大阪最悪

 大阪府下では、560棟余りの耐震工事が行われ、耐震化の伸び率は大阪府全体では前年の6.0%から7.5%に達しました。調査対象となった2階建て以上で床面積200平方m以上の建物棟数は、大阪府全体の公立小・中学校で8,055棟あり、その内、耐震性能ありとされる昭和57年以降に建てられたものは、2,744棟、診断の結果耐震性が認められたものと耐震工事を完了したものの合計は、3,259棟になり、耐震化の合計は6.003棟で、府下全体の平均耐震化率は74.5%となりました。全国平均は昨年の73.3%から80.3%と耐震化が進んだため、全国平均を5.8%下回りました。

 大阪府には、耐震性のない学校施設2,055棟が残り、全国でも最も大きな不良資産を抱えいるといえます。文部科学省は二次診断等、一次診断、優先度調査、未実施傾向を総合的に判断した結果、大阪府下では397棟が巨大地震により倒壊する危険性の高いと推計しています。

 全国の倒壊の危険のある建物は、4,614棟でした。

大阪市耐震化97

将来負担軽く、実質財政は良好

 政令指定都市である大阪市の取り組みは引き続き高く、耐震化率は97.7%となりました。  大阪市は、防災拠点となる区役所等の公共施設の建替え工事を進めるとともに、第二次世界大戦後のベビーブーム時に建てられた中心部の学校改築を計画的に進めてきました。そのため、昭和57年以降の建物比率は、50%を超え、震災後に耐震化工事にも旺盛に取り組んだ結果、大阪府下各市を大きくリードする形となっています。府下全体の四分の一を占める学校施設数の多さも考えると大阪府全体の耐震化を牽引してきたことが高く評価されます。また、長期にわたる計画性を持った取り組みは、保有する建物の維持管理を高い水準で積み重ねており、将来負担も含めた実質財政状況は、表向きの数字で出ている財政状況よりも良好な評価を与えなければなりません。

 大阪府下には、昭和56年以前の建物が占める比率が90%台の市が8市、80%台が8市、70%台が7市と、実に32市中23市が老朽化した学校施設を70%以上も抱えるという深刻な実態が浮き彫りになっています。

 数年来旺盛な改修工事を行ってきた市を見ると、全国的にも注目されているのが高石市です。7.3%→9.1%→30.9%→100%という耐震化率の変化、とりわけ前回から今回の1年間に70%を引き上げた取り組みは、同規模の自治体にとり財政云々を理由に言い訳をする前に、学んでほしいものです。

 枚方市は,3年間で40%伸ばし、松原市は4年間で55%、大東市も46%、泉南市40%と急速な耐震化に取り組み、大阪府下でも来年には100%を達成する衛星都市が現れようとしています。

 

大阪府下各市学校耐震化ランキング

 2009年4月の文部科学省の第8回の調査報告では、診断結果を住民に公開していない設置者320を発表しました。

 非公開を続ける設置者名を公表することで、吹田市、貝塚市、守口市、大東市、羽曳野市、門真市、東大阪市、阪南市、島本町、能勢町の10市町は、2009年4月以降に次々と公表に踏み切りました。

 耐震改修促進法等の法令では、これまで耐震診断の早期実施と結果の公表を求めてきました。

 しかし、その公表のやり方は、自治体により微妙に異なり、震度6強、または震度7の巨大地震で倒壊または崩壊の恐れがあるとされるIs値0.3以下を明確にその数値で発表するところとABC評価のCとするところに分かれます。

 Is値0.3以下の建物耐震改修費用への国の財政支援が1/2から2/3に引き上げられており、起債利子補給等により実質自治体負担は20%を切る水準まで抑えられています。

 国の財政支援を受けるためには、1棟あたり数百万円の費用が必要な耐震診断を行う必要があり、これまで簡易な「耐震化優先度調査」で済ませてきた自治体は、本格的耐震診断の実施に方針転換する必要があります。

 急速な取り組みが進む自治体と絶好の機会を生かせず低迷する自治体の差は、早くから本格耐震診断を行っていたかどうかが現時点の違いとなっているからです。

 耐震診断の結果を公表するにも、数字で出せるかABCにとどまるかは、二次診断等ができているかどうかの違いでもあります。また、ABC判定では、深刻な欠陥を抱えたり手抜き工事により本来なら建て替えるべき建物が明示されず、あたかも耐震工事の対象になり得ると市民に誤認させる危険性があります。

 明確なIs値の公表が必要です。

 
 
100棟以上の未耐震棟設置者

文部科学省は、未耐震棟100棟以上を保有する設置者とその保有棟数 、耐震化率を公表しました。100棟以上を保有する設置者は、35市ですが最大の保有市は北九州市で、460棟と他市を大きく上回ることになっています。自治体人口規模で見てみると、35市中で政令指定都市・9市、中核市・15市、特例市・6市、普通市・5市となっています。

 耐震性がない建物は35市だけで、6,089棟となり全国の耐震性がない建物22,910棟の26.6% を占めます。

 大阪府下の自治体を見ると、堺市・231棟、東大阪市・221棟、豊中市・188棟、吹田市・160棟、高槻市・142棟と5市合わせて942棟もかかえています。全国の15.5%を大阪府下の自治体が占めます。

 大阪府下全体の耐震性のない建物は、2,055棟ですから942棟は、45.8%にあたり大阪府全体の耐震化推進の取り組みにおいてもこれら5市の責任は大きいと言えます。

10回までの歩み

2011年府県耐震調査

サイトマップへご案内します