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放送大学 教養学部
社会と産業コース

メッシュデータによる都市領域画定(mdbUA)の試み
研究の目的


都市領域画定(mdbUA)の目的


 都市の範囲をどこからどこまでと定めるかは,都市を研究する上での基本的な課題である.

 アメリカでは主として人口密度にもとづいて,都市的地域 urban area が定義され,人口が5万人を超える規模のものが都市化地域 Urbanized Area ,それに満たないものが都市クラスターUrban Cluster として設定されている.


アメリカ合衆国本土の都市的地域(ウィキペディア「アメリカ合衆国都市的地域」より)


 イギリスでは Ordnance Survey と呼ばれる土地利用に関する調査にもとづいて建物が連担している区域のうち,ある程度の人口が集中している範囲を都市的地域 Urban Area としている.

 たとえば,左の図はイングランドにおける人口125,000人以上の主要な都市地域 Primary Urban Areas を示したものである.
(Office of the Deputy Prime Minister. (2006) State of the English Cities Vol. 1 pp.24 より )

 日本でも人口密度が4000人以上の人口集中地区 DID: Densely Inhabited District が,都市的地域の指標として設定されている.しかしながら,これにはいくつか学術的な検討にそぐわない性質がある.1つは,あくまで人口集中地区なので,必ずしも特定の都市が一円の領域として設定されるわけではないこと.飛び地があったり,だらだらとどこまでも広がってしまう傾向がある.また,2つには,国勢調査のたびに新しく設定され,当該年度の統計数値だけが公表されているので,同じ範囲で経年的な分析を行うことが容易ではないという問題がある.

 そこで,ここではメッシュデータにもとづいて特定の都市の範域を定める領域確定の試みを行ってみたい.すなわち,「メッシュデータにもとづく都市地域(meshed data based Uraban Area)」,すなわち「mdbUA」の開発である.

 たとえば,東京,大阪,名古屋などの都市地域を1qメッシュ地区の広がりとして定義することができれば,当該メッシュに含まれるデータの集計によって,都市地域の経年的な分析を大変容易に行うことができるようになる.そうすると,特定の都市の状況や趨勢,産業蓄積の動向や競争力の状態が正確に分析できるのである.

 本来,このような基礎統計単位の設定とそれにもとづく経年データの整理は,国が責任をもって行うべきことである.イギリスでは都市的地域 Urban Area ごとにまとめられた国勢調査等の統計データが,ヴェブ上で比較的容易に入手できるようになっている.日本でもこのような試みは進められつつあるが,人口集中地区に代わる適切な都市地域の基礎統計単位は設定されていない.ここでの「mbdUA」の開発と提案は,そのような基礎統計単位設定にむけての提案であると同時に,いまだそのような国レベルでの標準的なデータ整備が進んでいない段階で,統一的な都市地域の分析を可能にすることを目的としている.

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玉野和志
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