Preface/Monologue2024年 9月


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釈迦ヶ岳から破風山の奥に夏富士を望む、右奥に十二が岳と節刀ヶ岳

ここまでのCover Photo:釈迦ヶ岳から破風山の奥に夏富士を望む、右奥に十二が岳と節刀ヶ岳

1 Sep 2024

この日、例年ならば二百十日なのだけど、今年は閏年なので昨日だったらしい。
その昨日まで台風10号は台風だった。本日、熱帯低気圧に。

地震に風水害と、なんだかここ数年自然災害が目立つような気がする。
昔の記憶が薄れてそう感じるのかもしれないが…

5 Sep 2024

青春18きっぷで長野へ。昨年の夏に結願した板東三十三観音札所巡りのお礼参りとして善光寺を詣でる。

善光寺自体は二度目のお参りだが、今回は天台宗大本山の善光寺大勧進に浄土宗大本山の善光寺大本願にも詣でた。大勧進のご住職が善光寺の住職を兼ね、大本願の大僧正が善光寺上人を務められている。俗人には正確には計り知れないが、善光寺がいかに大きいお寺かが推察できるというものだ。なお、大勧進大本願いずれでも「善光寺」の御朱印がいただける。

参道である門前町には店内でコーヒーも飲める書店があり、気に入った本を読みながら一服できる。大勧進の喫茶室で飲んだばかりだったのだが、雰囲気がよくて頼んでしまった。暑くて持参のペットボトル飲料まで飲んでいたものだからなかなか減らない。おかげでゆっくりできた。


往路は各駅停車の旅としたので、早朝に家を出て電車を乗り継いで約7時間、長野駅に着いたときはすでに午後だった。中央本線と篠ノ井線とで向かうからか余計に時間がかかる。かつての信越本線が健在であればもう少し早く着くのではと思うのだが、この本線はいまや三つに分断され、碓氷峠に至っては線路自体がない。戸隠に向かうためにこの路線の各駅停車で長野を往復したものなのだが、今は昔の物語。

今朝は長々とした列車の旅だったが、篠ノ井線の姨捨駅からは善光寺平を底に浅間、菅平、志賀の山々がかなたに立ち上がる大観を眺め渡されたのはよかった。冠着山に登りに行ったときから数えて二度目の眺望体験だが、飽きることがない。列車進行方向奥には飯縄山も見えて、今回は寄らない戸隠が懐かしく思えるのだった。

6 Sep 2024

上田電鉄で別所温泉に出て北向観音に詣でる。安楽寺、常楽寺、別所神社と廻って塩田平へ徒歩移動。独鈷山山麓の中善寺、前山盬野神社、龍光院、前山寺を巡って再び塩田平に降り、生島足島神社へ。日をよけるところの少ない塩田平は暑さで難儀したが、歩くに連れ夫神岳子檀嶺岳が全身を現し、独鈷山が見上げる距離に近づくのが愉しい。

彼方には浅間連峰の烏帽子岳が鋭角な山頂を残暑の空に突きだし、その左奥には四阿山が霞む。上田市街を見下ろして立つ太郎山が背後の高い山々に埋もれている。真田地域の山々だが、市販の地域ガイドにも記載がないようなので、顕著なピークが目に付くもののどれがどれやら。登山道がありさえすれば、毎年訪ねている戸隠の行き帰りにとか考えられるのだが・・・。

8 Sep 2024

使用期限迫る青春18きっぷを使いたく、総武本線佐倉駅へ、来年1月に休館するとかいうDIC川村記念美術館に行くために。

当館は1990年開館。開館直後あたりに「ロスコー・ルーム」の存在を知り、以来気になっていたものの佐倉は遠く、今の今まで足が向かなかった。それがいきなりの休館予定とのことで、驚いて出かけてみた。

マイヨールの彫像の立つエントランスを抜け、印象派やピカソからマン・レイまで並ぶ展示室を周遊して廊下に出る。突き当たりを左に曲がってしばしで「ロスコー・ルーム」入口だ。変形七角形の室内壁面の各々に、茫漠とした赤錆色の大画面。落ち着きなくぐるっと見渡すだけで去るだなんてもったいない。体験を経験に。眺めれば眺めるほど雑念が落ちていく。流れる血のようには鮮やかではない色が、生きていることへの安心感を呼び覚ますのかも。画面内にうっすらと浮かび上がる一つないし二つの四角形が、ここではない向こうに誘うようにも見える。もしかしたら、胎内の記憶?

