「サイエンスカフェon中央線」
終了のお知らせ
平成24年12月
新田恭隆
「サイエンスカフェon中央線」は、先週(12月1日開催の「相対性理論と天文学」)をもって終了致しました。
平成21年9月26日からほぼ3年強の間、3カ月おきを目途に都合14回開催しました。そのテーマは次のとおりです。
「目で見る天文学―惑星の仕草」、「宇宙の天気を予報する」、「森林は今どうなっているのか」、「脳を科学するということ」、「情報学と統計学が挑む」、「ブームを科学するー経済物理学の挑戦」、「新聞の「科学記事」の科学」、「放射線の生い立ちとその影響」、「宇宙を支配する『暗黒面』」、「南極と北極の水から見た地球環境変動」、「遺伝子組換え作物をもう一度考える」、「リスクへの対応を考え直してみよう」、「ミクロの世界をどのようにして見るか」、「相対性理論と天文学」
「サイエンスカフェon中央線」をはじめるに当って大まかな方針をたてました。それは、テーマはできるだけ基礎科学の先端研究の話題とする、参加人員数はお互いに会話が出来る範囲に止める(注)、会場は中央線沿線で、集まるのに便利かつあまり「勉強」の雰囲気でない所、説明を願う研究者の方も中央線の方、テーマについてのやりとりの時間を半分以上取る、というものでした。
結果として、お出で頂いた研究者の方々は全員大学や研究施設が中央線沿いにあるかあるいはお住まいがあるかの何れかでした。また参加人員は1回に12,3人から16,7人程度でした。一方会場は国分寺駅から2分の喫茶「らんばん」、コーディネーターは科学と社会を結ぶ立場の新聞社科学部記者の保坂さんと、これは不動の陣容でした。
(注)科学の勉強ならば、人を大勢集めて大きい部屋でした方がはるかに効率的に目的を達成できます。
よく皆さんに聞かれたのは、テーマはどうして決めるのか、研究者探しが大変だろう、ということでした。実はテーマは私(文系の元銀行員)の独断、個人的に興味を持っているものを取り上げたということです。上記テーマの一覧を見ると、やはりなにか偏りがあることは否めません。特に、21世紀のメインテーマといわれるライフサイエンスへの配慮が足りなかったと思っています。
研究者の方は、種々の(中央線沿いの)研究機関のホームページや新聞記事などを見て見当を付けました。大体メールでいきなりお願いをするのですが、殆んど快くお引き受け頂きました。改めて感謝申し上げます。学問に縁のない私は大学などに対して未だに「象牙の塔」という意識が強いのですが、実際はそうではありませんでした。「象牙の塔」も次第に社会化してきているのでしょうか。それはそれでまた議論の種になるのかも知れませんが。
サイエンスカフェの運営上苦労したこともあります。先ずPRの制約です。参加者から300円ずつ参加費を頂戴しました(飲物代は別)が、これは雑費的な経常費を賄える程度で、講師の方々にも満足なお礼を差し上げることが出来ませんでした。無論まともなPRは出来ませんでした。なお、直接経費支払い後の計算上の運営費総残高は1,100円で、一応ほぼ収支トントンで終ったこと及びポスター制作、会場庶務などはボランティア的援助に頼ったことを申し添えます。
もう一つは、参加者の基礎的な素養の問題、すなわち理系文系混在の問題です。科学の理解にはどうしても素養の差が出てきます。一部の人の常識が他の一部の人にはわからないことはよくあります。このように参加者素養が混在するサイエンスカフェで一つの科学テーマを皆さんで聞いたり話したりするのは非常に難しい。しかし、逆に言えばそこにサイエンスカフェの大きな存在理由があるとも言えます。現代の科学の進歩は目覚しく、それが故に科学が社会の一歩先を行くことによって軋轢を引き起こす事態なども想定されます。これに対しては一般の社会人からの発言が必要になります。彼らの発言は科学者側から見ればおかしな点があるかも知れませんが、それが取りも直さず軋轢の一種を成すという考え方もあるでしょう。誠に難しいことですが、サイエンスカフェにはそのあたりのやりとりの仲立ちが期待されていると思っています。
「サイエンスカフェon中央線」を終ることにしたのは、会場の「らんばん」が駅前再開発工事に関連して来年には営業できなくなるという事情によるものです。かたがた私も来年は傘寿を迎える歳になりこの辺が潮時かと思った次第です。
上に述べたような理想的なサイエンスカフェの域には達しなかったでしょうが、兎に角多くの方々のご協力でこの3年強、14回の「サイエンスカフェon中央線」が開催出来ましたことに深く感謝申し上げます。
なお、開催した14回の「サイエンスカフェon中央線」の概要はこのホームページに納めてありますのでご参照願います。また、ホームページ自体なにかうまい変身が出来ないか、考慮中ではあります。
以上