■ なおえおとうさん 2
はじめて「なおえおとうさん」にあったのはおかあさんのおなかのなかだった。
そのひ、おかあさんはおおきなみずうみにきていた。ちかくで、ちゃぷちゃぷとみずのおとがしてたんだ。
「直江先生・・・」
おかあさんはおとうさんをよびながら、ずっとないてる。
さっきからずっと・・・ここからうごかないんだ。ぼくはすごくこわかった。
(ようすけ・・・ようすけ・・・きこえるか・・・)
だれ?・・・どこにいるの・・・?ようすけってぼくのこと?
(そうだ・・・ようすけのおとうさんだよ・・)
おとうさん?おかあさんがなまえをよんでたひと・・?
(そうだ・・・)
ぼく、まだ・・・めがみえないんだよ。どこにいるの?
(うん・・・わかってる・・・だいじょうぶだ・・・)
おかあさんはどうしたの?ぼく、なんだかこわいよ・・・。
(おかあさんをたすけてほしいんだ・・・ようすけにしかできないんだ)
うん。おかあさんがくるしそうにしてるね。おとうさんをよんで、ずっとないてるんだ。
(そうだ・・・おかあさんにはおとうさんのこえがきこえないんだ・・・だから、ようすけがたすけてくれないか・・・)
うん。ぼく、どうすればいいの?
(おかあさんのおなかをけとばすんだ・・・ぼくはここにいるよって・・・しらせるんだ。そうすればおかあさんはきっと、げんきになる・・・)
うん。やってみるね。
(たのむぞ・・・ようすけ・・・)
うん!
ドン、ドン・・・ドン、ドン。
(そうだ・・・じょうずだぞ、ようすけ・・・)
ぼくはおかあさんのおなかをおもいきりなんども、けとばしたんだ。
「陽介がおかあさんのおなかをはじめて蹴飛ばしたのが、おとうさんの誕生日だったのよ」
このまえ、おかあさんがはなししてくれたとき、ぼくはしってたけどだまってた。
「陽介は小さくて、お腹のなかでおとなしくしてたからあまり動かなくて心配してたのよ」
おとうさんがとなりで、おかあさんとぼくをみてわらってた。
あのとき、おかあさんはちょっとさみしくなってて、ぼくといっしょにおとうさんのところへいきたいっておもってたんだね。
だから、おとうさんはぼくのところにきたんだよね。
(ああ、そうだよ・・・)
でも、おかあさんにはないしょなんだね。
(ああ、そうだよ・・・)
「なおえおとうさん」とのやくそくなんだ。だれにもいわないって。
ぼくがおとうさんとはなしてるのがわかったら、おとうさんがきえちゃうんだって。
おかあさんにだけはおしえてあげたかったけどがまんした。
どうしてきえちゃうのかな?
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