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■楽しみにしてる。
倫子の誕生日、二人は直江のマンションでお祝いする。直江は料理をほめ、誕生日のプレゼントのことを聞く。
直江にそういう話は似合わないかもしれない。でも愛しいということの表われ。
それでも、会話はとぎれる。恋の始めは沈黙が怖い。必死に話題を考える倫子。

先生誕生日いつですか?
8月だ
8月の?
9日。
8月9日。夏ですね。あ、夏だからボート?
それはどうかなぁ。
そうですよね。冬でも漕いでますもんね。あ、そうだ。今度の誕生日、私が先生のことボートに乗せてあげます。
それまでしっかり練習しときますから。
楽しみにしてる。
なんかうれしいです。こうやって先生のこと一つずつ知っていけるのって。

直江は自分は迎えることのないだろう誕生日の約束をする。
もちろん、「楽しみにしてる」という気持ちは本物。
直江自身、春が過ぎ夏が来て二人でボートに乗ることができたらどんなにいいだろうと思っている。
半年先の約束。でも、直江は自分の命の期限を予測できる。
その予測は外れることがないことも知っている。

この「楽しみにしてる」という言葉を発した彼の心の中には、いろいろな思いが渦巻いているのだ。
文字どおり二人でボートに乗りたいという希望。
倫子に最期まで嘘をつきとおすという決意。
倫子を悲しませたくないという愛情。
−そのとき、僕はこの世に存在していない−
自分の命の期限が迫っていることを思い知らされ、今一時の幸せから現実に引き戻されそうになる。。。怖い。

そんな思いを抱えながら、それでも倫子が先生のこと一つずつ知っていけてうれしいと言ったとき、直江は優しく微笑むのだ。

 

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