――縁とは不思議なものだ
倫子は、感慨に似た驚きを感じながら、結子の話に過去の自分を重ねていた。
倫子は今も看護婦を続けている。
人の生き死にに関わる医療の現場は大変に厳しい。患者が病苦と闘い、生(せい)に向かおうとする姿。また、死と向き合い、受け入れようとする姿。さまざまな葛藤を目の当たりにする。しかし、その人たちの力になることができる看護婦という職業に、倫子は誇りを持っている。今では自分の天職だと感じている。
そんな倫子も、若く経験の浅かった当時は、精神的に追い詰められることも少なくなかった。患者とどう接すればいいのか迷うこともしばしばだった。
(私を支えてくれた人がいた、心を抱きとめてくれた人がいた……)
めぐる縁し(えにし) 紡がれし絆
私とあの人 私と直江先生
娘が看護婦の役を演じること自体にめぐり合わせを感じていた。結子にその役が回ってきたと知った時、二人して「志村家は看護婦の神様にストーカーされてるのかもよ」などと笑い合ったりもした。
しかし、今、結子の話を聞いていて、直江と過ごしたあの月日のことが思いがけず蘇っていた。ドラマとはいえ、当時、自分が感じたのと同じことを娘の結子が今、経験することになろうとは。
(私もそうだった。石倉さんの死を前に精神的に追い詰めらた。あの時、さりげなくフォローしてくれて、私を救ってくれたのは直江先生だった……)