■生きることに執着することがいけないことですか。
地位や名声にしがみつく宇佐美繭子を非難する院長たち。それは生きていることが当たり前になっている人だから思うこと。生きることに執着しなくても生きられる人はいい。でも、直江はそういうふうには見ることができない。
『生きることに鬼のようになれる』彼女は美しいし、尊敬に値する。生きるということは壮絶なものなのだ。

直江も生きることに鬼のようになっているだろう。残り少ない人生をたった一人で医者として生きると決めているのだから。『生きることに鬼のように』ならなければ、生きていけるわけがない。生きることに執着しなければ、あと数ヶ月の人生を有意義に過ごせない。決意が崩れてしまう。

この話をしているとき、残酷にも直江に激痛が襲ってくる。冷や汗が出てしまうほどの激痛。その場にいる人に気づかれてはならない。その激痛と闘いながら、直江は上記の言葉を発する。死が近づいていることを突きつける激痛の中、「生きること」を話す。