Old Fashioned Rock Wave

Rock Around The Eagles

Bands Around The Eagles
バンズ・アラウンド・ザ・イーグルス

中編

 70年代のウエスト・コーストのバンドをニュートラルに紹介しようなんて思ってましたが、結果的に70年代ウエスト・コーストのBIG4(イーグルス、ドゥービー・ブラザーズ、スティーリー・ダン、リトル・フィート)中心になってしまいました。まぁこれもしょうがないことでしょうか。
 時代はそのBIG4の円熟とともにウエスト・コースト・ロックの繁栄期とでもいいましょうか....。

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EAGLES/ON THE BORDER
オン・ザ・ボーダー
1974年

 凝りもせずまたまたグリン・ジョーンズのプロデュースのもとロンドン録音で始まった3rdアルバムの録音ですが、結局2曲仕上げただけでいよいよプッツン...。LAに戻りプロデューサーをビル・シムジクに替えてついでにギターにドン・フェルダーを迎えてパワーアップしたのです。よりポップにファンキーに脱カントリー路線を走るイーグルスですが、皮肉なことにロンドン録音の「我が至上の愛」が初のNo.1ヒットとなりLAのトップ・バンドの座を手に入れたのでした。もうひとつのロンドン録音「恋人みたいに泣かないで」もグリン・ジョーンズ好みの泣かせるスロー・ナンバーです。グラム・パーソンズに捧げたバーニー・リードンの名曲「マイ・マン」、トム・ウェイツの「オール55」、ジャック・テンプチンの「 過ぎた事」、ファンキーな新境地を示した「オン・ザ・ボーダー」などなどイーグルスの骨格が固まった密度の濃い一枚といえます。

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THE SOUTHER HILLMAN FURAY BAND
サウザー・ヒルマン・フューレイ・バンド
1974年

 デヴィッド・ゲフィンの計らいにより、ソロ活動がパっとしなかったJ.D.が結成したスーパー・グループ。もとバーズ、フライング・ブリト−・ブラザース、マナサスのクリス・ヒルマン、もとバッファロー・スプリング・フィールド、ポコのリッチー・フューレイをフロントにデレク&ザ・ドミノスのジム・ゴードン、マナサス勢のアル・パーキンス、ポール・ハリス、ジョー・ララをバックアップに迎えた目も眩む強力な布陣のユニットでした。このメンバーが集まって悪いものができるはずはないのだけれども、より集まった以上のミラクルは起きなかったようですね。マナサスのメンバーが多いせいか、サウンドもマナサスに通じるところがありますが、フロントの3人の個性からしてちょっと気負い過ぎって感じかなぁ。もう少しリラックスした感じでいけばイーグルスに対抗できるくらいになった可能性はあったかも。もうひとつ、リズム・セクションはいいとしてギターにもう少し強力な人がいれば、なお良かったのにと思います。


POCO/CANTAMOS
カンタモス(僕等の歌を)
1974年

 ポコの8作目であり、リッチー・フューレイが抜けてからの2作目にあたりエピック・レーベルでの最後のアルバムとなります。メンバーの変動に揺れ、カントリーとロックの間で揺れるポコですが、前作『セヴン』では、リッチー・フューレイの穴を何とかしようとポール・コットンとティモシー・シュミットが頑張り、コンテンポラリ−なロック色が強い新しいポコ・ワールドを示してくれたのですが、今作はラスティ・ヤング作の「よもぎのセレナーデ」をトップに持って来て、従来の泥臭いポコ・サウンドに戻っています。ちなみに、このアルバムまでのポコはベスト盤『ザ・ベリー・ベスト・オヴ・ポコ』で楽しむこともできます。


LOGGINS&MESSINA/ON STAGE
オン・ステージ
1974年

 ロギンス&メッシーナの4作目は2枚組ライヴ盤です。2ndアルバム『ロギンス&メッシーナ』発表後のステージ記録のため、収録曲のほとんどは1st、2ndアルバムの曲で占められており、まさに彼等の絶頂期の記録と言えます。ケニー・ロギンス弾き語りのアコースティック・セットによるお馴染みの心暖まる「プー横町の家」、「ダニーの歌」などで幕を明け、バンドが加わり、ジム・メッシーナが登場してカントリー・タッチの軽快なナンバーが続き、ライヴ・アレンジの「アングリー・アイズ」や「ヴァヒーヴァラ」においてハイライトを迎える実に憎い構成となっています。バッファロー・スプリングフィールドから派生したグループとしては、他にCSN&Yやポコがありますがが、ひょっとしたらバッファロー・スプリングフィールドの目指したプログレッシヴなアメリカン・サウンドを最も具現化したのがこのロギンス&メッシーナかもしれないとふと思うときがあります。ちなみに彼等は一見デュオですが、実のところバックバンドは1stアルバムからほぼ固定されており、引き合いに出してはなんですがポコなどに比べるとずっと安定した所帯だったのです。特に二人の管楽器奏者がジム・メッシーナのギター以上にロギンス&メッシーナ・サウンドの特徴を出していると思います。


