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■君は不思議な人だなぁ。こんな冬に春を見つけて。
倫子を拒絶していた直江が彼女を受け入れるときの言葉である。
この前日、直江は恩師の七瀬先生と会う。自分の病気を知る唯一の人。七瀬先生は彼の医者としての人生におそらく最も影響を与え、直江自身最も信頼している人である。
直江は七瀬先生にこれまでの経過を説明する。行田病院での仕事だけでなく、MM(多発性骨髄腫)の研究も医者として生きる彼の重要な仕事だった。彼は淡々と自分の病状をあたかも患者のことのように話す。それは満足そうだったが。。。七瀬先生は一人で研究を進める彼の様子を見て、なんともやりきれない気持ちになったようだ。
誰にも頼らず、一人の部屋で、徐々に蝕まれていく自分の体を材料に研究をまとめる。孤独で病気と向き合う。そんな直江の姿を想像すればするほど、七瀬先生もまたつらくなる。そうして生きる彼の医者としての人生の道筋を作ったのは七瀬なのだ。
そして、別れ際に直江に言う。「何もかも一人で背負い込もうとするな。自分がひとりぼっちだなんて思うなよ」 と。
七瀬先生はきっと「私がいることを忘れるな」 という意味で言ったのだと思うが、この言葉は逆に直江に『自分がいかに孤独であるか』を思い知らせることになった。いつも意識しながら、でも考えたくなかったこと。

誰かにすがりたくても誰にも言えない。忍び寄る死の影。自分の孤独。つらくて寂しくてどうしようもない気持ちを酒で紛らわせ、一人ボートで川に漕ぎ出る。
もうどうなってもいい。このまま死んでしまってもいいんだ、という気持ちだったのだろうか。それとも倫子が話した「川は悲しみを消してくれる」という言葉を信じたのだろうか。漕ぎ出したボートが流れ着いた先には、たんぽぽを探す倫子の姿があった。
こんな孤独で寂しいときに、やっぱり君に会ってしまうんだね。これは運命なんだろうか。この運命に身をまかせてもいいのだろうか。
倫子の姿を認めたとき、直江は葛藤しただろう。自分が彼女を受け入れることで彼女に与える悲しみを思い躊躇したに違いない。でも、その躊躇より、彼女にすがりたい、彼女と生きたいという気持ちが勝ったのだ。
彼女となら残りわずかの人生を過ごしていける。もちろん自分が彼女に与える悲しみは大きいだろうが、彼女なら乗り越えてくれる。そういう強さを持った女性だ。だからこそ、自分は惹かれたのではなかったか。そう思い直して、彼女の存在を「不思議な人だ」と表現したのだろう。

今日突然閃いた。
この言葉、「冬→暗闇にいる直江」に、「春→春みたいな笑顔の倫子」 を当てはめたらどうだろう。
「君は不思議な人だなぁ。こんな暗闇の中にいる僕に君という春を与えてくれたんだね。」とは解釈できないだろうか。
「君は不思議な人だなぁ。こんな僕の残り少ない冬のように冷え切った人生に君がいる穏やかな時間を与えてくれたんだね」
直江先生、 倫子がいてよかったですね。

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