(E)(R)トランジスタ入力回路タイプの歪率(TURBO Over Drive)
バイパス回路を使わないエフェクターの場合、「エフェクト OFF 状態」でも音に影響を与えます。
ここではバイパス回路との違いを調べるために、「オーバードライブ OFF 状態」での 「TURBO Over Drive」回路の歪率を測定したので見てみましょう。
(E)(R)結果の早わかりまとめ
最初に回路シミュレーション結果から分かる結論をまとめておきます。 詳細を確認したい場合はさらに読み進んでください。
  • 測定した歪率は 0.1 % 程度に収まっていて、人間の耳では検知することが難しいレベルなので影響は無さそう。
  • エフェクターを通すと、音が 「きらきらする」 ような感じがするのは 周波数特性がその一因かも知れない。
  • 歪率が 0.01 % 程度で価格も抑えている製品もあり、その設計姿勢には好感が持てる。
(R)測定条件
測定対象(R)
トランジスタ入力回路タイプの一例として、 手持ちの(あまり使用していないのですが)オーバードライブの周波数特性を実測しました。 現在生産されていない「TURBO Over Drive」系の黄色いエフェクターです。
使用機器(R)
WaveGene により生成した WAV 波形をエフェクターに入力、 WaveSpectra により周波数特性を分析。
RM_Freq_Setup
測定条件(R)
Sin波形: 109.86328125 Hz (110 Hzを FFTサンプリング数 65536 で最適化)
Sin波形: 439.453125 Hz (440 Hzを FFTサンプリング数 65536 で最適化)
Sin波形: 1759.27734375 Hz (1760 Hzを FFTサンプリング数 65536 で最適化)
(E)シミュレーション結果(周波数特性)
「オーバードライブ OFF 状態」の歪率
エフェクトを OFF しているときの歪み特性が知りたいので、「オーバードライブ OFF 状態」で 測定を行っています。

調査したのは「全高調波歪率(THD)」といわれる信号の歪みの程度を表す値です。単に歪率とも呼ばれます。 「WaveSpectra」グラフの左側に「THD, S/N」としてこの歪率[%]が表示されます。

実測結果グラフを見ると、歪率が 0.1 % 程度に収まっていることが分かります。
また周波数が高くなると3次高調波も出現しています(1760Hzではピークが3箇所あります)
歪率が 1% 未満の場合人間の耳では検知することが難しいようなので、歪みについては影響が無い レベルだと思います。

以前からエフェクターを通すと、音が 「きらきらする」 ような感じがしていて、 ひょっとして高音域の歪みが関係しているのでは(?)、と思い実測をしてみました。 実測した結果、歪率は音に影響する程ではありませんでした。
よって周波数特性の方が 「エフェクト OFF 状態」で音に与える影響が大きいと言えるでしょう。

Ef_Tr_THD_OD2_110Hz
[図] オーバードライブ OFF 状態の歪率 110Hz

Ef_Tr_THD_OD2_440Hz
[図] オーバードライブ OFF 状態の歪率 440Hz

Ef_Tr_THD_OD2_1760Hz
[図] オーバードライブ OFF 状態の歪率 1760Hz

おまけですが、気になるのは参考のために実測した「P社 デジタルディレイ」の歪率と周波数特性です。 こちらは歪率が 1/10 の 0.01% 程度に収まっていて、低音域の周波数特性も比較的優れています (「TURBO Over Drive」と同条件で測定しています)
なお測定器側(パソコンのサウンドカード、ケーブル、音源)の歪率は実測で 0.008% 程度です。
歪率と周波数特性の観点では、「P社 デジタルディレイ」は「TURBO Over Drive」 よりもバイパス特性が優れているという結果が得られました (良い音、という観点ではありませんが好感が持てます)

Ef_Tr_THD_PDD_440Hz
[図] ディレイ OFF 状態の歪率 440Hz

Ef_PDD_dB_RM
[図] ディレイ OFF 状態の周波数特性