(S)エフェクター前後のケーブルが音に与える影響
エフェクター前のケーブルの方が、エフェクター後ケーブルよりも音に影響することが経験上 知られていますが、回路シミュレーションでも確認してみましょう。

ここで想定するエフェクターは、トゥルーバイパス回路でないタイプです。 マルチエフェクターやコンパクトエフェクターを想定しています。

エフェクター前ケーブル: ギターとエフェクターを接続するケーブル
エフェクター後ケーブル: エフェクターとアンプを接続するケーブル
(S)結果の早わかりまとめ
最初に回路シミュレーション結果から分かる結論をまとめておきます。 詳細を確認したい場合はさらに読み進んでください。
  • エフェクター前ケーブルは、ケーブル静電容量が音に影響するので音重視で慎重に選ぶ。
  • エフェクター後ケーブルは、静電容量の影響をほぼ無くせるので、 扱いやすく安価なケーブルが使える。長くしても音への影響は小さい。
  • エフェクター間を接続するパッチケーブルは短いので、ケーブルによる特性差が小さい。 安価で接触性が良いケーブルを選べば十分と思える。
(S)シミュレーション条件
等価回路(S)
ストラトキャスターのシングルコイルピックアップを想定した回路定数を設定しています。
等価回路(S)の説明
GT_circuit_wEffector
シミュレーション条件(S)
トーン回路条件: ポット 500k-Ohm, コンデンサ 0.047uF
ボリュームポット 250k-Ohm
スムーズテーパー、ハイパスコンデンサ 回路無
ケーブルの長さ3m想定、4種類の静電容量 300pF / 500pF / 1000pF / 2000pF

赤枠回路部分がエフェクターでTURBO Over Drive 相当です。 エフェクター前ケーブルは緑枠、エフェクター後ケーブルは青枠で示してあります。
(S)シミュレーション結果(周波数特性)
ボリュームポット全開状態: 縦軸 0 dB 付近の特性
ボリュームポット絞った状態: 縦軸 -10 dB 付近の特性

結論を先に言うと、エフェクター前ケーブルの特性(静電容量)は音に影響し、
エフェクター後ケーブルの特性(静電容量)は音にほとんど影響しないという結果になりました。

ギター本体は出力インピーダンスが高くケーブルの影響を受けるのに対して、 エフェクター出力インピーダンスは低いので、ケーブルの影響がほぼ無くなります。
よって「エフェクター前ケーブルは音重視で選び」、 「エフェクター後ケーブルは扱いやすく安価なケーブルを使う」という選択もできると思います。

では最初にエフェクター前ケーブルの条件(静電容量)を変えた、周波数特性グラフを見てみましょう。
ケーブルの静電容量(pF) が大きいほど、ピークの周波数(共振周波数)が 低くなり、ピーク値が大きくなる傾向が見られます。

またボリュームポット絞った状態ではトーンが甘くなる傾向があります。 上下のグラフのうち、下側はボリュームポット絞った状態の特性です。 ピーク部分の山が平らになり、これによってトーンが甘くなるのが分かります。

更新 21/Mar/2013
低音域が落ちているのは、エフェクターのカップリングコンデンサの影響です。
関連項目 (E)トランジスタ入力回路タイプのカップリングコンデンサ S_Vol_250K_Cable_BE
[図] エフェクター前ケーブルの条件を変えた場合

次にエフェクター後ケーブルの条件(静電容量)を変えた、周波数特性グラフを見てみましょう。 エフェクター前ケーブル条件は 300pF で固定しています。

エフェクター後ケーブルの条件を変えても、周波数特性にはほとんど影響しないことが分かります。 これはエフェクターの出力インピーダンスが、ギター本体と比較して低いためです。
ギター本体は出力インピーダンスが高くケーブルの影響を受けるのに対して、 エフェクター出力インピーダンスは低いので、ケーブルの影響がほぼ無くなります。

つまりエフェクターを接続することでアンプまでの接続経路インピーダンスを安定させることができます。 ケーブルの静電容量の大きさは長さに比例しますが(長さが2倍になれば、静電容量も2倍)、 エフェクター後であればケーブル長さによる静電容量の影響をほぼ無くせます。

(E)(R)トランジスタ入力回路タイプの歪率(TURBO Over Drive) で紹介したような、歪率が小さく周波数特性が良いエフェクターを常時接続しておくのも良いでしょう。

また「エフェクター前ケーブルは音重視で選び」、 「エフェクター後ケーブルは扱いやすく安価なケーブルを使う」という選択ができます。

S_Vol_250K_Cable_AE
[図] エフェクター後ケーブルの条件を変えた場合(周波数特性にはほとんど影響無し)