(E)トランジスタ入力回路タイプのカップリングコンデンサ
トランジスタを使ったエフェクター入力回路では、カップリングコンデンサの容量により 周波数特性が変わります。 そこでカップリングコンデンサ容量を変えて回路シミュレーションを行い、その影響を確認しましょう。
着目するのはトゥルーバイパス回路でないタイプのエフェクターで、エフェクトを OFF したときの周波数特性です。 エフェクト OFF のときは、余計な音への影響が無いことが理想的です。
(E)結果の早わかりまとめ
最初に回路シミュレーション結果から分かる結論をまとめておきます。 詳細を確認したい場合はさらに読み進んでください。
  • カップリングコンデンサ容量が小さいほど、低音域をカットする範囲が広くなる。
  • エフェクターには数個のカップリングコンデンサが接続されていが、 低音域の減衰を少なくするためには、小さい容量のコンデンサを交換するのが効果的。
  • シミュレーション例では、0.047uF あるいは 0.1uF 以上の容量に交換すれば低音域のカットはかなり改善される。
(E)シミュレーション条件
等価回路(E)
現在生産されていない「TURBO Over Drive」系の黄色いエフェクターです。 エフェクトを OFF しているときの周波数特性が知りたいので、「オーバードライブ OFF 状態」 の回路でシミュレーションを行います。 Ef_Tr_Input_OD2
シミュレーション条件(E)
カップリングコンデンサ容量 C1, C2, C3 を同時に3種類の値に変える: 0.022uF / 0.047uF / 0.1uF
(オリジナル回路の容量は C1 = 0.022uF, C2 = C3 = 0.047uF)
(E)シミュレーション結果(周波数特性)
「オーバードライブ OFF 状態」の周波数特性
電圧特性 Vtrout (青):カップリングコンデンサ直後のトランジスタ出力
電圧特性 Vout(赤):エフェクター出力

シミュレーションに使用した回路には、4つのカップリングコンデンサ C1, C2, C3, C4 があります。 このうち、C4 は 1uF と容量が大きいので低音域への影響は比較的小さいと言えます。
そこで今回は C1, C2, C3 を同時に3種類の値( 0.022uF / 0.047uF / 0.1uF)に変えてシミュレーションを行いました。

周波数特性グラフを見ると、コンデンサ容量が 0.047uF あるいは 0.1uF であれば、 低音域カットがかなり改善されていること分かります。 もしエフェクターを改造する機会があれば、一例として参考にしてください。

Ef_Tr_Input_OD2_Mod_dB
(E)コンデンサの合成容量
シミュレーションに使用した回路には、4つのカップリングコンデンサがあり、これらの合成容量によって周波数特性が決まります。 コンデンサはトランジスタを介して直列に接続されるので、合成容量は一番小さいコンデンサ容量よりもさらに小さい値になります。

例として2つの直列接続 Ca Cb の合成コンデンサ容量 C を表にまとめました。
合成容量が、小さい方のコンデンサ容量よりもさらに小さくなることを確認できます。
Ca [uF] Cb [uF] C = Ca * Cb / (Ca + Cb) [uF]
10 0.01 0.00999
10 0.1 0.0990
10 1 0.909
10 10 5.00
10 100 9.09
10 1000 9.90

低音域の周波数特性は、合成容量が小さいほど制限されます。
よって低音域の減衰を少なくするためには、小さい容量のコンデンサを交換するのが効果的です。