ここは地中美術館や奈義町現代美術館と同じく建物を含む空間自体が鑑賞対象となっている。空間そのものに価値がある。閉館を検討するとしている経営企業は、単に保有資産の生み出す利益のみを尺度に閉館やら移転縮小を提言していて、現状での打開策については何も言っていない。ただ保有資産価値を計算しているのみ。”川村記念”とある美術館名に恥じないのだろうか。

ロスコー・ルームの階上には巨大な展示空間があって、このときはフランク・ステラのストライプシリーズやカラフルな巨大平面作品が展示されていた。この美術館はステラのコレクションでも世界的に有名らしい。単純でありながら、単純ゆえにか、その存在が圧倒的な力で迫ってきて、ロスコーとは違った感触で心を占めていく。見ているようで見ていない、それは絵を前にした座禅かも。これらの作品群もどうするつもりなのだろうか。売って短期利益を上げ、”物言う株主”とやらの株主還元の元手にするつもりだろうか。

赤字経営が続いてきたというが、ではどうやって黒字化するかとか、広く世に問えばと思う。ほんとうに文化は大切であると考えているのであれば。

10 Sep 2024

青春18きっぷの最後の一日分を消化すべく、伊豆半島の三島へ。

平日火曜の昼前だけど、熱海発の下り電車は立ち客がいるほどには混んでいた。三島駅に降りてみると、駅前はインバウンドのお客さんが多数。三島に何用かと思えば、どうやら駅発の高速バスで富士五湖方面に向かったりするらしい。そういえばここは新幹線が止まる駅だった。


まずは三嶋大社に参詣。三度目の大社だが拝殿は何度見ても豪壮。広い境内を散策し、お土産売店兼休憩所でかき氷を食べる。本日晴天、残暑継続。


さてここからが本題。南南西に、柿田川湧水群を目指す(歩いて)。地図片手に日陰少ない都市部を歩いて行く。途中で大きな農業用溜め池をかすめて、国道一号線に出ると目的地はすぐ。とはいえ大社から45分くらいはかかったか。

第一展望台、第二展望台と、わりとすぐそこから白い小石を巻き上げながら大量の水が湧き出しているのがはっきりわかる。とくに第二展望台は湧出箇所が真下で、ゼリーのように水面が盛り上がる様がいつまで見ていても飽きない。

湧出箇所はこれらだけでなく、遊歩道からは滲み出るような湧き水から山中でよく目にする小規模なものもあり、しかもこういうのがそこここにある。だからか最上流である第一展望台からすぐの距離で柿田川は水深は浅いものの結構な川幅となる。川の長さはわずか1.2キロしかないそうだが、一級河川なのはその絶えることのない水量のゆえんだろう。


元来た道を三島駅に帰っていったが、途中にあった農業用溜め池は実はこれも湧水が溜まったものらしく、すぐ傍らには柿田川ほどではないがやはり豪勢に水を噴き出す湧出箇所が複数あった(境川・清住緑地)。三島近辺は富士山を元とした湧き水がそここに出ている水郷なのだった。

19 Sep 2024

先日の三島は三度目の訪問だった。前回は8年前に一泊で来ている。初日は三嶋大社を初め、市街地中心に名所を見て回った。二日目には”クレマチスの丘”と呼ばれる文化複合施設に足を延ばした。

”丘”は複数の美術館が点在する場所で、ヴァンジ彫刻庭園美術館で開催されていた特別展に展示される淺井裕介の大作を見るのが主目的だった。この美術館は名称にもあるとおり庭園が広々として素敵な場所であり、散策も愉しい。そのヴァンジ彫刻庭園美術館が、なんと、昨年の9月末で閉館になってしまっていた。

コロナが直撃して客足が遠のいてしまったことが直接原因らしい。しかし無くすのはもったいない。美術館自身も、施設を残すためクラウドファウンディングや存続のためのアンケートなど可能な限りの手立てを講じ、最終的に静岡県への無償譲渡まで提案したという。