THE DOOBIE BROTHERS/WHAT WERE ONCE VICES ARE NOW HABITS
ドゥービー天国
1974年

 ドゥービーズの4作目。テッド・テンプルマンがプロデュースにあたり、前作同様リトル・フィートのビル・ペインがキーボードに、スティーリー・ダンのジェフ・”スカンク”・バクスターがペダル・スティール・ギターでゲスト参加している他、アーロ・ガスリー、メンフィス・ホーンなどが参加しています。当初シングル盤のB面だった味わい深いアコースティック・ナンバー「ブラック・ウォーター」が、じわじわとNo.1ヒットになりアルバムのほうもロング・セラーになりました。前作『キャプテン&ミー』の延長上の音ですが、豪快かつ繊細なドゥービー・サウンドがより洗練されたものになっています。ツイン・リード・ギター、ツイン・ドラムが冴え渡るお薦めの1枚です。


STEELY DAN/PRETZEL LOGIC
プリッツェル・ロジック
1974年

 スティーリー・ダンの3作目。彼等がバンドとしての形態を保っていた最後のアルバムではありますが、すでに多数のスタジオ・ミュージシャンが参加し、この後のユニットとしての展開を暗示しています。「リキの電話番号」がメジャー・ヒットして、一躍知名度を高めた初期の代表作でもあります。独特のファンキー&ジャジーな感覚に彩られ、ポップなところも合わせもつD.フェイゲン/W.ベッカーの作品の完成度は高く、アレンジも冴えています。「パーカーズ・バンド」やデューク・エリントンのカヴァー「イースト・セント・ルイス・トゥードゥルーオー」から彼等のジャズ指向が伺い知れます。


LITTLE FEAT/FEATS DON'T FAIL ME NOW
アメイジング!
1974年

 リトル・フィートの4作目。プロデュースは引き続きローウェル・ジョージです。歴史的名盤の前作『デキシー・チキン』のクオリティを保ちながら『セイリング・シューズ』の多様性も合わせ持つ好盤といえます。これまでは、ローウェル・ジョージのワンマン的な印象が強かったのですが、今作ではビル・ペイン、ポール・バレルの作品も数多く収録されており、リトル・フィートの新しい可能性が感じられますが、ファンキーなカッコ良さは相変わらずって感じです。ビル・ペインのピアノもいい味出してますが、やはりローウェル・ジョージのレイドバックしたヴォーカルとスライド・ギターは素晴らしく、ジョージのスライド・ギターを聞きたい人はこのアルバムがお薦めですね。エミール・ハリス、ボニー・レイットらがコーラスで参加し、「スパニッシュ・ムーン」のみヴァン・ダイク・パークスのプロデュースとなっています。


HOWDY MOON
ハウディ・ムーン
1974年

 元フィフス・アヴェニュー・バンドのジョン・リンドが、リチャード・ホーヴェイ、ヴァレリー・カーターと結成したユニットの唯一のアルバム。リトル・フィートのローウェル・ジョージのプロデュースによるウエスト・コースト産ではあるが、イーストコーストの香りも漂うあたりはメンバーからして当然なのでしょう。今風にいえばフォーキーな感じとでもいうのでしょうか。ヴォーカルを前面に出したシンプルでナチュラルなサウンドの中で、ヴァレリーを中心としたコーラスに思わずはっとさせられる、そんな好盤です。ヴァレリー・カーターは、この後ジャクソン・ブラウンなどのバック・コーラスをしながら1977年にやはりローウェル・ジョージのプロデュースでソロ・デヴューします。

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EAGLES/ONE OF THESE NIGHT
呪われた夜
1975年

 前作『オン・ザ・ボーダー』での変化が見事に結実し、事実上イーグルス・サウンドの完成と言えます。アレンジ・ハーモニー・楽曲・演奏どれをとっても申し分なく、多くの名曲を生みだしました。特にドン・フェルダーのギター・ソロが素晴らしいタイトル曲の出来は秀逸。次作『ホテル・カリフォルニア』がもちろん最高作なのですが、このアルバムのほうが気軽で、なによりイーグルスらしい。

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LOGGINS&MESSINA/MOTHER LODE
マザー・ロード〜進世界
1975年

 ロギンス&メッシーナの5作目。優しいフォーク、カントリー・ロックや軽快なロックンロールが魅力の彼等ですが、このアルバムでは広い意味でのフュージョン的な音づくりに挑戦しており、タイトルからも伺い知れるようにコンセプチュアルなアプローチをとっています。一聴して、キャッチーな曲が少ないため地味な印象ですが、聞き込むほどに味わい深く、ハート・ウォームなケニーとドライなジムのコンビネーションが絶妙のバランスで、ジムのギターとバックアップ・バンドとのアンサンブルも洗練されたものになっています。じっくり聞いてあげたい好盤といえます。


