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涼さんが書いたサイドストーリー 「出会った頃の君でいて」


■ SCENE4 忘れられない出来事

こうして赤ん坊は直子と名付けられ、すくすく育っていった。
子育ての忙しさの中で瞬く間に2ヶ月が過ぎた。明日は倫子の誕生日。しかし、倫子は直子のことで頭がいっぱい。自分のことなどまったく忘れていた。

そして当日。この日は清美は用事で外出し、朝から倫子は直子と二人でいた。
「はい、おしめ替えましょうね。」
そのときだった。隣に何か気配を感じた。今日は私とこの子しかいないはずなのに・・。不審に思ってそのほうをみると・・。
直江先生がいつものコートを着て立っているのだった。

「先生。」
「倫子、ただいま。」
「お、かえりなさい。」

あとは言葉にならなかった。
倫子は直江のコートにしがみついておいおい泣き出してしまった。

「倫子、僕は君の笑顔を見に5日間だけ帰ってきたんだよ。5日しかいられないんだから、笑顔だけを焼き付けていきたいね。」

直江は倫子を見て微笑んだ。倫子はその顔を見てやっと安心し、あの日からのことを語り出した。聞きながら、直江はつぶやいた。

「僕はいつだって君のそばにいるんだから、知っているよ。大丈夫だ。」

倫子は思った。そうだった。私は何を焦っていたのだろう。
この方はいつだって私のことを私よりも知っていてくれるのに。そしてあの笑顔を直江に向けた。

「倫子、君はいつも僕をその笑顔で勇気づけてくれた。だから僕は自分を全うできたし、生きていてよかったと思ったんだ。小橋先生が言っていたことは本当だよ。」
そういって直江はまた微笑んだ。

「君はこの1年、笑ってくれない日が多かった。大変だろうけど、僕はいつまでも出会った頃の君でいてほしい」

「ごめんなさい、先生。先生を失った日から今まで、私、心に穴があいたみたいでした。でも先生を失ったんじゃなくて、先生は私の体の中に入ってくれたんだって、今、心から思えました。もう大丈夫です。」

倫子は心からの笑顔を直江に向けた。
直江は安心した。そしてやはり倫子は自分が愛し、信じた女性だと思った。

「先生、直子を見てやってください。私、直子ってつけたんです。」
「うれしいよ」

直江はそういって直子を抱き上げた。寝ていたはずの直子がそのときパッチリと目を開けた。その様子は驚くほど直江によく似ていた。

「似ている、僕に」
その声に反応するように直子は直江を見てにっこりした。
自分の父に抱かれているのを理解しているかのように・・・。

「やっぱりちゃんと父親だってわかるんですね。他の人が抱いてもここまでいい顔はしないですよ。」
倫子はうれしかった。直子にもちゃんと今おきていることはわかるらしい。私の気のせいじゃないんだ。

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