冒頭の写真はA−10�Wの取扱説明書に載っているイラストです。
さて、筆者は今でも1987年11月に発売されたA−10�Wを使っています。
ただし、入手したのはそれから2〜3年後のことです。

上の写真はボンネットを外したところですが、手前側の放熱器に沿っている基板がメインアンプ基板です。
また、当時から現在まで、スピーカーはTRIO(現KENWOOD)のLS−1000を使っています。

上の写真はアンプなどの入ったラックの左右にあるLS−1000です。
さて、今は昔のことになりますが、我が家に設置して鳴らしてみたところ、筆者にとっては低域が不足でした。
しかし、それは量産品としては仕方がなかったのだろうと思いました。
回路図を入手したのですが、とかく低域については電解コンデンサを大きくしなければならず、それはスペース的に不可能でした。
そこで、この回路がDCアンプを基礎として、それにDCサーボと言うNFをかけると言う方法であることに着目して、電解コンデンサと組み合わされて時定数を形成している抵抗を22kΩから68kΩに変える方法をとりました。
次に改造箇所の写真を示します。20年分のホコリがのっているのはご容赦ください。

パターン側には手が入らないので、元の22kΩのボディーを切断してその足に68kΩを取り付けました。
これで満足したと言う訳ではないのですが、これ以上は測定器もなく、現在のようにパソコンによる解析も出来ませんでしたので、あきらめたのです。
これが第1次改造でした。
★.それから20年以上の時が過ぎ、測定器を入手したのをきっかけにして第2次改造に取り組みました。
その前に、オリジナルと第1次改造後のデータを取りました。

実は、もっと分かりやすい差があるのではないかと考えていたのですが、5Hz以上では差と言うほどの差はなかったようです。
それでは、第2次改造です。
現在は電解コンデンサーも昔よりはずいぶんと小型になり、昔なら入らないところに入るようになりました。
そこで、2本の47μFを逆向き直列でBP化している所を1本のBP100μFに取り替えました。

真ん中の緑色のもので、音質対策品です。
今回はやや無理をして、部品を入れ替え、パターン面に半田付けをしました。
どうやらA−10�Wオリジナルの音はここに入っていた電解の音でした。
ただ、音質対策コンデンサーで47μF50Vと言うようなものは当時はなかったのではないかと思います。
さてF特ですが、もう測定器による測定では差を論ずるのはまったく不可能になりました。
5Hz以下を測れる測定器はないのです。
そこでパソコンに等価回路を入れて理論特性を出しました。
先ずメインアンプの等価回路を出します。
ただし、ディスクリートで組まれている信号増幅部分と電力部分はオペアンプに入れ替えています。

上の図でR1=22kΩとC1=23.5μFはオリジナルの定数です。
第1次改造ではR1を68kΩに、第2次改造ではR1は改造後のままにして、さらにC1を100μFに変えました。
次にオリジナルと第1次改造後、第2次改造後の理論特性を下に出します。

上段が振幅特性、下段が位相特性です。
横軸は周波数で、左端は10mHz=0.01Hzで、1桁ずつ上がっていきます。
振幅の縦軸は1目盛2dB、位相の1目盛は15゜です。
3つのグラフは左から第2次改造後、第1次改造後、オリジナルです。
オリジナルの−3dB点は0.65Hz、第2次改造後の−3dB点は0.05Hzです。
オリジナルは2Hzで1dB以内の落ちですからスペックは十分に満足しています。
★.次にセパレーションを測ってみました。
実のところ、あまりの悪さにびっくりしました。
当時の水準としてはそんなものだったのだろうと思います。
原因を調べたところ、メインアンプの出力大振幅が入力のハイインピーダンスに飛び付いている事が分かりました。
メインアンプ基板とボリューム部分の間にシールド板がない為の飛び付きです。
しかし、今からシールド板を入れることは構造的に不可能です。
結果としては根本的な改善は出来ませんでしたが、良くはなったと思います。
ただし、左右の音量バランスは出来なくなりました。
次に改善前後のセパレーション特性を出します。
ただし、悪い側だけです。

これでまた、当分の間、聞く(愛用する)ことが出来そうです。
★.と、その時は思ったのですが、NF回路の一部であるDCサーボと称する部分のオペアンプを変えたくなりました。
そして、M5218Lを手持ちのNJM5532Sに変えました。
ちなみにM5218Lは4560や4565と同等程度のレベルのようです。

NJM5532Sは9本足で、+Bが両側に出ているのです。
要らない方の足を折り曲げているので、それを中心に写真を撮りました。
★.改善後の音質ですが、どうやら満足できる水準に達したようです。
1.イーグルスのホテルカリフォルニアでは、バスドラムらしきものの低音は音だけでなく、基音が体に響くところまで来ました。
・また、エルネスト・アンセルメが率いるサン・サーンスの3番ではオルガンの最低音が床を這うように聞こえてきました。
・故朝比奈隆先生が率いるN響や大阪フィルの第九では五弦のコントラバスの最低音をはじめて聞くことが出来ました。
2.音像が以前よりはピンポイントに近づきました。
・その為か、音像が揺らぐという古い教会録音のものの音像が間違いなく揺らいでいることが確認できました。
・セパレーションが、揺らぎが分かる水準まで達したものと思います。
3.良きにつけ悪しきにつけ、A−10�Wの音質を決めていたものの原因がつかめ、それが解消されました。
・これはM5218と当時の電解コンの組み合せの音でした。
・電解コンだけを変えた時は電解コンの癖は取れましたが、オペアンプの癖が表面に出てしまいました。
・電解コンとオペアンプの両方を変えることで純度の高い音になったと思います。
・その結果、CDとSACDのコンポジット盤のマーラー第1番ではその音質の差が拡大したように感じました。
★.電圧増幅段用のデカップリング電解コンデンサの容量アップは交換作業が大変なので、見送りました。
本当は1,000μFを4,700か、せめて3,300に変えたいのですが。
3,300なら現在とサイズは同じなのです。