その提案、同年末に静岡県議会で受け入れられていた。再開までにはまだ紆余曲折ありそうだけど、無に帰することがなくなってよかったかと。文化施設を単純にお荷物視しなかったと思われる静岡県に敬意を。

21 Sep 2024

猛暑日になりそうとの予報に山をやめて鎌倉へ、鎌倉三十三観音霊場巡りを開始。発願の本日は4番の長谷寺まで。昼前までは雲が広がり風もあったので山でもよかったかもと思いつつ古寺を巡る。

杉本寺で発願し、いつも山門前を通り過ぎるだけだった宝戒寺で萩の花を愛で、次の札所である安養院へは祇園山ハイキングコース経由で赴く。途中でへたっている年配のかたにも出会えばロングスカートで歩く元気な若い女性にも出会う。八雲神社上の展望台から相模湾越しに望む箱根連山は、神山と駒ヶ岳だけが積雲の連なりに隠れていた。

安養院ではかなり剪定されたツツジに驚く。このお寺といえばツツジだったのだが、樹齢と潮風と排気ガスでだいぶ弱ってきてしまっているという。門前のツツジが見応えがあるものだったが、その枝のなかに押し込むように自転車を駐める人がいたり、わざわざ枝の中に身体を押し込んで首だけ出して記念写真をる人がいたりして、枝が折られ、そこから枯れてきたものも多いらしい。

長谷寺の長谷観音は3年ぶりだったがいつ見てもその大きさに驚かされる。境内はインバウンドのお客さんでいっぱいだった。見晴らしのよいテラスの近くにあるテーブルで鎌倉サイダーを飲んで休憩していたら、自分のまわりで休憩している人はほぼみな外国からの方になっていた。


昼前になると雲が切れて日差しがまわり、だいぶ暑くなった。次回はもう少し涼しくなってから。

27 Sep 2024

雲の多い空の下、連れと山梨県の白州へ。
甲府盆地に入っても高い山はすべて雲の中。雨が降ってないだけ幸い。

台ヶ原宿の金精軒で和菓子を買って二階で食べる。
平日なので観光客が少なく、いつもは賑やかな店内にゆとりがあり、初めて階上に上がれることに気づいた。
ここはかつて旅籠だったそうで、間仕切りのない広々とした空間が往時のままならば、ここで旅人達が雑魚寝したのだろう。

酒蔵の七賢にも立ち寄る。
ここも人影が少なく、今風のしつらえが加えられながら基本は昔ながらの佇まいに、いつも以上に気分が落ち着く。
車で来ているので試飲できないのが残念。
来夏とかに青春18きっぷで再訪しようかなと。

やはり静かな竹宇駒ヶ岳神社に参拝し、近くの日帰り入浴施設で汗を流す。
こちらも地元の人がほとんどだった印象。

28 Sep 2024

八ヶ岳裾野にある原村のペンションで朝を迎える。

昨日のうちに八ヶ岳美術館を訪れて野外彫刻群に再訪の挨拶をしていたので、本日は未訪の八ヶ岳自然文化園に出向いてみる。飼い犬の散歩にはよいところらしく、リードを引く人たち多数。駐車場近辺ではパターゴルフを初めとする人工施設が目立ち、自然文化園というより遊園の印象が強かった。

多少なりとも山のなかを歩いた方がよかろうと少し離れた富士見高原に移動し、西岳や編笠山へのルート途中にある不動清水を目指す。登山口駐車場から一時間かからず着く湧き水の地は、山登りの途中でなく目的地とすると快適さが際立つ。眺望はないものの山中としては開けた場所で、美味い水がふんだんに出ていてベンチまである。連れはこの水の味に大感激していた。コーヒーを淹れて飲みながらしばらく休む。昼ちょうどの時間帯だったが降りて来る人がいる。西岳を往復したのか、編笠山から周遊してきたのか。西岳は主稜線から外れているせいか静かで、山頂の雰囲気も悪くなく佳い山だと思う。

白州の道の駅に出て、隣接のスーパーマーケットでお弁当を買って屋根のあるベンチで食べる。デザートには飲むヨーグルト。
昼食は昨日もここで。二人ともこれで十分。


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