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涼さんが書いたサイドストーリー 「出会った頃の君でいて」


■ SCENE5 約束のボート

「先生、5日間でしたいことたくさんあるでしょ。会いたい人、みたい場所ありますよね。行って来てもいいですよ。私も一緒でよければお供しますし。」

「ボート・・」直江がつぶやいた。

「えっ」倫子はびっくりして叫んだ。
「乗せてくださるんですか?」

「約束だったからね。」直江はいたずらっぽく笑った。
直子が風邪を引かないようにしっかりとくるんで胸に抱くと、二人は出かけた。

平日の昼間、普通の人は仕事をしている時間、川には誰もいなかった。
直江が先にボートに乗り、2人を乗せた。
夢にまで見たボート、おまけに直子も一緒に乗っている。倫子は幸せでいっぱいだった。
水面が倫子たちに笑いかけていた。

「そろそろもどろうか、あまり長居すると直子が風邪を引く」
「まだ大丈夫ですよ。」
「いや、医者と看護婦がいて子供に風邪引かせてどうする。それにまだ川風は冷たい。」
「はい」倫子は素直に従った。
夢にまで見たことがおきている幸せに倫子はうれしさでいっぱいだった。

家に戻ると清美が帰っていた。
「倫子、直子を連れてどこに行っていたの?」
「直江先生とボートに乗りに」

歌うように話す倫子の声に驚いた清美は、倫子の後ろに立っている人物を見て、腰を抜かしてしまった。
「な、なおえせんせ?」清美は今起こっていることが、夢なのか現実なのかわからなくなってしまった。

「どうして?」
「5日だけ帰ってもいいと言われまして。私の帰るところはここかと。」そういって直江は微笑んだ。
「ねっ、おかぁさん。もちろん、直江先生の帰るところはここよ。」
倫子は安心したような表情を直江に向けた。

「もちろん異存はないけど、ほかを訪ねたり、誰かにあったりしなくていいのですか?」清美はようやく落ち着きを取り戻して尋ねた。
「他にですか、七瀬先生のところと小橋先生のところですかね。」
「ご両親のところは?」
「今更会っても動揺させるだけです。倫子とおかあさまのように冷静には会ってもらえません。大騒ぎになるだけです。それではかえって両親が不幸になります。それに5日後には別れなければなりません。このことを理解してもらうのは難しいのではと思います。」

直江は冷静に、淡々と考えを述べた。

−やっぱりいつもの直江先生だ。冷静で一時の情に流されてではなく、先を見据えて行動している。会わなかった間もちっとも変わっていない。自分を見失っていない。失っていたのは自分の方だった。−

倫子はうれしかった。
そのとき直江は倫子の手を握り、微笑んだ。倫子もそれに対して微笑んだ。
「明日七瀬先生のところに行って、あさって小橋先生のところに行く。」
「わかりました。」

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