に近い学習型超AIの搭載がなされ、個々の能力において対処不能と判断がされた場合に行われるシンメトリカルドッキングによって、ハイパワーとふたつのタイプの異なるAIの合議運用、そしてこの形態でのみ使用できるメガトンツールの使用能力を獲得するのである。氷竜、炎竜は実戦投入当初こそ、その運用に問題点が多々見られたが、超AIによる学習とデータのフィードバックによって急速に成長し、特に都市部などの人口密集地域での有効性を遺憾なく発揮するようになる。そして同時に立証されたのは、その汎用性故に氷竜、炎竜が地球外知的生命体、すなわちゾンダーとの戦闘においても極めて有効な「戦力」たりうる、という事実である。同時運用による共同作業を設計当初から想定していた氷竜および炎竜は、背面に装備するパワーアームの仕様が異なる。氷竜は瓦礫除去を行うクレーンと消火活動を行う散水砲が一体となったパワークレーンを、炎竜は高所救助を行うラダー(はしご)と緊急時のバックファイア(延焼を防ぐために敢えて火を点けて現場を酸欠状態にすることで消火する方法。極めて危険なので判断は慎重を要する)も可能な炎熱砲を一体化したパワーラダーを装備する。この背面装備と搭載AIを除けば、両機はほぼ完全な同型機であり、これは背面装備を交換する事で容易にバリエーション機を製造できる事を意味し、同時に装備を戦闘的なものとすれば、戦闘用としても充分任に堪えうるということであった。更にAIは使用実績のある氷竜、炎竜のものをベースとすれば比較的短期間に実戦投入段階まで成長させることも可能であり、しかもその有効性は実証済みとあって、中国、フランスをはじめとした各国が独自の「竜」型ビークルロボ製造に乗り出していくこととなる。当時の各国にはオーバーテクノロジーにおける理論はあっても技術の蓄積がなかった。「竜」型はそれを高める良い足がかりとみなされていたのである。
しかし、各国もただ凡庸に氷竜、炎竜をコピーしていったわけではない。特に本来レスキュー用として建造、および教育され、かつその任において経験を蓄積してきた氷竜、炎竜では、純戦闘用として運用する事はできない。そのためAI育成段階において独自のプログラムが必要とされ、加えて背面装備が異なれば、実践的な運用面で格差が生じる事は自明であり、それゆえ各国では初期段階から独自のプログラムやカスタマイズが積極的に行われた。特にゾンダーに対抗するための高出力を確保する意味でなされたウルテクエンジンの搭載は結果的に標準化され、特にこの時期のビークルロボを第二世代型と呼ぶ事もある。
最初に自国産ビークルロボの実戦投入に踏み切ったのは中国であったが、独自の軍事教練プログラムがGストーンの特性と噛み合わずに運用開始間もなくその改変を余儀なくされている。また第二に実戦投入を図ったフランスも女性型への改造という野心的な試みを行ったものの、任務が与える幼児期のAIに対する負荷を収拾できず、これも後にAIの一部改変を行わざるを得なかった。これらの経緯は、超AI運用による自律型ロボット開発の困難さを物語っているが、しかし一方で中国の風龍、雷龍は戦闘型ビークルロボの先駆けとして、フランスの光竜、闇竜はこれに施された数々の実験的仕様によって、第三世代型と呼ばれる後のビークルロボ開発の基礎を作り、同時に大きな示唆を多数与えている。そして何より対機界31原種戦やバイオネットをはじめとした犯罪組織に対する治安維持活動、そしてソール11遊星主に対する宇宙防衛戦における彼ら、彼女らの実績は高く評価されており、現在も世界各国で「竜」型ビークルロボの開発が進められている。
だが一方で「竜」型は超AIとGストーンの搭載と言う条件をクリアしてこそ有効性を発揮する、という指摘もある。超AIは育成に時間を要し、バックアップやカウンセリングをはじめとした維持管理にも莫大なコストがかかる。Gストーンの希少性は言わずもがなである。つまり「竜」型は大量生産による集団運用には適さない、高性能、高コストのビークルロボなのである。そのため、その優秀さにもかかわらず国連安全保障理事会が直轄する、いわゆる国連軍の主力装備選定トライアルには「竜」型は一切参加せず、結果量産型CRが制式採用を勝ち取っている。