AMERICA/HEARTS
ハート
1975年

 アメリカの5作目。72年に『名前のない馬』でCSN&Yフォロワーとして衝撃的?にデヴューした後、徐々にヒットも少なくなり、しりすぼみ的になって行ったのですが、前作『ホリディ』からビートルズを育てた、あこがれのジョージ・マーティンをプロデューサーに迎え「魔法のロボット」、「ロンリー・ピープル」というヒットを放ち、息を吹き返しています。今作でも同様にジョージ・マーティンのプロデュースのもと、「ひなぎくのジェーン」、「金色の髪の少女」のヒットを含む、上質なポップ・アルバムに仕上がっています。さすがにこの頃になると、当然ながら誰もCSN&Yフォロワーなんて口にしなくなっており、爽やかさの中にかすかに英国の香り漂う独特の世界を聞かせてくれます。


STEELY DAN/KATY LIED
うそつきケイティ
1975年

 スティーリー・ダンの4作目。ジェフ・バクスターらが抜け、マイケル・マクドナルド、ジェフ・ポーカロがメンバーになったことになっていますが、事実上このアルバムがスティーリー・ダンがD.フェイゲン&W.ベッカーのソングライター・ユニット+スタジオ・ミュージシャンとなった最初のアルバムと認識しています。この頃になるとすっかりD.フェイゲン節が確立されており、曲調に応じたミュージシャンの起用を模索してる感じが伺えます。メンバーのD.ディアス、W.ベッカーを含めて7人のギタリストが参加するなど、豪華な顔ぶれが揃っています。プロデュースはゲイリー・カッツ、エンジニアはロジャー・ニコルスとなっています。


THE DOOBIE BROTHERS/STAMPEDE
スタンピード
1975年

 ドゥービーズの5作目であり、前期ドゥービーズ有終の美を飾る傑作。今作からジェフ・”スカンク”・バクスターが正式メンバーとなり(スティーリー・ダンの状況からして当然)、いよいよドゥービーズもトリプル・リード・ギターになったわけで、ウエスト・コーストというより、サザン・ロック的な豪快さを強調した骨っぽさが感じられます。プロデュースは変わらずテッド・テンプルマンであり、リトル・フィートのビル・ペインも続けてキーボードに参加していますが、今まで以上にクローズ・アップされています。前作『ドゥービー天国』というより、ジャケットからして『キャプテン&ミー』を強く意識したような印象を受けますが、ホーン・セクションやストリングスの多用は前作の流れを組むものといえます。シングル・ヒットした「君の胸に抱かれたい」で聞かれるジェフ・バクスターのジャジーなギター・ソロや、「ハングマン」における美しいストリングス(ニック・デカロのアレンジ)とコーラスのアレンジは今までのドゥービーズにはなかったものだし、ライ・クーダー、マリア・マルダーなどがゲスト参加して盛り上げています。


LITTLE FEAT/THE LAST RECORD ALBUM
ラスト・レコード・アルバム
1975年

 リトル・フィートの5作目。プロデュースは、ローウェル・ジョージです。『ラスト・レコード・アルバム』といっても、これが最後のアルバムではありません。洒落です、洒落!ジャケットのイラストも2ndアルバム『セイリング・シューズ』からのネオン・パークのもので相変わらずキッチュでいかしていますね。ローウェル・ジョージは、サッカーでいえば、リベロって感じでしょうか?ちょっと引き気味だけどビル・ペインやポール・バレルをうまく使いながらリトル・フィート・サウンドをまとめあげています。そのビル・ペインやポール・バレルもちゃんとリトル・フィートらしい曲を提供し、まとまりのあるアルバムになっています。リラックスしたレイド・バック・サウンドの中に、ザ・バンドやスティーリー・ダンの香りがちらほら感じられるのは気のせいでしょうか?名盤とまでは言えないまでも、リトル・フィートらしい好盤言える1枚です。


POCO/HEAD OVER HEELS
ヘッド・オーヴァー・ヒールズ
1975年

 ポコの9作目であり、ABC移籍後の1作目です。再びコンテンポラリー路線に挑戦でしょうか?ティモシー・シュミットの美しいナンバー「キープ・オン・トライン」で始まるこのアルバムは安定期に差し掛かろうとするポコの意欲が感じられる1枚です。全体としては、泥臭さはなく、軽いタッチのカントリー、洗練されたポップ感覚に統一されています。そんな中でポール・コットン作のリトル・フィートを彷佛とさせる「ダウン・イン・ザ・クォーター」やドナルド・フェイゲン&ウォルター・ベッカー作の「ダラス」が新しいポコを予感させてくれます。一般的にはあまり評価の高くないアルバムかもしれませんが、結構好きです。軽めの音が好きな方にはお薦めです。

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次回はいよいよ70年代終盤です。
お楽しみに!

To be continued.

バンズ・アラウンド・ザ・イーグルス〜前編
バンズ・アラウンド・ザ・イーグルス〜後編
バンズ・アラウンド・ザ・イーグルス〜おまけ


ホテル・カリフォルニアの冬
テキーラ・サーキットの宴
J.D.サウザー〜イーグルスに最も近かった男
ギタリスト・オヴ・ザ・イーグルス

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