■川
川もまたこのドラマの象徴的なモチーフと言える。まず、ドラマの冒頭、直江はボートに乗って川を流れてくる。また、大地の音(心臓の音)を聞いているのは川原である。
そして、倫子と最初に遭遇するのもまたこの川原なのだ。
直江にとって川とボートは特別な意味を持つ。学生時代ボート部だった直江は川に特別な親しみを持っているようだ。
子供の頃、迷子になった直江は川を頼りに家にたどり着いた経験もあった。
倫子が「川は友達」と言い、彼女もまた川に特別な感情を持っているらしいと知ったとき、直江は「川は好きなのか」と聞かずにいられなかった。
彼女の「川は悲しみを流してくれる。海までずーっと流れていって、いつか悲しみを消してくれる。だから川は友達なんです」という言葉を聞いたとき、直江は「同じだ」と思い、いっそう彼女に惹かれたことだろう。
倫子が言った川についての言葉。
「川が流れるのは海だけとは限らない。川は自分の行きたいところに連れていってくれる。私がボートに乗った川は先生のところに連れてきてくれた」
この言葉を直江はどんな気持ちで聞いたことだろう。
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