■ なおえおとうさん 4
さいきんのおとうさんは、ぼくがひとりのときはかおがみえるし、こえもきこえるのに、だれかがいるとでてこないんだ。
(陽介にしか見えないし、聞こえないからだよ。)
でもいちどだけ、ぼくがおかあさんのおなかにいるときにおもてにでてきたね。
(いつ・・・だったかな・・・)
おかあさんとよくいくかわのすぐそばのレストランにいくとき。
(ああ・・・あれは・・・おとうさんじゃないよ)
ううん。ぼくは・・・わかるよ。あれは、おとうさんがおかあさんにあいにきたんだ。
(陽介にはかなわないな。そうだよ、でもあの先生はそんなことは知らないんだ。
どこかで会ってもあの先生にもないしょにしてほしいな)
わかってるよ。
(陽介を、元気に生んでくれるようにって、おかあさんにおねがいにきたんだ)
それをおとうさんににているあのせんせいにたのんだの?
(そうだよ・・・)
じゃあ、おかあさんもおとうさんのこと、わかったかな?
(ありがとうって、いってくれたよ・・・)
よかったね。
(そうだな・・・)
そういえばね。きょう、ようちえんでしんごくんとももちゃんがけんかをしたんだ。
(どうしてだとおもう・・・?)
ぼくは、ももちゃんがわるいとおもうんだ。りさちゃんがいってた、しんごくんはわるくないって。
(陽介はどうしてそうおもったのかな?)
だって、まなとくんはいつもきがえるのおそいんだ。
だから、ぐずぐずしているまなとくんをたすけてあげてたんだよ。きっと。
それなのに、ももちゃんはむりやりまなとくんにやらせようとしたんだって。
(陽介がまなとくんならどうするかな?)
ぼくはひとりでできるもん。
(そのとき、まなとくんはどうしてた?)
どうしてたって?
(まなとくんはゆっくりでもいいからじぶんできがえたほうがいい・・とおもってた。
だから、ももちゃんはそれをしってて、そういったのかもしれないよ。
しんごくんはできなくてこまりはてているまなとくんが、かわいそうだとおもって、たすけてあげていただけかもしれない。ようすけならそんなときはどうするかな。)
わからない。
(そうだ。陽介にはけいごくんのそのときのきもちはわからないだろう。
しんごくんにはしんごくんの、ももちゃんにはももちゃんの、まなとくんにはまなとくんの、きもちがあるんだ。それはわかるな。)
うん。そうか、わかる。
(おとうさんはどっちがわるいとは簡単にはいえないな。それをこれから陽介が考えてみるといい)
まなとくんと、しんごくんと、ももちゃんとぼくのきもち・・・。おとうさんのいうことはたまにむずかしすぎてこまるんだ。
(きめるのはようすけだからだよ。3人からだれかひとりを助けてくれといわれたら?自分できめるしかないだろう)
そうか。どうしよう。たいへんだね。すぐにはきめられないよね。
(そうだ。だれかがいったからじゃない。じぶんの目でみてよくかんがえるのがだいじなんだ。)
うん。わかった、そうする。おかあさんだったらどうするかな・・・?
(こんど、おかあさんにもきいてごらん。)
おとうさんはわらっていった。
あとで、おかあさんにきいてみた。
おかあさんもおとうさんとおんなじことをいったんだ。ぼくはなんだかうれしかった。おとうさんもうれしそうだった。
「おとうさんはおかあさんがだいすきなんだね。」
(そうだよ。・・・陽介のことも大好きだ)
「ぼくもだいすきだよ・・・おかあさんにも、おとうさんがみえるといいのにね・・・」
(そうだな。・・・そのうち、おかあさんにも見える日が来るよ)
「たのしみだね・・・」
(そうだな・・・)
「もうすぐ僕の誕生日だね。その日がいいよ。会いに来てあげてね。」
(そうだな・・・)
そういったおとうさんはちょっとだけさびしそうだった。どうしてかな?
「はやくぼくのたんじょうびがこないかな。おかあさん、きっとびっくりするね。」
(・・・・)
「ねえ。おとうさんはおかあさんのどこがいちばんすき?」
(おかあさんが笑った顔だよ)
「ぼくも!おんなじだね!」
ぼくはなんだかすごくうれしかった。こんどはおとうさんもうれしそうにわらってた。
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