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■ひたむきさ
直江がまず注目したのは、看護婦としてのひたむきさではないだろうか。
当直であるにもかかわらず外出していた彼に意見する。そこには、看護婦の仕事に対するひたむきさが感じられる。
その頃、直江はヤケになっていた。自分の人生が長くないことを知っている彼は、最後まで 医者として生きる覚悟を決めて行田病院に来た。そのときが来たら自ら死を選ぶということまで決めていた。
でも、それでも迫ってくる死が怖い。彼は投げやりになりかけていた。自分の決心まで忘れかけていたのではないだろうか。
でも、彼女の非難と涙が、忘れていた医療への情熱を蘇えらせた。と同時に、『もう誰も愛さない』と決めていた直江の『心を動かした』。

倫子は最初から直江を好きではなかった。最初は得体の知れない人だと思っていた。何を考えているか分からない人。医者としては優秀かもしれないけれど。。。医者っていうのはそんなものじゃないと思っていた。
直江は、そういう誤解をあえて解こうとしないし、弁解もしないし、言い訳もしない。自分の信じる医療をやるだけである。だが、彼女はやがて直江が実は優しい人間であることに気づく。多くを語らないその瞳の奥に、実は人を思いやる心があることに気づく。
そして、彼女はひたむきに直江を愛するようになる。彼女のひたむきさは直江に対する愛情においても、その一途さをなくさない。ただ、まっすぐに、彼のことを見つめ愛していくようになる。

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