30日からのオペラ・マラソンの週末の最後の4つ目のオペラはヘンデルのオペラでリラックスして楽しむことができた。休憩も入れて2時間という短い作品でレチタティーヴォがなかったら1時間位で終わってしまいそう。カストラート不在となってメゾが演じていた役を最近、沢山出て来た若手カウンターテナーが唄うようになり「ジュリオ・チェーザレ」だのあちこちのオペラ劇場でヘンデルの作品がリバイバルしている。
このオペラは羊飼いエイシスと海の妖精ガラテアが恋人同士なのに、巨人ポリフィーマスがガラテアを好きになった為、エイシスが戦いを挑む。エイシスはポリフィーマスが投げた岩に当たって死んでしまい、それを嘆いたガラテアはエイシスを泉に変えるという話。台本は後に「三文オペラ」を書いたジョン・ゲイとアレグザンダー・ポープが書いたものだ。
とてもシンプルなセットには木が3本立っていて、緑の丘に青い大きなキューピッドの像があるだけ。ガラテアと女性コーラスは白いサンドレス、エイシスと男性コーラスはチノパンにTシャツというコスチューム。巨人ポリフィーマスはセットがミニチュア化されたボックスに入っていて、これが上から降りてきて登場。作業衣みたいなのを着て、フランケンシュタインの様な歩き方をし、怒るとヘッドランプが赤く光りユーモラス。。
監督はメトで「華麗なるギャツビー」「ヴォツェック」「ロンバルディ」を手掛けたマーク・ラモス。指揮はジェーン・グローバーというバロック・オペラ専門家。ガラテア役はクリスティン・ブランデスというバロック・オペラ専門のソプラノ。リッチで温かみのある声で、スマートで優雅で美人だ。最近リリースされたヘンデルのオラトリオ"L'Allegro, il Penseroso ed il Moderato"では最近流行のカウンターテナー、デイビッド・ダニエルズと録音している。ウィリアム・バーデン(エイシス)も今回NYシティー・オペラにデビューしたジョン・テシア(デイモン)とディーン・エルジンガ(ポリフィーマス)も皆、若くて将来が楽しみだ。ジョン・テシアはその後、ワシントンでバッハ「ミサ曲ロ短調」で聴くチャンスがあったがなかなか声量もあり、上手だった。上手なテナーがいないと思っていたが、こういう所で次世代が着々と育っているという印象を受けた。そのうちにこの人達もメトに出演するようになるかも知れない。
数シーズン前からマイクをつけたことから批判されたNYシティー・オペラだが、天井桟敷にいた私は問題点はよく判からず。でもミュージカルや3大テナーのコンサートじゃないんだから、やっぱりオペラは肉声で聴きたい。