■オレは君が思っているような人間じゃない。
直江はいつから倫子を好きになったのだろうか。
倫子は最初、「何を考えてるか分からない」直江を嫌っていた。でも、そのうち、直江の言葉の裏に、患者に対するやさしさがあることに気づく。そして、直江の涙を見て「先生のそばにいたい」と思うようになる。倫子が直江のことを好きだと認識するのは、この直江の涙を見たときだと思う。
これに対して、直江は多分川原で一目見たときに、既にきっと心に残っていたのだと思う。そして、直江が倫子を好きだと認識するのは、石倉のために川原でたんぽぽを探す倫子を見て、倫子のきれいな瞳と笑顔があたかも春のたんぽぽのようだと思ったときだろう。そして、さらに
自分にまっすぐ向かってくる純粋な瞳。 自分とはあまりに違うが故に、さらに強烈に惹かれる。
公式HPのBBSにもあったが、直江は彼女を好ましく思っていても、だからどうこうしようという気はなかったと思う。ある程度は親しくなるだろうが、あくまで同僚。先のない自分の存在を彼女に押し付けることなどしない。
しかし、直江の予想しないことが起こった。倫子もまた直江に惹かれ始めたのだ。彼女はどんどん自分の中に入ってくる。困ったことに、こんな自分を理解しようとがんばり始める。「そばにいたい。同じものを見たい。」
と自分に正直に向かってくる。
そんな彼女を、直江は拒絶した。彼女にすがりつきたい気持ちはあるだろうに、自ら拒否する。
でも、彼女を拒絶する直江は、やはり平常心ではいられなかった。自分のことを「オレ」と言ってしまうこの言葉だけで、彼が平常心ではないことがすぐに分かる。
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