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■君は僕の一体何を知ってるっていうんだ。
倫子が次郎と宇佐美繭子のことを直江に伝えに来たとき、彼は謹慎中でかなりお酒を飲んでいた。

『彼女の話など聞きたくない。これからがんばって生きようとしている人間の話など聞きたくない』

直江は倫子と目も合わせずただ酒を飲み続ける。倫子の話になど全く興味がないように。
倫子は直江の様子がいつもと違うことに気づく。きっと謹慎中で自棄になっているんだろうと思う。
そのとき直江はこう言い放った。
「そんなつまんないことでわざわざ来たのか」
倫子は何事にもまっすぐぶつかる人間である。「つまんないこと」
この言葉に怒りを覚える。

『つまらないことじゃない。先生のおかげで二人ともがんばろうって思えたんだから、そんなこと言う先生は
 私が知ってるいつもの先生じゃない。私が尊敬している先生じゃない』

おそらく直江も彼女との真っ正直な話にのってはいけないと思っていたはずだ。
反論したいこともあるが、聞き流して早く帰そう。関わりは持たない方がいいと思う。
でも、お酒を飲んでいたことも、自棄になっていたことも関係しているだろう。
彼は倫子を挑発するように言ってしまった。
「君は僕の何を知ってるって言うんだ」

倫子と関わりを持たないようにしなければと思いながら、「誰も僕のことなんか分かるはずがない」という反発の気持ち。
『僕は君とは関わりたくない。なのにどうして君はそうやって僕の中に入ってくるんだ』
常に冷静なはずの直江が人間としての弱さを見せた場面。でも、倫子を拒絶すればするほど二人の関係は近くなっていく。

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