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■ガラスのボート

倫子は川原でちょうどボートの形をしたガラスのかけらを見つけ、直江に渡す。それ以来、この「ガラスのボート」は直江にとっての「倫子」となる。
ガラスのボートはその時々で直江の部屋のあちこちに登場する。それはつまり、「直江が持ち歩いている」ということを暗に示している。彼女を突き放しながらもガラスのボートに手を伸ばす。夜の川に一人漕ぎ出すときに手に握り締める。
直江は、本当は彼女を握り締めたいし抱きしめたい。しかし、自らそれを抑制している。しかし、彼女を好きな気持ちは変わらないし、いつもそばにいてもらいたいと思う。だから、彼女の代わりにガラスのボートを持ち歩いているのだ。

直江が支笏湖に漕ぎ出すとき、手にはガラスのボートがあった。そのガラスのボートは直江がいなくなった後、ボートに残される。倫子の代わりに湖の底深く持っていくのだろうと思ったが、直江は置いていった。たとえ分身でも一緒には連れて行けなかったのだろうか。

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